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配電理論及び配線設計 ・ 1 / 7

配電方式(単相2線式・単相3線式・三相3線式)

読み終えると、こうなる

同じ3本の電線から100Vと200Vが同時に出ている分電盤の中身を、中性線という基準点の存在として読み解けるようになる

  • 電線が3本あるというだけで√3を掛けたくなる場面で、位相差が180度か120度かを先に確認して2倍か√3倍かを判定できる
  • 中性線が切れたと聞いたら、2つの負荷を線間電圧に直列でぶら下がった単相回路として描き直せる
  • L1側・L2側の電流が別々の数字で書かれていたら不平衡の合図だと見抜き、中性線に流れる電流(差)をすぐ出せる
考えてみよう

自宅の分電盤を開けてみると、幹線から電線が3本伸びてきている。よく見ると、IHクッキングヒーター専用のブレーカーには「200V」と書かれているのに、すぐ隣の照明用ブレーカーには「100V」と書かれている。

電線を1本増やしたわけでもないのに、同じ3本の電線からどうやって100Vと200Vという2つの電圧を同時に取り出しているのか。

このトピックを読み終えるころには、分電盤の中で何が起きているか説明できるようになっている。

低圧で受電する一般家庭・小規模施設向けの配電方式には、主に次の3種類がある。

単相2線式(100V)は、電圧側電線(ホット)と接地側電線(コールド)の2本だけで100Vを供給する、もっともシンプルな方式だ。小規模な照明・コンセント回路に使われる。

三相3線式(主に200V)は、R・S・Tの3本の電圧線で、位相が120度ずつずれた交流を送る方式。工場や業務用エアコン・大型ポンプなど、動力(モーター)用途の主力方式だ(詳しくは三相電源とは?も参照)。

そして冒頭の謎を解く鍵になるのが、単相3線式(100V/200V)だ。2本の電圧線(L1・L2)と、その中間電位を持つ「中性線(N)」の計3本で配電する方式で、現在の一般住宅・店舗の主幹引き込みはほぼこの方式になっている(詳しくは単相電源とは?も参照)。

L1 N L2 100V 100V 200V 単相3線式は3本の電線から100V・100V・200Vの3通りの電圧が同時に取れる
中性線(N)は「電圧を運ぶ線」ではなく、2本の電圧線(L1・L2)のちょうど中間の電位を持つ「基準点」だ。L1-N間・L2-N間はそれぞれ100V。位相が逆になっているL1とL2の間を測ると、2つの100Vが足し合わさって200Vになる。

つまり、L1-N間: 100V、L2-N間: 100V、L1-L2間: 200Vという3通りの電圧が、1系統の3本の電線から同時に取り出せる。これが、通常の100V照明・コンセントと、エアコンやIHクッキングヒーターなど200V機器を、1本の幹線でまかなえる合理性の正体だ。

もう1つ押さえておきたいのが「平衡・不平衡」という考え方だ。L1側・L2側の負荷(電流)が等しい状態を「平衡」、偏っている状態を「不平衡」と呼ぶ。平衡していれば、L1側の「行きの電流」とL2側の「帰りの電流」が中性線上で互いに打ち消し合うため、中性線には理論上まったく電流が流れない。設計段階でL1・L2の負荷をできるだけ均等に振り分けるのは、中性線の電流を減らし、電圧降下・電力損失を抑えるための工夫でもある。

分電盤の3本の線が、これから足せる設備を決めている

単相3線式かどうかは、その建物に何を足せるかという話に直結する。IHクッキングヒーター、エコキュート、200V仕様のエアコン、EV充電器——いま住宅に後付けされる設備は軒並み200Vで、L1-L2間の200Vが取れる単相3線式であることが前提になる。分電盤を開けて主幹に3本の電線が入っていれば、その素地はすでにある。今日、自宅の分電盤の蓋を開けて数えてみてほしい。

中性線が「基準点」だという理解には、もう一つ実務的な意味がある。もし中性線が断線すると、L1側とL2側の負荷が直列につながった形になり、負荷の軽い側に本来より高い電圧がかかってしまう。100V機器がまとめて壊れるのはこの状態だ。設計段階でL1・L2の負荷を均等に振り分けるのも、中性線という基準点を丁寧に扱うのも、根は同じところにある。盤そのものの選び方は配電盤・分電盤・制御盤の違いと選び方にまとめてある。

冒頭の分電盤で何が起きていたのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 単相3線式のL1-L2間を、三相の√3倍や√2倍で計算させる

    なぜ引っかかる選択肢には200Vのほかに141V(√2倍)と173V(√3倍)が並ぶ。三相の√3を学んだ直後だと、電線が3本あるというだけで√3を掛けたくなる。単相3線式のL1とL2は位相が180度ずれた真逆どうしなので、差を取ると単純に2倍の200Vになる。

    見破り方電線が3本あるかどうかではなく、位相差が何度かで決める。単相3線式は180度差だから2倍、三相3線式は120度差だから√3倍。この2つを1組にして覚えておけば、141Vと173Vはその場で消える。

  2. 中性線を断線させ、断線後も各負荷に100Vがかかっているかのように見せる

    なぜ引っかかる単相3線式に抵抗値の違う負荷を左右につないでおき、中性線が断線したあとに片方へ加わる電圧を答えさせる問題が繰り返し出ている。中性線という基準点を失うと2つの負荷は直列になり、線間電圧を抵抗の比で分け合う。抵抗の大きい側には断線前の100Vより高い電圧がかかることになる。

    見破り方中性線が切れたと書かれた瞬間、100Vの回路が2つあるという見方を捨て、線間電圧に負荷2つが直列にぶら下がった単相回路として描き直す。抵抗の大きい側に高い電圧がかかるので、どちらの負荷が危ないかを先に見当づけておく。

  3. 平衡・不平衡を切り替えて、中性線に流れる電流を聞く

    なぜ引っかかる平衡時は中性線の電流が理論上0になるが、不平衡なら0にはならず、L1側とL2側の電流の「差」が流れる。0という答えが強く印象に残っているため、不平衡の条件が書かれていても0を選んでしまう。逆に、両側を足した値を選ぶ誤答もある。

    見破り方問題文にL1側とL2側の電流が別々の数字で書かれていたら、それが不平衡の合図だ。中性線の電流は差、と決めておく。等しい数字が2つ並んでいれば差は自動的に0になるので、平衡・不平衡のどちらでも同じ判断で通せる。

参考文献・出典

理解度チェック(7問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、7問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用2問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 7 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 単相2線式は電圧側電線(ホット)と接地側電線(コールド)の2本だけで100Vを供給する、もっともシンプルな方式
  2. 単相3線式はL1・L2・中性線(N)の3本で、L1-N間・L2-N間に100V、L1-L2間に200Vという2つの電圧を同時に取り出せる
  3. 三相3線式は位相が120度ずつずれた3本の電圧線で送る方式で、工場や業務用エアコンなど動力用途の主力
  4. 単相3線式が平衡していれば、中性線には理論上まったく電流が流れない
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