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コードリール(電工ドラム)の正しい使い方|巻いたまま使うと発熱・発火する理由と定格電流の見方

読了目安: 10分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

現場の隅に置かれた電工ドラムから、ゴムの焦げるような匂いが漂っていた。使っていたのは電動ハンマードリル一台だけで、コンセントに挿しっぱなしにしていたのはせいぜい20分ほどだ。それだけで、巻いたままのコード表面がうっすらと変色し、指で触れると芯まで熱がこもっているとわかるほど熱くなっていた。

「そんなに高負荷の工具じゃないのに」——現場責任者はそう漏らした。無理もない。ハンマードリルの定格電流はカタログ値でせいぜい8A前後、電工ドラム本体には「15A」という表示がある。数字だけ見れば、まだ半分程度しか使っていない計算になる。だが実際には、被覆が溶けかける寸前まで温度が上がっていた。

このズレはどこから来るのか。答えを先取りすると、電工ドラムに書かれた「15A」という数字は、コードを巻いたまま使うときの数字ではなかった。

巻くと電線の性質が変わる——ただの「長い電線」ではなくなる

延長コードは、長さの問題でしかないと思われがちだ。必要な長さだけ電線を伸ばして電気を運ぶ、それだけの部品に見える。

ところが、電工ドラムに巻かれた電線は、まっすぐ伸ばした電線とは違う性質を帯びる。CKレンタル株式会社の技術資料によれば、電線に電流を流すと抵抗によって発熱するのはどんな電線でも同じだが、電線が接続され巻き取られていると熱の発散が妨げられ、温度上昇がさらに進む。まっすぐな電線なら空気に触れる面積が広く、発生した熱は周囲へ逃げていく。ところがコイル状に巻かれた電線は、隣り合う層同士が密着し、内側の層で発生した熱が外へ抜ける道をほとんど持たない。

厄介なのは、この発熱量が電流に比例するのではなく、電流の2乗に比例して増える点だ。電流が1.5倍になれば発熱量は2.25倍に跳ね上がる。同資料が示す実験データ(VCT3心・2.0m㎡、室温25℃)では、巻いた状態のまま10Aを3時間流すと電線表面は46℃、内部の3層目は76℃、巻胴内部は64℃まで上昇する。これが15Aになると、表面88℃、3層目は156℃、巻胴内部は122℃に達する。一般的なビニル絶縁電線(VCT)の許容温度上昇はおよそ60℃とされており、15Aで3時間という条件は、この基準を大きく超える領域に踏み込んでいることになる。

一本の長い電線を伸ばして使う分には起きない現象が、同じ電線を渦巻き状に巻くだけで起きる。延長コードの問題を「長さ」だけで捉えていると、この変化を見落とす。

定格電流という数字が、実は2つある

冒頭の電工ドラムに戻る。本体に貼られた「15A」という表示は、何を意味していたのか。

コードリールの定格電流とは、電線を巻いたまま使用できる電流値のこと——というのが一般に理解されている定義だが、これだけでは足りない。voltechnoの解説記事によれば、コードリールには「定格電流」(巻いたまま使用できる電流)と「限度電流」(電線を全て引き出した状態で使用できる最大電流)という2つの数値があり、両者にはおおむね2〜3倍の開きがある。

日動工業のコードリール共通取扱説明書も、この点を明確に警告している。「電線を巻いたまま、定格以上使用すると電線が焼けます」とした上で、始業前点検の項目では「ケーブルを巻いたまま使用すると、ケーブルが発熱し、火災、故障の原因となるので必ず引出してください。巻いたままでの定格は5A前後となります」と明記している。つまり、電工ドラムの本体に大きく印字されている「15A」や「20A」といった数字は、電線を全て引き出した状態、つまり限度電流であることが多い。冒頭のハンマードリルが定格の半分程度と見えていたのは、限度電流を定格電流と読み違えていたからだった。

見分け方は単純だ。リールに貼付されている注意書きや銘板を確認し、そこに書かれた数字が「巻いたまま」の条件か「全て引き出した状態」の条件かを読む。表示のない機種は存在しないので、この確認を省略する理由はない。

サーマルプロテクタ(温度センサー)は最後の砦であって、免罪符ではない

「巻いたまま使うと危ないなら、温度で自動的に止まる仕組みがあるのでは」と考えるのは自然な発想だ。実際、多くの電工ドラムには温度センサー(サーマルプロテクタ)が内蔵されている。

日動工業の取扱説明書によれば、電線温度が80℃になると温度センサーが作動して通電を停止する。センサーは電線をすべて引き出した状態の巻胴内部に組み込まれており、動作後の復帰方式には2種類ある。手動復帰型はセンサー頭部を指や布で冷やしたうえで「コツン」と音がするまで押し込む必要があり、自動復帰型は冷えれば自動的に復帰する。復帰の際には接続している機器の電源を必ず切ってから作業することが求められている。復帰した瞬間に機器が急に動き出すこと自体が、もう一つの危険になるからだ。

ここで見落としやすいのは、温度センサーが作動するタイミングだ。80℃という設定値は、電線の被覆が完全に無事な状態で切れるラインではない。CKレンタルの実験データが示すように、巻いた状態で電流を流し続けたときの内部温度は、表面よりもかなり高い値まで上がる。センサーが検知するのは限られた測定点の温度であり、被覆がすでに変色・軟化しかけた状態でようやく作動する、という状況は十分にありうる。サーマルプロテクタは「巻いたまま使っても大丈夫」を保証する装置ではなく、最悪の事態を食い止める最後の一線として設計されている。動作したら、原因(巻いたままの使用や過負荷)を取り除かずに、センサーだけを無理やり復帰させてはならない。

漏電遮断器内蔵タイプは「色」で仕様が変わる

電工ドラムの中には、漏電遮断器を内蔵したタイプがある。感電事故を防ぐための装備だが、実はラベルの色によって保護の中身が異なる。

日動工業の取扱説明書は3種類を区別している。ブレーカーラベルが緑色の「漏電保護専用」は、感度電流15mA以下・0.1秒以内で通電を遮断する、漏電だけを検知するタイプだ。ラベルが赤色の「過負荷漏電保護兼用」は、同じ15mA以下・0.1秒以内の漏電保護に加えて、15Aまたは20Aを超える電流が流れたときにも作動する過負荷保護を兼ねる。もう一つの赤ラベルである「超高感度(6mA)漏電しゃ断器付」は、6mA以下という一段厳しい感度で0.1秒以内に、上位のブレーカー(15mA感度)より先に遮断し、電流が15Aを超えた場合にも作動する。同じ「漏電遮断器付き」という表示でも、過負荷まで見ているかどうかは製品によって違う。

漏電遮断器の内蔵が必須になる場面もある。労働安全衛生規則第333条は、対地電圧が150Vを超える移動式・可搬式の電動機械器具、または水などで湿潤している場所・鉄板上や鉄骨上など導電性の高い場所で使う移動式・可搬式の電動機械器具について、感電防止用の漏電しゃ断装置の接続を事業者に義務付けている。ビルディマガジンの解説記事も、水気のある場所や鉄板・鉄骨上などの導電性が高い場所、そして200Vの電工ドラムを使用する場合には、漏電遮断器または接地(アース)付きの製品を使わなければならないとしている。建設現場や工場のように濡れた床・金属製の足場に囲まれた環境で電工ドラムを使うなら、漏電遮断器の有無とその方式は、値段や口数以上に優先して確認すべき仕様になる。

複数の機器を同時に使うなら、電流は工具の数だけ足し算する

電工ドラムは複数口のコンセントを持つ製品が多く、1台のドラムから電動工具を何台も同時に使う場面はめずらしくない。ここで見落とされがちなのが、定格電流(または限度電流)は「そのドラム全体」にかかる上限であって、コンセント1口ごとの上限ではない、という点だ。

ハタヤリミテッドの製品ページには、屋内用の小型リールについて「合計で1,200W(12A)を超えて使用しない」という具体的な注意表示がある。定格電流6Aと表示されていても、複数口をまとめて使う場合の上限は別途、合計の電力(W)や電流(A)で示されている。電動工具のカタログには消費電流の記載があるので、同時に使う予定の工具の電流を単純に足し合わせ、その合計が電工ドラムの表示値(巻いたまま使うなら定格電流、伸ばして使うなら限度電流)を超えないかを、電源を入れる前に確認しておきたい。分岐回路そのものの許容量については、当サイトの別記事「分岐回路のコンセント数は何個まで?」でも扱っているので、あわせて確認しておくと判断の抜けが減る。

屋外・雨天時は「防雨形」以外を選ぶ理由がない

屋内用の電工ドラムを、雨の中や湿度の高い屋外現場でそのまま使うとどうなるか。日動工業の取扱説明書は、防雨型コードリールに対する警告として、接続する電気機器のプラグには防雨構造のものを使うこと、使用しないコンセントには防雨キャップを確実にかぶせることを求めている。防雨構造以外のプラグを差し込んだり、防雨キャップが不確実な状態のまま放置したりすると、リール内部に水が入り込んで感電する原因になる、と明記されている。

実際に屋外用として販売されている製品を見ると、たとえば日動工業の防雨防塵型ドラムは、定格電流5A、漏電しゃ断器は漏電地絡保護専用というブレーカーラベル緑相当の仕様で、コンセントはキャップ付の2P・15A・125V・アース付になっている。屋内用の製品にこうした防雨キャップやコンセント盤の防水構造は備わっていない。屋根のある倉庫内で使う分には問題にならないが、屋外の建設現場や雨天時の作業では、屋内型を無理に使い続けることが、そのまま感電事故の原因になりうる。

なお、巻いたまま使うことそのものをなくしてしまう製品も存在する。ハタヤリミテッドの「ゼンビキリール(全引きリール)」は、電線を最後まで引き出さない限りコンセントのカバーが開かず通電できない構造になっている。巻いたまま使ってしまう人為的なミスを、注意喚起ではなく構造そのもので防ぐという発想であり、建設業労働災害防止協会から安全装器具として推薦されている製品でもある。

定期点検を怠らない

電工ドラムは、置いておけば壊れないものではなく、繰り返し使う設備として扱う必要がある。日動工業の取扱説明書は、始業前点検としてケーブル・プラグ・コンセントの損傷や電源ランプの点灯確認を求めるほか、漏電しゃ断器付き機種についてはテストボタンを押して正常に遮断されるかをそのつど確認するよう求めている。定期点検の項目には、500V絶縁抵抗計(メガー)による絶縁抵抗値5MΩ以上の確認や、100V仕様なら1000V・1分間、200V仕様なら1500V・1分間の絶縁耐力試験も含まれる。現場に置きっぱなしで数年使い続けている電工ドラムがあるなら、次に使う前に一度、これらの点検項目に立ち返っておく価値はある。

電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、日動工業・ハタヤリミテッドをはじめとする電工ドラム各種の選定・お見積りに対応しています。漏電遮断器の方式や防雨仕様など、現場条件に合わせたご相談も承ります。

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よくある質問

電工ドラムの「定格電流」と「限度電流」は何が違いますか?

定格電流は電線を巻いたまま使用できる電流値、限度電流は電線を全て引き出した状態で使用できる最大電流値です。日動工業の取扱説明書によれば、巻いたままでの定格はおおむね5A前後になる製品が多く、全て引き出した状態での限度電流はその2〜3倍になるのが一般的です。本体に大きく表示されている数字がどちらの条件のものか、リールに貼付された注意書きや銘板で必ず確認してください。

なぜコイル状に巻くと発熱しやすくなるのですか?

電線はまっすぐ伸ばした状態でも通電すれば抵抗によって発熱しますが、まっすぐな状態なら空気に触れる面積が広く熱が逃げていきます。ところがコイル状に巻かれると隣り合う電線の層が密着し合い、内側で発生した熱の逃げ場がなくなります。CKレンタル株式会社の技術資料が示す実験データでは、巻いた状態で15Aを3時間流すと電線内部の温度が122〜156℃に達しています。発熱量は電流の2乗に比例して増えるため、わずかな電流超過でも危険性は急激に高まります。

サーマルプロテクタ(温度センサー)が付いていれば、巻いたまま使っても安全ですか?

安全とは言い切れません。日動工業の取扱説明書によれば、温度センサーは電線温度が80℃に達すると作動して通電を停止する仕組みですが、これは異常な発熱がすでに進行した状態で作動する最後の安全装置であり、巻いたまま使うこと自体を許可するものではありません。センサーが作動した場合は、原因(巻いたままの使用や過負荷)を取り除いてから復帰させる必要があります。

漏電遮断器付きの電工ドラムなら、屋外や湿った場所でも安心して使えますか?

漏電遮断器の方式によって保護範囲が異なるため、表示の確認が必要です。日動工業の取扱説明書は、感度電流15mA以下で漏電だけを検知する「漏電保護専用」(緑ラベル)、これに過負荷保護を加えた「過負荷漏電保護兼用」(赤ラベル)、より高感度な6mAで動作する「超高感度漏電しゃ断器付」(赤ラベル)の3種類を区別しています。屋外・雨天時に使うなら、漏電遮断器の有無に加えて、防雨構造のプラグ・防雨キャップを備えた屋外用(防雨形)の製品を選ぶ必要があります。

複数の電動工具を1台の電工ドラムで同時に使ってもよいですか?

工具の消費電流の合計が、電工ドラムの表示値(巻いたまま使うなら定格電流、伸ばして使うなら限度電流)を超えない範囲であれば使用できます。ハタヤリミテッドの製品ページには、屋内用リールで「合計1,200W(12A)を超えて使用しない」といった具体的な上限表示がある製品もあります。同時に使う工具の電流を事前に足し算し、コンセントの口数ではなく合計電流で判断してください。

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電工ドラムの「定格電流」と「限度電流」は何が違いますか?

定格電流は電線を巻いたまま使用できる電流値、限度電流は電線を全て引き出した状態で使用できる最大電流値です。日動工業の取扱説明書によれば、巻いたままでの定格はおおむね5A前後になる製品が多く、全て引き出した状態での限度電流はその2〜3倍になるのが一般的です。本体に大きく表示されている数字がどちらの条件のものか、リールに貼付された注意書きや銘板で必ず確認してください。

なぜコイル状に巻くと発熱しやすくなるのですか?

電線はまっすぐ伸ばした状態でも通電すれば抵抗によって発熱しますが、まっすぐな状態なら空気に触れる面積が広く熱が逃げていきます。ところがコイル状に巻かれると隣り合う電線の層が密着し合い、内側で発生した熱の逃げ場がなくなります。CKレンタル株式会社の技術資料が示す実験データでは、巻いた状態で15Aを3時間流すと電線内部の温度が122〜156℃に達しています。発熱量は電流の2乗に比例して増えるため、わずかな電流超過でも危険性は急激に高まります。

サーマルプロテクタ(温度センサー)が付いていれば、巻いたまま使っても安全ですか?

安全とは言い切れません。日動工業の取扱説明書によれば、温度センサーは電線温度が80℃に達すると作動して通電を停止する仕組みですが、これは異常な発熱がすでに進行した状態で作動する最後の安全装置であり、巻いたまま使うこと自体を許可するものではありません。センサーが作動した場合は、原因(巻いたままの使用や過負荷)を取り除いてから復帰させる必要があります。

漏電遮断器付きの電工ドラムなら、屋外や湿った場所でも安心して使えますか?

漏電遮断器の方式によって保護範囲が異なるため、表示の確認が必要です。日動工業の取扱説明書は、感度電流15mA以下で漏電だけを検知する「漏電保護専用」(緑ラベル)、これに過負荷保護を加えた「過負荷漏電保護兼用」(赤ラベル)、より高感度な6mAで動作する「超高感度漏電しゃ断器付」(赤ラベル)の3種類を区別しています。屋外・雨天時に使うなら、漏電遮断器の有無に加えて、防雨構造のプラグ・防雨キャップを備えた屋外用(防雨形)の製品を選ぶ必要があります。

複数の電動工具を1台の電工ドラムで同時に使ってもよいですか?

工具の消費電流の合計が、電工ドラムの表示値(巻いたまま使うなら定格電流、伸ばして使うなら限度電流)を超えない範囲であれば使用できます。ハタヤリミテッドの製品ページには、屋内用リールで「合計1,200W(12A)を超えて使用しない」といった具体的な上限表示がある製品もあります。同時に使う工具の電流を事前に足し算し、コンセントの口数ではなく合計電流で判断してください。

参考文献・出典

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