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電気に関する基礎理論 ・ 10 / 10

三相回路の電圧と結線(Y結線・Δ結線)

読み終えると、こうなる

電柱のいちばん高いところを走る3本組の電線が、発電所から続く電力網の幹だと分かって見えるようになる

  • モーターが逆回転していたら、3本のうち2本を入れ替えれば直せると判断できる
  • 全消費電力を求めたら1相分の値に必ず×3したかを確認し、3分の1で止まる計算ミスを避けられる
  • 断線したと分かった瞬間に√3やY・Δの公式をいったん手放し、生きている2本の線の間の単純な直列回路として描き直せる
考えてみよう

工場の三相200V回路に、3本の電熱ヒーターをY字形につないだ装置がある。テスターで電線どうしの間(線間)を測ると、R-S間もS-T間もT-R間も、確かに200Vある。

ところがヒーター1本の両端にテスターを当てると、115Vしか出ない。3本の電線はどの組み合わせでも200Vなのに、そこにつながるヒーターには115V。差し引き85Vは、どこへ消えたのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この115Vという半端に見える数字を、自分で計算して出せるようになっている。

三相交流とは、交流の基礎で見た波が、タイミングを120度(1周期の1/3)ずつずらして3つ束になったものだ。3本の電線(R・S・T)で送られ、工場の動力設備やビルの空調の標準になっている。

3つの負荷をこの3本にどうつなぐか。つなぎ方は2つしかない。

R S T 中性点 Y結線 R S T Δ結線 3つの負荷のつなぎ方は、中性点で束ねるYか、輪にするΔの2通り
  • Y結線(スター結線): 3つの負荷の片端を1点(中性点)で束ね、もう片端をR・S・Tへ。負荷1つ(1相)にかかるのは電線と中性点の間の相電圧で、線間電圧=√3×相電圧、線電流=相電流
  • Δ結線(デルタ結線): 3つの負荷を輪にして、輪の角をR・S・Tへ。負荷は線間に直接ぶら下がるので線間電圧=相電圧、代わりに線電流=√3×相電流

√3(約1.73)はどこから来るのか。ここで思い出したいのが、配電方式で見た単相3線式だ。あちらは位相が真逆(180度差)の100Vが2つあったから、差を取るとちょうど2倍の200Vになった。三相では2つの相電圧のズレは180度ではなく120度。波の山と谷が完全には向かい合わないため、差は2倍まで届かず、ベクトルで合成するとちょうど√3倍になる。位相差が2倍と√3倍を分けている——電圧降下の式で2IRと√3IRが並んでいたのも、まったく同じ理屈だった。

「三相200V」の200Vは、どれか1本の電線の上に存在する電圧ではない。2本の線の電位の「差」としてだけ存在する。だから同じ200V電源でも、負荷をYにつなぐかΔにつなぐかで、負荷1つが受け取る電圧は115Vにも200Vにも変わる。電圧とは場所ではなく、2点の間にしかないものだ——この見方が身につくと、三相の計算問題は図を描いた時点でほぼ解けている。

断線すると何が起きるか

Y結線の負荷につながる3本のうち1本が断線すると、その瞬間から回路は三相ではなくなる。残った2つの負荷が、生きている2線間の200Vに直列でぶら下がるだけの単相回路になり、等しい抵抗なら200Vを半分ずつ、つまり各100Vになる。断線前の115Vから100Vへ——完全には止まらないのに調子が悪い、という厄介な故障の形だ。学科試験では「断線後の電圧はいくらか」という計算問題として繰り返し出題される。

もうひとつ、三相ならではの性質がある。3本のうち2本を入れ替えると、3つの波の押し寄せる順番(相順)が逆になり、回転磁界の向きが反転して電動機は逆回転する。ポンプが逆に回る・ファンが風を吸わないといった施工後のトラブルはたいていこれで、現場では2本をつなぎ替えて直す。なお三相全体の電力は P=3VlIlcosθP = \sqrt{3} V_l I_l \cos\thetaVlV_l: 線間電圧、IlI_l: 線電流)で求められる。

電柱のてっぺんの3本組を見上げる

今日からできることがある。街で電柱を見上げて、いちばん高いところを走る電線を数えてみてほしい。3本が等間隔で並んでいるはずだ。あれが6600Vの三相高圧配電線で、発電所からここまで、電気はずっと三相のまま運ばれてきている。家庭用の単相100V/200Vは、電柱の変圧器でこの三相から取り出された「枝」にすぎない。世界の電力網の幹は三相でできていて、√3はその幹を流れる電気の文法だ。知ってから見上げる電柱は、昨日までとは違って見える。

Y・Δの使い分けは知識の飾りではない。同じモーターでも、巻線をYでつなげば1相あたりの電圧が1/√3に下がることを利用して、始動時だけYにして始動電流を抑え、回り始めたらΔに切り替える——という始動方式が実務には存在する。三相の理屈はエレベーター、業務用空調、工場のライン、そして急速充電器のような大電力設備を扱う入口であり、二種の先にある一種や電験の学習でも、この√3が最初の関門として何度でも現れる。ここで出会っておく価値がある。

冒頭の消えた85Vがどこに折りたたまれていたのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. Y結線とΔ結線で、√3が電圧側に付くか電流側に付くかを入れ替える

    なぜ引っかかるY結線は線間電圧=√3×相電圧・線電流=相電流、Δ結線は線間電圧=相電圧・線電流=√3×相電流と、√3の付く場所がちょうど逆になっている。選択肢には両方の組み合わせが必ず並ぶため、どちらの結線かを取り違えると、そのまま用意された誤答に着地する。

    見破り方図の形から決める。Yは負荷が中性点で束ねられているので、1つの負荷は線と中性点の間=線間の一部しか受け持てない。だから相電圧は線間より小さく、√3は電圧側に付く。Δは負荷が線間にじかにぶら下がるので電圧はそのままで、代わりに1本の線に2つの負荷の電流が集まるから√3は電流側に付く。「負荷は線間にじかに付いているか」を見るだけでよい。

  2. 「全消費電力」と聞いておいて、1相分で止まった値を選択肢に置く

    なぜ引っかかる三相3線式回路の全消費電力〔kW〕を答えさせる問題は繰り返し出題されている。1相分を計算するところまで正しくても、3倍し忘れると答えはちょうど3分の1になる。選択肢は正解の3分の1・√3倍・3倍で構成されるため、掛け忘れには必ず居場所が用意されている。

    見破り方求めた数字の横に「1相分」と書き添える習慣をつけ、最後に必ず×3をする。答えの単位が〔kW〕か〔W〕かも同時に確認する。線間電圧と線電流から一気に出すなら P=√3×(線間電圧)×(線電流)×cosθ で、こちらは3倍が式に織り込まれている。

  3. 1線を断線させ、断線後も三相の公式が使えるかのように見せる

    なぜ引っかかる1線が断線した後の全消費電力や、特定の抵抗に流れる電流を答えさせる形で頻出する。断線した瞬間に回路は三相ではなくなるので、√3もY・Δの関係式も使えない。Y結線なら残った2相が線間電圧に直列でぶら下がる単相回路、Δ結線なら断線した辺の両隣の2つが直列になった形として、素直に単相で解き直す必要がある。

    見破り方断線という言葉を見たら、三相の公式をいったん全部しまう。生きている2本の線の間に、どの負荷がどうつながっているかだけを描き直す。ここで止めないこと——Δ結線では、生きた2線の間に「直列になった2個」と「直接つながった1個」の2つの道が並列にぶら下がる。同じ電源電圧がどちらにも掛かるので、直列側を流れる電流は電源電圧÷2R、直接つながった1個を流れる電流は電源電圧÷R と、2倍違う。設問がどちらの抵抗の電流を指しているのかを図で確かめてから式を立てる。

参考文献・出典

理解度チェック(6問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、6問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用2問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 6 問正解

覚えておきたいポイント

  1. Y結線(スター): 線間電圧=√3×相電圧、線電流=相電流。三相200VのY結線負荷1相には200/√3≒115Vがかかる
  2. Δ結線(デルタ): 線間電圧=相電圧、線電流=√3×相電流
  3. Y結線負荷の1線が断線すると三相ではなくなり、残った2相が線間200Vに直列につながった形になって各相に100Vずつかかる
  4. 3本の電線のうち2本を入れ替えると相順が逆になり、三相誘導電動機は逆回転する
  5. 三相電力はP=√3×(線間電圧)×(線電流)×cosθ
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