先月の電気料金の請求書を見て、「今月、高くない?」と声が出た。心当たりといえば、暑さに耐えかねて、消費電力1000W前後のエアコンを1日8時間、まる1ヶ月つけっぱなしにしていたことくらいだ。
けれど請求書には「〇〇kWh」という見慣れない単位と合計金額が書いてあるだけで、そのうちどれだけがエアコンのせいなのか、計算のしかたが分からない。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、電卓を使わなくてもその場で答えられるようになっている。
請求書に書かれている「kWh(キロワット時)」という単位こそが、電気代の正体だ。家電の消費電力はW(ワット)で表示されるが、電気料金はその電力を「どれだけの時間使ったか」まで含めた電力量で計算される。
1000Whを1kWh(キロワット時)と呼ぶ。
例題
100Vの電源で1000W(1kW)のヒーターを2時間使用した場合の電力量は何kWhか。
家庭向け電気料金の単価は契約している電力会社やプランによって異なるが、目安として1kWhあたり31円前後(公益社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会が示す電力料金目安単価、税込。2026年時点でも広く使われている値)とされることが多い。消費電力・使用時間・単価の3つさえ分かれば、請求書を待たずに電気代を見積もれる。
ワット時とジュール——同じエネルギーの2つの名前
電力量には、もう1つ別の呼び名がある。理科で習ったJ(ジュール)だ。1Wとは「毎秒1Jのエネルギーを使うペース」のことなので、1Wのペースで1時間(3600秒)使い続ければ、
つまり1Wh=3600J、1kWh=3600kJ。電気料金の世界がWh、熱の世界がJという名前を使っているだけで、中身は同じエネルギーだ。電熱器やヒーターが消費した電力量は、ほぼそのまま熱に変わるから、学科試験では「消費電力量1kWhは何kJか」「電熱器を◯分使ったときの発熱量〔kJ〕はいくらか」という形で、この換算がそのまま出題される。たとえば500Wの電熱器を10分(600秒)使えば、500W × 600s = 300,000J = 300kJだ。kWhとkJを行き来できれば、解き方は今まで通りの掛け算と何も変わらない。
水を温めるのに、どれだけの電気が要るか
電熱器の問題は、「何Jの熱が出たか」で終わる形と、「水を何度上げられるか」まで問う形の 2段階がある。後者には、電気とは別の式がもう1本必要になる。
Q = m c ΔT
- Q:必要な熱量〔kJ〕
- m:質量〔kg〕(水は1L=1kg)
- c:比熱〔kJ/(kg·K)〕。水は 4.2
- ΔT:上げたい温度差〔K〕(℃の差と同じ値)
水の比熱4.2は、1kgの水を1K上げるのに4.2kJ要るという意味だ。これだけ覚えておけばいい。
電気の側と、熱の側をつなぐ
2つの式を、エネルギーという同じ土俵でつなぐ。
| 側 | 式 |
|---|---|
| 電気が出した仕事 | W = P t〔kJ〕(Pは kW、t は 秒)または 1kWh = 3600kJ |
| 水が受け取った熱 | Q = m c ΔT〔kJ〕 |
損失がなければ W = Q。効率 η があるなら W × η = Q になる。
- 必要な熱量 … Q = 60 × 4.2 × 20 = 5040kJ
- kWhへ換算 … 1kWh = 3600kJ なので、5040 ÷ 3600 = 1.4kWh
比熱を掛け忘れると 60×20=1200 のような値になり、 kWh換算を忘れると 5040 という桁違いの数字になる。 「質量 × 比熱 × 温度差」でkJを出してから、3600で割ってkWhにする—— この2手を順番どおりに踏めば、途中でどちらを忘れたかも分かる。
電気代の犯人は、ワット数の大きい家電とはかぎらない
kWhは電力と時間の掛け算だから、効いてくるのはW数そのものではなく、W数と時間の積のほうだ。1200Wのドライヤーを毎日10分使っても1か月で約6kWh。一方、消費電力が100W前後でも24時間動き続ける冷蔵庫は、1か月では70kWhを超える。ワット数の大きさに驚いて節電の的を外す、という失敗はここから起きる。
今日試せることがある。契約している電力会社のサイトやアプリでは、スマートメーターが記録した30分ごとの使用量を見られることが多い。深夜、誰も何も操作していない時間帯の値が、あなたの家で「何もしていなくても流れ続けている電気」だ。そこが平らに高ければ、犯人は待機電力か常時運転の機器で、そこを削れば毎月ずっと効き続ける。
この単位の重みは、これから増していく。太陽光で発電した分を自分で使うのか売るのか、蓄電池にためた電気をいつ放電するのか、EVをいつ充電するのか——どれも「同じ1kWhでも、いつ使うかで価値が変わる」という話だ。電力量は料金の計算式であると同時に、これからの設備をどう組むかを決める物差しでもある。
冒頭のエアコンの電気代がどれくらい上乗せされたのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。