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許容電流とは?電線サイズの選定方法と電流減少係数の実務知識

読了目安: 6分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

冒頭の場面・会話は、内容の理解を助けるための例示です。特定の現場・企業・案件を指すものではありません。

電線の許容電流表を見て「27Aと書いてあるから、これくらいの負荷なら大丈夫」と数字をそのまま鵜呑みにしてしまう——これは現場で意外と起こりがちな誤解です。実は早見表に載っている許容電流の数字は、多くの場合「電線1本を単独で、周囲温度30℃の空気中に敷設した」という限定条件での値にすぎません。同じ電線でも、電線管にまとめて通したり、夏場に高温になる屋根裏・分電盤内・屋上に敷設したりすれば、実際に安全に流せる電流は表の数字よりずっと小さくなります。表の数字だけを鵜呑みにすることこそが、電線が発熱・溶損する事故の入り口です。

許容電流とは

許容電流(きょようでんりゅう)とは、電線やケーブルに安全に通電させることができる電流の最大限界値のことです。この値を超えて電気を流し続けると、電線が自己発熱によって過熱し、絶縁被覆がドロドロに溶けて短絡や漏電火災事故を招きます。


許容電流を決定する主要因

電線の許容電流は、単に銅線の太さだけで決まるわけではありません。主に以下の条件によって変動します。

① 絶縁体の耐熱温度(被覆の材質)

電流が流れると、電線は自身の電気抵抗によって発熱します。許容電流は「絶縁被覆が熱で劣化・融解しない最大温度」を基準に逆算されます。

  • ビニル絶縁(VVFやIV): 最高許容温度 60℃ ➔ 許容電流は比較的低め。
  • 架橋ポリエチレン絶縁(CVやCVT): 最高許容温度 90℃ ➔ 熱に強いため、同じ太さでもVVFより大きな許容電流を流せます。

② 周囲の温度

電線が設置される周囲の温度(環境温度)が高くなると、熱が逃げにくくなるため、許容電流は低下します。一般に日本の電気設計では周囲温度30℃を基準とし、それを超える環境(夏の屋根裏など)では、許容電流値にさらに「補正係数」を掛け算して低減させます。


許容電流表の読み方——何が行で、何が表を分けているのか

「許容電流表を見ても、どこの数字を拾えばいいのか分からない」という声は多い。表が複数に分かれている理由と、区分の軸を整理しておく。

① まず「電線の種類(耐熱区分)」で表そのものが分かれる

内線規程(JEAC 8001)の許容電流表は、電線の絶縁体の耐熱区分ごとに独立した表になっている。ビニル絶縁のIV・VVFなどは60℃系、架橋ポリエチレン絶縁のCV・CVTなどは90℃系というように、まず「自分が使う電線の絶縁材が何度系か」を確認しないと、そもそも見るべき表を間違える。クラモト株式会社の技術資料によれば、周囲温度による電流減少係数だけでも耐熱区分ごとに表1(60℃)〜表6(105℃)の6種類に分かれており、同じ周囲温度40℃でも60℃系電線の減少係数は0.82、105℃系電線では0.93というように、区分を跨いで数字を流用することはできない。

② 表の行は「電線の太さ」、基準値は「気中一条布設」

表の行に並ぶのは電線の太さ(公称断面積mm²、または直径mm)で、太いほど許容電流は大きくなる。ここに載っている数値そのものは、JCS0168(日本電線工業会規格)に基づき「周囲温度30℃・電線1本を空気中に単独布設(気中一条布設)」という条件で計算された基準値であり、この条件から外れる使い方をする場合は、以下の係数を掛けて補正する必要がある。

③ 「条数(本数)」による低減は、敷設方式によって参照する表が違う

同じ「本数が増えると許容電流が下がる」という現象でも、敷設方式が違えば参照すべき表そのものが別物になる。

  • 電線管(PF管・VE管等)に複数本まとめて収める場合:本文の「電流減少係数表」(3本以下0.70、4本0.63、5〜6本0.56、7〜15本0.49、16〜40本0.43、41〜60本0.39、61本以上0.34)を使う
  • 電線管を使わず、ケーブルラック等に複数条を並べて敷設する場合(気中多条布設):これとは別の「気中多条布設による低減率」表を使う。こちらは本数だけでなく、電線の配列パターンと中心間隔(S=d・2d・3d、dは電線径)によって細かく区分されており、クラモトの技術資料(JCS0168-1準拠)では、たとえば2条をS=dの間隔で並べた場合の低減率は0.85、S=2dで0.95、S=3dまで離せば1.00(低減なし)となる。条数が増えるほど、また間隔が狭いほど低減率は厳しくなる。

電線管配線とケーブルラック配線を同じ感覚で計算してしまうのは、許容電流表の読み方で実務上もっとも起きやすい取り違えだ。「今回の敷設方式はどちらか」を先に決めてから、対応する表を開くという順番を徹底したい。

④ 内線規程とJCS0168の関係

内線規程は現場が実務で引く規範集であり、そこに載っている許容電流の数値そのものは、JCS0168(日本電線工業会規格)が定める計算方法に基づいて算出されている。JCS0168が「どう計算するか」という根拠を示し、内線規程が「実務で引ける表」としてまとめている、という役割分担で理解しておくと、係数表がなぜ複数に分かれているのか(耐熱区分・敷設方式ごとに計算条件が異なるから)にも納得がいく。

表を都度めくって計算するのが面倒な場合は、許容電流計算ツールで電線サイズ・条数・敷設条件を入力するだけで判定できる。


実務で不可欠な「電流減少係数」の計算

電線を電線管(PF管やVE管)やダクトに複数本まとめて収容する場合、電線同士の熱がこもり合って放熱性能が著しく低下します。 そのため、内線規程(JEAC 8001)に基づき、以下の「電流減少係数(低減係数)」を掛け合わせて許容電流を再計算(ダウンサイジング)しなければなりません。

同一管内の電線数電流減少係数
3本以下0.70
4本0.63
5本〜6本0.56
7本〜15本0.49
16本〜40本0.43
41本〜60本0.39
61本以上0.34

この7行は電気設備の技術基準の解釈 第146条第2項第二号ロの146-4表そのものである。絶縁電線を合成樹脂管・金属管・金属可とう電線管・金属線ぴに収めて使用する場合に、146-3表の許容電流補正係数を掛けたうえで、さらにこの電流減少係数を掛ける。

計算例:

許容電流27AのIV 1.6mm電線を、3本まとめて同一のVE電線管に通す場合: 27 A×0.70=18.9 A27\text{ A} \times 0.70 = 18.9\text{ A} この場合、管内配線したIV 1.6mmに流せる最大電流は、27Aではなく18.9A(7捨8入で19A)まで低下します。電技解釈149-1表は20A以下の配線用遮断器で保護する分岐回路に直径1.6mm以上を認めているので組合せ自体は適法ですが、余裕がほとんど残らないため、実務ではもう1サイズ太い電線(許容電流35AのIV 2.0mmや3.5sq等)へ変更する設計補正が必要になります。

この「表を引く → 係数を掛ける → 端数を処理する」という一連の手順は、第二種電気工事士の学科試験でもそのまま問われます。出題では小数点以下の扱いや、係数を掛ける対象を取り違えさせる選択肢が仕込まれることが多く、手順の順番が身についていないと落とします。試験で問われる形での整理は電線・コードの許容電流と電流減少係数にまとめてあります。


一段深い理解:許容電流という数字はどう決まっているのか

なぜ「電流に上限」があるのか(ジュール熱と放熱のバランス)

電線に電流を流すと、導体の電気抵抗によって必ず熱(ジュール熱)が発生します。発生した熱は電線の表面から周囲の空気へ逃げていきますが、発熱量は電流の2乗に比例して増える(発熱量 ∝ 電流² × 抵抗)ため、電流を上げていくとどこかで「発熱量」と「放熱量」が釣り合う温度に落ち着きます。

許容電流とは、この釣り合い温度が「絶縁被覆が熱で劣化・溶融しない上限温度」とちょうど一致する電流値のことです。つまり許容電流表の数字は、電線自体が燃える・切れるという物理限界ではなく、あくまで絶縁被覆の耐熱性能から逆算された値であり、周囲温度や敷設方法という前提条件が崩れれば、数字そのものも変わります。

敷設方法・周囲温度による補正の考え方

許容電流の基準値は、日本電線工業会規格 JCS0168 に基づき「周囲温度30℃・電線1本を空気中に単独布設(気中一条布設)」した条件で計算されています。この前提が変わる場合、以下のように補正が必要です。

  • 周囲温度が30℃を超える場合:絶縁体の耐熱余裕が減る分だけ、係数を掛けて許容電流を下げます。60℃耐熱(VVF・IV等)の電線では、目安として次の電流減少係数(温度補正)を掛け合わせます。
周囲温度30℃35℃40℃45℃50℃55℃
電流減少係数1.000.910.820.710.580.41

夏場の屋根裏・小屋裏や、風通しの悪い分電盤・制御盤の内部は周囲温度が40〜50℃に達することも珍しくありません。本文の「同一管内の電線数による電流減少係数」とは別に、この周囲温度による補正も本来はセットで考慮すべき係数です(絶縁体の耐熱温度が90℃のCV・CVTなど被覆材が異なれば、係数の値も変わります)。

  • 電線管を使わない多条布設の場合:管に通さず、ケーブルトレイ等に複数条を並べて敷設する場合も、条数や配列間隔に応じた「気中多条布設による低減率」が別途定められています。電線管内配線とトレイ配線とでは適用する係数表が異なる点に注意してください。

現場で間違いやすい点:本数の数え忘れ

電流減少係数を計算する際、実務でよく起こる数え間違いが2つあります。

  1. 既設の電線を数え忘れる:新設の配線だけを見て「3本だから係数0.70」と判断し、同じ電線管にすでに通っている既設の電線を数え忘れるケースです。既設分を含めた合計本数で係数を選び直す必要があります。
  2. 接地線(アース線)の扱いを誤る:電流減少係数の対象本数には、原則として接地線はカウントしません。ただし単相3線式の中性線や、常時電流が流れる制御線などは通電する電線として数える必要があり、「接地線だから除外していい」と早合点すると、逆に必要な本数を数え漏らすことがあります。管内の電線構成を1本ずつ確認する癖をつけることが、この種の計算ミスを防ぐ最も確実な方法です。

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よくある質問

許容電流表はどこを見ればいいですか?行と列は何を表していますか?

内線規程(JEAC 8001)の許容電流表は、まず電線の種類(絶縁体の耐熱区分)ごとに表が分かれています。ビニル絶縁のIV・VVFなどは60℃系、架橋ポリエチレン絶縁のCV・CVTなどは90℃系というように、耐熱区分が違えば参照する表そのものが別になります。表の行は電線の太さ(mm²の断面積、または直径mm)、載っている数値は「周囲温度30℃・電線1本を空気中に単独布設(気中一条布設)」という条件を基準にした計算値です。この基準値をそのまま使えるのは条件が一致する場合だけで、条件が変われば別途の係数を掛けて補正する必要があります。

電線の条数(本数)が増えると、なぜ許容電流が変わるのですか?

電線同士が近接すると、お互いの発する熱が逃げにくくなるためです。電線管に複数本をまとめて収める場合は本文の「電流減少係数表」(3本以下0.70、4本0.63、5〜6本0.56、7〜15本0.49、16〜40本0.43、41〜60本0.39、61本以上0.34)を使います。この7区分は電気設備の技術基準の解釈 第146条第2項第二号ロの146-4表そのものです。一方、電線管を使わずケーブルラック等に複数条を並べて敷設する場合は、これとは別の『気中多条布設による低減率』表を使います。この表は条数だけでなく、電線の配列パターンや中心間隔(S=d・2d・3d、dは電線径)によって細かく区分されており、例えば2条をS=dの間隔で並べた場合の低減率は0.85、S=3dまで離せば1.00(低減なし)になるというように、間隔を広げるほど低減率が緩和されます。電線管内配線とケーブルラック等の気中多条布設とでは、参照する表そのものが異なる点に注意してください。

敷設方式(電線管・ケーブルラック・地中埋設等)が違うと、許容電流表の使い方はどう変わりますか?

敷設方式ごとに補正の考え方が変わります。電線管等に電線をまとめて収める場合は電線の本数で決まる電流減少係数表、ケーブルラック等に複数条を並べる気中多条布設の場合は配列・間隔で決まる低減率表というように、同じ『本数が増えると下がる』という現象でも参照する表が別になります。地中埋設やダクト内配線など、さらに条件が異なる敷設方式については、内線規程やケーブルメーカーの技術資料に敷設方式ごとの個別の係数・許容電流表が用意されているため、実際の敷設方式に対応する表を確認してください。

内線規程(JEAC8001)とJCS0168は、許容電流の話でどう関係していますか?

内線規程は現場が実務で参照する規範集で、そこに載っている許容電流の数値は、日本電線工業会規格JCS0168が定める計算方法(周囲温度30℃・気中一条布設を基準とした発熱・放熱の計算)に基づいて算出された値です。つまりJCS0168が『どう計算するか』という根拠を、内線規程が『実務で引ける表』という形にまとめている、という関係になります。周囲温度による電流減少係数も、この JCS0168 の計算根拠に基づいて絶縁体の耐熱区分(60〜105℃)ごとに定められています。

参考文献・出典

  • 電気設備の技術基準の解釈(経済産業省・令和7年11月20日改正) (第146条第2項。146-1表・146-2表(600Vビニル絶縁電線ほかの許容電流)、第二号イ 146-3表(絶縁体の材料ごとの許容電流補正係数の計算式。架橋ポリエチレンは√((90−θ)/30)、耐熱性を有しないビニルは√((60−θ)/30))、第二号ロ 146-4表(同一管内の電線数による電流減少係数の全7区分。3本以下0.70/4本0.63/5〜6本0.56/7〜15本0.49/16〜40本0.43/41〜60本0.39/61本以上0.34))
  • 内線規程(電線の許容電流表・電流減少係数表、絶縁体最高許容温度)
  • 許容電流、電流減少係数について(クラモト株式会社 技術資料13) (絶縁体の耐熱区分(60/70/75/80/90/105℃)ごとに分かれた電流減少係数表(表1〜表6)、JCS0168(日本電線工業会規格)に基づく周囲温度補正の根拠、気中多条布設時の低減率表(表7-1・表7-2、配列パターン・条数・中心間隔S=d/2d/3dによる区分))

この内容は、第二種電気工事士ではこう問われる

許容電流は、試験では「電線の太さ・遮断器の容量・コンセントの定格」の3点セットで問われます。ケーブルの種類の見分け方と、分岐回路の保護のルールがその受け皿になります。

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