電材メーカーの会社概要やISO認証一覧を見ると、以前は「ISO9001」「ISO14001」の2つが定番だったところに、近年「ISO45001」の記載が増えている。電材サーチのメーカーデータベース(500社超)でも、選定ポイントの欄でISO45001に言及するメーカーが確認できる。ISO9001・ISO14001と比べるとまだ発行から日が浅い規格のため、「聞いたことはあるが何を認証しているのか正確には説明できない」という担当者も少なくない。
結論から言うと、ISO45001は「労働安全衛生マネジメントシステム(労働災害・疾病を予防し、安全で健康な職場を継続的に維持・改善するための仕組み)」を第三者の審査機関が認証する国際規格である。ISO9001(品質)・ISO14001(環境)と同じ「マネジメントシステム規格」の一種で、2018年3月にISOが発行した。個々の製品や作業そのものを検査する規格ではなく、「その会社が労働安全衛生をどう管理し続けているか」という仕組みを審査する点は、ISO9001・ISO14001と共通している。
この記事でわかること
- ISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム)が何を規定しているか
- OHSAS18001からISO45001への移行の経緯
- ISO9001・ISO14001とISO45001の関係、なぜ3規格セットで語られることが多いのか
- 電設資材業界・製造業でこの認証がなぜ重要か
- 電材メーカーを選ぶ際、ISO45001の有無をどう判断材料にすべきか
ISO45001とは何か
ISO45001は、国際標準化機構(ISO)が2018年3月12日に発行した国際規格で、組織が「労働安全衛生(OH&S)マネジメントシステムを確立し、実施し、維持し、継続的に改善すること」を求めている(ISO公式)。目的は、労働に関連する負傷・疾病を予防し、安全で健康的な職場を積極的に提供できる状態を、企業規模や業種、拠点の地理的条件を問わずあらゆる組織が実現できるようにすることにある。
規格が扱う範囲は、安全衛生方針の策定、リーダーシップと労働者の参画、危険源の特定とリスクアセスメント、法令・規制要求事項の順守、緊急事態への備え、労働災害発生時の調査、そして継続的改善まで及ぶ。ISO9001・ISO14001と同様に「計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Act)」のPDCAサイクルを軸に、仕組みを一度作って終わりにせず回し続けることを前提とした規格である点は変わらない。
日本国内ではISO45001の内容をそのまま取り入れたJIS Q 45001(2018年9月28日制定)が制定されている。さらに日本独自の追加規格として、国内の労働安全衛生関連法令や現場の安全衛生活動の実態を踏まえた要求事項を加えたJIS Q 45100が設けられており、JIS Q 45001とあわせて認証を受ける企業も多い(日本規格協会)。
OHSAS18001からの移行の経緯
ISO45001は、まったく新しく作られた規格ではなく、それまで国際的に広く使われていた準国際規格「OHSAS18001」を土台に、ISOが正式な国際規格として作り直したものだ。2013年にISOの専門委員会(ISO/PC283)が設置され、OHSAS18001(2007年版)やILO(国際労働機関)のガイドラインを踏まえて開発が進められ、2018年3月にISO45001として発行された。
ISO45001の発行に伴い、OHSAS18001の認証には3年間の移行期間が設けられ、2021年3月11日をもってOHSAS18001の認証は正式に廃止された。現在、労働安全衛生マネジメントシステムの認証として新規に取得できるのはISO45001(国内ではJIS Q 45001・JIS Q 45100)のみであり、電材メーカーの資料に残る「OHSAS18001取得」の記載は、過去の認証実績を示すものとして理解する必要がある。
なお、日本には厚生労働省が1999年から運用してきた「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」(OSHMS指針、2019年7月改正)という行政指針も別に存在する。こちらは第三者認証を前提としない自主的な安全衛生管理の枠組みで、ISO45001とは成り立ちが異なる。同じ「労働安全衛生マネジメントシステム」という言葉が、国際規格の認証制度(ISO45001)と国内の行政指針(OSHMS指針)の両方で使われている点は、混同しやすいので注意したい。
ISO9001・ISO14001との関係
ISO45001はISO9001・ISO14001と同じ「ハイレベルストラクチャー(HLS、Annex SLと呼ばれる共通の章構成・用語体系)」を採用した規格である。「組織の状況」「リーダーシップ」「計画」「支援」「運用」「パフォーマンス評価」「改善」といった章立てが共通化されているため、品質(ISO9001)・環境(ISO14001)・労働安全衛生(ISO45001)の3規格を、別々の仕組みとしてではなく1つの統合マネジメントシステムとして運用しやすく設計されている。
| 規格 | 対象領域 | 発行年 |
|---|---|---|
| ISO9001 | 品質マネジメント(顧客満足・製品/サービスの一貫した提供) | 1987年(現行版は2015年改訂) |
| ISO14001 | 環境マネジメント(環境負荷の管理・環境パフォーマンスの改善) | 1996年(現行版は2026年改訂) |
| ISO45001 | 労働安全衛生マネジメント(労働災害・疾病の予防、安全な職場づくり) | 2018年 |
電材サーチのメーカーDBでも、この3規格をまとめて取得年つきで記載しているメーカーが複数見られる。品質・環境について詳しくは、姉妹記事「ISO9001・ISO14001とは|電材メーカー選定でどう見るべきか」で解説している。
認証の仕組み
ISO45001の認証も、ISO9001・ISO14001と同じ「認定機関(AB)」「認証機関」「組織(企業)」の三者構造で運用される。日本ではJAB(公益財団法人日本適合性認定協会)が認定機関としてISO45001の認証機関を認定しており、JABに認定された複数の審査登録機関(JCQA、JMAQA、安全衛生マネジメントシステム審査センターなど)が実際の審査・認証を行っている(JAB、中央労働災害防止協会)。
認証登録後は3年サイクルで運用され、登録後1年目・2年目のサーベイランス審査(維持審査)、3年目の更新審査を経て次のサイクルへ更新される流れもISO9001・ISO14001と共通している。認定・認証の仕組みの詳細は前述の姉妹記事にまとめているため、ここでは重複を避け割愛する。
電設資材業界・製造業でISO45001が重要な理由
厚生労働省が公表した令和6年(2024年)の労働災害発生状況によれば、休業4日以上の死傷者数は製造業が26,676人で全業種の中で最多、死亡者数も製造業が142人(前年比4人・2.9%増)、建設業が232人(同9人・4.0%増)と、いずれも増加している(厚生労働省)。電設資材の製造・加工現場には、プレス機・巻線機などの機械作業、高圧設備を扱う工程、重量物の搬送といった労働災害リスクの高い作業が含まれることが多く、業界全体として安全管理体制の重要性は高い。
こうした背景から、電材メーカーを選定する際にISO45001の取得状況を確認することには実務的な意味がある。特に次のようなケースでは、品質面のISO9001だけでなく、労働安全衛生面のISO45001も確認材料になりうる。
- 自社工場での加工・組立を伴う受注生産品・特注品を扱うメーカー:現場作業のリスク管理体制が製品供給の安定性にも影響しうる
- 元請・ゼネコンが取引先の安全衛生管理体制を評価項目に含む案件:公共工事や大手ゼネコン案件では、取引先選定条件として安全衛生マネジメント体制の確認が求められることがある
- 長期の安定調達を前提とした取引先評価:労働災害による操業停止・供給遅延リスクを事前に把握する材料になる
ただし、ISO9001・ISO14001に比べるとISO45001はまだ普及の途上にあり、電材サーチのメーカーDBでも取得を明記しているメーカーはISO9001・ISO14001ほど多くない。「取得していない=安全管理体制が不十分」と単純に判断するのではなく、他の情報(労働基準監督署からの指導歴の有無、業界団体の安全表彰実績など)とあわせて総合的に見る視点が必要だ。
電材サーチのメーカーDBで確認できる例
電材サーチのメーカーデータベースでは、各社の「選定ポイント」欄にISO45001の取得年や認証範囲を、公式情報に基づいて記載している。たとえば以下のようなメーカーでは、ISO9001・ISO14001とあわせた取得年まで具体的に確認できる。
- エナジーサポート:ISO9001(1996年)・ISO14001(2000年)に続き、ISO45001を2019年に初回認証取得。3規格の管理体制が長期にわたり継続
- 西日本電線:ISO9001・ISO14001に加え、2024年1月にISO45001(労働安全衛生マネジメント)を全工場で取得
- プリンス電機:ISO9001(2000年)・ISO14001(2002年)・ISO45001(2018年)を取得し、品質・環境・労働安全の各マネジメント体制が公式に確認できる
同様の記載があるカネソウ、東芝ライテックを含め、電材サーチではISO45001取得に言及するメーカー情報を各社ページの選定ポイント欄から確認できる。
注意点──「ISO45001があれば絶対安全」ではない
ISO45001は有用な判断材料だが、次の点は誤解しやすいので注意したい。
- 個々の作業現場の無事故を直接保証する規格ではない。 ISO45001が認証するのは「労働災害・疾病を予防する管理の仕組み」であり、認証取得後に労働災害が発生しないことを保証する制度ではない。
- 認証範囲を超えた保証はできない。 ISO9001・ISO14001と同様、特定の工場・事業部のみが認証対象になっているケースがある。取得している会社の別工場・別ラインまで同じ水準とは限らない。
- OSHMS指針(厚生労働省の行政指針)と混同しない。 前述の通り、ISO45001(国際規格の第三者認証)と厚生労働省のOSHMS指針(自主的な行政指針)は別の枠組みである。会社資料で単に「労働安全衛生マネジメントシステム」とだけ書かれている場合、どちらを指しているか確認したほうが確実だ。
- 普及途上の規格であることを踏まえる。 ISO9001・ISO14001に比べて発行から日が浅く、業界全体での取得率もまだ発展途上にある。取得していないメーカーが多い現状では、他の安全管理指標とあわせて評価するのが実務的だ。
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よくある質問
ISO45001とOSHMS(厚生労働省の労働安全衛生マネジメントシステム指針)は同じものですか?
別物です。厚生労働省は1999年から「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」(OSHMS指針)を定めており、これは国際規格ISO45001(2018年発行)とは別に、日本国内で自主的な安全衛生管理の仕組みづくりを促す行政指針として運用されてきました。ISO45001は第三者認証機関による審査・認証を伴う国際規格である点が異なります。なおJIS Q 45100は、ISO45001(JIS Q 45001)に日本国内の法令や現場の安全衛生活動を踏まえた追加要求事項を加えた、日本独自の認証規格です。
ISO45001を取得すれば労働災害はなくなりますか?
そうとは言えません。ISO45001が認証するのは「労働災害・疾病を予防し、安全な職場を継続的に維持・改善するための管理の仕組み」であり、個々の作業現場で事故が絶対に起きないことを保証するものではありません。仕組みが機能しているかどうかは、認証後もサーベイランス審査で継続的に確認される前提になっています。
電材メーカーを選ぶとき、ISO45001の有無はどの程度重視すべきですか?
ISO9001(品質)・ISO14001(環境)ほど選定条件として明示されることは現状まだ多くありませんが、労働災害の発生件数が製造業で高い水準にあることを踏まえると、工場を持つメーカーの安全管理体制を確認する材料として有用です。特に自社工場での作業を伴う受注生産品・特注品を扱うメーカーを評価する際は、ISO9001・ISO14001とあわせて確認する価値があります。
ISO45001とOHSAS18001は何が違いますか?
OHSAS18001は英国規格協会(BSI)等が策定した準国際規格で、長年にわたり労働安全衛生マネジメントの業界標準として使われてきました。ISO45001はこれを土台にISOが正式な国際規格として策定したもので、2018年3月に発行されています。OHSAS18001の認証は、ISO45001発行から3年の移行期間を経て2021年3月11日に廃止されており、現在新規に取得できるのはISO45001(国内ではJIS Q 45001・JIS Q 45100)のみです。
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