分岐回路の図面に「IV 1.6mm、PF管に3本、配線用遮断器20A」とあるとします。表を引くと、直径1.6mmの許容電流は27A。ところが電線管に3本収めると係数0.70を掛けて18.9Aになり、ブレーカーの20Aを下回ります。この配線は違反なのでしょうか。
答えは「電技解釈の上では認められている」です。ただ、そこに至る理由は2段あります。18.9Aという数字がどこから来るのか。そして、それでも20Aと組んでよいとされているのはなぜか。
許容電流とは:被覆が耐えられる温度から逆算した上限
許容電流(きょようでんりゅう)は、電線やケーブルに流し続けられる電流の上限です。電流を流すと、導体の抵抗で熱が出ます。熱が逃げる量と釣り合った温度が、絶縁被覆の最高許容温度(ビニルなら60℃、架橋ポリエチレンなら90℃)に達するところが上限になります。
つまり許容電流は、銅線が溶ける限界ではなく、被覆を傷めない限界です。この値を超えて流し続けると、被覆の劣化が進み、短絡や漏電の原因になります。
許容電流を決める3つの条件
| 条件 | 内容 | 補正の根拠 |
|---|---|---|
| 絶縁体の耐熱温度 | ビニル60℃、耐熱ビニル75℃、架橋ポリエチレン90℃など | 電技解釈146-3表の補正係数の式 |
| 周囲温度 | 基準は30℃。高いほど熱が逃げにくい | 同じく146-3表の式(θに周囲温度を入れる) |
| 敷設のしかた | 電線管に何本入れるか、ラックにどう並べるか | 電線管は146-4表の電流減少係数、気中多条布設は低減率表 |
電気設備の技術基準の解釈(電技解釈)第146条第2項は、600Vビニル絶縁電線などの許容電流を、146-1表(単線)・146-2表(より線)の値に、これらの係数を掛けて求めると定めています。対象は「絶縁電線」で、VVFやCVのようなケーブルの許容電流は、内線規程やメーカーの資料で確認します。
許容電流表の読み方:表の値は「30℃・1本・空気中」の基準値
電技解釈146-1表では、直径1.6mmの軟銅線が27A、2.0mmが35Aです。絶縁体ごとの表はなく、絶縁体の違いは146-3表の補正係数で表します。耐熱性を持たないビニルなら係数は√((60−θ)/30)、架橋ポリエチレンなら√((90−θ)/30)で、θは周囲温度です。
メーカーの資料は、別の形で同じことを示しています。クラモトの技術資料は、許容電流値をJCS 0168(日本電線工業会規格「33kV以下電力ケーブルの許容電流計算」)による「周囲温度30℃、空中一条布設時の計算値」と明記し、周囲温度による係数を耐熱区分ごとに6つの表(60℃〜105℃)に分けています。同じ40℃でも、60℃区分の係数は0.82、105℃区分は0.93で、区分をまたいで数字を流用することはできません。
表を都度めくって計算するのが面倒な場合は、許容電流計算ツールで電線サイズ・条数・敷設条件を入力すると判定できます。
電線管に入れる本数で掛ける「電流減少係数」
電線を電線管にまとめて収めると、互いの熱で温度が上がり、1本あたりに流せる電流が下がります。電技解釈146-4表は、合成樹脂管・金属管・金属可とう電線管・金属線ぴに絶縁電線を収める場合の係数を、本数ごとに次のように定めています。
| 同一管内の電線数 | 電流減少係数 |
|---|---|
| 3本以下 | 0.70 |
| 4本 | 0.63 |
| 5本〜6本 | 0.56 |
| 7本〜15本 | 0.49 |
| 16本〜40本 | 0.43 |
| 41本〜60本 | 0.39 |
| 61本以上 | 0.34 |
1本でも管に入れれば0.70から始まる点に注意してください。冒頭の例では、27A × 0.70 = 18.9A です。周囲温度が30℃を超える場所なら、146-3表の補正係数も掛けます。
本数が増えたときの下がり方が意外に緩やかなのにも、理由があります。電技解釈の解説によると、146-4表は、管の中の電線が増えればすべてが同時に最大で流れることは少なくなると考え、電線数11本以上では需要率(50〜75%)を見込んだ値にしています。
この「表を引く → 係数を掛ける → 端数を処理する」という手順は、第二種電気工事士の学科試験でもそのまま問われます。試験で問われる形での整理は電線・コードの許容電流と電流減少係数にまとめてあります。
18.9Aでも20Aのブレーカーと組めるのはなぜか
答えは、電技解釈の条文の中にあります。分岐回路の電線の太さは第149条第2項第一号ロが149-1表で定めていて、定格電流15Aを超え20A以下の配線用遮断器で保護する分岐回路なら、電線は直径1.6mmです。そして第146条第2項第二号ロには、電流減少係数を掛ける規定について「第149条第2項第一号ロ…に規定する場合においては、この限りでない」というただし書があります。
経済産業省の「電気設備の技術基準の解釈の解説」は、その理由をこう説明しています。149-1表の「同等以上の許容電流のあるもの」という言い方は、軟銅線とアルミ線などの導電率の違いを表しているにすぎないので、電流減少係数を乗じる必要はない。149-1表は「何Aまで流せるか」ではなく「どの太さの銅線を使うか」を決めている表、というわけです。
同じ表では、15Aを超え20A以下でも配線用遮断器以外(ヒューズなど)で保護する場合は直径2mmとされていて、遮断器の種類でも必要な太さが変わります。
ただ、計算上の余裕が小さいことは変わりません。エアコンのように長時間流れ続ける負荷や、管の中の本数が多い回路では、2.0mmにするかを設計者が負荷の実態から判断します。
一段深い理解:補正係数はなぜ「√」なのか
146-3表の式がルートの形をしているのには、物理的な理由があります。導体で出る熱は電流の2乗に比例します(発熱 ∝ 電流² × 抵抗)。一方、電線の温度上昇は、出る熱の量にほぼ比例します。すると「流せる電流」は「許される温度上昇」の平方根に比例することになり、式は√(許される温度上昇 ÷ 基準の温度上昇)の形になります。
基準の温度上昇は、ビニルの最高許容温度60℃から基準の周囲温度30℃を引いた30℃です。146-3表の分母が30なのはこのためです。ここでいう最高許容温度は、電線の表面ではなく、導体と絶縁体が接する部分の温度です(電技解釈の解説)。
では、なぜ周囲温度の基準が30℃なのか。解説は、日本では気温が30℃を超える期間が1年を通じて限られ、最大電流が流れる時刻と気温が最も高い時刻が重なるのも短時間なので、実用上問題にならないと考えたから、と説明しています。
| 絶縁体(最高許容温度) | 周囲温度30℃での補正係数 | 直径1.6mm(表では27A)に当てはめた値 |
|---|---|---|
| ビニル(60℃) | √(30÷30)=1.00 | 27A |
| 耐熱ビニルなど(75℃) | √(45÷30)≒1.22 | 約33A |
| 架橋ポリエチレン(90℃) | √(60÷30)≒1.41 | 約38A |
右端の列は式から計算した値で、表に載っている値ではありません。それでも、耐熱温度が30℃上がるだけで、同じ太さで流せる電流が√2倍、約1.41倍になることが分かります。ふっ素樹脂の式にだけ0.9が掛かっているのは、絶縁体が薄く表面積が小さいぶん熱が逃げにくいからだと、解説は書いています。
周囲温度の係数も同じ式で説明できます。クラモトの技術資料の6つの表は、どれも√((最高許容温度−周囲温度)÷(最高許容温度−30))の計算値と一致します。60℃区分を40℃で計算すると√(20÷30)≒0.82、90℃区分なら√(50÷60)≒0.91です。もう一つ、電技解釈の式には「θが30℃以下の場合は30とする」という備考があります。寒い場所でも、表の値より多くは流せません。
| 周囲温度 | 30℃ | 35℃ | 40℃ | 45℃ | 50℃ | 55℃ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 60℃区分の係数(クラモト表1) | 1.00 | 0.91 | 0.82 | 0.71 | 0.58 | 0.41 |
夏場の屋根裏・小屋裏や、発熱する機器の多い盤の中のように、周囲温度が30℃を超える場所では、電線管の本数による係数とは別に、この温度の補正も合わせて掛けます。
ケーブルラックに並べる場合は、別の表を使う
管に通さず、ケーブルラックなどに複数条を並べる「気中多条布設」では、146-4表ではなく、配列と中心間隔で決まる低減率を使います。クラモトの技術資料(JCS 0168-1による)では、2条を中心間隔S=d(dは外径)で並べると0.85、S=2dで0.95、S=3dまで離すと1.00で、低減がなくなります。条数が増えるほど、間隔が狭いほど、低減率は厳しくなります。
電線管の配線とケーブルラックの配線では、開く表そのものが違います。先に敷設のしかたを決めてから、対応する表を開きます。海外では考え方の枠組みも違い、同じ資料は、欧州はIEC 60364-5-52、米国はNFPA 70(米国電気基準)を参照するよう案内しています。
現場で間違いやすい点
- 既設の電線を数え忘れる: 新設の配線だけを見て「3本だから0.70」と判断し、同じ管に通っている既設の電線を数え忘れるケースです。既設分を含めた合計本数で係数を選び直します
- 数えない線の扱いを自己判断する: 接地線や単相3線式の中性線を本数に含めるかどうかは、内線規程の表の注記で扱いが決まっています。「電流が流れない線だから除外していい」と自己判断せず、注記で確認してから本数を確定させます
- ケーブルに146-4表を当てはめる: 電技解釈第146条第2項の対象は絶縁電線です。VVFやCVなどのケーブルは、内線規程やメーカーの許容電流表で確認します
- 短時間の電流と混同する: 第146条第2項は「短時間の許容電流についてはこの限りでない」としています。始動電流や短絡時の電流は、別の考え方で確認します
関連するガイド
関連する許容電流・電線選定・電流減少係数・内線規程・配線設計の品種・型番をお探しですか?
電材サーチでは、メーカー横断で目的の型番を素早く見つけ、そのまま見積もりを依頼できます。