分電盤の改修現場で、先輩の電気工事士が図面を見ながら言った。「この金属管はIVが3本通っているから、2.0mmでも24Aまでしか見られないぞ」。
手元の参考書には、直径2.0mmのIV電線の許容電流は35Aと書いてある。同じメーカーの、同じ太さの、同じ電線だ。切ったわけでも傷んだわけでもないのに、管に入れた瞬間、流してよい電流が3割も減るという。電線の何が変わったのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、24Aという数字を自分で計算して出せるようになっている。
種明かしの前に、そもそも「許容電流」とは何の限界なのかから始めたい。
電線に電流を流すと、電線自身の抵抗によってジュール熱が発生する(電線の抵抗で見たとおりだ)。銅線そのものは1000℃を超えても溶けないが、その周りを包む絶縁被覆はそうはいかない。IV電線やVVFケーブルに使われるビニル被覆の最高許容温度は60℃。ここを超えて使い続けると被覆が軟化・劣化し、絶縁が壊れて短絡や漏電につながる。
つまり許容電流とは、「被覆が温度の限界に達しない範囲で流せる電流の上限」だ。電流の表に見えて、正体は温度の表である。
内線規程(JEAC 8001)に基づく標準値は次のとおり(周囲温度30℃以下)。
| IV電線(単線)の直径 | 許容電流 |
|---|---|
| 1.6mm | 27A |
| 2.0mm | 35A |
| 2.6mm | 48A |
| 3.2mm | 62A |
| IV電線(より線)の断面積 | 許容電流 |
|---|---|
| 2mm² | 27A |
| 3.5mm² | 37A |
| 5.5mm² | 49A |
| 8mm² | 61A |
太いほど多く流せるのは、断面積が増えるほど抵抗が下がって発熱そのものが減り、同時に表面積が増えて放熱も有利になるからだ。1.6mm単線とより線2mm²が同じ27Aなのは、断面積がほぼ同じ(1.6mmの断面積は約2mm²)だからで、表を丸暗記する前にこの対応に気づいておくと覚える量が半分になる。
管に入れた瞬間、数字が減る
冒頭の謎の核心がここだ。電線を電線管や線ぴに複数本まとめて収めると、1本1本が発した熱が互いを温め合い、管の中に熱がこもる。放熱条件が悪くなった分、被覆が60℃に達するまでの余裕が減る。そこで、収める本数に応じて許容電流に電流減少係数を掛ける。
| 同一管内の電線数 | 電流減少係数 |
|---|---|
| 3本以下 | 0.70 |
| 4本 | 0.63 |
| 5〜6本 | 0.56 |
| 7〜15本 | 0.49 |
このとき、常時電流が流れない接地線(緑)は本数に数えない。計算値の端数は小数点以下1位を「7捨8入」する(0.7以下は切り捨て、0.8以上は切り上げ)。たとえば1.6mmを3本なら 27×0.70=18.9→19A。学科試験の許容電流の問題は、この「表の値×係数、端数は7捨8入」だけで解ける。
コードはもっと細い。だから数字も小さい
器具に付いているコード(ビニルコード・ゴムコード)は、屋内配線用の電線よりずっと細い。許容電流もそのぶん小さい。
| コードの公称断面積 | 許容電流 |
|---|---|
| 0.75mm² | 7A |
| 1.25mm² | 12A |
| 2mm² | 17A |
100Vで考えると、0.75mm²のコードに安全につなげる器具は P=VI=100×7=700W まで。1200Wの電気ストーブを細い延長コードで使ってはいけない理由が、この表から直接読み取れる。試験でも、コードの太さを示して、そこにつないでよい器具の消費電力の上限を答えさせる形が繰り返し出題される。
電源タップの裏の「1500Wまで」は、この表から来ている
家にある電源タップやテーブルタップを裏返すと、「15A・125V」「合計1500Wまで」と刻まれている。今日確かめられるのはこれだ。この1500Wという数字は誰かが適当に決めた目安ではなく、内部配線とコードの許容電流から逆算された温度の限界であり、今日見た表の親戚にあたる。ドラム式コードリールが「巻いたまま使うとき」と「全部引き出したとき」で上限を分けて表示しているのも、電流減少係数とまったく同じ「熱のこもり」の理屈だ。知ってから見回すと、身の回りの電気製品の注意書きが、ぜんぶ放熱の言葉で書かれていることに気づく。
この数表が内線規程として整備されているのは、被覆の溶けた電線が引き起こしてきた火災の積み重ねの上に、「ここまでなら熱が逃げ切れる」という線を引き直してきた歴史があるからだ。そしてこの知識の出番はこれから増える。EV充電器は数十Aを何時間も流し続ける設備で、瞬間の大電流より「連続通電で熱が平衡するか」が問われる。許容電流の考え方はまさにその問いに答えるための道具であり、太さの選定は許容電流早見ツール、実務の落とし穴は電流減少係数の解説記事でそのまま試せる。
冒頭の「2.0mmなのに24A」がどう計算されていたのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。