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配電理論及び配線設計 ・ 7 / 7

分岐回路の保護 — 3m・8m・35%・55%の地図

読み終えると、こうなる

遮断器を置いてよい距離が電線の太さで決まる理由を、現場の検査結果からその場で判定できるようになる

  • 35%・55%の分母が幹線の許容電流ではなく幹線を保護する遮断器の定格電流だと確認してから計算に入れる
  • 距離が8mの前後どちらかを見極め、3m以下・8m以下・距離制限なしの3区分のどこに入るかを先に言葉にできる
  • 「この電線なら何mまで離せるか」「この距離なら太さはいくら必要か」のどちらの向きで聞かれても、遮断器定格×0.35と×0.55の2つの基準値から同じ手順で答えを導ける
考えてみよう

事務所ビルの改修現場。同じ低圧幹線から、2本の電線が分岐している。行き先はどちらも、分岐点から7.5m先に新設した小さな盤で、そこに過電流遮断器(ブレーカー)を取り付ける設計だ。距離も経路もほぼ同じ、図面の上ではそっくりの2本。ところが検査で、片方はそのまま通り、もう片方だけ「遮断器を分岐点から3m以内に移すか、電線を太くすること」と指摘された。

2本の違いはただひとつ、電線の太さだけ。遮断器を置いてよい場所が、電線の太さで決まるのはなぜか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、7.5mという距離の合否を、電線の許容電流から自分で判定できるようになっている。

幹線は建物の電気の幹であり、幹線そのものは幹線用の過電流遮断器が守っている。問題は、幹から枝を出した瞬間に始まる。枝——分岐回路へ向かう電線——は、幹線より細いのが普通だ。そして細い枝は、幹線用の大きな遮断器では守れない。

たとえば定格100Aの遮断器で保護された幹線から、許容電流27Aの細い電線を分岐したとする。この枝に40Aが流れ続けたら、許容電流のトピックで見たとおり、被覆は温度の限界を超えてじわじわ劣化していく。ところが幹線の遮断器にとって40Aはただの正常な電流で、落ちる理由がない。親は大物すぎて、子の悲鳴が聞こえないのだ。

だから枝には、枝の細さに見合った専用の過電流遮断器が要る。これが分岐回路の3点セットで見た分岐用ブレーカーだ。本トピックの主役は、その遮断器を「どこに置くか」である。電技解釈第149条はこう定めている。

低圧幹線との分岐点から、電線の長さで3m以下の箇所に過電流遮断器を施設すること(通常は配線用遮断器を使うので、回路を切る開閉器の役割も同時に果たす)。

分岐点から遮断器までの区間は、幹線の遮断器にも分岐用の遮断器にも守られていない、いわば無保護区間だ。原則は「その区間をできる限り短く」。3mというのは、分電盤の近くで配線を取り回すのに必要な、ぎりぎりの遊びである。

太い枝は、親でも守れる

ところが第149条には続きがある。分岐する電線の許容電流が一定以上なら、3mを超えた場所に遮断器を置いてよい。

分岐する電線の許容電流過電流遮断器を置ける位置
下の2条件に満たない分岐点から3m以下(原則)
幹線を保護する過電流遮断器の定格電流の35%以上分岐点から8m以下
同じく55%以上距離の制限なし
低圧幹線(幹線を保護する過電流遮断器の定格100Aの例) 100A 3m以内 遮断器 8m以内 遮断器 距離の制限なし 遮断器 許容電流35A未満 原則どおり3m以内 定格の35%(35A)以上 8m以内まで延ばせる 定格の55%(55A)以上 どこに置いてもよい =どの遮断器にも守られていない「無保護区間」

なぜ太さで距離が変わるのか。枝が十分に太ければ——幹線の遮断器の定格電流の55%以上を流せる体力があれば——その枝は、親の遮断器でも守れる範囲に入ってくる。過大な電流が流れたとき、枝が熱で壊れる前に親の遮断器が動作する見込みが立つ。つまりこの枝には、そもそも無保護区間が存在しない。だから距離を制限する理由も消える。35%以上・8m以下はその中間の線引きで、親の保護が完全には届かないぶん、区間の長さを8mまでに限って釣り合いを取っている。

3m・8mという数字は、距離の規制の顔をした太さの規制だ。第149条が本当に測っているのは、分岐した電線が「幹線の遮断器に守ってもらえるだけの太さ」を持っているかどうか。守り手のいない区間は3mまでしか許されず、親が守れる太さの枝なら、どこまで伸ばしてもいい。

注意したいのは割合の分母だ。35%・55%は、幹線の許容電流に対する割合ではなく、幹線を保護する過電流遮断器の定格電流に対する割合である。守れるかどうかを決めるのは遮断器の感度だから、比べる相手も遮断器の定格になる。試験のひっかけは、たいていここに仕込まれる。

計算はかけ算1回で済む。定格100Aなら、35%は35A、55%は55A。分岐する電線の許容電流をこの2つの数字と見比べて、3m・8m・無制限のどこに入るかを読むだけだ。電線の太さから許容電流を引くには、許容電流のトピックの表がそのまま使える。

「盤を増やしたい」の相談は、太さと距離の交換から始まる

工場に機械を1台増やす、テナントの奥に分電盤を足す、駐車場の照明用に小さな盤を置く——既設の幹線から分岐して新しい盤へつなぐ仕事では、この地図がそのまま設計の入口になる。分岐点の近くに遮断器を置けるなら電線は細くて済む。遠くに置きたいなら、8m以内に収めて35%の太さを用意するか、55%まで太くして距離の制限を外すか。太さと距離を交換するこの感覚は、配線ルートと電線サイズを見積もりの段階で同時に決めていく、実務の骨格そのものだ。

今日確かめられることもある。ビルや工場で、大きな分電盤のすぐ脇に小さなボックスが寄り添うように付いていたら、中身はたいてい分岐用の遮断器で、分岐点からの距離は驚くほど短いはずだ。3mという数字を知ってから見ると、盤の配置が「規定に合わせて寄せてある」ことに気づく。この線引きは、遮断器のない裸の区間で電線が焼けてきた事故の歴史の上に引かれたものであり、EV充電器のように駐車場の遠端へ新しい負荷を伸ばす仕事が増えるこれからは、8m・55%の側の出番もいっしょに増えていく。

冒頭の2本の電線に検査で下された判定の答え合わせは、理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 35%・55%の分母を、幹線を保護する過電流遮断器の定格電流ではなく「幹線の許容電流」にすり替える

    なぜ引っかかる条文が定めているのは「幹線を保護する過電流遮断器の定格電流」に対する割合だ。ところが話の主役が電線の許容電流なので、比べる相手も電線の許容電流だと思い込みやすい。幹線の許容電流と遮断器の定格は必ずしも同じ数字ではないため、分母を取り違えると答えが変わる。

    見破り方計算の前に、問題文から遮断器の定格電流(100A、60Aなどと明示されている)を抜き出して丸で囲み、その値に0.35と0.55を掛けた2つの数字を先に書き出す。守れるかどうかを決めるのは遮断器の感度だから、比べる相手も遮断器の定格になる、と理由ごと持っておく。

  2. 距離を8mの前後にわずかにずらし、35%と55%のどちらを使うかを判定させる

    なぜ引っかかる「分岐点から7mの位置に」「10mの位置に」というように、8mの境界の前後を狙って出題される。8m以下なら35%、8mを超えれば距離の制限なしの条件、すなわち55%が必要になる。7mと10mでは必要な許容電流が大きく変わるのに、条文を「3mか8mか」という距離の話としてだけ覚えていると、割合の側の切り替えに気づけない。

    見破り方距離を見たら、まず3つの区分のどこに入るかを言葉にする。3m以下なら条件なし、3m超8m以下なら35%以上、8m超なら55%以上。8mちょうどは「8m以下」に含まれるので35%側だ、という境界の扱いまで決めておく。

  3. 太さから距離を求める向きと、距離から太さを求める向きを入れ替える

    なぜ引っかかる同じ条文が「この電線なら遮断器を何mまで離せるか」という問いにも、「この距離なら電線の許容電流は最低いくら必要か」という問いにもなる。過去問には両方の向きが存在し、片方の解き方だけを手順として覚えていると、逆から問われたときに手が止まる。

    見破り方向きにかかわらず、最初にやることは同じだ。遮断器の定格に0.35と0.55を掛けた2つの基準値を書き出す。そのうえで、電線の許容電流がその2つのどこに位置するかを見れば置ける距離が決まり、距離が先に与えられていれば、どちらの基準値を満たすべきかが決まる。

参考文献・出典

理解度チェック(6問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、6問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用2問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 6 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 低圧幹線から分岐した電線には、分岐点から電線の長さで3m以下の箇所に過電流遮断器を施設するのが原則(電技解釈第149条)
  2. 分岐した電線の許容電流が、幹線を保護する過電流遮断器の定格電流の35%以上あれば、分岐点から8m以下の箇所に施設できる
  3. 55%以上あれば、距離の制限なくどこにでも施設できる
  4. 35%・55%の分母は幹線の許容電流ではなく「幹線を保護する過電流遮断器の定格電流」。ここの取り違えが定番のひっかけ
  5. 分岐点から遮断器までは、どの遮断器にも守られていない無保護区間。電線が太いほど幹線の遮断器が代わりに守れるため、許される距離が延びる
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