コンセントに挿した延長コード、家電を使っている最中でも素手で握って何ともない。ところが使い込んで古くなり、被覆が破れて中の心線(銅線)が見えている部分にうっかり触れた瞬間、ビリッときた。
電源につながっているという点では、被覆の上もむき出しの部分も同じ1本の電線だ。それなのに、触れる場所が数センチ違うだけで安全と危険がはっきり分かれるのはなぜだろう。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、その理由がはっきり説明できるようになっている。
電気の通しやすさによって、物質は大きく2つに分けられる。
導体は、電気を通しやすい物質だ。銅・アルミニウムなど、自由電子が多く動きやすい金属が代表例で、電線の心線に使われる。
一方の絶縁体(不導体)は、電気をほとんど通さない物質。ビニル(塩化ビニル樹脂)・ゴム・磁器(がいし)などが該当し、電線の被覆や、充電部を保護する部材に使われる。
導体の電気の通しやすさは「導電率」、通しにくさは「抵抗率」で表す。同じ長さ・太さの電線でも、材質によって抵抗値が変わるのはこの抵抗率の違いによるものだ(詳しくは次のトピック「電線の抵抗」で扱う)。
普段コードを素手で触っても平気なのは、この被覆のおかげだ。ところが被覆が破れて心線が露出すると、そこはもう導体がむき出しの状態になる。人体もある程度電気を通すため、そこに触れると、電流にとって新たな通り道が体を通ってできてしまう。同じ1本の電線でも、触れる場所によって安全と危険がはっきり分かれるのは、この導体と絶縁体の二重構造ゆえだ。
絶縁は「ある・ない」ではなく、少しずつ減っていく
導体と絶縁体という分け方は、突き詰めれば程度の差だ。絶縁体もごくわずかには電気を通すし、その「通しにくさ」は年月とともに落ちていく。熱・紫外線・振動・湿気で被覆は劣化し、抵抗値は下がっていく。だから電気工事では、工事が終わったあとに絶縁抵抗計で数値を測って記録する。電気設備技術基準では、対地電圧150V以下の回路なら0.1MΩ以上、300V以下のその他は0.2MΩ以上、300Vを超えるものは0.4MΩ以上と定められている。「絶縁されているか」ではなく「何MΩ残っているか」で管理する世界だ。
今日できるのは、何年も挿しっぱなしのプラグを1本抜いてみることだ。刃の根元に灰色のホコリが積もっていたら、それは絶縁体の表面に電気の通り道ができかけている状態で、湿気を吸うと発熱・発火につながる(トラッキング現象)。拭き取るだけで、家のリスクが今日ひとつ減る。
面白いのは、導体と絶縁体のちょうど中間に半導体があり、しかもその通しやすさを電気信号で切り替えられることだ。この「中間」の物質を手に入れたことが、インバータも、太陽光のパワーコンディショナも、EVの制御も可能にした。導体と絶縁体を分けて覚えることは、その間に何があるのかを知る入口でもある。
冒頭の延長コードでビリッときたのはなぜか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。