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盤のブレーカーを交換しようと銘板を見ると、「3P 50AF 30A」「30mA」「2.5kA」といった数字が並んでいます。同じ数字の新品を選べば済みそうに見えます。ところが実際には、漏電遮断器なのに過電流を守らない品種(OCなし)があり、同じ30Aでも遮断容量(kA)が足りない品種があります。
もう一つ、現場でよく聞くのが「負荷電流に1.25を掛けてブレーカーを決める」という覚え方です。この1.25は、どこから来たのか。電気設備の技術基準の解釈に答えがありますが、条文が1.25倍を求めている相手は、ブレーカーではありません。
配線用遮断器と漏電遮断器の違いは、守る対象です
「ブレーカー」は配線用遮断器と漏電遮断器を含む呼び名です。違いは保護する対象で、配線用遮断器は過負荷・短絡を、漏電遮断器は漏電を検出して遮断します。漏電遮断器のうちOC付は過負荷・短絡も保護し、OCなしは漏電の保護だけです。
| 種類 | 過負荷・短絡保護 | 漏電保護 | 選ぶときに照合する項目 |
|---|---|---|---|
| 配線用遮断器(MCCB) | あり | なし | 電源方式・定格電流・動作特性・遮断容量 |
| 漏電遮断器(OC付) | あり | あり | 上記に加え感度電流・動作時間 |
| 漏電遮断器(OCなし) | なし | あり | 別に設ける過電流保護との組み合わせ |
テンパール工業のFAQによると、OCは「Over Current」の略で、一般の漏電遮断器の大部分はOC付です。同社の型式では、GB-で始まるものがOC付、GT-で始まるものがOCなしです。同じ「漏電遮断器」でも、型式のわずかな違いで守る範囲が変わります。
漏電の検出は、電流の大きさではなく差を見ています。オムロンの技術解説は、電路の電流は単相でも三相でも行きと帰りが同じで、地絡が起きると大地に流れる分だけ差ができ、それを零相変流器(ZCT)で捉えると説明し、低圧の漏電ブレーカもこの原理だとしています。過電流の検出とは別の仕組みなので、感度電流が小さい製品ほど過電流にも強い、ということにはなりません。
古い住宅の主幹は、OCなしの場合がある
パナソニックのQ&Aによると、住宅の主幹ブレーカーをOC付とする規定は、内線規程で1995年に「望ましい」、2000年に「とすること」になりました。単相3線式の中性線欠相保護も、1990年の推奨から1992年に原則、2005年に義務へと進んでいます。築年数の古い盤では、主幹の漏電遮断器が過電流を守らない品種のまま、という可能性を最初に確かめます。
中性線欠相保護が要る理由は、テンパール工業のFAQの計算例が分かりやすいです。L1–Nに40W、L2–Nに100Wの機器がつながった状態で中性線が切れると、2台が200Vを分け合い、40Wの機器に143V、100Wの機器に57Vがかかります。パナソニックの主幹用は、この異常電圧を130V±5Vで検出し、0.5秒以内に遮断します。
銘板のAF・AT・P・E・mA・kAは何を表すのか
| 記号 | 名前 | 意味 | 選ぶときの注意 |
|---|---|---|---|
| AF | フレーム | 同じ外形でつくれる最大の定格電流 | 同じAFでも外形・端子・取付寸法はメーカーと製品ごとに確認 |
| AT | 定格電流 | 支障なく連続して流せる最大の電流 | 定格電流ちょうどで切れる設計ではない(後述) |
| P | 極数(Pole) | 電線をつなぐ極の数 | 単相2線・単相3線・三相3線を区別 |
| E | 素子数(Element) | 過電流を検出する素子の数 | 100V分岐は2P1E、200V分岐は2P2E |
| mA | 定格感度電流 | 漏電遮断器が動作する漏れ電流 | 動作時間(高速形0.1秒以内・時延形)と組で選ぶ |
| kA | 定格遮断容量 | 短絡電流を、接点の溶着や破壊なしに遮断できる限度 | 設置点の短絡電流以上を選ぶ |
AFについて、JIS C 8201-2-1はフレームサイズを「物理的外形寸法がある範囲の定格電流に対して共通」なグループとし、「寸法的標準化を意味するものではない」と注記しています(テンパール工業のFAQによる)。50AFどうしでも、他社品と穴位置が合うとは限りません。
遮断容量の表示は、かつての「RC」(Rupturing Capacity)から、JIS C 8201-1で定義された「BC」(Breaking Capacity)に変わっています。古い銘板のRCも新しいカタログのBCも、定格遮断容量を示す表示です。表示が変わったのは準拠する規格が変わったためで、旧品と後継品のkAを比べるときは、どの規格の値かをメーカーの資料で確認します。
もう一つ紛らわしいのが電圧です。テンパール工業のFAQでは、配線用遮断器B-53ECの銘板に、JISの表示として定格使用電圧415V、電気用品安全法の表示としてAC220Vが並びます。電気用品安全法の対象範囲が300V以下のため、415Vで使える品種でも220Vと書く、という説明です。
一段深い理解:「負荷電流×1.25」は、もともと電線の太さの規定です
冒頭の1.25倍は、電気設備の技術基準の解釈 第148条(低圧幹線の施設)に出てきます。幹線につながる電動機等の定格電流の合計が、ほかの機器の合計より大きいとき、電線の許容電流を、電動機等の合計の1.25倍(合計50A以下の場合)または1.1倍(50Aを超える場合)にほかの機器の合計を加えた値以上にする、という規定です。対象は電線で、ブレーカーではありません。
ブレーカー側の規定は同じ条の別の号にあります。幹線を保護する過電流遮断器の定格電流は、原則として電線の許容電流以下です。電動機等がつながる場合だけ、電動機等の定格電流の合計の3倍にほかの機器の合計を加えた値以下、かつ電線の許容電流の2.5倍以下まで認められます。始動電流で切れないようにするための緩和です。
計算例で並べると違いがはっきりします。電動機だけの幹線で、定格電流の合計が20Aなら、電線の許容電流は25A以上(20×1.25)。過電流遮断器は、原則は電線の許容電流以下で、電動機があるため最大で60A(20×3)、ただし電線の許容電流の2.5倍以下までになります。実際の定格は、ここからメーカーの選定表と始動特性で詰めます。
つまり、条文の1.25倍は電線の太さを決める係数で、ブレーカーの定格を決める係数ではありません。ATを大きくすれば安全、でもありません。電動機の緩和が当てはまらない回路で電線の許容電流を超えるATを付ければ、過負荷のとき、ブレーカーより先に電線が熱を持ちます。
一段深い理解:ブレーカーは、定格電流ちょうどでは切れない設計です
三菱電機のFAQは、遮断器の定格電流を「遮断器に支障なく連続通電可能な最大電流値」と説明しています。20Aのブレーカーは、20Aを流し続けるための器具です。切れるのはその先です。
どこまで先かは、法令にも数字があります。電技解釈 第33条第3項は、電気用品安全法の対象外の配線用遮断器に、定格電流の1倍の電流では自動的に動作しないこと、1.25倍と2倍の電流では決められた時間内に動作することを求めています。小容量で電気用品安全法の対象になる品種は、同法の技術基準で別に定められています。
| 定格電流の区分 | 1.25倍の電流での動作時間 | 2倍の電流での動作時間 |
|---|---|---|
| 30A以下 | 60分以内 | 2分以内 |
| 30Aを超え50A以下 | 60分以内 | 4分以内 |
| 50Aを超え100A以下 | 120分以内 | 6分以内 |
| 100Aを超え225A以下 | 120分以内 | 8分以内 |
メーカーの動作特性曲線は、この範囲を製品ごとに細かく示したものです。三菱電機のFAQによると、曲線は製造上のばらつきを含めて最小と最大の2本で描かれ、その間で動作することを保証しています。負荷の始動で不要に切れないかは最小の曲線、負荷の保護や上位との協調は最大の曲線で見ます。
同じ第33条のヒューズの基準は、定格電流の1.1倍に耐え、1.6倍で60分以内(30A以下)に溶断すること。過負荷への反応の基準はブレーカーより緩く、第149条の表でも、20Aの配線用遮断器なら直径1.6mmの電線でよいのに対し、20Aのヒューズ(配線用遮断器以外)には直径2mmが求められています。
温度でも動作は変わります。テンパール工業のFAQは、ブレーカーの使用温度範囲をJIS規格により−5〜40℃、24時間の平均は35℃以下としています。熱動式(バイメタル)は高温の盤内で自然に遮断することがあるため、密閉盤では換気や冷却が必要だと書かれています。
動作の時間と電流の関係はトリップカーブの読み方、連続使用の考え方は80%ルールの解説で詳しく扱っています。
遮断容量(kA)は、設置する場所で必要な値が変わります
電技解釈 第33条第1項は、低圧の過電流遮断器に「施設する箇所を通過する短絡電流を遮断する能力」を求めています。パナソニックの用語解説によると、短絡電流は、変圧器の容量が大きいほど、変圧器に近いほど、電線が太いほど大きくなります。末端の分岐より、変圧器に近い主幹の方が大きなkAを要求される理由です。
住宅用でも差があります。テンパール工業の住宅用分電盤の構成例では、分岐ブレーカーは2.5kA、単3中性線欠相保護付の主幹は30Aが2.5kA、40A以上が5kAです。工場や受電設備に近い盤では、さらに大きな値が必要になることがあります。
想定例として、廃番の主幹を後継品に替えるとき、ATとAFだけを合わせて発注し、kAを照合しなかったとします。後継候補のkAが設置点の短絡電流を下回っていれば、短絡時にブレーカー自体が遮断しきれず、保護になりません。逆に、AT・AF・kAを一律に大きくすれば済むわけでもなく、電線保護・定格電圧・動作特性・端子と取付寸法まで照合します。
漏電遮断器は、感度と動作時間を組で選びます
テンパール工業のFAQは、感電防止には「高速高感度形漏電遮断器30mA、0.1秒以下」が経済的で安全な方法だとし、計算例を示しています。電源電圧100Vの機器で漏電が起きたとき、漏電遮断器がなければ機器のケースは約90Vになり、30mA感度の漏電遮断器があれば接触電圧は3V以下に抑えられる、というものです。
法令でも、労働安全衛生規則 第333条は、対地電圧が150Vを超える移動式・可搬式の電動機械器具や、水などで濡れた場所・鉄板上など導電性の高い場所で使う移動式・可搬式のものに、感電防止用漏電しゃ断装置の接続を求めています。
主幹と分岐の両方に漏電遮断器を付けるときは、動作時間の組み合わせで結果が決まります。テンパール工業のFAQでは、動作時間が同じなら、感度電流が違っても主幹と分岐のどちらが先に切れるかは特定できないとしています。分岐を先に切りたい場合は、分岐を15mAか30mAの高速形(0.1秒以内)、主幹を100mAの中感度・時延形(0.3秒、最大動作時間0.45秒)にする組み合わせが示されています。設計の失敗例は保護協調の解説にまとめています。
インバーターのある回路は別扱いです。同じFAQは、インバーターの2次側(モーター側)に漏電遮断器も配線用遮断器も設置しないこと、1次側の遮断器は2次側電流の1.4倍以上の定格電流で選ぶことを挙げています。1次側の実効電流は2次側の最大1.5倍、平均1.3倍になるためです。ノイズフィルタがある場合は、100mA・200mA・500mAといった感度の鈍い品種を選ぶよう書かれています。
既設品を交換する前に照合する5項目
- 電源方式:単相2線・単相3線・三相3線のどれか。極数と素子数(100V分岐は2P1E、200V分岐は2P2E、三相は3P)。
- 保護機能:配線用遮断器か、漏電遮断器のOC付かOCなしか。
- 定格電流と電線:負荷電流・電線の許容電流・電動機の始動特性を、メーカーの選定表で照合。
- 遮断容量(kA):設置点の短絡電流以上か。後継品が旧品と同じ値とは限らない。
- 取付と環境:外形・取付穴・端子寸法、周囲温度、取付方向。
住宅の主幹を漏電遮断器から配線用遮断器に替える場合は、分岐をすべて漏電遮断器にする必要があります(パナソニックのQ&A、内線規程)。取付方向は、テンパール工業のFAQによると熱動式・熱動電磁式なら向きを問わず、完全電磁形は鉛直面以外に付けると引外し特性が変わります。
使用年数の目安は、テンパール工業のFAQが引く日本電機工業会(JEMA)の調査で、産業用の配線用遮断器・漏電遮断器が使用開始後15年、住宅用分電盤の遮断器が製造後13年です。保証値ではなく、交換した方が経済性を含めて有利と考えられる時期という位置づけです。劣化のサインは経年劣化と交換時期の解説を参照してください。
負荷電流の実測値だけでは、始動時や故障時の保護は判断できません。盤を開けて行う測定・交換は、資格と知識を持つ施工担当者へ依頼してください。
問い合わせ・発注のときに伝える情報
例: 「三菱 NF63-CV 3P 40A を 2個」
「漏電ブレーカ 2P 20A 感度30mA(メーカー指定なし)を 5個」
- 型番が分からない場合は、AF/AT・極数と素子数・漏電の有無・OC付かOCなし・感度電流・遮断容量を添えます
- 既設更新では、銘板の写真と盤の型式があると照合の手がかりになります
- 型番が分かれば型番検索から見積リストへ追加できます
関連情報
- テンパール工業・日東工業・パナソニックの掲載情報(正式型番の資料で適合を照合してください)
- 用語:配線用遮断器/漏電遮断器
- 地絡とは?漏電との違い/モーター始動でブレーカーが落ちるとき
- JIS C 8201-2-1(配線用遮断器の規格)
- 電線の許容電流:VVFケーブル・CVケーブル
- 三菱電機・富士電機・オムロンの制御機器の比較
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