見積の相談で「200Vのエアコンを付けるのでブレーカーを」と言われたら、最初に確かめるのは「単相ですか、動力ですか」です。住宅のエアコンは単相3線式の200V、店舗の業務用エアコンやポンプには三相200Vを使うものがあり、どちらも銘板の数字は「200V」です。図面では前者が「1φ3W 100/200V」、後者が「3φ3W 200V」と書き分けられます。
数字は同じでも、電線と大地の間の電圧(対地電圧)は違います。単相3線式の200Vは対地100V。三相200Vは、結線によって対地200Vにも約115Vにもなります。対地電圧が違えば、使えるブレーカーも、絶縁抵抗の合格ラインも変わります。同じ200Vで、なぜここまで分かれるのか。答えは、変圧器のどこを大地につなぐかを決めた条文にあります。
三相交流は、120度ずつずれた3つの交流の組です
大きさが等しく、位相が互いに120度ずつずれた3つの交流電圧の組を、平衡三相交流といいます。単相は1組の交流です。三相誘導電動機は、固定子の3組の巻線に三相電流を流すだけで回転磁界ができ、回転子が回ります。
モーターメーカーのニデックは用語集で、高い効率のためには相数は3が適切だと説明しています。同じ項目には、安価な構造のために単相の交流モーターも多数使われている、とも書かれています。単相のモーターが使えないわけではありません。三相は、効率が求められる用途で選ばれる方式です。
国内の三相200V・400V級は、電気設備に関する技術基準を定める省令 第2条の区分では、どちらも低圧(交流600V以下)です。低圧という区分は、触れても安全という意味ではありません。
「動力」は電気の種類ではなく、契約と供給方式の呼び名です
「動力ありますか」という聞き方は、電力会社の料金メニューの言葉と重なります。東京電力エナジーパートナーの「低圧電力」は、商店や工場などでモーター等の動力を使う需要家向けの契約で、契約電力は原則50kW未満、供給は標準電圧200V(三相3線式)です。従量電灯の案内ページでは「動力をお使いのご家庭で、併せて契約いただく料金プラン」と紹介されており、電灯の契約とは別に結ぶものです。
現場で「動力の200V」と言えば三相3線式200Vを指すことが多いものの、工場には400V級の動力設備もあります。電圧は呼び名ではなく、銘板と系統図で確かめます。
図面の「1φ3W」「3φ3W」「3φ4W」は何が違うのか
φは相、Wは線(Wire)の数です。同じ200Vでも、方式によって対地電圧と、電気設備技術基準の省令第58条が求める絶縁抵抗の下限が変わります。
| 方式(図面の略記) | 電圧の組み合わせ | 正常時の対地電圧 | 絶縁抵抗の下限(省令第58条) | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 単相3線式(1φ3W)100/200V | L1–N・L2–Nが100V、L1–L2が200V | 100V(中性線を接地) | 0.1MΩ | 住宅・店舗・ビルの電灯・コンセント、家庭用エアコン |
| 三相3線式(3φ3W)200V、Δ結線の1端子接地 | 3本の線間が各200V | 接地した線はほぼ0V、残る2線は200V | 0.2MΩ | モーター・ポンプ・業務用空調 |
| 三相3線式200V、中性点を接地したY結線 | 3本の線間が各200V | 各線とも約115V(200÷√3) | 0.1MΩ | 結線による違いの例 |
| 三相4線式(3φ4W)240/415V | 線間415V、各相とNの間が240V | 240V(中性点を接地) | 0.4MΩ(線間415Vの電路) | 大規模ビル・工場の電灯・動力幹線 |
非接地式電路では、省令第58条は対地電圧を「電線間の電圧」と定義しています。非接地の三相200Vは、判定上は対地200Vとして扱います。実測で各線と大地の間が常に200Vになる、という意味ではありません。合否の判定は絶縁抵抗の合否判定ツールでも確認でき、測定時の機器の切り離しはメーカーの手順に従います。
三相3線式200Vには、単相3線式のような100V用の中性線がありません。「3線」に保護接地線(アース)は含めず、接地線を中性線の代わりに使うこともできません。
三相4線式は、名前だけでは電圧が決まらない
三菱電機のFA eラーニングの配電方式表には、三相4線式が3種類並んでいます。400V級の240/415V(大規模ビル・工場の電灯・動力幹線)、中小規模のビルやホテルの電灯幹線に使う100/173V、そして単相3線式100/200Vと三相200VのV結線を組み合わせた100/200Vです。最後の方式は「異容量V結線三相4線式として」国内で多く採用されている、と書かれています。
製品側も同じで、日東工業の三相4線式電灯分電盤ENA形は「230/400Vまたは100/173Vの電路にご使用ください」と適用電路を指定し、大崎電気工業のA8JA系電力量計は100/173と240/415の定格を別に持ちます。パナソニックの配線方式の解説は460Vと265Vの組み合わせも挙げています。「三相4線用」と書かれた機器でも、適合する電圧は製品ごとに仕様で確かめます。
さらに大きな負荷は低圧を離れます。同じ配電方式表は、3.3kV・6.6kVの三相3線式の用途を「37kWを超えるモータ」としています。
一段深い理解:同じ200Vで対地電圧が分かれるのは、接地の位置が2通り認められているから
高圧を低圧に下げる変圧器は、高圧と低圧が混触したときに備えて、低圧側をB種接地工事で大地につなぎます。電気設備の技術基準の解釈 第24条は、その場所をまず「低圧側の中性点」とし、続けて「低圧電路の使用電圧が300V以下の場合において、接地工事を低圧側の中性点に施し難いときは、低圧側の1端子」でもよいと定めています。
単相3線式は変圧器の中点、つまり中性点を接地します。だから両側の電圧線は対地100Vです。一方、Δ結線には中性点がありません。三菱電機の結線表でも、低圧側がΔのYd1は「中性点を必要としないもの」、低圧側がYのDyn11は「低圧側中性点を必要とするもの(低圧側400V級など)」に充てられています。使用電圧300V以下の三相200Vなら1端子を接地でき、接地した線は大地とほぼ同電位になり、残る2線では線間の200Vがそのまま対地電圧になります。冒頭の「同じ200Vなのに」の半分は、この条文で説明がつきます。
残りの半分は住宅側の条文です。解釈 第143条は、住宅の屋内電路の対地電圧を原則150V以下としています。単相3線式なら、200Vのエアコンをつないでも対地は100Vで、この枠に収まります。対地200Vの回路を住宅の屋内に入れるには、定格消費電力2kW以上の機器に専用の屋内配線で供給し、対地電圧300V以下、専用の開閉器・過電流遮断器、原則として漏電遮断装置を設けるなど、同条第1項第一号の条件を満たす必要があります。
この違いは部材選びにも現れます。三菱電機のFAQは、BL安全ブレーカを「交流の単相100V、単三200V専用品」「対地電圧100Vの遮断性能品」とし、単相200V回路には使用できないと回答しています。単相3線式の200V(対地100V)は使えて、対地200Vになり得る単相200V回路には使えない。銘板の「200V」が同じでも、分かれ目は対地電圧にあると読めます。
一段深い理解:√3は、銘板の数字にも隠れている
平衡したY結線では、線間電圧は位相が120度違う2つの相電圧のベクトル差です。その大きさが相電圧の√3倍(約1.732倍)になります。Δ結線では各巻線が線と線の間にあるため、巻線の電圧と線間電圧は等しくなります。
この関係を知っていると、カタログや銘板の数字がそのまま読めます。
| 表示・数値 | √3との関係 | 出てくる資料 |
|---|---|---|
| 240/415V | 415÷√3≒240 | 大崎電気工業 A8JA系電力量計の定格電圧、三菱電機の配電方式表 |
| 230/400V | 400÷√3≒231 | 日東工業 ENA形分電盤の適用電路 |
| 100/173V | 100×√3≒173 | 日東工業 ENA形、三菱電機の配電方式表(中小ビル・ホテルの電灯幹線) |
| 110/√3/110 | √3をそのまま表記 | 大崎電気工業 A8JA系の/5A形の定格電圧 |
| 変圧器の利用率86.6% | √3÷2≒0.866 | 三菱電機の配電方式表(V結線の三相3線式200V) |
V結線は、単相変圧器2台で三相をつくる結線です。2台の容量をすべて三相負荷に使えず、利用率が86.6%にとどまる。ここにも√3が顔を出します。
電力の式も同じです。正弦波・平衡負荷の三相有効電力は、線間電圧をV、線電流をI、力率をcosθとして P=√3・V・I・cosθ。200V・20A・力率0.8なら約5.54kWです。モーター銘板のkWが軸出力なら、効率を考えずに電気入力と比べても数字は合いません。入力条件は電力・電流計算ツールでも確認できます。不平衡負荷や高調波を含む回路には、この式を無条件には当てはめられません。
現場で間違いやすい点
相順と回転方向。 直入れの三相誘導電動機では、電源の相順が回転方向に関係します。試運転前の相順確認と逆転時の対応は、設備の手順とメーカー資料に従って担当技術者が判断します。インバーターを介する設備では、入力側の相順だけからモーターの回転方向は決まりません。事例は相順(相回転)チェック忘れが招くモーター逆転と機械破損リスクにまとめています。
「200V用」というブレーカー表示。 前節のBL安全ブレーカのように、単相3線式の200Vにしか使えない製品があります。交換品を選ぶときは、電圧の数字に加えて、単相か三相か、対地電圧がいくつの電路かを確かめます。
中性線とアース。 三相3線式200Vから100Vを取るために接地線を流用するのは誤りです。100Vが必要なら、単相3線式の電灯回路から取るか、変圧器を設けて回路を分けます。
交換部材の相談前にそろえる情報
- 機器の銘板:メーカー・型番、単相/三相、定格電圧・周波数・電流。
- 電源側の資料:系統図、線数、中性線の有無、接地方式、既設遮断器の型番。
- 使用条件:モーターなど負荷の種類、始動方法、配線長、設置環境。
銘板の確認や撮影のために通電中の盤を開けないでください。確認できない項目は、設備管理者か電気主任技術者に依頼します。
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