現場で使う延長コード。電源のコンセント(単相2線式・100V)から50m先の電動工具まで電気を送ったところ、電源側ではたしかに100Vなのに、工具のプラグ部分で電圧を測ると97V程度まで下がっていた。
電線はただの導線で、スイッチも抵抗器も入っていないはずだ。それなのになぜ、電線を通っただけで電圧が3Vも下がってしまうのか。
このトピックを読み終えるころには、この3Vという数字がどこから出てきたのか、自分で計算できるようになっている。
電線には抵抗があるため、電流が流れると電線自体でも電圧の一部が失われる。これが電圧降下だ。この量は配電方式によって計算式が異なる。電線1本あたりの抵抗を〔Ω〕、負荷電流を〔A〕とすると、実務・試験で使われる近似式は次の通り。
| 配電方式 | 電圧降下の近似式 | 理由 |
|---|---|---|
| 単相2線式 | 電流は電圧線・接地側電線の往復2本分を流れるため | |
| 単相3線式(平衡時) | 中性線に電流が流れないため、電圧線1本分の降下のみ | |
| 三相3線式 | 3線が120度ずつ位相がずれているため、ベクトル合成すると2倍でなく√3倍になる |
例題
単相2線式で、電線1本の抵抗が0.1Ω、負荷電流が10Aのときの電圧降下はいくらか。
例題
三相3線式で、電線1本の抵抗が0.05Ω、線電流が20Aのときの電圧降下はいくらか(として計算)。
現場では、単に許容電流を満たすだけでなく、「配電方式×配線の長さ×負荷電流」から電圧降下を計算し、末端での電圧降下が基準値以内に収まるように電線の太さを決める。ここで学んだ・・という3つの式は、当サイトの電圧降下計算ツールの内部でもそのまま使われている計算ロジックだ。実際に数値を入れて、配電方式を切り替えたときに結果がどう変わるか試してみると理解が深まる。
特定の2点間の電圧は、「差し引いた残り」で出す
単相3線式で「a-b間の電圧はいくらか」と2点を指定される形がある。 公式を探すのではなく、電源電圧から、そこまでに失われた分を差し引くと考える。
手順
- その2点にたどり着くまでに、どの電線を通ってきたかを指でなぞる
- 通った各区間で 電圧降下 = 電流 × その区間の抵抗 を出す
- 電源電圧から、往復ぶんの電圧降下を引く
例:電源208V、上下の電圧線がそれぞれ0.2Ω、負荷電流が両側とも等しいとき、 負荷端a-b間の電圧は、208V から上側の0.2Ωでの降下と下側の0.2Ωでの降下を 両方引いた値になる。中性線には電流が流れないので、中性線での降下は0だ。
指定された2点が「中性線をまたぐ200V側」なのか「中性線と片側の100V側」なのかで、 通る電線が変わる。200V側なら上下の電圧線を2本とも通る、 100V側なら電圧線1本と中性線を通る(中性線の降下は0)。 まずどちらの電圧を聞かれているかを確かめてから、通る線を数える。
負荷が2か所あるなら、区間ごとに電流が変わる
配電線の途中に負荷がぶら下がっていると、区間によって流れる電流が違う。 1つの式で最後まで通そうとすると合わない。
電源から順に a→b→c と進み、b と c に負荷があるとする。
| 区間 | そこを流れる電流 |
|---|---|
| a〜b | b の負荷電流 + c の負荷電流(下流ぶんの合計) |
| b〜c | c の負荷電流だけ |
つまり上流ほど電流が大きい。区間ごとに電流が違うので、電圧降下も区間ごとに計算して足す。
下流の電圧が分かっているときは、逆にたどる
問題は「c-c’間が100Vのとき、a-a’間は何Vか」という向きで出ることがある。 このときは下流から上流へ足し戻す。
a-a’間 = c-c’間の電圧 + b〜c間の電圧降下 + a〜b間の電圧降下
だから下流(c)から上流(a)へ向かうときは足す、 上流から下流へ向かうときは引く。
そして足す電圧降下は、その区間を流れる電流で計算する。 a〜b区間は下流の負荷を全部背負っているので電流が大きく、電圧降下も大きい。 全区間を同じ電流で計算すると、必ず答えがずれる。
電圧降下の隣にある、もう1つの答え — 電力損失
同じ配線について、電圧降下〔V〕ではなく電力損失〔W〕を聞かれることがある。 式が違うので、ここで止まる人が多い。
電力損失は P = I²R(電線で熱として捨てられる分)。電圧降下 e = 2IR とは別の式だ。
| 聞かれているもの | 式 | 単位 |
|---|---|---|
| 電圧降下 | e = 2IR(単相2線式) | V |
| 電力損失 | P = I²R × 電線の本数 | W |
電線の本数を掛けるのを忘れやすい。電圧降下の式で「2」を掛けるのは行きと帰りの2本ぶんだが、 電力損失も電流が流れている電線の数だけ熱が出る。
単相3線式なら、中性線を数に入れない
単相3線式で平衡しているとき、中性線には電流が流れない。だから中性線では熱も出ない。
電力損失 = I²R × 2(電圧線2本ぶんのみ)
- どの電線に、いくら電流が流れているかを確定する
- 電流が流れている電線の本数を数える(単相3線式の平衡時なら2本、中性線は除く)
- I²R に本数を掛ける
平衡している単相3線式で、電圧線の抵抗が0.1Ω・電流10Aなら、 10² × 0.1 × 2 = 20W になる。中性線を含めて3本で計算すると30Wになり、 選択肢にはその誤答も用意されている。
「不平衡なら中性線にも電流が流れる」ので、そのときは中性線ぶんも足す。 平衡かどうかを先に確かめるのが、この問題の入口だ。
逆から使う — 電圧降下の上限から、電線の太さを選ぶ
は「太さが決まっていて、電圧降下がいくつになるか」を出す式だった。ところが実務で本当に必要なのは、その逆だ。電圧降下を◯V以内に抑えたい。ではどの太さの電線を使えばいいのか。
出題もこの形で来る。「電線1条当たりの抵抗〔Ω/km〕」の表が与えられ、条件を満たす最小の太さを選ばせる。
手順は3つだ。
- 許される抵抗を逆算する — をについて解く。
- こう長で割って、1km当たりに直す — 表が〔Ω/km〕なので、こちらも単位を合わせる
- 表を引いて、その値以下になる最小の太さを選ぶ
具体的にやってみる。負荷電流10A、こう長50m、電圧降下を2V以内に抑えたいとする。
- 許される1条当たりの抵抗:〔Ω〕
- こう長50mは 0.05km。1km当たりに直すと 〔Ω/km〕
- 表から、2.0Ω/km以下になる最小の太さを選ぶ
もう1つ、選ぶのは「基準を満たす最小の太さ」であって、余裕のある太いものではない。太くすれば必ず基準は満たせるので、条件を満たす選択肢が複数出てきたときは、いちばん細いものが答えになる。
なぜ最小を選ぶのか。電線は太いほど高く、重く、曲げにくく、管にも入りにくい。基準を満たす範囲でいちばん細いものを選ぶのが設計の原則で、試験がわざわざ「最小の太さ」と書いてくるのはそのためだ。許容電流の表を引くときも、分岐回路の電線を選ぶときも、同じ考え方が通っている。
「遠いから暗い」を、数字で説明できるようになる
離れのガレージの照明が妙に暗い、倉庫の奥のコンセントで電動工具が力不足になる——現場でよくあるこの手の症状は、たいてい距離が原因だ。式が使えると、原因を言い当てるだけでなく対策の選択肢まで並べられる。電線を太くしてを下げるか、単相3線式にして係数を2から1に落とすか、あるいは電源を取る位置そのものを変えるか。冒頭の3Vという損失も、電線を1サイズ太くするだけで目に見えて小さくなる。
試すなら電圧降下計算ツールに思いついた条件を入れ、配電方式だけを切り替えてみるといい。同じ距離・同じ電流でも結果が変わるのが一目で分かる。電圧降下が許容電流とは別に管理されるのは、電圧が下がるとモーターがかえって大きな電流を引き、発熱するからだ。この計算が効く場面はむしろ増えていて、駐車場まで長く引くEV充電の配線や、PoE給電のLANケーブルは、まさに距離との勝負になる。
冒頭の延長コードでなぜ97Vまで下がったのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。