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電気に関する基礎理論 ・ 6 / 10

導体と絶縁体

読み終えると、こうなる

使い込んで被覆が破れた電線で、なぜ触れる場所によって安全と感電がはっきり分かれるのかを、その場で見分けられるようになる

  • 「周囲の温度が高いほど許容電流は大きくなる」のような記述を見たら、熱がこもる向きか逃げる向きかを判定して誤りを見分けられる
  • 抵抗率ρを求める式を暗記に頼らず、R=ρL/Aからその場で移項して作り直せる
  • 直径で書かれた電線が出てきたら、まず半径に直して断面積πD²/4を組み立て、4を割り忘れる計算ミスを防げる
考えてみよう

コンセントに挿した延長コード、家電を使っている最中でも素手で握って何ともない。ところが使い込んで古くなり、被覆が破れて中の心線(銅線)が見えている部分にうっかり触れた瞬間、ビリッときた。

電源につながっているという点では、被覆の上もむき出しの部分も同じ1本の電線だ。それなのに、触れる場所が数センチ違うだけで安全と危険がはっきり分かれるのはなぜだろう。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、その理由がはっきり説明できるようになっている。

電気の通しやすさによって、物質は大きく2つに分けられる。

導体は、電気を通しやすい物質だ。銅・アルミニウムなど、自由電子が多く動きやすい金属が代表例で、電線の心線に使われる。

一方の絶縁体(不導体)は、電気をほとんど通さない物質。ビニル(塩化ビニル樹脂)・ゴム・磁器(がいし)などが該当し、電線の被覆や、充電部を保護する部材に使われる。

導体の電気の通しやすさは「導電率」、通しにくさは「抵抗率」で表す。同じ長さ・太さの電線でも、材質によって抵抗値が変わるのはこの抵抗率の違いによるものだ(詳しくは次のトピック「電線の抵抗」で扱う)。

電線は、電気を通しやすい導体(心線)を、電気をほとんど通さない絶縁体(被覆)でくるんだ二重構造になっている。だからこそ、被覆の上から触れているかぎり、触れているのは絶縁体だけだ。

普段コードを素手で触っても平気なのは、この被覆のおかげだ。ところが被覆が破れて心線が露出すると、そこはもう導体がむき出しの状態になる。人体もある程度電気を通すため、そこに触れると、電流にとって新たな通り道が体を通ってできてしまう。同じ1本の電線でも、触れる場所によって安全と危険がはっきり分かれるのは、この導体と絶縁体の二重構造ゆえだ。

絶縁は「ある・ない」ではなく、少しずつ減っていく

導体と絶縁体という分け方は、突き詰めれば程度の差だ。絶縁体もごくわずかには電気を通すし、その「通しにくさ」は年月とともに落ちていく。熱・紫外線・振動・湿気で被覆は劣化し、抵抗値は下がっていく。だから電気工事では、工事が終わったあとに絶縁抵抗計で数値を測って記録する。電気設備技術基準では、対地電圧150V以下の回路なら0.1MΩ以上、300V以下のその他は0.2MΩ以上、300Vを超えるものは0.4MΩ以上と定められている。「絶縁されているか」ではなく「何MΩ残っているか」で管理する世界だ。

今日できるのは、何年も挿しっぱなしのプラグを1本抜いてみることだ。刃の根元に灰色のホコリが積もっていたら、それは絶縁体の表面に電気の通り道ができかけている状態で、湿気を吸うと発熱・発火につながる(トラッキング現象)。拭き取るだけで、家のリスクが今日ひとつ減る。

面白いのは、導体と絶縁体のちょうど中間に半導体があり、しかもその通しやすさを電気信号で切り替えられることだ。この「中間」の物質を手に入れたことが、インバータも、太陽光のパワーコンディショナも、EVの制御も可能にした。導体と絶縁体を分けて覚えることは、その間に何があるのかを知る入口でもある。

冒頭の延長コードでビリッときたのはなぜか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 4つの記述のうち3つを正しく書いておき、1つだけ向きを逆にして「誤っているものはどれか」と聞く

    なぜ引っかかるビニル絶縁電線の抵抗と許容電流をまとめて4つの記述に並べ、そのうち1つだけ向きを反転させる形式が繰り返し出ている。仕込まれる場所は決まって温度と許容電流の関係だ。抵抗についての記述(長さに比例する・直径の2乗に反比例する)は正しく書かれているので、そちらを読んで安心したところで、温度の1文を読み流してしまう。

    見破り方許容電流は「絶縁被覆が温度の限界に達しない範囲で流せる電流」だから、周囲がもともと暑ければ余裕は減る=許容電流は小さくなる。温度が絡む記述を見つけたらその1文だけ切り出し、熱がこもる方向か逃げる方向かを判定する。設問が「正しいもの」ではなく「誤っているもの」を求めていることの確認も忘れない。

  2. 抵抗率ρを表す式を選ばせ、長さLと断面積Aの位置を入れ替えた式を混ぜる

    なぜ引っかかる抵抗率を表す式も、導線の電気抵抗を表す式も、どちらも繰り返し出題されている。R=ρL/A を変形すれば ρ=RA/L だが、元の式の形(Lが上、Aが下)に引きずられて ρ=RL/A を選んでしまう。形が似た4つの式が並ぶため、記憶をたどるほど当たらない。

    見破り方式を選ぶ問題は、覚えた形を探すのではなく、その場で R=ρL/A から移項して作る。仕上げに単位で検算するのも有効で、抵抗率の単位はΩ·mだから、Ω×m²÷m=Ω·m になる ρ=RA/L だけが単位の帳尻が合う。

  3. 直径Dから式を組ませ、断面積 πD²/4 の「4で割る」を落とさせる

    なぜ引っかかる導線の電気抵抗を式で答えさせる問題では、選択肢が半径ではなく直径Dで書かれている。円の面積は半径の2乗×πなので、直径で書くと πD²/4 になる。この4を落とした式(ρL/(πD²) の形)が、もっともらしい顔をして必ず並んでいる。

    見破り方直径が出てきたら、まず半分にして半径に直してから面積を作る。断面積 A=π(D/2)²=πD²/4 と、途中式を1行だけ書く癖をつければ、4は消えようがない。

参考文献・出典

理解度チェック(7問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、7問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用2問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 7 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 導体:銅・アルミニウムなど、電気を通しやすい金属。電線の心線に使われる
  2. 絶縁体(不導体):ビニル・ゴム・磁器など、電気をほとんど通さない。電線の被覆に使われる
  3. 電線は導体(心線)を絶縁体(被覆)で覆う二重構造。被覆の上から触れば絶縁体に触れているだけだが、被覆が破れて心線が露出すると、そこは導体がむき出しの状態になる
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