電圧降下を計算しようとケーブルのカタログを開くと、「導体抵抗(20℃)」という欄があります。その数字に電流と長さを掛ければ電圧降下が出そうです。ところが、日本電線工業会が電圧降下の計算用にまとめた表を開くと、Rの隣にXという列が並んでいます。しかもCVTの325mm²では、XのほうがRより大きい。
太い電線ほど電気は流れやすいはずなのに、なぜ流れにくさの成分が残るのか。そもそもRとXは、なぜ足し算で合わせられないのか。その答えが、インピーダンスという考え方です。
インピーダンスは、交流での「流れにくさ」をまとめた値です
計測器メーカーのHIOKIは、インピーダンスを「交流電流の流れにくさを示す量」とし、回路の電圧と電流の比だと説明しています。記号はZ、単位は抵抗と同じΩです。中身は2つの成分に分かれます。
| 項目 | 記号 | 単位 | 電力の扱い | 周波数との関係 |
|---|---|---|---|---|
| 抵抗(レジスタンス) | 熱として消費する | 理想抵抗は周波数によらない(実際の導体は温度などで変わる) | ||
| リアクタンス | 蓄えて返すだけで、理想素子では平均消費電力0 | コイルは周波数に比例、コンデンサは反比例 | ||
| インピーダンス | 抵抗成分で消費する | で、Xを通じて周波数に依存する |
リアクタンスには2種類あります。電線やモーターのコイル成分による誘導性リアクタンス は、周波数 が高いほど大きくなります。コンデンサ成分による容量性リアクタンス は、周波数が高いほど小さくなり、式の上では負の値として扱います。
RとXは90度ずれているので、足し算では合わせられません
抵抗にかかる電圧は電流と同じタイミングで山と谷を迎えます。コイルにかかる電圧は、電流より90度早く山を迎えます。ピークの時刻がずれた2つの電圧を足しても、合計のピークは単純な和になりません。日本電気技術者協会の講座は、R・L・Cの直列回路では各素子の電圧の代数和が電源電圧にならず、ベクトル図と三平方の定理で求めると解説しています。
3Ωと4Ωは7Ωにならない
ある周波数でR=3Ω、X=+4Ωの直列回路なら、|Z|=√(3²+4²)=5Ωです。交流10V(実効値)を加えると、電流は10÷5=2A。7Ωとして計算すると約1.43Aになり、実際より3割ほど少なく見積もることになります。説明用の仮定で、実在のケーブルの値ではありません。
同じ三角形から力率も読めます。力率はR÷|Z|なので、この回路では3÷5=0.6です。底辺がR、高さがX、斜辺がZという直角三角形を1枚覚えておくと、インピーダンスと力率の計算が同じ図で片づきます。
一段深い理解:太い電線ほど、Rが減ってXが残る
日本電線工業会の技術資料 技資第103号B(2024年6月)は、低圧電線・ケーブルの電圧降下計算に使う交流導体実効抵抗RとリアクタンスXを、品種・サイズ・周波数ごとに一覧にしています。CVT(トリプレックス形)の値を抜き出すと、次のとおりです。
| CVTのサイズ | R(90℃、Ω/km) | X(50Hz、Ω/km) | X(60Hz、Ω/km) |
|---|---|---|---|
| 14mm² | 1.71 | 0.107 | 0.128 |
| 38mm² | 0.626 | 0.0955 | 0.115 |
| 100mm² | 0.239 | 0.0881 | 0.106 |
| 325mm² | 0.0764 | 0.0816 | 0.0980 |
14mm²から325mm²へ太くすると、Rは約22分の1に下がります。Xは約4分の3にしか下がりません。325mm²では、50Hzで0.0816対0.0764と、XがRを上回ります。冒頭の「太いのに流れにくさが残る」の正体はこれです。
Xが下がりにくい理由は、同じ資料のリアクタンスの簡略式に表れています。Xは、隣の線心との導体中心間隔Sと導体外径dの比の「対数」で決まります。太い電線は導体が太くなる分、隣の導体との間隔も広がるので、比はあまり変わりません。対数なので、変わった分もさらに小さく効きます。
逆に、比を大きく変えると効きます。同じ表で、単心CVを3条俵積み(三角形に寄せる)にした325mm²のXは0.0816Ω/km、隣どうしの中心間隔をケーブル外径の2倍(S=2D)にして平積みにすると0.140Ω/kmと、約1.7倍になります。資料には、相の間が離れるとリアクタンスが大きくなるので注意するよう注記があります。
周波数も効きます。簡略式の周波数係数は50Hzが0.0628、60Hzが0.0754で、ちょうど1.2倍です。日本電線工業会は、400Hz用のインピーダンス表(技資第110号その1)も別にまとめています。周波数が50Hzの8倍なら、リアクタンスも8倍です。
電圧降下の式に、インピーダンスはこう入ります
日本電線工業会とフジクラ・ダイヤケーブルの技術資料は、ケーブルの電圧降下を次の式で計算するとしています。
Kは電気方式による係数で、単相2線式が2、単相3線式・三相4線式(中性線との間)が1、三相3線式が√3です。Iは電流(A)、ℓは長さ(km)、θは負荷の力率角です。力率が分からないときは、括弧の中を 、つまり|Z|に置き換えます。
フジクラ・ダイヤケーブルの計算例では、三相3線式・200V・CVT 38mm²・40A・100m・力率0.85で電圧降下は約4.0V、200Vに対して約2.0%です。同社の資料が引く内線規程1310節の許容値は、こう長60m以下なら幹線・分岐回路それぞれ2%以下(構内の変圧器から供給する場合の幹線は3%以下)です。
同じ表の値で、細い線と太い線を比べた計算例が次の表です。
| 計算例 | Rの項 | Xの項 | 電圧降下 | うちXの分 |
|---|---|---|---|---|
| VVF 2.0mm 2心、単相2線式、15A、20m、力率0.8、50Hz | 6.54×0.8 | 0.0962×0.6 | 約3.2V | 約1% |
| CVT 325mm²、三相3線式、400A、100m、力率0.8、50Hz | 0.0764×0.8 | 0.0816×0.6 | 約7.6V | 約44% |
| 上と同じで60Hz | 0.0775×0.8 | 0.0980×0.6 | 約8.4V | 約49% |
細い電線ならRだけで計算しても誤差はわずかです。日本電線工業会の資料も、制定時の解説で、細いサイズはリアクタンスが小さいので交流導体実効抵抗だけで電圧降下を計算しても差し支えない、としています。太い幹線でXの項を落とすと、7.6Vが4.2Vに縮み、実際の半分強にしか見積もれません。同じ幹線でも、60Hzの地域では電圧降下がこの例で約1割大きくなります。手早く確かめるときは電圧降下・電線サイズ計算ツールも使えます。
一段深い理解:%インピーダンスなら、短絡電流が暗算できる
変圧器の銘板や特性表には、Ωではなく「%インピーダンス(短絡インピーダンス)」が書かれています。日本電気技術者協会の講座によると、%Zは定格電流が流れたときのインピーダンスによる電圧降下が定格電圧の何%かを表す値で、短絡電流は次の式で求まります。
三菱電機のトップランナー油入変圧器Rシリーズの特性一覧表では、6.6kV/210Vの三相200kVAの短絡インピーダンスは、代表値で50Hz用が2.83%です。定格二次電流は200kVA÷(√3×210V)で約550A。上位系統のインピーダンスを無視すると、二次側の端子近くで三相短絡したときの電流は550×100÷2.83で約19.4kA、定格電流の約35倍です。
同じ表の60Hz用は3.33%で、約16.5kAになります。この一覧表の三相機は、30kVA以上のすべての容量で60Hz用の%Zが50Hz用より大きく、20kVAだけが逆です。リアクタンスが周波数に比例することと向きは同じですが、50Hz用と60Hz用は別の製品として特性が載っており、比は1.2倍ちょうどにはなりません(200kVAで約1.18倍)。
%で表す理由は、電圧の違う場所をまたいで足せるからです。同じ講座は、高圧側のインピーダンスを低圧側に換算するとき、Ωなら電圧比の2乗で換算が要るのに対し、%Zは換算なしに共通で使えると説明しています。ただし、%Rと%Xは別々に合計してから合成します。3Ωと4Ωと同じ理屈です。
講座が解説している電験の過去問では、200kVA・210Vの変圧器(%R 1.4%、%X 2.0%)の二次側で約23kA、その先にケーブル(%R 8.8%、%X 2.8%)を挟んだ分電盤側では約4.9kAまで下がります。それぞれの配線用遮断器には、25kAと5kAの遮断容量が選ばれています。遮断容量の選び方はブレーカーの種類と選び方、計算は短絡電流 簡易計算ツールでも確かめられます。
現場で間違いやすい点
カタログの導体抵抗をそのまま電圧降下に使う。 フジクラ・ダイヤケーブルのCVTカタログにある導体抵抗は20℃の値で、38mm²は0.491Ω/kmです。日本電線工業会の電圧降下用の表は、90℃での交流導体実効抵抗で0.626Ω/km。約3割違います。
テスターの抵抗レンジで見えるのも、通電していない電線の抵抗分だけで、リアクタンスは含まれません。周波数を指定してZを測るには、LCRメータやインピーダンスアナライザを使います(HIOKI)。
単心ケーブルの並べ方を図面どおりにしない。 前述のとおり、3条を離して平積みにするとXは俵積みの約1.7倍になります。日本電線工業会の資料は、同相を何条も並べる配列は個別に検討する必要があるとしています。
力率の悪い負荷を力率1で計算する。 式の は力率が下がるほど大きくなります。モーターの始動電流のように力率の低い電流が流れる場面では、力率1の計算よりも電圧降下が大きくなります。
関連情報
- 用語:インピーダンス/表皮効果
- 短絡(ショート)とは?短絡電流が大きくなる理由
- 進相コンデンサによる力率改善
- CVケーブルとは|CVTとの違いと太さの決め方
- ケーブル大百科(電線・ケーブル図鑑)
- 電圧降下・電線サイズ計算ツール
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