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電気に関する基礎理論 ・ 8 / 10

交流の基礎(周波数・実効値)

読み終えると、こうなる

コイルの入った家電に同じ電圧を加えても、50Hzの地域か60Hzの地域かで流れる電流が変わる理由を、直流の感覚に頼らず判定できるようになる

  • ACアダプタ裏の「100-240V 50/60Hz」という表示を、内部で交流を直流に作り直している設計の裏付けとして読み取れる
  • 回路にコイルやコンデンサがあるかを最初に確認し、抵抗だけの回路なら周波数を無視して電流を即断できる
  • 最大値と実効値の大小関係(最大値のほうが必ず大きい)だけを手掛かりに、√2を掛けるか割るかをその場で判定できる
考えてみよう

東京から大阪に転勤になり、実家に置いてあった古いアナログ式の電気時計をコンセントに挿してみた。最初は普通に動いていたのに、しばらくすると時計の針が実際の時刻よりどんどん進んでいることに気づいた。同じ100Vのコンセントなのに、東京と大阪で何が違うのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、その仕組みがはっきり分かるようになっている。

一般家庭に供給される電気は「交流」(AC: Alternating Current)で、電圧と電流の向き・大きさが周期的に変化し続けている。これに対し、電池のように向きが変わらない電気は「直流」(DC: Direct Current)と呼ぶ。

  • 周波数(Hz):1秒間に電圧・電流が変化を繰り返す回数。日本国内では東日本が50Hz、西日本が60Hzと、地域によって異なる(歴史的な経緯によるもので、試験でもたびたび問われる基礎知識)。
  • 実効値:交流の電圧・電流の大きさは刻一刻と変化しているため、私たちが「100V」「200V」と呼んでいる値は、直流に換算した場合と同じ働きをする「実効値」を指している。
周波数は単なる数字の違いではない。電源の波が1秒間に何回繰り返すかという情報そのものを、機器側が「基準」として使っていることがある。

その代表例が、冒頭の電気時計だ。同期モーター式と呼ばれる古いタイプの電気時計は、電源の交流波形が繰り返す回数を数えてモーターを回し、針を進めている。50Hzの地域向けに作られた時計は「波が50回来るごとに1秒経過」という設計になっているが、60Hzの大阪では波が1秒間に60回来るため、50回来るまでにかかる実際の時間は50÷60、およそ0.83秒しかない。本当はまだ0.83秒しか経っていないのに「1秒経った」と数えてしまうため、時計は少しずつ、しかし着実に進んでいく。扇風機やミシンのように回転する部品を持つ機器も、周波数が変われば回転数そのものが変わってしまうため、風力や動作速度が変化することがあるとされる。

一方で、今の家電製品の多くはこの問題をあまり気にしなくてよい設計になっている。多くの時計は水晶(クオーツ)発振を使って独自に時を刻んでおり、電源の周波数に依存しない。また照明や一部のモーター機器もインバータ制御によって周波数の違いを吸収する「ヘルツフリー」設計が一般的になってきているとされる。同期モーター式の時計のように周波数そのものを基準にする仕組みは、今ではむしろ少数派だ。

家庭用の単相100V・単相200Vや、動力用の三相200Vといった電源方式の違いは、次の科目「配電理論及び配線設計」で詳しく扱う(当サイトの単相電源とは?三相電源とは?も参照してほしい)。

コイルとコンデンサは、電流が電圧から90度ずれる

交流回路で、抵抗・コイル・コンデンサは電圧と電流の関係が違う。 波形を4つ並べて「正しいものはどれか」と問う形式が出る。

素子電流と電圧の関係
抵抗 R同相。電圧が最大のとき電流も最大
コイル L電流が電圧より 90度(π/2)遅れる
コンデンサ C電流が電圧より 90度 進む
**コイルは遅れ、コンデンサは進む。**そして**純粋にLだけ・Cだけの回路なら、 ずれはちょうど90度**になる。抵抗が混じると、そのぶん90度より小さくなる。

コイルが遅れる理由は、コイルが電流の変化を嫌うからだ。電圧をかけても、 コイルは逆向きの起電力を出して電流が増えるのを妨げる。だから電流の立ち上がりが 電圧に遅れる。コンデンサは逆で、電圧が0のときに最も勢いよく充電電流が流れるため、 電流のほうが先に山を迎える。

波形の選択肢では、電流の山が電圧の山より右にあれば遅れ(コイル)、左にあれば進み (コンデンサ)。90度は「山1つ分の4分の1」ずれた形になる。

ACアダプタの小さな文字が読めるようになる

手元のノートPCやスマートフォンの充電器を裏返してみてほしい。たいてい「INPUT 100-240V 50/60Hz」と小さく刻まれている。今日試せるのはこれだけだ。だがこの一行は、実効値100Vの日本でも240Vの地域でも、50Hzでも60Hzでも動くという宣言であり、電源の交流をいったん直流に整えてから必要な形に作り直しているという設計の告白でもある。周波数と実効値という2つの言葉を持っていると、この表示が読める側に回れる。

日本の東西で周波数が分かれているのは、明治期に東京がドイツ製、大阪がアメリカ製の発電機を採用したという経緯によるもので、今も周波数変換所を介してしか東西で電力を融通できない。国全体の電力設備が、100年以上前の機械の選定を今なお引きずっている。

そして電気は今、あらためて「作り直される」方向へ進んでいる。太陽光のパワーコンディショナは、パネルが出す直流を系統の周波数に合わせた交流へ変換して送り出す。EVの電池は直流で、充電器はその橋渡しをする。エアコンや照明のインバータは、いったん直流にしてから任意の周波数の交流を作り出し、回転数や明るさを自在に変える。交流の周波数と実効値を理解しておくことは、これから増えるこうした機器の中で何が起きているのかを読む鍵になる。

冒頭の時計で何が起きていたのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 実効値と最大値のどちらを答えるのかを入れ替え、√2を掛けるか割るかを逆にさせる

    なぜ引っかかる同じ1組の数値を使って「最大値を与えて実効値を答えさせる」向きと「実効値を与えて最大値を答えさせる」向きの両方が出題される。普段は実効値100Vしか目にしないため、示された数字のどちらが最大値なのかがその場で結びつかず、選択肢に並んだ両方の値のどちらかを勘で選ぶことになる。

    見破り方最大値は波の頂点、実効値はそれを√2で割った値で、必ず最大値のほうが大きい。この大小関係だけ握っておけば、掛けるか割るかは答えの大きさで判定できる。√2の近似値は問題用紙に示されるので、覚えるべきは数値ではなく向きだ。

  2. 電圧を100Vのまま据え置き、周波数だけを変えて流れる電流を聞いてくる

    なぜ引っかかるコイルに加える電圧を据え置いたまま周波数だけを50Hzと60Hzで入れ替え、流れる電流を答えさせる形が繰り返し問われる。電圧が変わっていないのだから電流も変わらない、と直流の感覚で答えると外れる。コイルの誘導性リアクタンスは周波数に比例して増えるため、周波数が1.2倍になれば電流は1.2分の1になる。

    見破り方回路にコイルやコンデンサがあるかを最初に見る。抵抗だけなら周波数は電流に効かないが、コイルがあれば周波数が上がるほど電流は流れにくくなる。増えるか減るかを先に決めるだけで、選択肢は半分に落とせる。

  3. 東日本50Hz・西日本60Hzを、そっくり入れ替えた選択肢を必ず用意してくる

    なぜ引っかかる覚えているつもりでも、東西と50・60の組み合わせは記憶の中で入れ替わりやすい。理由づけのない丸暗記は、本番の緊張下でいちばん先に壊れる。

    見破り方家電の銘板や取扱説明書には「50Hz(東日本)/60Hz(西日本)」と併記されていることが多い。一度実物で見ておくと並び順ごと記憶に残る。明治期に東京がドイツ製、大阪がアメリカ製の発電機を採用したという由来から辿れるようにしておけば、うろ覚えでも復元できる。

参考文献・出典

理解度チェック(7問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、7問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用2問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 7 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 交流(AC)は電圧・電流の向き・大きさが周期的に変化。直流(DC)は向きが変わらない
  2. 周波数(Hz)は1秒間の変化の繰り返し回数。日本は東日本50Hz・西日本60Hz
  3. 「100V」「200V」と呼ぶ値は、直流換算で同じ働きをする「実効値」を指す
  4. 電源の周波数そのものを基準に時を刻む同期モーター式の時計は、50Hzと60Hzをまたぐ引っ越しで進み方が変わることがある。今の家電の多くはこの影響を受けにくい設計になっている
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