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配電理論及び配線設計 ・ 4 / 7

電線・コードの許容電流と電流減少係数

読み終えると、こうなる

電線の許容電流という数字が、電流の限界ではなく被覆の温度の限界を翻訳したものだと見抜けるようになる

  • 電線管の中の本数を数えるとき接地線を除いて数え、0.70と0.63の境界を1本違いで取り違えずに判定できる
  • 35×0.70=24.5のような計算結果を、四捨五入ではなく7捨8入で丸めて24Aと出せる
  • 問題文の単位が〔mm〕か〔mm²〕かを先に確認し、単線とより線の表を正しく選べる
考えてみよう

分電盤の改修現場で、先輩の電気工事士が図面を見ながら言った。「この金属管はIVが3本通っているから、2.0mmでも24Aまでしか見られないぞ」。

手元の参考書には、直径2.0mmのIV電線の許容電流は35Aと書いてある。同じメーカーの、同じ太さの、同じ電線だ。切ったわけでも傷んだわけでもないのに、管に入れた瞬間、流してよい電流が3割も減るという。電線の何が変わったのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、24Aという数字を自分で計算して出せるようになっている。

種明かしの前に、そもそも「許容電流」とは何の限界なのかから始めたい。

電線に電流を流すと、電線自身の抵抗によってジュール熱が発生する(電線の抵抗で見たとおりだ)。銅線そのものは1000℃を超えても溶けないが、その周りを包む絶縁被覆はそうはいかない。IV電線やVVFケーブルに使われるビニル被覆の最高許容温度は60℃。ここを超えて使い続けると被覆が軟化・劣化し、絶縁が壊れて短絡や漏電につながる。

つまり許容電流とは、「被覆が温度の限界に達しない範囲で流せる電流の上限」だ。電流の表に見えて、正体は温度の表である。

内線規程(JEAC 8001)に基づく標準値は次のとおり(周囲温度30℃以下)。

IV電線(単線)の直径許容電流
1.6mm27A
2.0mm35A
2.6mm48A
3.2mm62A
IV電線(より線)の断面積許容電流
2mm²27A
3.5mm²37A
5.5mm²49A
8mm²61A

太いほど多く流せるのは、断面積が増えるほど抵抗が下がって発熱そのものが減り、同時に表面積が増えて放熱も有利になるからだ。1.6mm単線とより線2mm²が同じ27Aなのは、断面積がほぼ同じ(1.6mmの断面積は約2mm²)だからで、表を丸暗記する前にこの対応に気づいておくと覚える量が半分になる。

管に入れた瞬間、数字が減る

冒頭の謎の核心がここだ。電線を電線管や線ぴに複数本まとめて収めると、1本1本が発した熱が互いを温め合い、管の中に熱がこもる。放熱条件が悪くなった分、被覆が60℃に達するまでの余裕が減る。そこで、収める本数に応じて許容電流に電流減少係数を掛ける。

同一管内の電線数電流減少係数
3本以下0.70
4本0.63
5〜6本0.56
7〜15本0.49

このとき、常時電流が流れない接地線(緑)は本数に数えない。計算値の端数は小数点以下1位を「7捨8入」する(0.7以下は切り捨て、0.8以上は切り上げ)。たとえば1.6mmを3本なら 27×0.70=18.9→19A。学科試験の許容電流の問題は、この「表の値×係数、端数は7捨8入」だけで解ける。

許容電流の表は、電流の表ではなく温度の表だ。27Aや35Aという数字は「この放熱条件なら被覆が60℃に達しない」という条件付きの翻訳にすぎない。だから電線が同じでも、置かれた環境(管の中、周囲温度、隣り合う本数)が変われば数字のほうが動く。VVFケーブルの許容電流がIV単体より小さめに扱われるのも、シースの中に心線が束ねられている=最初から「3本以下をまとめた状態」だからだ。

コードはもっと細い。だから数字も小さい

器具に付いているコード(ビニルコード・ゴムコード)は、屋内配線用の電線よりずっと細い。許容電流もそのぶん小さい。

コードの公称断面積許容電流
0.75mm²7A
1.25mm²12A
2mm²17A

100Vで考えると、0.75mm²のコードに安全につなげる器具は P=VI=100×7=700W まで。1200Wの電気ストーブを細い延長コードで使ってはいけない理由が、この表から直接読み取れる。試験でも、コードの太さを示して、そこにつないでよい器具の消費電力の上限を答えさせる形が繰り返し出題される。

電源タップの裏の「1500Wまで」は、この表から来ている

家にある電源タップやテーブルタップを裏返すと、「15A・125V」「合計1500Wまで」と刻まれている。今日確かめられるのはこれだ。この1500Wという数字は誰かが適当に決めた目安ではなく、内部配線とコードの許容電流から逆算された温度の限界であり、今日見た表の親戚にあたる。ドラム式コードリールが「巻いたまま使うとき」と「全部引き出したとき」で上限を分けて表示しているのも、電流減少係数とまったく同じ「熱のこもり」の理屈だ。知ってから見回すと、身の回りの電気製品の注意書きが、ぜんぶ放熱の言葉で書かれていることに気づく。

この数表が内線規程として整備されているのは、被覆の溶けた電線が引き起こしてきた火災の積み重ねの上に、「ここまでなら熱が逃げ切れる」という線を引き直してきた歴史があるからだ。そしてこの知識の出番はこれから増える。EV充電器は数十Aを何時間も流し続ける設備で、瞬間の大電流より「連続通電で熱が平衡するか」が問われる。許容電流の考え方はまさにその問いに答えるための道具であり、太さの選定は許容電流早見ツール、実務の落とし穴は電流減少係数の解説記事でそのまま試せる。

冒頭の「2.0mmなのに24A」がどう計算されていたのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 同一管内の電線本数を1本ずらし、0.70と0.63の境界をまたがせる

    なぜ引っかかる電流減少係数は3本以下が0.70で、4本になった瞬間0.63に落ちる。この境目にちょうど問題を置いてくるうえ、接地線を1本足して本数を水増しした問い方もある。接地線は常時電流が流れないため本数に数えないので、これを数えると係数が1段小さくなり、答えが変わってしまう。

    見破り方本数を数える前に、接地線(緑)を指で除ける。残った電線の本数だけで表を引く。3本と4本では係数が0.07も違うので、境界の1本を数え違えると必ず別の選択肢に着地する。

  2. 計算値の端数を、四捨五入すると1A違う値になるように作ってある

    なぜ引っかかる許容電流の端数処理は四捨五入ではなく、小数点以下1位の7捨8入(0.7以下は切り捨て、0.8以上は切り上げ)と決まっている。35×0.70=24.5は四捨五入なら25Aだが、正解は24A。一方で 27×0.70=18.9→19A は四捨五入と結果が一致してしまうため、ルールが違うことに気づかないまま通過してしまう。

    見破り方掛け算の結果に小数が出たら、7捨8入と唱えてから丸める。.5は切り捨て側だ、と具体例(24.5→24A)を1つ持っておけば迷わない。

  3. 単線の直径〔mm〕とより線の断面積〔mm²〕の表を行き来させ、似た数字で取り違えさせる

    なぜ引っかかる許容電流の表は単線(1.6mm=27A、2.0mm=35A、2.6mm=48A)とより線(2mm²=27A、3.5mm²=37A、5.5mm²=49A)の2つがあり、直径〔mm〕で問う年と断面積〔mm²〕で問う年が交互に来る。2.0mmと2mm²のように数字が近い組があるため、どちらの表を引くかを間違えると値が数A狂う。

    見破り方問題文の単位が〔mm〕か〔mm²〕かを最初に丸で囲む。直径なら単線の表、断面積ならより線の表。1.6mm単線と2mm²のより線が同じ27Aなのは断面積がほぼ等しいからで、この1組だけ覚えておくと2つの表の対応関係が見えてくる。

参考文献・出典

理解度チェック(6問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、6問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用2問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 6 問正解

覚えておきたいポイント

  1. IV電線(単線)の許容電流は直径1.6mm=27A、2.0mm=35A、2.6mm=48A(周囲温度30℃以下)。より線は2mm²=27A、3.5mm²=37A、5.5mm²=49A
  2. 電線管などに複数本収めるときは電流減少係数を掛ける。3本以下0.70、4本0.63、5〜6本0.56、7〜15本0.49(接地線は本数に数えない)
  3. コードの許容電流は0.75mm²=7A、1.25mm²=12A、2mm²=17A。100Vなら0.75mm²のコードで使えるのは700Wの器具まで
  4. 許容電流は「絶縁被覆の温度の限界(ビニルは60℃)」を電流に翻訳した数字。同じ電線でも放熱条件が悪くなれば値は下がる
  5. 計算値の端数は小数点以下1位を7捨8入する(35×0.70=24.5→24A、27×0.70=18.9→19A)
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