仮設単線結線図を受け取ると、主幹の欄にはたいてい「ELB 3P 100A 30mA」と書いてあります。その横の分岐は「MCB 2P 20A」と「接地極付コンセント」。盤屋も電材屋も、この構成を疑いません。では、なぜ30mAなのか。常設の盤では100mA以上の主幹も使われるのに、仮設になると数字が一段小さくなる理由を、条文で答えられる人は多くありません。
答えは労働安全衛生規則と、その下にある1974年の技術上の指針にあります。仮設電気は「仮だから安く」ではなく「仮だから一段厳しい」側に置かれていて、その理由は条文と、夏に集中する感電死亡の記録の両方に書かれています。
仮設電気の土台は労働安全衛生規則第333条です
建設現場の電気を縛る法令は、建物の屋内配線を定める電気設備技術基準ではなく、働く人を守る労働安全衛生規則(安衛則)が中心です。第333条第1項は、こう書いています。
事業者は、電動機を有する機械又は器具(以下「電動機械器具」という。)で、対地電圧が百五十ボルトをこえる移動式若しくは可搬式のもの又は水等導電性の高い液体によつて湿潤している場所その他鉄板上、鉄骨上、定盤上等導電性の高い場所において使用する移動式若しくは可搬式のものについては、漏電による感電の危険を防止するため、当該電動機械器具が接続される電路に、当該電路の定格に適合し、感度が良好であり、かつ、確実に作動する感電防止用漏電しや断装置を接続しなければならない。
対象には2つの入口があります。1つは対地電圧150Vを超える機器で、三相200Vの電動工具や水中ポンプがこれに当たります。もう1つは「湿潤している場所」「鉄骨上」で使う機器で、こちらには電圧の条件がありません。雨上がりの地面や鉄骨の上で使う100Vの電動ドリルも対象です。東芝ライテックの関連法規表はこれを表にしていて、湿潤・鉄骨上の欄は対地電圧150V以下でも設置義務ありになっています。
第2項は、漏電遮断器の接続が「困難なとき」の代替として金属製外枠の接地を定めています。第334条は適用除外を3つだけ挙げます。絶縁変圧器で非接地にした電路(二次電圧300V以下)、絶縁台の上での使用、そして電気用品安全法の特定電気用品の表示が付いた二重絶縁構造の電動機械器具です。「仮設だから」「短期間だから」という除外はありません。
30mA・0.1秒という数字は技術上の指針が決めています
第333条の本文には「感度が良好」としか書かれていません。数字を与えているのは、労働安全衛生法第28条に基づく「感電防止用漏電しゃ断装置の接続及び使用の安全基準に関する技術上の指針」(昭和49年7月4日 技術上の指針公示第3号)です。建災防の規程解説は第44条の関連法令にこの指針を挙げ、職場のあんぜんサイトの災害事例は「電流動作形のものにあっては動作感度電流がおおむね30mA」と要約しています。パナソニックの解説も「感電事故防止を目的として施設する漏電遮断器は、高感度・高速形のものであること。(感度電流30mA以下、動作時間0.1秒以内)」と書いています。
漏電遮断器の区分は、定格感度電流が30mA以下なら高感度形、30mAを超えると中感度形、動作時間が0.1秒以下なら高速形、0.1秒を超え2秒以内なら時延形です(三菱電機 技術資料集 図2.7、日本電気技術者協会)。仮設盤の主幹は、この高感度形と高速形の交点に置きます。日東工業の仮設盤の主幹開閉器の欄にある「(F30)」は、同社の注記では定格感度電流F(高速形)30mAの意味で、同社は製品ページに「労働安全衛生規則に準じています」と書いています。
使用前点検は毎日、建災防の規程では月1回の点検者指名も
第352条は、感電防止用漏電しゃ断装置の「作動状態」と、第333条第2項で接地した機器の「接地線の切断、接地極の浮上がり等の異常の有無」を、その日の使用を開始する前に点検するよう定めています。移動電線と接続器具の「被覆又は外装の損傷の有無」も同じ表にあります。技術上の指針は、テストボタンの動作確認をその日の使用開始時に求めています(三菱電機 技術資料集 付録の解説)。
建災防の建設業労働災害防止規程は、安衛則に自主基準を上乗せしています。第46条は、移動式・可搬式の電動機械器具とアーク溶接機について点検者を指名し、1月を超えない期間ごとに点検すること。第44条第3項は、電動機械器具に接続する移動電線を「単相用では3心、三相用では4心のものを使用し、そのうちの1心について専用の接地線」とすること。第2項は接地線の被覆を緑/黄のしま模様か緑色にすることです。現場の安全書類で「3心・4心」と指定される根拠はここにあります。
仮設盤の構成は主幹ELB・分岐MCB・接地極付コンセントが基本です
仮設盤は「キャビネットだけ」を買って盤屋が組む場合と、メーカーの完成盤を買う場合があります。完成盤の構成は各社でほぼ揃っています。
| 部位 | 構成の例(日東工業 動力仮設盤 KBP) | 判断の軸 |
|---|---|---|
| 主幹 | 3P 100A、開閉器 GE103A 3P 60A(F30=高速形30mA) | 高感度高速形であること。定格電流は現場の最大負荷と引込契約から |
| 分岐 | NE53A 3P 50A+端子台50A×2、3P 30A+端子台、3P 30A+接地極付コンセント3P 20A | 溶接機・ミキサー(三相)と電動工具・照明(単相)を分ける |
| コンセント | 接地極付 | 接地心を持つ3心・4心のキャブタイヤを差せること |
| 箱 | 屋外、IPX3(防水パッキン付・屋根あり)、オレンジ塗装 2.5YR6/14、持ち運び用取手 | 設置場所の雨がかりと盗難・いたずら対策(南京錠) |
| 価格 | 標準価格272,000円(税別) | 組替仕様・特注は別途 |
河村電器産業の仮設盤KCVも「主幹:ELB 分岐:MCB2P20A/コンセント付」の屋外用で、同じ考え方です。キャビネット単体なら、河村のSOK(鉄板1.6mm、IPX3、回転スライド収納式の取付ステー付)や、日東工業のFOK(FRP樹脂、IPX3、ハンドルが飛び出さないので保管時に段積み可、針金での一時固定ができる取付金具付)があります。
注意したいのはIPX3という等級です。日東工業はFOKの製品ページで「斜め下からの風雨などにさらされる場所(高所など)へのご使用はお避けください」と書いています。IPX3は上からの散水を想定した等級で、足場の高所に吊って下から吹き上げる雨を受ける置き方は、メーカーの想定外です。IP等級は扉を閉じた状態の試験なので、扉を開けたまま作業する時間が長い現場では等級どおりの保護にならないことにも注意します。
分岐回路の割り振りで、停電の範囲が決まります
仮設盤の分岐を三相(溶接機・ミキサー・ポンプ)と単相(電動工具・照明)に分けるのは、容量の都合だけではありません。主幹の漏電遮断器が30mAで動作すると、その盤の負荷はすべて止まります。職場のあんぜんサイトの災害事例は「感電防止のための漏電遮断器は、負荷を分割し、できるだけ小さい電流で作動するものを使用すること」を対策に挙げています。分岐ごとに漏電遮断器を持たせれば、1台の電動工具の漏電で現場全体が暗くなる事態を減らせます。ただし次に書くとおり、主幹も高速形のままでは分岐より先に切れないことを保証できません。
分岐ごとに漏電遮断器を置く場合、主幹と分岐の動作時間が同じ高速形だと、どちらが先に切れるかは特定できません。常設盤なら主幹を時延形にして協調させますが(ブレーカーの種類と選び方)、仮設盤では主幹が安衛則の対象電路そのものです。主幹を高感度高速形のまま残し、分岐は回路を細かく分ける方向で考えます。
仮設配線はVCT・2PNCTを3心・4心で、通路面は避けます
配線は盤と機器を結ぶキャブタイヤケーブルです。使用電圧でまず絞ります。三相200Vの動力に300VのVCTF(ビニルキャブタイヤ丸形コード)は使えず、600VのVCT(JIS C 3312)か2PNCT(JIS C 3327)を選びます。ビニル系のVCTは導体許容温度60℃、EPゴム絶縁・クロロプレンシースの2PNCTは80℃で、耐油・耐候・耐屈曲に優れます。屋外に敷きっぱなしにする幹線、重機のそば、低温の現場は2PNCTです。許容電流と外径はキャブタイヤケーブルの品種ハブにまとめています。
心数は、建災防規程に合わせて単相用3心・三相用4心で、1心を接地専用にします。神奈川労働局のチラシは、令和6年8月の死亡災害の原因に「中間のケーブルが2芯でアースが取れていない」「電源が2Pでアースが取れていない」というNG例を図で示しています。盤のコンセントが接地極付でも、途中の延長ケーブルが2心なら、接地は盤で切れています。
敷き方は安衛則第338条です。「事業者は、仮設の配線又は移動電線を通路面において使用してはならない」とし、ただし書きで「車両その他の物が通過すること等による絶縁被覆の損傷のおそれのない状態」なら認めています。車両が通る場所はケーブルプロテクターか架空に逃がし、第337条により、湿潤した場所では被覆がその液体に対して絶縁効力を持つものを使います。
電力契約は「臨時電灯・臨時電力」で、1年未満が条件です
仮設電気の引込は、電力会社の「臨時」契約で申し込みます。各社の公開条件を並べます。
| 項目 | 中部電力ミライズ | 東北電力 | 東京電力(FAQ) |
|---|---|---|---|
| 対象 | 臨時電灯A・B・C、臨時電力 | 道路工事現場や建設工事現場などの電灯・動力 | 1年未満の使用 |
| 期間 | (ページに明記なし) | 契約使用期間1年未満。毎年一定期間を限り繰り返し使う場合は契約不可 | 1年未満の使用に臨時料金を適用 |
| 電灯の区分 | A:3kVA以下(1日単位の定額)、B:40〜60A、C:6kVA以上50kVA未満 | A:3kVA以下、B:40・50・60A、C:6kVA以上50kVA未満 | — |
| 電力の区分 | 0.5kW以上50kW未満。定額制(5kW以下)は1kW1日につき、従量制は低圧電力の20%割増し | 契約電力50kW未満。夏季(7/1〜9/30)とその他季で単価が分かれる | — |
中部電力ミライズは2027年4月1日に供給条件の見直しを予告しています(2026-11-02時点)。
数字を見ると、臨時電灯Aは1日単位の定額で、電力量料金がありません。小さな現場で投光器と電動工具だけなら、日数で読める料金です。一方、臨時電力の従量制は中部電力ミライズで低圧電力の20%割増しです。工期が1年を超える見込み、あるいは毎年同じ時期に同じ場所で使う工事は臨時契約の対象外なので、はじめから通常の低圧電力で申し込みます。
東京電力のFAQは、1年契約を前提に増設した設備を1年未満で廃止すると、その部分を臨時料金で精算すると説明しています。「とりあえず常設契約で引いて早めに外す」は、料金面でも得になりません。
現場で間違いやすい点は、記録に残った事故が教えています
100Vだから安全、ではありません。 神奈川労働局・横浜西労働基準監督署のチラシ(R7.05)は、令和6年8月にプラント内の補修工事で、投光器を手に持った25〜29歳の作業者が100Vで感電死した災害を載せています。原因は4点で、アースが取れていなかったこと、電路上に漏電遮断器が無かったこと、延長ケーブルの補修不備、周囲が金属に囲まれた環境です。当日の気温は33.4℃、湿度59%、WBGT31.4度でした。
漏電遮断器があれば感電しない、でもありません。 同じチラシは「漏電遮断器のみの場合、一度人体を漏電電気が流れてから回路を遮断するため、一瞬は感電する」とし、アースとの併用を求めています。漏電遮断器は人体に流れた電流を検出して切る装置で、流れる前に止める装置ではないからです。接地があれば電流の大部分は地面へ逃げ、遮断までの一瞬に人体を通る電流が減ります。安衛則第333条は第1項で漏電遮断器、第2項で接地を「困難なとき」の代替として書いていますが、建災防規程第44条は漏電しゃ断装置を使う機器にも3心・4心で接地線を持たせるよう定めていて、現場の運用は「両方」になっています。
漏電警報器の0.5Aでは守れません。 職場のあんぜんサイトの災害事例では、操作盤の表示ランプ交換中に200Vの端子に触れた作業者が死亡し、系統の漏電警報器は0.5Aで作動していました。0.5A=500mAは、感電保護の30mAの約17倍です。常設設備の漏電火災警報用と、感電防止用の漏電遮断器は役割が違います。
モーターの絶縁劣化はフレームに出ます。 生コンプラントの水中ポンプ据付中の感電死亡事例では、職場のあんぜんサイトが「使用中にモーターの絶縁が劣化し、フレーム等に漏電していることも多く、低圧の電気であってもフレーム等に接触して感電死することも珍しくない」と書いています。労働安全衛生総合研究所の統計でも、建設業の電力機器類による感電死の原因は「機器のフレーム(筐体)への漏電」と「接続コードやその他の部分に接触」が最も多いとされています。使用前点検で接地線の切断を見るのは、この型の事故を止めるためです。
アーク溶接機は別の条文です。 鉄骨など導電性の高い接地物に触れるおそれがある高さ2m以上の場所で交流アーク溶接をするときは、第332条により交流アーク溶接機用自動電撃防止装置が要ります。建災防規程第45条第2項は、溶接機の入力側回路にも感電防止用漏電しゃ断装置を設けることを求めています。仮設盤の分岐に溶接機用を独立させる理由の1つです。
一段深い理解:30mAはどこから来たのか
30mAという数字は、日本の役所が最初に決めた数字ではありません。三菱電機の技術資料集の年表によると、電流動作形の漏電遮断器は1950年にドイツで量産化され、1965年にドイツ・フランスで30mA感度が開発されました。日本では1969年に労働省が漏電防止用の設置を義務づけ、1970年に30mA品が国内で広く使われ始め、1974年にJIS C 8371が制定され、1977年の電気用品取締法改正で高速形・時延形・反限時形が規定されました。安衛則の技術上の指針(1974年公示)は、30mA品が普及しJISができた年に出ています。
なぜ30mAかというと、人体を流れる電流と時間の積で考えるからです。同じ資料集は、感電の生理現象に諸説あることを認めたうえで、ケッペン(Koeppen)が示した心室細動の限界「人体通過電流・時間積 50mA·s」に安全率(1.67倍)を見込んだ30mA·sを、ヨーロッパに続いて日本も基準にしていると説明しています。ここでいう電流は定格感度電流ではなく、事故のときに実際に人体を流れた電流です。
資料集は、接地が不確実になりやすい可搬形・移動形の機器で高い電圧に触れても心室細動の限界内に抑えるには、定格感度電流30mA以下と、遮断器が動作するまでの電流・時間積30mA·s以内の2つの条件が要ると書いています。逆に、接地工事が確実で(定格感度電流)×(接地抵抗値)が許容接触電圧を超えないなら、200mAや500mAの中感度形でも感電保護はできるとも書いています。建設現場の電動工具や水中ポンプは、まさに接地が不確実になりやすい側の機器です。
もう1つの問いが残ります。安衛則は「対地電圧150Vを超える」機器を対象にしているのに、高感度高速形は100Vの仮設盤にも入ります。安衛則の第2の入口(湿潤・鉄骨上)には電圧の条件がなく、建設現場は雨と鉄骨に囲まれているからです。内線規程(JEAC 8001)も、三菱電機の技術資料集に転載された2005年版の3590節「臨時施設」で、建設現場等のがいし引き配線・ケーブル配線による臨時施設に電気を供給する電路には漏電遮断器を施設することと定めています。
電技解釈第180条は、使用電圧300V以下で施設工事完了日から1年以内に限り使う臨時配線をコンクリートに直接埋設する工事を、地絡遮断装置の施設を条件に認めています(東芝ライテックの関連法規表による)。仮設の「1年」という期限は、電力契約だけでなく配線の条文にも現れます。
一段深い理解:感電死亡は6〜9月に集中します
労働安全衛生総合研究所の「感電の基礎と過去30年間の死亡災害の統計」(SD-No.25)は、1974〜2003年の感電死亡者を月別に集計し、6〜9月の4か月が年間の50%以上を占めると報告しています。理由として「夏場は、発汗により人体の接触抵抗値が下がり、低い電圧でも作業者が感電により死亡することがある」と書いています。神奈川県の2005〜2024年の20年間でも、感電の労働災害は8月が33件で最多、死亡13件のうち10件が6〜9月です。
同じ報告書は、建設業の感電死亡者が1974年の年間60人から2003年の年間2人まで減ったことも示しています。感電防止機器の開発と普及で減り、残った事故の型は「機器のフレームへの漏電」と「活線への接触」です。だから夏前に見直すのは、ケーブル被覆の剥がれ、過去の補修部分、電工ドラムや延長ケーブルを漏電遮断器付きへ更新すること、保護具の点検、安全教育の5点だと、神奈川労働局のチラシは列挙しています。仮設盤を正しく組んでも、途中の2心ケーブル1本で接地は切れます。夏の現場で最初に見るのは、盤より延長ケーブルです。
松本電業で手配できること(2026年11月、行田が確認した内容)
電材サーチの運営元の松本電業では、仮設電気の部材について次の3つに対応しています。見積や相談の入口は、このページの見積フォームからです。
- 日東工業などの標準キャビネットを使ったカスタム仮設分電盤(主幹の漏電遮断器と分岐ブレーカーの構成を指定したもの)を、提携工場と連携して設計・組み付けし、短納期で納品すること。部材から完成盤まで一括で見積もります。
- キャブタイヤケーブル(VCT・2PNCT)を、必要なサイズ・長さでカットして販売すること。
- 仮設LEDコード・電工ドラム・防水ゴムプラグなどの仮設資材を、複数のメーカー・品番から手配すること。
関連情報
- キャブタイヤケーブル(VCT・VCTF・2PNCT)の品種ハブ:許容電流・外径の早見表と移動電線の施設ルール
- VCTケーブル(用語)/対地電圧(用語)/漏れ電流(用語)/D種接地工事(用語)
- ブレーカーの種類と選び方:漏電遮断器の感度・動作時間と協調
- コードリール(電工ドラム)の安全な使い方:巻いたまま使う発熱と漏電遮断器付きの選び方
- 電気工事の積算と電材価格高騰期の見積り対策
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