電験三種とは — 電気工事士の「その先」にある資格
第二種・第一種の電気工事士は、いずれも「工事をする」資格だった。配線をつなぎ、機器を取り付け、完成させる。 一方、電験三種(第三種電気主任技術者)は毛色が違う。工事をする資格ではなく、設備の保安を監督する資格だ。
工場の受変電設備やビルのキュービクルには、法律上「電気主任技術者」を選任することが義務づけられている (電気事業法第43条)。この主任技術者になれる資格の1つが電験三種で、対象となるのは電圧5万ボルト未満の 事業用電気工作物——第一種電気工事士が扱う「最大電力500kW未満の需要設備」よりもさらに規模の大きい設備まで 含まれる。
まず要点を先に置いておく。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施団体 | 一般財団法人 電気技術者試験センター(電気工事士と同じ団体) |
| 試験科目 | 理論・電力・機械・法規の4科目(各五肢択一) |
| 試験方式 | マークシートによる筆記方式、またはパソコンで解答するCBT方式のいずれかを選択 |
| 科目合格制度 | 一部科目だけの合格でも「科目合格」となり、最大連続5回まで当該科目が免除される |
| 実施回数 | 年2回(上期・下期) |
| 令和6年度合格率 | 16.4%(受験49,963人・合格8,181人。ほかに科目合格15,533人) |
| 令和7年度合格率 | 約13.0% |
第二種・第一種電気工事士を持っている人が、次に電験三種を目指すのはなぜか。 「工事ができる」資格を持っているのに、なぜ「監督する」資格が別に必要なのか。
答えは、法律が2つの役割をはっきり分けているからだ。このページを読み終えるころには、 「工事士」と「主任技術者」が現場でどう役割分担しているかが見えるようになっている。
電気工事士との違い — 「工事をする人」と「保安を監督する人」
電気工事士法が対象にする電気工作物と、電気事業法が対象にする電気工作物は、実は分類の軸が違う。
- 電気工事士法:電気工作物を「一般用」「自家用(最大電力500kW未満)」で区切り、それぞれ第二種・第一種が 工事できる範囲を定める
- 電気事業法:電気工作物を「一般用電気工作物」「事業用電気工作物」で区切り、事業用電気工作物には 保安を監督する電気主任技術者の選任を義務づける
つまり、第一種電気工事士が「工事する人」として現場に入る同じキュービクルに、電験三種(またはそれ以上の 電験)を持った「保安を監督する人」が別に選任されている、という構図になる。電験三種は電気工事士の上位資格 ではなく、役割そのものが違う資格だ。
4科目の中身 — 「制御盤」「配電盤」はどこに出てくるか
電験三種の4科目は、次のような内容になっている(電気技術者試験センターの試験概要より)。
| 科目 | 扱う内容 |
|---|---|
| 理論 | 電気理論、電子理論、電気計測及び電子計測 |
| 電力 | 発電所・蓄電所及び変電所の設計及び運転、送電線路及び配電線路の設計及び運用並びに電気材料 |
| 機械 | 電気機器、パワーエレクトロニクス、電動機応用、照明、電熱、電気化学、電気加工、自動制御、メカトロニクス並びに電力システムに関する情報伝送及び処理 |
| 法規 | 電気法規(保安に関するものに限る)及び電気施設管理 |
電材サーチが扱う商材との対応でいえば、「電力」科目が受変電設備・キュービクル・送配電線路・電気材料と 最も直結し、「機械」科目の自動制御・シーケンスが制御盤の中身、「法規」科目の電気施設管理が 配電盤の容量設計(需要率・不等率など)にそれぞれつながっている。
科目合格制度 — 電気工事士にはない「複数年戦略」
電気工事士の学科試験は「次回1回限り」の合格持ち越ししかないが、電験三種の科目合格は 最大連続5回まで当該科目が免除される。年2回実施なので、最長で2年半、その科目を受けずに済む計算になる。
4科目を一度に仕上げるのが難しければ、1年目に理論・法規、2年目に電力・機械、といった形で 複数年に分けて合格を積み上げる戦略が最初から制度に組み込まれている、という点は電気工事士との 大きな違いだ。
試験方式 — CBTと筆記、電卓のルール
各科目とも、マークシートに記入する筆記方式、またはパソコンの画面上で解答するCBT方式のいずれかを 選んで受験する。使用できる電卓は「四則演算と開平計算機能付き」のものに限られ、関数電卓や数式を記憶できる 電卓は使用できない。
難易度をどう見るか
| 年度 | 合格率 |
|---|---|
| R6 | 16.4%(受験49,963人・合格8,181人・ほかに科目合格15,533人) |
| R7 | 約13.0% |
電気工事士の学科試験合格率が50〜60%台で推移していたのに対し、電験三種は13〜16%台と、一段難易度の高い 試験であることが数字からも分かる。科目合格を組み合わせて複数年で合格を目指す受験者も多い試験だ。
よくある質問
電気工事士を持っていないと電験三種は受けられませんか
受験資格に制限はない。電気工事士の有無、学歴、実務経験を問わず誰でも受験できる。ただし出題内容は 電気工事士より専門的で、計算問題の比重も高い。
4科目を同時に受けないといけませんか
その必要はない。一部の科目だけ受験することもでき、合格した科目は科目合格として最大連続5回まで 免除される。全科目をそろえて初めて「合格」となる。
電験三種に合格すると何ができるようになりますか
電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物の電気主任技術者として選任される資格が得られる。ただし「工事をする」 資格ではないため、実際の配線工事などは電気工事士の資格が別途必要になる。
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