第一種電気工事士とは — 第二種を持っている人が、次に何を手に入れるのか
第二種電気工事士を取ると、一般住宅や小規模店舗の電気工事ができるようになる。では、その先にある第一種を取ると何が変わるのか。答えは一言でいえる。扱える現場の規模が変わる。
第二種の対象は「一般用電気工作物等」——低圧(600V以下)で受電する住宅・小規模店舗の範囲に限られる。第一種はそれに加えて、自家用電気工作物のうち最大電力500kW未満の需要設備の電気工事に従事できるようになる(電気工事士法第3条第1項・第2項)。具体的には、ビルの受変電設備(高圧で受電してキュービクルなどで低圧に変換する設備)、工場の動力設備、中規模店舗の分電盤まわりなど、住宅より一段上の現場が仕事の対象に入ってくる。
まず要点を先に置いておく。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受験資格 | なし。第二種の有無を含め、年齢・学歴・実務経験の制限がなく誰でも受験できる |
| 試験の構成 | 学科試験 → 技能試験の2段階。学科の合格者(免除者)だけが技能に進める |
| 学科試験 | 四肢択一50問(一般問題40問+配線図問題10問)・140分・100点満点中60点以上で合格 |
| 技能試験 | 事前公表の候補問題10問から1問・60分・欠陥ゼロで合格 |
| 実施回数 | 年2回(上期・下期)。学科は上期がCBT方式のみ、下期はCBT方式か筆記方式かを選択 |
| 受験手数料 | インターネット申込み 13,000円(令和8年度・非課税) |
| 学科の合格率 | 40.5〜61.6%(平成30年度〜令和8年度上期) |
| 技能の合格率 | 55.1〜67.0%(平成30年度〜令和8年度上期) |
| 免状交付 | 試験合格に加えて、実務経験3年以上が必要(受験そのものには不要) |
第一種電気工事士で何ができるようになるのか
免状を取ると、一般用電気工作物に加えて自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備)の電気工事に従事できる。第二種との違いを、業務範囲で整理するとこうなる。
| 資格 | できる工事の範囲 |
|---|---|
| 第二種電気工事士 | 一般用電気工作物等(一般住宅・小規模店舗など) |
| 認定電気工事従事者 | 自家用電気工作物(最大電力500kW未満)のうち、電圧600V以下で使用する部分(電線路を除く)=簡易電気工事 |
| 第一種電気工事士 | 一般用電気工作物等+自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備)の全般。簡易電気工事も含む |
つまり第一種を取ると、ビル・工場・店舗の受変電設備が仕事の対象になる。 キュービクル式高圧受電設備の新設・改修に伴う配線工事、工場の動力配線、テナントビルの共用部の電気設備など、第二種の範囲では手が出せなかった現場に入れるようになる、という変化だ。
ただし第一種の範囲にも外側がある。
- ネオン工事・非常用予備発電装置工事(特殊電気工事)は、第一種の免状があっても従事できない。特種電気工事資格者の認定証が別途必要
- 最大電力500kW以上の需要設備は、そもそも電気工事士法の規制対象外。電気主任技術者の保安監督のもとで施工される領域で、第一種の資格でカバーする範囲ではない
学科の科目数も変わる — 7科目から9科目へ
第二種の学科試験は7科目だが、第一種は9科目になる。増えるのは「電気応用」(照明・電熱・電動機応用)と「発電施設、送電施設及び変電施設の基礎的な構造及び特性」の2科目で、いずれも第二種には存在しない。残る7科目は名前こそ同じでも、対象が自家用電気工作物まで広がる分、内容は深くなる。詳しくは学科の9科目で科目ごとに整理する。
受験資格と免状交付は別の話 — 「受けられる」と「交付される」を混同しない
第一種電気工事士でいちばん誤解されやすいのがここだ。受験そのものに制限は一切ない。 電気技術者試験センターの受験案内には「受験に対して制限や条件はございません。どなたでも受験ができます」と明記されている。第二種の免状を持っていなくても、電気の実務経験がゼロでも、学科・技能とも受験できる。
一方で、免状の交付には条件がある。試験に合格しただけでは免状はもらえず、実務経験3年以上が必要になる(電気工事士法第4条第3項第1号、同法施行規則第2条の4第2項)。この2つは別の話なので、順を追って整理する。
実務経験3年以上 — 令和3年の改正で一律になった
電気工事士法施行規則第2条の4第2項は、免状交付に必要な実務経験を「三年以上の従事」と定めている。だが、この規定は令和3年(2021年)に変わったばかりだ。
- 改正前: 大学・高専等で電気工学に関する課程を修めて卒業した者は卒業後3年以上、それ以外の者は5年以上——学歴によって必要年数が分かれていた
- 改正後: 学歴を問わず、一律3年以上に統一
この改正は令和3年経済産業省令第3号「電気工事士法施行規則の一部を改正する省令」によるもので、令和3年2月10日に官報(第430号)で公布され、令和3年4月1日に施行された。附則には「この省令は、令和三年四月一日から施行する」とあり、この日以降の免状交付申請から、合格日にかかわらず全ての合格者に一律3年以上が適用される。
つまり、いつ試験に合格したかは関係なく、いま免状を申請する時点でこのルールが適用される。 学歴で必要年数が変わっていた時代を知っている人ほど、この点は最新の情報で確認しておいたほうがいい。
実務経験としてカウントされる工事の範囲
実務経験の対象になる工事は、施行規則第2条の4第1項で定められている。電気に関する工事のうち、次を除いたものが対象だ。
- 政令で定める「軽微な工事」
- 特殊電気工事(ネオン工事・非常用予備発電装置工事)
- 電圧5万V以上で使用する架空電線路に係る工事
- 保安通信設備に係る工事
受験案内が例として挙げているのは、第二種電気工事士として行う一般用電気工作物等の電気工事、認定電気工事従事者として行う簡易電気工事、最大電力500kW以上の需要設備に係る電気工事などだ。自ら施工する工事に伴う設計・検査は実務経験に含まれるが、キュービクルや変圧器の据え付けに伴う土木工事、電気機器の製造そのものは含まれない。試験合格より前の実務経験も算入されるため、合格した時点ですでに3年分の経験があれば、その場で都道府県知事へ免状交付申請ができる。
認定電気工事従事者との違い — 「つなぎ」として使える制度がある
自家用電気工作物を扱いたいが、免状交付に必要な3年の実務経験がまだない——という人のためのルートが認定電気工事従事者だ。認定証は経済産業大臣が交付する(電気工事士法第4条の2)もので、第一種電気工事士の免状とは別の制度になる。
認定電気工事従事者が従事できるのは、自家用電気工作物(最大電力500kW未満)のうち、電圧600V以下で使用する部分(電線路に係るものを除く)=簡易電気工事(施行規則第2条の3)に限られる。高圧側の工事や電線路の工事はできない。
ここで押さえておきたいのが、第一種電気工事士試験に合格した人向けの近道があることだ。第一種試験の合格者は、免状交付に必要な3年の実務経験がなくても、産業保安監督部長に申請すれば認定電気工事従事者の認定証を受けられる(受験案内に明記)。つまり、試験に合格した直後から簡易電気工事だけは始められる、という制度になっている。
一方で注意も要る。第一種試験に合格しただけでは、第二種電気工事士の免状を持っていない限り、一般用電気工作物等の工事には従事できない。 認定電気工事従事者はあくまで自家用電気工作物の低圧部分に限定した資格であり、住宅の電気工事を代替するものではない。
| 資格・認定 | 交付者 | できる範囲 | 実務経験の要否 |
|---|---|---|---|
| 第二種電気工事士 | 都道府県知事 | 一般用電気工作物等 | 不要(試験合格のみ) |
| 認定電気工事従事者 | 経済産業大臣 | 自家用電気工作物(500kW未満)の簡易電気工事のみ | 不要(第一種試験合格者は申請のみで取得可) |
| 第一種電気工事士 | 都道府県知事 | 一般用電気工作物等+自家用電気工作物(500kW未満)全般 | 必要(3年以上) |
定期講習の義務 — 第二種にはない、第一種だけのルール
第一種電気工事士には、第二種にはない継続的な義務がある。電気工事士法第4条の3は、第一種電気工事士に対して「自家用電気工作物の保安に関する講習」(定期講習)の受講を義務づけている。
- 免状の交付日から5年以内に1回受講する
- その後も、受講日から5年以内ごとに繰り返し受講する(やむを得ない事由がある場合を除く)
自家用電気工作物は住宅よりも規模が大きく、事故が起きたときの影響も大きい。だからこそ、免状を取って終わりではなく、5年ごとに知識を更新し続けることが法律上の義務になっている。 第二種にはこの制度自体が存在しない。
学科の9科目 — 第二種と比べて何が増え、何が深くなるか
第一種の学科試験は次の9科目。①〜⑦は第二種にも同名の科目があるが対象が広がり、③⑧は第一種で新たに加わる科目になる。
| # | 科目名 | 第二種との違い |
|---|---|---|
| ① | 電気に関する基礎理論 | 同名科目あり。一種では高圧回路・三相回路等の計算がより深くなる |
| ② | 配電理論及び配線設計 | 同名科目あり。一種では高圧配電・自家用構内電線路まで扱う |
| ③ | 電気応用 | 一種で追加される科目(照明、電熱及び電動機応用) |
| ④ | 電気機器、蓄電池、配線器具、電気工事用の材料及び工具並びに受電設備 | 二種の同種科目に蓄電池と受電設備(キュービクル等の設計・維持・運用)が加わる |
| ⑤ | 電気工事の施工方法 | 同名科目あり。一種は高圧・自家用設備の施工まで含む |
| ⑥ | 自家用電気工作物の検査方法 | 二種は「一般用電気工作物等の検査方法」。一種は対象が自家用電気工作物になり、絶縁耐力試験・継電器試験・温度上昇試験等が加わる |
| ⑦ | 配線図 | 同名科目あり。一種の配線図問題は高圧受電設備の単線結線図が中心 |
| ⑧ | 発電施設、送電施設及び変電施設の基礎的な構造及び特性 | 一種で追加される科目 |
| ⑨ | 一般用電気工作物等及び自家用電気工作物の保安に関する法令 | 二種は「一般用電気工作物等の保安に関する法令」。一種は自家用電気工作物が対象に加わり、電気事業法・電気関係報告規則等まで範囲が広がる |
このサイトでは、学科9科目に技能試験の基礎と技能試験 候補問題10問の攻略を加えた11科目・120本のトピック解説を公開している。科目ごとの詳しい違いは各科目ページで確認できる。
配線図問題は、知識ではなく「図の上での位置」で落ちる
第一種の配線図問題(41〜50問)でつまずく人の多くは、機器の知識が無いのではない。 「LBSとは何か」は言えるのに、目の前の図のどの記号がLBSなのかを指させない。
たとえば「a・b・cを開路する順序として最も不適切なものは」という設問。 「断路器は無負荷でしか開けない」「負荷側から先に開く」という原則を正しく知っていても、 図の中でどちらが電源側かを取り違えれば、そのまま誤答になる。 原則を覚え直しても、この失点は減らない。
そこで、単線結線図ドリルを用意した。 CB形・PF・S形の主回路から、計器用変成器、保護協調、接地の種別、コンデンサ設備まで9つの図・50問。 どの図でも最初に「電気はこの図のどこから入って、どこへ抜けるか」を辿らせてから記号を問う。 選ぶとその場で正誤と、なぜそこにそれが来るのか、そして現場で見たときの外観が出る。
技能試験 — 候補問題は年10問
第一種の技能試験は、電気技術者試験センターが毎年1月に公表する候補問題(No.1〜No.10)の中から1問が出題され、持参した工具と支給材料で60分以内に作品を完成させる方式だ。上期・下期で共通の年度単位の候補問題が使われる。
合格基準は第二種と同じく「作品に欠陥がないこと」。欠陥の判断基準は第一種・第二種共通のものが公表されている。技能試験で扱う事項は次の9項目だ。
- 電線の接続、配線工事、電気機器・蓄電池及び配線器具の設置
- 電気機器・蓄電池・配線器具並びに電気工事用の材料及び工具の使用方法
- コード及びキャブタイヤケーブルの取付け、接地工事
- 電流・電圧・電力及び電気抵抗の測定
- 自家用電気工作物の検査、自家用電気工作物の操作及び故障箇所の修理
最後の2項目(検査・操作・故障箇所の修理)は、対象が自家用電気工作物になったことを反映した第一種特有の出題事項になる。
令和8年度(2026年度)の試験日程・受験手数料
試験は年2回、上期・下期のどちらか(または両方)を選んで申し込む。
| 項目 | 上期 | 下期 |
|---|---|---|
| 学科試験(CBT方式) | 4/1 〜 5/8 | 9/11 〜 10/18 |
| 学科試験(筆記方式) | 実施なし(CBT方式のみ) | 10/4(マークシート・全国一斉) |
| 技能試験 | 7/4(11:30〜12:30・60分) | 11/21(60分) |
上期は学科がCBT方式のみで、筆記方式の実施がない。下期はCBT方式・筆記方式のどちらかを選択でき、両方の受験はできない。
受験手数料(令和8年度・非課税)は、インターネット申込み13,000円、郵送(書面)申込み14,400円。学科試験免除者も同額になる。日程・手数料は年度ごとに変わるため、申し込む前に電気技術者試験センターの公式ページで最新の受験案内を確認してほしい。
なお第一種は、電気技術者試験センターの「試験結果の推移」を見る限り、令和5年度までは年1回(年度単位)の実施だった。令和6年度から第二種と同様の年2回(上期・下期)実施に切り替わっている。学科に合格すると、次々回の試験まで学科免除の効力が持ち越される(第二種の「次回1回限り」とは条件が異なる)。
難易度をどう見るか — 合格率を数字で読む
| 期 | 学科試験 | 技能試験 |
|---|---|---|
| H30 | 40.5% | 62.7% |
| R1 | 54.1% | 64.7% |
| R2 | 52.0% | 64.1% |
| R3 | 53.5% | 67.0% |
| R4 | 58.2% | 62.7% |
| R5 | 61.6% | 60.6% |
| R6上期 | 59.3% | 57.0% |
| R6下期 | 55.4% | 61.9% |
| R7上期 | 56.5% | 55.1% |
| R7下期 | 57.9% | 60.3% |
| R8上期 | 57.3% | 56.1% |
学科試験は平成30年度の40.5%を底に、令和以降はおおむね53〜62%のレンジで推移している。技能試験は55〜67%の間で安定している。第二種と比べると、第一種のほうが受験者数はひとまわり小さく(令和8年度上期は学科14,507人・技能12,514人)、すでに実務や第二種の知識を持った人が多く受けている試験だと考えられる。
よくある質問
第二種の免状を持っていないと、第一種は受験できませんか
受験できます。受験資格に制限はなく、第二種の免状の有無、学歴、実務経験の有無にかかわらず誰でも受験できます。ただし第一種試験に合格しただけでは一般用電気工作物等の工事はできず、それには第二種電気工事士の免状(または第一種電気工事士の免状)が別途必要です。
実務経験3年は、試験に合格してからカウントされますか
いいえ。試験合格より前の実務経験も対象に含まれます。合格した時点ですでに3年以上の対象実務経験があれば、そのまま都道府県知事に免状交付申請ができます。逆に実務経験がまだ3年に満たない場合は、条件を満たすまで免状の交付を待つことになります。
実務経験がなくても、自家用電気工作物の工事をする方法はありますか
あります。第一種電気工事士試験に合格すれば、実務経験3年を満たしていなくても、産業保安監督部長への申請で「認定電気工事従事者」の認定証を受けられます。ただしこの認定証で従事できるのは自家用電気工作物のうち電圧600V以下の部分(簡易電気工事)に限られ、第一種電気工事士の免状で扱える範囲より狭くなります。
第一種にも定期講習はありますか
あります。電気工事士法第4条の3により、第一種電気工事士は免状交付日から5年以内に、自家用電気工作物の保安に関する定期講習を受ける義務があります。受講後も5年以内ごとに繰り返し受講する必要があります。第二種にはこの義務自体がありません。
学科試験で電卓は使えますか
第一種の学科試験でも電卓は使用できません。計算問題は筆算で解ける数値で作られています。