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電気に関する基礎理論 ・ 7 / 10

電線の抵抗(R=ρL/A)

読み終えると、こうなる

巻いたまま使うと電線がなぜ焦げ臭くなるのか、思い込みではなく理屈でその場で言い当てられるようになる

  • 直径が3倍になった電線の抵抗比を、直径のまま比べず必ず2乗して断面積に直してから求められる
  • 直径〔mm〕と断面積〔mm²〕が混ざった選択肢を、まず断面積に統一してから比較して絞り込める
  • 長さと太さが同時に変わる問題で、R=ρL/Aの分子(長さ)と分母(断面積)を別々に数えてから約分できる
考えてみよう

安いドラム式の延長コードリールを、面倒だからと全部巻いたままコンセントに挿し、消費電力1200W前後の電気ヒーターをつないで使っていた。しばらくすると、コードがだんだん熱くなり、焦げ臭いにおいがしてきた。

電線の材質も長さも太さも、何ひとつ変わっていない。全部伸ばして使ったときと、巻いたまま使ったときとで、流れている電流の大きさも同じはずだ。それなのに、なぜ発熱のしかたがこんなに変わってしまうのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、その理由がはっきり分かるようになっている。

電線の抵抗 RR は、抵抗率 ρ\rho・長さ LL・断面積 AA を使って次のように表される。

R=ρ×LAR = \rho \times \frac{L}{A}

つまり、電線は長くなるほど抵抗が増え、太くなるほど抵抗が減る。

電線を巻いてぐるぐる丸めても、伸ばしてまっすぐにしても、$L$(長さ)も $A$(断面積)も $\rho$(材質)も変わらない。だから、電線そのものの抵抗値 $R$ は、巻いてあるかどうかとは関係なく同じである。

この関係は公式として覚えるより先に、「長い・細い電線ほど抵抗が大きい」という方向性を体で覚えておくとよい。これは電圧降下許容電流の計算の土台になる関係だ。

当サイトの電圧降下計算ツール許容電流早見ツールは、まさにこの関係を使って実際の数値を自動計算している。

抵抗が同じなのに、なぜ発熱が変わるのか

電流が流れている電線には、その抵抗 RR に応じた熱(ジュール熱)が絶えず発生している。電流が流れ続ける限り、この発熱は巻いてあっても伸ばしてあっても同じように起き続ける。

違うのは、発生した熱がどこへ逃げるかだ。電線を伸ばして使えば、熱は表面から空気中へ広く逃げていく。ところがドラム式のコードリールを巻いたまま使うと、電線同士がぎっしり密着した状態になる。一本一本が発した熱がお互いを温め合い、外へ逃げる前にコードの内部にこもってしまう。逃げ場を失った熱は行き場なく蓄積し、電線の温度をじわじわと押し上げ続ける。

一般的には、ドラム式コードリールの多くは「巻いたまま使う場合」と「全部引き出して使う場合」とで、接続できる消費電力(許容電流)の上限が製品ごとに定められている。これは、巻いたままの状態では放熱が悪く、同じ電流でも温度が上がりやすいことが理由とされている。実際にNITE(製品評価技術基盤機構)や消防機関は、ドラム式コードリールを巻いたまま高出力の暖房器具などに使ったことで異常発熱・出火に至った事例を挙げ、繰り返し注意を呼びかけている。

式そのものを選ばせる問題 — 直径で書くとどうなるか

「直径DD〔mm〕、長さLL〔m〕、抵抗率ρ\rho〔Ω·m〕の導線の電気抵抗を表す式はどれか」——選択肢に4つの式が並ぶ形式がある。値を計算するのではなく、式の形そのものを問われる。

出発点は R=ρLAR = \rho \dfrac{L}{A} だ。ここに、電線の断面がであることを入れる。半径rrの円の面積はπr2\pi r^2で、直径DDを使えば r=D/2r = D/2 なので、

A=π(D2)2=πD24A = \pi \left(\frac{D}{2}\right)^2 = \frac{\pi D^2}{4}

これを代入すると、

R=ρLπD2/4=4ρLπD2R = \rho \frac{L}{\pi D^2 / 4} = \frac{4\rho L}{\pi D^2}

覚えるべき形は $R = \dfrac{4\rho L}{\pi D^2}$。**分子に4と$L$、分母に$\pi$と$D^2$**。選択肢は、4を分母に置いたもの、$D$を2乗していないもの、$L$を2乗したものといった形で誤りが作られる。**「長さは1乗、直径は2乗」**だけ確実に押さえれば、たいてい2つは即座に消せる。

もう1つ、単位の落とし穴がある。抵抗率ρ\rhoは〔Ω·m〕、長さLLは〔m〕で与えられるのに、直径DDだけが〔mm〕で示されることが多い。DDをmのまま扱わないと桁が合わないので、mm→mの換算が要る。DD〔mm〕=D×103= D \times 10^{-3}〔m〕で、それが2乗されるから D2D^2 の部分は 10610^{-6} 倍。分母が10610^{-6}倍ということは、全体は10610^{6}倍になる。だから直径をmm、長さをmのまま入れる式には、

R=4ρLπD2×106R = \frac{4\rho L}{\pi D^2} \times 10^{6}

という係数が付く。選択肢に ×106\times 10^6 が付いているものと付いていないものが混ざっていたら、DDがmmで与えられているかどうかを見る。 単位の指定は、式を選ばせるための仕掛けとしてわざと入れられている。

長く引くほど、電気は途中で目減りする

R=ρL/AR = \rho L / A が実務で効いてくるのは、距離が伸びたときだ。直径1.6mmの銅線は断面積が約2mm²で、銅の抵抗率から計算すると片道100mでおよそ0.9Ω。行きと帰りで約1.8Ωになり、そこに10Aを流せば18V近くが電線の中で失われる。100Vで送り出したはずが、機器の手元では80V台まで落ちるということだ。母屋から離れの倉庫へ、分電盤から駐車場のEV充電器へ——距離が出た瞬間、電線の太さは「安全に流せるか」だけでなく「電圧が足りるか」で決まるようになる。配線設計で電圧降下を数パーセント以内に収めるよう求められるのは、このためだ。

同じ理屈が、送電線が超高圧で引かれている理由でもある。電線の抵抗で失われる電力は I2RI^2 R、つまり電流の2乗で効く。電圧を上げて電流を減らせば、損失は劇的に小さくなる。鉄塔の上を走る電線が細く見えるのは、大電流を流していないからだ。

今日できるのは、家にあるVVFケーブルや延長コードの表示を読むことだ。「1.6mm」「2.0mm」あるいは「0.75mm²」といった刻印と、そこに併記された許容電流。これまで意味のわからない数字だったものが、式の側から説明できるようになっている。

冒頭のヒーターとコードリールで何が起きていたのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 直径が2倍になったのだから抵抗は2分の1、と思わせる

    なぜ引っかかる直径の違う2本の銅線を並べ、電気抵抗の比を答えさせる問題が繰り返し出ている。R=ρL/A が反比例するのは断面積Aであって直径ではない。直径が2倍になれば断面積は2乗の4倍になり、抵抗は4分の1になる。直径の比をそのまま持ち込んだ2分の1という値は、必ず選択肢に用意されている。

    見破り方直径Dが出てきた時点で「断面積は直径の2乗に比例する」と口に出してから式に入る。比を取る問題なら、長さの比はそのまま、直径の比は2乗して分母に、と機械的に処理すれば取り違えようがない。

  2. 選択肢の中に「直径〔mm〕で書かれたもの」と「断面積〔mm²〕で書かれたもの」を混在させる

    なぜ引っかかる直径〔mm〕で指定した銅導線に抵抗値が最も近いものを、断面積〔mm²〕で書かれた選択肢の中から選ばせる問題がある。直径2.6mmの断面積は約5.3mm²だが、2.6と5.5という数字を直接見比べようとすると、そもそも比較の土俵に上がれない。

    見破り方直径と断面積が混ざっていたら、必ず断面積に統一してから比べる。直径1.6mm≒2mm²、2.0mm≒3.5mm²、2.6mm≒5.5mm²という対応は許容電流の表と同じ並びなので、そちらで覚えた組を流用できる。あとは長さ÷断面積が近いものを選ぶだけだ。

  3. 長さと太さを同時に変え、片方だけ見て答えさせる

    なぜ引っかかる基準となる銅線を1本示し、それと電気抵抗が等しくなる別の長さの銅線の直径を答えさせる形で出題されている。長さが4倍になったぶん抵抗も4倍になるので、それを打ち消すには断面積も4倍、つまり直径は2倍が必要になる。長さだけを見て4倍、太さだけを見て2倍と、片方で止まると答えが合わない。

    見破り方R=ρL/A の分子と分母を別々に処理する。長さが何倍になったかを分子に、断面積が何倍になったかを分母に書き、最後に約分する。直径の変化は必ず2乗して断面積に直してから分母へ入れる。

参考文献・出典

理解度チェック(7問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、7問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用2問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 7 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 電線の抵抗 R = ρ×L/A(ρ=抵抗率、L=長さ、A=断面積)
  2. 長さが2倍になれば抵抗も2倍。太さ(断面積)が2倍になれば抵抗は半分
  3. この比例関係は、あとで学ぶ電圧降下・許容電流の計算の土台になる
  4. 電線を巻いても伸ばしても、電線自体の抵抗値(R=ρL/A)は変わらない。危険なのは、巻くことで発生した熱(ジュール熱)が逃げにくくなること
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