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配電理論及び配線設計 ・ 3 / 7

引込線の基礎ルール

読み終えると、こうなる

「4m以上」という教科書の数字が絶対値ではなく、条件がそろえば動く境界線だと見抜けるようになる

  • 「技術上やむを得ない場合で、交通に支障がないとき」という条件の有無だけで、4m以上か2.5m以上かをその場で判定できる
  • 一般の場所の緩和(2.5m)と道路横断の緩和(3m)を原則値とペアで呼び出し、近い数字の取り違えを防げる
  • 見上げた引込線の高さから、その下を人が歩くだけなのか車が通るのか鉄道が通るのかを逆に言い当てられる
考えてみよう

新人の電気工事士が、平屋の倉庫に低圧架空引込線を取り付ける工事に立ち会った。教科書には「引込線取付点の高さは地表上4m以上」と書いてある。しかし現地は軒が低く、どうしても4mを確保できない。実際に取り付けられた高さを測ってみると3mだった。

「4m未満だから、この工事は基準違反ではないか」と新人は先輩に尋ねた。先輩は「大丈夫、この現場ならこれでいい」と即答した。なぜ、教科書の「4m以上」という基準を下回っているのに、これは違反にならないのか。

このトピックを読み終えるころには、先輩がなぜ即答できたのか分かるようになっている。

「引込線」とは、電力会社の配電線から建物の引込口(電力量計付近の取付点)までをつなぐ電線のことだ。原則として1つの需要場所(建物)につき1回線で引き込む。

引込線取付点の高さ(低圧架空引込線の場合の目安)は次の通り。

  • 一般の場所: 地表上4m以上
  • 道路を横断する場合: 路面上5m以上(技術上やむを得ず交通に支障がない場合は3m以上)
  • 鉄道・軌道を横断する場合: レール面上5.5m以上
  • 技術上やむを得ない場合で交通に支障がないとき: 2.5m以上に緩和できる
「4m以上」はあくまで原則であって、絶対値ではない。「技術上やむを得ない場合で、交通に支障がないとき」という条件がそろえば、2.5m以上まで緩和が認められる。

この「4mと2.5m」の使い分けは学科試験でも繰り返し出題される定番テーマだ。問題文に「技術上やむを得ない場合で、交通に支障がないとき」という条件が明記されているかどうかで、正しい答え(4m以上か2.5m以上か)が変わる点に注意したい。平屋で軒が低く物理的に4mを確保できない、といった状況が「技術上やむを得ない場合」の典型例とされる。道路横断の「5m以上/やむを得ず3m以上」という緩和も、考え方はまったく同じ構造だ。

見上げた引込線の高さから、その現場の事情が読める

4m、5m、5.5m、2.5mと数字が4つも並ぶが、決めているのは一つの問いだけだ。「その電線の下を、何が通るのか」。人が歩くだけの敷地なら4m、車が走る道路をまたぐなら5m、鉄道の車両と架線があるなら5.5m。下を通るものが大きくなるほど高さが要る、と考えれば暗記せずに並べ替えられる。今日の帰り道、電柱から家々へ伸びる引込線を見上げてみるといい。道路をまたいでいる線と、敷地の中で完結している線とで、高さが明らかに違うことに気づくはずだ。

緩和条件が用意されているのも同じ理屈で、平屋の倉庫のように物理的に4mを取れない建物は現実に存在する。基準を「禁止のリスト」として読むと2.5mは抜け道に見えるが、「どういう条件がそろえば安全と言えるか」を書いた設計の言葉として読めば、条件のほうが本体だと分かる。引込線は建物の電気の入口であり、容量を増やす工事も、建設現場の仮設電源の設計も、まずここから始まる。

冒頭の倉庫で先輩がなぜ即答できたのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 「技術上やむを得ない場合で、交通に支障がないとき」という一文の有無だけで、正解を4mと2.5mの間で振り替える

    なぜ引っかかる引込線取付点の高さは繰り返し出題される定番で、原則の4m以上と緩和後の2.5m以上のどちらを答えるかは、問題文にこの条件が書かれているかだけで決まる。数字を覚えていても、長い問題文の中の条件節を読み飛ばすと逆の答えになる。

    見破り方問題文の中の「技術上やむを得ない」「交通に支障がない」という2つの語に、読みながら印を付ける。両方そろっていれば緩和値、片方でも欠けていれば原則値。条件が本体で、数字はその結論にすぎない、という順序で読む。

  2. 一般の場所の緩和値2.5mと、道路横断の緩和値3mを入れ替える

    なぜ引っかかる緩和が用意されているのは一般の場所(4m→2.5m)だけではなく、道路を横断する場合(5m→3m)にもある。2.5と3という近い数字が2組あるため、どちらの緩和かを取り違えると、もっともらしい誤答を選ぶことになる。

    見破り方先に「どこを通る線か」を確定させてから、原則値と緩和値の組を呼び出す。一般の場所は4mと2.5m、道路横断は5mと3m、と必ずペアで覚える。数字を単独で覚えると、この2組は必ず混ざる。

  3. 選択肢に2.5m・3m・4m・5m・5.5mを並べ、条件を1つ読み落とせば必ずどれかに当たるようにしておく

    なぜ引っかかるこの論点に登場する数字は5つしかなく、しかもそのすべてが選択肢に並ぶ。つまり「どこを通るか」「やむを得ない事情があるか」のどちらかを読み落とした答えは、必ず用意された誤答のどれかに一致してしまい、間違えたことに気づけない。

    見破り方解く前に、問題文から「道路を横断」「鉄道・軌道を横断」「技術上やむを得ない」の3つのキーワードを探す作業を済ませる。どれも無ければ一般の場所の4mと決め打ちできる。下を通るものが大きいほど高さが要る(人4m・車5m・鉄道5.5m)という順序で並べ直せば、暗記に頼らず復元できる。

参考文献・出典

理解度チェック(6問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、6問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 6 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 引込線は電力会社の配電線から建物の引込口までをつなぐ電線で、原則1つの需要場所につき1回線で引き込む
  2. 低圧架空引込線の取付点の高さは、一般の場所で地表上4m以上が原則
  3. 技術上やむを得ない場合で交通に支障がないときは、2.5m以上に緩和できる
  4. 道路横断は路面上5m以上(やむを得ず交通に支障がなければ3m以上)、鉄道・軌道横断はレール面上5.5m以上
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