新人の電気工事士が、平屋の倉庫に低圧架空引込線を取り付ける工事に立ち会った。教科書には「引込線取付点の高さは地表上4m以上」と書いてある。しかし現地は軒が低く、どうしても4mを確保できない。実際に取り付けられた高さを測ってみると3mだった。
「4m未満だから、この工事は基準違反ではないか」と新人は先輩に尋ねた。先輩は「大丈夫、この現場ならこれでいい」と即答した。なぜ、教科書の「4m以上」という基準を下回っているのに、これは違反にならないのか。
このトピックを読み終えるころには、先輩がなぜ即答できたのか分かるようになっている。
「引込線」とは、電力会社の配電線から建物の引込口(電力量計付近の取付点)までをつなぐ電線のことだ。原則として1つの需要場所(建物)につき1回線で引き込む。
引込線取付点の高さ(低圧架空引込線の場合の目安)は次の通り。
- 一般の場所: 地表上4m以上
- 道路を横断する場合: 路面上5m以上(技術上やむを得ず交通に支障がない場合は3m以上)
- 鉄道・軌道を横断する場合: レール面上5.5m以上
- 技術上やむを得ない場合で交通に支障がないとき: 2.5m以上に緩和できる
この「4mと2.5m」の使い分けは学科試験でも繰り返し出題される定番テーマだ。問題文に「技術上やむを得ない場合で、交通に支障がないとき」という条件が明記されているかどうかで、正しい答え(4m以上か2.5m以上か)が変わる点に注意したい。平屋で軒が低く物理的に4mを確保できない、といった状況が「技術上やむを得ない場合」の典型例とされる。道路横断の「5m以上/やむを得ず3m以上」という緩和も、考え方はまったく同じ構造だ。
見上げた引込線の高さから、その現場の事情が読める
4m、5m、5.5m、2.5mと数字が4つも並ぶが、決めているのは一つの問いだけだ。「その電線の下を、何が通るのか」。人が歩くだけの敷地なら4m、車が走る道路をまたぐなら5m、鉄道の車両と架線があるなら5.5m。下を通るものが大きくなるほど高さが要る、と考えれば暗記せずに並べ替えられる。今日の帰り道、電柱から家々へ伸びる引込線を見上げてみるといい。道路をまたいでいる線と、敷地の中で完結している線とで、高さが明らかに違うことに気づくはずだ。
緩和条件が用意されているのも同じ理屈で、平屋の倉庫のように物理的に4mを取れない建物は現実に存在する。基準を「禁止のリスト」として読むと2.5mは抜け道に見えるが、「どういう条件がそろえば安全と言えるか」を書いた設計の言葉として読めば、条件のほうが本体だと分かる。引込線は建物の電気の入口であり、容量を増やす工事も、建設現場の仮設電源の設計も、まずここから始まる。
冒頭の倉庫で先輩がなぜ即答できたのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。