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配線用遮断器(ブレーカー)は電路の「最後の守り」だ——過電流・短絡・漏電を検出してトリップし、火災や感電事故を防ぐ保護機器である。しかし「とりあえず同じ容量に替えた」「漏電ブレーカーと配線用遮断器の違いがよくわからない」という状況のまま施工しているケースが現場では少なくない。
ブレーカーの誤選定は過電流による焼損・漏電遮断できない回路の発生につながる。本記事では種類の違いから容量計算の基本、電源方式別の選び方まで体系的に解説する。
この記事でわかること
- 配線用遮断器(MCCB)・漏電遮断器(ELCB)・アース漏電ブレーカーの定義と違い
- 容量(AT)の計算方法と基本の選定式
- 単相3線式・三相3線式での使い分けポイント
- Tempearl・日東工業・Panasonicの主な品種の特徴
- 現場の選定チェックリスト
ブレーカーの種類と定義
配線用遮断器(MCCB:Molded Case Circuit Breaker)
配線用遮断器は過電流(過負荷・短絡)から電路を保護するブレーカーだ。電流が定格を超えると熱動素子(バイメタル)または電磁素子が動作してトリップする。JIS C 8201-2-1で規定されており、分電盤の分岐ブレーカーとして最も一般的に使われる。
漏電(地絡)は検出しない点が重要な特徴だ。「漏電してもトリップしないブレーカー」と理解しておくこと。
漏電遮断器(ELCB:Earth Leakage Circuit Breaker)
漏電遮断器はMCCBの機能(過電流保護)に加えて、漏電電流(地絡電流)を検出してトリップする機能を持つ。零相変流器(ZCT)が往復の電流差を検出し、漏電電流が感度電流(住宅用は15mAまたは30mA)を超えるとトリップする。
JIS C 8201-2-2で規定されている。電技解釈第36条は「金属製外箱を有する使用電圧が60Vを超える低圧の機械器具に接続する電路」に地絡遮断装置の施設を求めており(乾燥した場所、対地電圧150V以下で水気のある場所以外、二重絶縁、C種・D種接地3Ω以下などの除外あり)、低圧屋内電路すべてに一律で義務づけているわけではない。住宅の主幹ブレーカーにはELCBの設置が現在のスタンダードだ。
アース漏電ブレーカー(感電保護用)
感電保護専用として設計された高感度型(感度電流15mA以下・動作時間0.1秒以内)のELCBだ。一般的なELCBの30mAより感度が高く、感電リスクが高い場所(水気のある場所・屋外設備など)への設置に適している。
| 種類 | 過電流保護 | 漏電保護 | 主な設置場所 |
|---|---|---|---|
| 配線用遮断器(MCCB) | あり | なし | 分電盤の分岐回路 |
| 漏電遮断器(ELCB) | あり | あり(30mA標準) | 主幹・水回り分岐 |
| 高感度形ELCB | あり | あり(15mA以下) | 屋外・水気のある場所 |
型番に並ぶ数値のルール——AF・AT・P・mA・kAを一気に解読
ブレーカのカタログ・銘板には数値が並びます。それぞれ意味とルールが決まっており、この5つを読めれば型番は怖くありません。
| 記号 | 名前 | 意味 | 選び方のルール |
|---|---|---|---|
| AF | フレーム | 器体の大きさ・骨格(50AF・100AF…) | 同じAFなら外形が同じ=盤の取付スペースが決まる |
| AT | 定格電流 | 何アンペアで引き外すか(トリップ値) | 回路の負荷電流より上、電線の許容電流より下 |
| P(極数) | ポール | 遮断する線の数(2P・3P) | 単相100/200Vは2P、三相200Vは3P |
| mA | 感度電流 | 漏電ブレーカが検出する漏れ電流 | 感電防止は高感度30mAが標準。動作時間との組合せで選ぶ |
| kA | 遮断容量 | 短絡(ショート)時に安全に切れる限界電流 | 設置点の短絡電流以上を選ぶ。幹線側ほど大きく |
覚え方のコツ: AFは「服のサイズ」、ATは「ベルトの締め具合」。同じ100AFでも中身のATは50A・75A・100Aと選べます。だから型番は「AF(器体)を決めてからAT(トリップ値)を選ぶ」の順で読みます。
ありがちな誤解:
- 「ATが大きいほど安全」→ 逆です。ATは電線を守るための上限。大きすぎると電線が先に焼けます(電線の許容電流はVVFガイド・CVガイド参照)
- 「感度電流はとにかく小さく」→ 小さすぎると正常な漏れでも切れて不便(不要動作)。用途に応じた標準値を使います
- 「kA(遮断容量)は気にしなくていい」→ 幹線・受電に近い盤では要注意。不足すると短絡時にブレーカ自体が壊れます
容量(AT)の計算方法——基本の選定式
ブレーカーのAT選定で最もよく参照される基本式は内線規程(JEAC 8001)に基づく計算だ。
一般負荷(電熱器・照明・コンセント)の場合
ブレーカーAT ≥ 負荷電流(A)× 1.25
例:合計負荷12Aの回路 → 12 × 1.25 = 15A → 15ATを選定
電熱器や照明器具は起動電流が定格電流と同等なので、この計算式がそのまま使える。
電動機(モーター)が含まれる場合
モーターは始動時に定格電流の4〜8倍程度(大形の高圧機では6〜10倍とする資料もある)の始動電流が流れる。通常のMCCBでは始動電流でトリップする可能性があるため、電動機保護兼用ブレーカー(始動電流に対して不動作・運転電流に対して保護動作する品種)を選ぶ。
選定基準は「電動機の定格電流の1.0〜1.25倍のAT」かつ「始動電流でトリップしない電動機保護特性の品種」。各メーカーの選定ガイド(Tempearl・日東工業など)に対応表が公開されているため必ず確認する。
AT選定のまとめ表
| 負荷合計(A) | 計算値(×1.25) | 選定AT |
|---|---|---|
| 8A | 10A | 10AT |
| 12A | 15A | 15AT |
| 16A | 20A | 20AT |
| 24A | 30A | 30AT |
| 40A | 50A | 50AT |
ブレーカーのATは規格値(10・15・20・30・40・50・60・75・100AT等)から計算値以上の最小規格を選ぶ。
単相3線式 vs 三相3線式での選び方
単相3線式(住宅・小規模建物)
単相3線式は赤・白(中性線)・黒の3線で100Vと200Vを取り出す方式だ。住宅で最も一般的な電源方式。
- 主幹ブレーカー:3P2E(3極2素子)のELCB → 単相3線式は赤・白・黒の3線を開閉するため3極。中性線欠相保護機能付きが推奨
- 分岐ブレーカー:2P1E(2極1素子)のMCCBまたはELCB → 100V分岐は2P1E、200V分岐(エアコン等)は2P2E
注意点: 単相3線式の主幹には中性線欠相保護機能付きを選ぶこと。中性線が断線すると電圧不平衡が生じ、機器が過電圧で焼損する危険がある。
三相3線式(工場・動力設備)
三相3線式(200V)は工場や大型建物の動力設備(コンプレッサー・エレベーター等)に使用される。
- 主幹:3P3E(3極3素子)のELCB
- 動力分岐:3P3EのMCCBまたは電動機保護兼用ブレーカー
- 単相用2極ブレーカーは絶対に使用しない(3線を適切に遮断できない)
主要メーカーの品種と特徴
Tempearl(テンパール工業)
住宅用分電盤向けブレーカーで国内シェアの高いメーカーだ。「Gシリーズ」「Eシリーズ」など住宅用コンパクト設計の品種が充実している。中性線欠相保護付き主幹ブレーカーの品揃えが豊富で、住宅・低圧施設向けの標準的な選択肢となっている。
日東工業(Nitto Kogyo)
制御盤・分電盤本体の製造で強みを持つメーカーだが、ブレーカー単体でもMCCBラインナップが充実している。ボックスとブレーカーを同一メーカーで揃えられるため、盤更新工事での採用例が多い。
Panasonic(パナソニック)
住宅用から産業用まで幅広い品種をカバー。「コスモパネル」シリーズは住宅分電盤の主幹・分岐ともに一体提案できるラインナップだ。電設資材の全国流通網が整備されており、急な差し替えにも対応しやすい。
現場の選定チェックリスト
ブレーカーを選ぶ際に現場で確認すべき項目:
- 電源方式の確認 → 単相2線・単相3線・三相3線のどれか
- 負荷電流の計算 → 接続機器の定格電流を合計してAT計算
- 保護機能の要否 → 漏電保護が必要か(水回り・屋外・主幹)
- 極数の確認 → 2P1E・2P2E・3P3Eのどれか
- フレームサイズ(AF)の確認 → 交換品は既存品のAFと一致させる
- 電動機の有無 → 電動機保護兼用品かどうかの選択
- 設置環境 → 屋内・屋外・腐食環境(防水・防塵クラスの確認)
負荷電流の実測にはクランプメーターが必須だ。既存回路の実負荷を計測してからブレーカーを選定することで過不足のない設計ができる。
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電材サーチでブレーカーの品種を一覧から絞り込み、まとめて見積もり依頼ができます。
どう注文するか——失敗しない発注のしかた
例: 「三菱 NF63-CV 3P 40A を 2個」
「漏電ブレーカ 2P 20A 感度30mA(メーカー指定なし)を 5個」
「(銘板写真から)この廃番ブレーカの後継品を照合してほしい」
- 「AF/AT・極数・漏電の有無・感度電流」まで書くと一発で通ります
- メーカー指定がなければ、三菱・富士・パナソニック等の在庫のある定番から手配します(メーカー比較はこちら)
- 既設更新は銘板写真が最速です。廃番世代からの後継照合も承ります
- 型番がわかれば型番検索から見積リストへ追加できます
よくある質問
20AブレーカーにMaxどれくらいの機器が繋げますか?
ブレーカー定格の80%以下を目安に使用するのが安全な実務基準です。20Aブレーカーの場合、連続使用は16A(20A×0.8)以下に抑えることを推奨します。100Vの場合は1,600W程度が目安です。電子レンジ(1,200〜1,500W)や電気ケトル(1,000〜1,300W)のような大電流機器は、単独の専用回路(20A)を設けるのが基本です。
漏電ブレーカーはどこに付けますか?
建物の引き込み口に近い主幹(メインブレーカー)位置に設置するのが基本です。電技解釈第36条は「金属製外箱を有する使用電圧が60Vを超える低圧の機械器具に接続する電路」に地絡遮断装置の施設を求めています(除外規定が多数あり、低圧屋内電路すべてに一律の義務ではありません)。住宅では分電盤の主幹として設置します。工場・ビルでは低圧幹線の引込口付近、および水気のある場所・絶縁不良が起こりやすい回路ごとに設置します。
配線用遮断器(MCCB)と漏電遮断器(ELCB)は同じ場所に使えますか?
目的が異なるため、用途に応じて使い分けます。MCCBは過負荷・短絡から電路を保護する機器で、漏電は検出しません。ELCBはMCCBの機能に加えて漏電を検出してトリップする機能を持ちます。住宅の主幹ブレーカーはELCBが標準です。水回り(キッチン・洗面所・浴室)の分岐にはELCBを用いることを推奨します。
ブレーカーの「AT」と「AF」の違いは何ですか?
ATはAmpere Trip(トリップ電流)の略で、ブレーカーが動作(トリップ)する電流値です。AFはAmpere Frame(フレームサイズ)の略で、ブレーカー本体の物理的な大きさ・最大定格を示します。例えば「100AF/60AT」はフレームサイズ100Aの筐体に60Aトリップの設定で組み込まれているという意味です。交換時はATだけでなくAFも一致させる必要があります。
三相3線式の動力回路にはどのブレーカーを選べばよいですか?
三相3線式(200V動力)には3極の配線用遮断器(3P-MCCB)または3極の漏電遮断器(3P-ELCB)を使用します。単相用の2極品では3線を適切に遮断できません。モーターが含まれる場合は電動機保護兼用ブレーカーを選び、メーカー選定表で対応する定格電流のAT品を確認してください。
ブレーカーの容量はどうやって計算しますか?
基本式は「負荷電流(A)×1.25倍以上」がブレーカーのAT選定の基準です(内線規程 JEAC 8001)。例えば合計負荷が12Aなら12×1.25=15A以上のATを選定します。電動機が含まれる回路は始動電流の影響があるため、電動機保護兼用品の選定基準(メーカー選定ガイド参照)を使います。
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