エアコンの銘板に「単相200V」とあり、分電盤を開けると主幹の下に100Vの回路と200Vの回路が並んでいます。一方で、住宅の屋内配線は「対地電圧150V以下」と決まっています(電技解釈 第143条)。200Vの機器をつないでいるのに、なぜ150Vの制限に触れないのでしょうか。
答えは、単相3線式の3本目の線、中性線の扱いにあります。同じ中性線が、切れたときには100Vの機器に150Vをかけることもあります。
単相2線式と単相3線式は「線の数」より「どこを接地しているか」で違う
単相電源は、1組の交流で電力を送る方式です。そのうち単相2線式は、2本の線の間の電圧を使います。住宅の100V回路が身近な例ですが、単相2線式=100Vではありません。三菱電機の配電方式の解説は、単相2線式を100V(電灯・コンセント用)と200V(電灯・単相モーター・電熱器用)に分けて示しています。
単相3線式100/200Vは、電圧線L1・L2と中性線Nで構成されます。L1–N間とL2–N間がそれぞれ100V、L1–L2間が200Vです。同じ分電盤から100V用と200V用の回路を分けて取り出せますが、個々の回路や機器が両方の電圧に対応するという意味ではありません。
| 比べる点 | 単相2線式 | 単相3線式100/200V |
|---|---|---|
| 配電に使う線 | 2本 | 電圧線2本+中性線N |
| 電圧 | 回路により100Vまたは200V | Nとの間が100V、電圧線間が200V |
| 代表的な用途 | 照明・コンセント・単相負荷の回路 | 住宅や店舗の幹線・分電盤への供給 |
| 注意点 | 線の数だけでは電圧が分からない | Nが切れると100V回路の電圧が偏る |
表の線数に保護接地線(アース)は含みません。中性線は電流が流れる回路の一部で、機器の金属外箱を大地につなぐ保護接地線とは役割が違います。互いの代わりには使えません。
100Vの電源は「101V±6V」で維持されている
コンセントで測った電圧が100Vちょうどでなくても、異常とは限りません。電気事業法施行規則第38条は、電気を供給する場所で維持すべき電圧を、標準電圧100Vなら101Vの上下6V(95〜107V)、200Vなら202Vの上下20V(182〜222V)と定めています。中心が100Vではなく101Vで、200Vの幅は約±10%と、100Vの約±6%より広く取られています。
一段深い理解:200Vなのに「対地電圧100V」になる仕組み
単相3線式の中性線は、柱上などの変圧器の低圧側の中性点につながり、そこにB種接地工事が施されます(電技解釈 第24条第1項第一号)。中性線がほぼ大地と同じ電位になるので、L1とL2は大地に対してそれぞれ100Vです。L1–L2間で200Vを使っても、どちらの線も大地から見れば100Vにとどまります。
この形が住宅に合っている理由を、経産省の電技解釈の解説(第143条)は正面から書いています。100V用の設備と200V用の設備の感電事故を比べると、後者のほうが死傷事故の確率がはるかに高い。だから住宅の屋内電路は対地電圧150V以下とし、2kW未満の機器は単相3線式の「対地電圧100V、使用電圧200V」で対応できる、という説明です。
対地電圧が150Vを超える電源も、住宅で全く使えないわけではありません。第143条第1項第一号は、定格消費電力2kW以上の機器に限り、対地電圧300V以下で使うことを認めています。条件は、その機器だけに供給する屋内配線、配線と機器の簡易接触防護措置、専用の開閉器と過電流遮断器、地絡遮断装置(条件を満たす絶縁変圧器で代える方法もあります)、そして機器を屋内配線に直接接続することです。
解説は、三相200Vの動力線につなぐ必要がある機器を想定した例外だとし、コンセント接続を禁じる理由として、誤って100Vの機器をつなぐおそれも挙げています。
| 電源 | 使用電圧 | 対地電圧 | 住宅での扱い(電技解釈 第143条) |
|---|---|---|---|
| 単相3線式から取る100V | 100V | 100V | 制限なし |
| 単相3線式から取る単相200V | 200V | 100V | 制限なし(150V以下) |
| 対地電圧が150Vを超える電源(三相200Vの動力など) | 200Vなど | 150V超、300V以下 | 2kW以上の機器に限り、専用回路・直接接続・地絡遮断装置などの条件つき |
(出典:電技解釈 第24条・第143条、同解説 第143条)
接地の種類と抵抗値の決まりは接地工事(アース)A種〜D種の違いで扱っています。
中性線が切れると、100Vの機器に何Vかかるのか
中性線の断線や端子のゆるみで中性線が外れると、L1側の100V負荷とL2側の100V負荷が、200Vの両端に直列につながった形になります。それぞれにかかる電圧は、負荷の大きさの比で分かれます。
原理を見るために、2つの負荷を一定の抵抗とみなして計算します。10Ωと30Ωなら、電流は200÷(10+30)=5A、各負荷の電圧は50Vと150Vです。軽い負荷(抵抗の大きい側)ほど高い電圧を受けます。これは抵抗負荷に限った計算例で、テレビ・ルーター・インバーター機器などの電子回路は一定の抵抗として扱えません。定格消費電力だけから「どの機器に何Vかかるか」は決められません。
L1やL2が欠相した場合は事情が違います。Panasonicの解説によれば、電圧線の欠相では負荷に異常電圧はかからず、欠相した側の負荷が使えなくなるだけです。危ないのは中性線のほうです。
欠相保護は「120Vでは切れず、135Vで切れる」
主幹ブレーカーの中性線欠相保護は、内線規程で段階的に強められてきました。PanasonicのQ&Aによれば、主幹への欠相保護は1990年に「望ましい」、1992年に「原則とする」、2005年に「とすること」となりました。
三菱電機は、JEAC 8001-2016の改定で、単相3線式電路の配線用遮断器・漏電遮断器を欠相保護付きとすることが、推奨から義務的事項に引き上げられたと説明しています。Panasonicの年表は住宅用分電盤の主幹ブレーカー、三菱電機の説明は単相3線式電路に施設する遮断器全般の条項(1360-3・1375-2)についてのもので、対象が異なります。
保護がどの電圧で働くかを、三菱電機の単3中性線欠相保護付遮断器(2020年の新製品ニュース)で見ると、次のようになります。
| 電圧 | 意味 |
|---|---|
| 95〜107V | 標準電圧100Vの場所で電力会社が維持すべき範囲(電気事業法施行規則 第38条) |
| 120V | 定格不動作過電圧。この電圧では遮断しない |
| 135V | 定格動作過電圧。1秒以内に遮断する |
| 150V | 上の計算例(10Ωと30Ω)で軽い側にかかる電圧 |
(遮断器の値は三菱電機の一製品の仕様。他社・他機種はカタログで確認)
中性線にだけブレーカーを入れてはいけない
中性線を切る装置を自分で足してしまう誤りもあります。電技解釈第35条は、多線式電路の中性線に過電流遮断器を施設しないこととしています。解説は、こうした線が過電流で遮断されると接地保護の意味がなくなるからだと説明しています。単相3線式でいえば、中性線だけが切れる状態は、上の欠相そのものです。
例外は、中性線の遮断器が動作したときに各極が同時に遮断される場合です(第35条第2項第一号)。解説は、単相3線式に3極3要素のブレーカーを取り付ける例を挙げ、3極同時に遮断すれば支障はないとしています。
照明の明るさが急に変わる、複数の機器に同時に異常が出る、という場合は、端子を締め直したり再投入したりせず、設備管理者・電気工事業者へ連絡してください。
機器・交換部材を手配する前の確認事項
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銘板の表示:メーカー・正式型番、単相か三相か、電圧、周波数、定格電流。
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電源の情報:単相2線か3線か、100Vか200Vか、既設の分電盤・遮断器の型番。主幹を交換するなら、中性線欠相保護の有無も型番で確かめる。
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使い方:機器の種類、専用回路の要否、設置場所。対応する条件は取扱説明書で確認する。
銘板の写真と既存の図面があれば、相談時の確認が早く進みます。不明な条件は推測で埋めず、設備管理者に確認してください。写真を撮るために通電中の盤を開ける必要はありません。三相電源との違いと電力・電流計算も参照できます。
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