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電気に関する基礎理論 ・ 4 / 10

電力の公式

読み終えると、こうなる

ドライヤーとケトルの背面に書かれた「1200W」という表示だけを見て、その組み合わせがブレーカーを落とすかどうかをその場で判断できるようになる

  • 回路に抵抗とコイル・コンデンサが混ざっていたら、消費電力を求める前にまず抵抗だけを指さして絞り込める
  • 力率が書かれた問題では、I=P/(V×cosθ)の分母に力率を置き、力率を見落として電流を小さく見積もる誤りを避けられる
  • 分岐回路につながる家電のW数を足し算し、20A×100V=2000Wの上限と比べてブレーカーが落ちるかを判定できる
考えてみよう

洗面所でドライヤーを使いながら、キッチンで電気ケトルのスイッチを入れた瞬間、ブレーカーが落ちた。

ドライヤーの消費電力は1200W前後、電気ケトルも同じく1200W前後。どちらも家電量販店のカタログでよく見かける、ごく普通の数字だ。分岐回路のブレーカーは20A・100Vという、これもよくある組み合わせ。

パッケージに書かれた「1200W」という表示だけを見て、この組み合わせがブレーカーを落とすかどうか、その場で判断できるだろうか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、ワット数の表示を見ただけでその場で判断できるようになっている。

種明かしは、電力 PP(ワット)が電圧 VV・電流 II・抵抗 RR とどう結びついているかにある。

P=V×I=I2R=V2RP = V \times I = I^2 R = \frac{V^2}{R}

3つとも同じ電力を、分かっている値(電圧と電流/電流と抵抗/電圧と抵抗)に合わせて表しただけの言い換えだ。

例題

100Vの電源で流れる電流が5Aのとき、消費電力は何Wか。

P=V×I=100×5=500WP = V \times I = 100 \times 5 = 500\text{W}
$P = V \times I$ は、電圧と電流さえ分かれば、回路がどれだけの電力を扱っているかをその場で計算できるということだ。これは自宅の分電盤にも、そのまま当てはめられる。

洗面所やキッチンでよく使われる分岐回路は、20A・100Vの組み合わせが一般的だ。この回路が安全に扱える電力の上限は、P=VIにそのまま数字を入れれば出てくる。

P=V×I=20×100=2000WP = V \times I = 20 \times 100 = 2000\text{W}

つまり、この回路につながった家電の消費電力を単純に足し算し、その合計が2000Wを超えるかどうかで、ブレーカーが落ちるかどうかの見当がつく。たとえば500Wの家電と800Wの家電を同時に使っても合計1300Wで上限内に収まるが、家電の組み合わせによっては、この上限をあっさり超えてしまうこともある。

抵抗を求める形に、式を裏返す

P = VI = I²R = V²/R は「電力を求める式」として覚えるが、試験では 電力と電流(または電圧)が分かっていて、抵抗を答えさせる向きでも問われる。 そのときは同じ式を R について解き直すだけだ。

分かっているもの抵抗を求める式
電力 P と 電流 IR = P / I²
電力 P と 電圧 VR = V² / P
電圧 V と 電流 IR = V / I(オームの法則そのもの)
**P = I²R** の両辺を I² で割れば **R = P/I²**。 **P = V²/R** の両辺に R を掛けて P で割れば **R = V²/P**。

覚え直すのではなく、元の3つの式から、その場で移項するのが確実だ。 選択肢には R = P/I や R = V/P のような、2乗を落とした形が必ず混ぜてある。 2乗が付くのは「電流と組む側は I²」「電圧と組む側は V²」—— 元の式 P = I²R と P = V²/R の形を思い出せば、どちらに2乗が付くかで迷わない。

抵抗とリアクタンスが直列に並んだら、まず1つの数にまとめる

交流回路の問題では、負荷が「抵抗8Ωとリアクタンス6Ωの直列」というように、2つの数で書かれていることがある。このまま足して14Ωにしてはいけない。抵抗とリアクタンスは足し算では合成できない。

理由は、2つが電流に対してかける「遅らせ方」が違うからだ。抵抗は電圧と電流の向きをそろえたまま働くが、リアクタンスは90度ずらして働く。向きが直角にずれた2つの量を合わせるには、直角三角形の斜辺を求めることになる。

Z=R2+X2Z = \sqrt{R^2 + X^2}

$R=8$、$X=6$なら $Z=\sqrt{64+36}=\sqrt{100}=10$〔Ω〕。試験に出る組合せは**3:4:5** と **5:12:13** の直角三角形がほとんどで、$(3,4,5)$を2倍した$(6,8,10)$、4倍した$(12,16,20)$あたりが繰り返し使われる。ルートの計算に詰まったら、この2つの三角形を思い出す。

三相回路でも手順は変わらない。各相のインピーダンスZZを先に1つの数にまとめてから、相電圧・相電流を出し、三相分をまとめる。Δ結線なら相電圧は線間電圧そのもの、Y結線なら線間電圧を3\sqrt{3}で割ったものが相電圧になる、という関係はそのあとの話だ。まずZZ、次に結線という順番を崩さないことが、三相の計算で迷わないコツになる。

消費電力を聞かれたときも、注意すべき点は1つ。電力を消費するのは抵抗RRだけで、リアクタンスXXは電力を消費しない(受け取ってはまた返している)。だから三相の全消費電力は P=3I2RP = 3 I^2 R という形でも求められる。ZZではなくRRを使う——ここを取り違えると、答えがZ/RZ/Rの比だけずれる。

式そのものを選ばせる問題 — 記号のまま書けるようにする

数値が与えられれば計算できるのに、選択肢が4つとも「式」だと手が止まることがある。記号のまま書いた形を、いくつか用意しておく。

抵抗RRとリアクタンスXXが直列の回路の力率

Z=R2+X2cosθ=RZ=RR2+X2Z = \sqrt{R^2 + X^2} \qquad \cos\theta = \frac{R}{Z} = \frac{R}{\sqrt{R^2+X^2}}

百分率で答えさせるなら、これを100倍する。分子はRRだけ、分母はルートの中にR2R^2X2X^2——この形を覚えておけば、XXが分子に来ている肢や、ルートが付いていない肢はその場で消せる。

電力量から力率を逆算する

三相電動機に電圧VV〔V〕・電流II〔A〕をtt〔h〕加えて、電力量がWW〔kW·h〕だったとする。力率を求める式はどうなるか。

  1. 三相の電力は P=3VIcosθP = \sqrt{3} V I \cos\theta〔W〕
  2. 電力量は W=PtW' = P t〔W·h〕。ただし与えられているのはkW·hなので、W=W×1000W' = W \times 1000
  3. 整理すると cosθ=W×10003VIt\cos\theta = \dfrac{W \times 1000}{\sqrt{3} V I t}。百分率にするならさらに100倍で W×1053VIt\dfrac{W \times 10^5}{\sqrt{3} V I t}
つまずくのは**kW·h → W·h の1000倍**と、**百分率の100倍**だ。この2つが掛かって $10^5$ という係数になる。選択肢に $10^3$ と $10^5$ が混ざっていたら、**単位がkWか、答えが%か**の2点を確認する。

式を選ぶ問題は計算しなくても解ける。分子・分母にどの記号が来るか係数の桁だけを見比べればよい。

三相3線式の電力損失

電線路で失われる電力は Ploss=I2r×P_{loss} = I^2 r \times(電流が流れる電線の本数)。

  • 単相2線式 — 行きと帰りの2本 → 2I2r2I^2r
  • 単相3線式 — 平衡していれば中性線に電流が流れないので、外側の2本だけ → 2I2r2I^2r
  • 三相3線式3本すべてに電流が流れる3I2r3I^2r

単相3線式の「3本あるのに2本ぶん」という例だけを覚えていると、三相3線式も2本ぶんと勘違いしやすい。中性線があるかどうかが分かれ目で、三相3線式に中性線は無い。

大きな機器がそろって200Vである理由が、この式から読める

P=V×IP = V \times I を電圧の側から読み直すと、設備の設計思想が見えてくる。同じ20Aの回路でも、100Vなら2000Wまで、200Vなら4000Wまで扱える。電流が同じであれば電線の太さもブレーカーの容量も変わらないのに、運べる電力だけが倍になる。IHクッキングヒーター、大型のエアコン、エコキュート、EV充電器——大きな電力を必要とする機器が軒並み200Vで作られているのは、この一行が理由だ。

今日できるのは、家電の裏や側面にある定格銘板を3つほど読んでみることだ。「AC100V 50/60Hz 1200W」のような表示が必ず貼られている。エアコンやIHがあれば、そこだけ200Vと書かれ、プラグの形も違っているはずだ。同じ壁のコンセントに見えて、実は2種類の電圧が家の中まで来ている。

この式が科目の早い段階で問われるのは、電気工事士が現場で最初にする判断がまさにこれだからだ。この回路に、この機器をつないでいいか。EV充電器の設置なら「200Vの専用回路を1本増やす」という工事になり、その回路が何Wまで扱えるかは P=VIP = VI に数字を入れれば即座に出る。これから確実に増えていく仕事の見積もりが、この掛け算から始まる。

冒頭のドライヤーとケトル、果たして2000Wの上限を超えていたのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 回路にリアクタンス(コイル・コンデンサ)を混ぜておき、電源電圧×全電流を消費電力として計算させる

    なぜ引っかかる抵抗とリアクタンスを組み合わせた回路の消費電力を問う形は繰り返し出題されている。電力を消費するのは抵抗だけで、リアクタンスは電力を消費しない。ところがP=VIが体に入っているほど、目についた電源電圧と電流を掛けてしまい、皮相電力を答えることになる。

    見破り方「消費電力」と書かれていたら、まず回路の中の抵抗を指さして、そこだけを見る。抵抗に流れる電流Iが分かれば P=I²R で必ず解ける。電源電圧を使いたくなったら、それが抵抗の両端電圧かどうかを確かめてからにする。

  2. P=V²/R の分子に、その抵抗の両端電圧ではなく電源電圧を入れさせる

    なぜ引っかかる直列回路では、電源電圧はそれぞれの抵抗に分かれてかかる。P=V²/R のVは「その抵抗の両端電圧」であって電源電圧ではない。並列回路なら両者は一致するので、並列でうまくいった解き方をそのまま直列に持ち込むと崩れる。

    見破り方3つの式のうち P=I²R だけは電圧を必要としない。直列回路で迷ったら電流を先に求め、I²R に逃げる。V²/R を使うときは、そのVがどの2点間の電圧かを図の上で指でなぞって確かめる。

  3. 力率が書かれているのに、P=VI で計算させる

    なぜ引っかかる単相交流の負荷について、電圧と消費電力と力率を与えて電流を答えさせる問題が繰り返し出ている。交流では電圧×電流のすべてが仕事になるわけではないので、P=VIcosθ が正しい。力率を見落として P÷V で止めた値も、必ず選択肢に置かれている。

    見破り方計算を始める前に、問題文に「力率」「cosθ」「%」の文字があるかを確認する。あれば必ず式のどこかに入る。電流を求めるなら I=P/(V×cosθ) で、力率は分母に来る。力率が下がるほど電流は増える、という向きで覚えておけば置き場所を間違えない。

参考文献・出典

理解度チェック(7問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、7問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用2問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 7 問正解

覚えておきたいポイント

  1. P = VI = I²R = V²/R の3つはすべて同じ電力を表す言い換え
  2. 分かっている値(電圧と電流/電流と抵抗/電圧と抵抗)によって使う式を選ぶ
  3. 20A・100Vの分岐回路が安全に扱える電力の上限は、P=VIから20×100=2000W。複数の家電を同時に使うときは、消費電力(W)を単純に足し算して2000Wと比較すればよい
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