本記事の事例は、安全啓発を目的として典型的な事象を再構成したものです。特定の現場・企業を指すものではありません。
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1. 【現場のやらかし事例】「通線できたからOK」と、細いPF管に電源線を何本も詰め込んで引き渡したら、数ヶ月後に漏電ショートした話
ある工場内の機械増設に伴う配線追加工事でのことです。 電気工事担当者は、追加の動力配線(三相200V)を通す際、「配管を新設するのは面倒だしスペースもない。既存のPF管(合成樹脂製可とう電線管)の中にまだ隙間があるから、ここに一緒に通してしまおう」と考えました。
呼び径22のPF管の中に、すでに通っていたIV電線に加え、新設の電線をさらに4本通しました。 ワイヤーを使って「かなりギチギチだが、力いっぱい引っ張ったらなんとか通線できた。これで配管の手間が浮いた」と、作業を完了させました。
しかし、増設された機械が本格稼働し始めてから3ヶ月後、突如その系統の漏電遮断器が動作し、機械が停止しました。 配管の点検口を開けて驚きました。PF管の内部で電線の塩化ビニル被覆がドロドロに溶けてくっつき合い、中の銅線同士が直接接触して、激しい短絡(ショート)と地絡(漏電)を起こしていたのです。
原因は「電線管内の詰め込みすぎによる熱のこもりと、電流減少係数の無視」でした。 通常、IV電線 2.0mmの許容電流は空気中であれば35Aですが、電線管に複数の電線(今回は計8本)を詰め込むと、電流減少係数(低減率:今回の本数では0.49)がかかり、1本当たりの実質的な許容電流は17Aまで激減します。
これを知らずに「通ったから大丈夫」と設計電流の25Aを流し続けたため、管内で電線が異常発熱し、熱の逃げ場がなくなって被覆が溶けてしまったのです。一歩間違えれば、PF管自体が溶けて火災に至る危険なやらかしでした。
2. 内線規程における「電流減少係数」の重要データ
同じ電線管・配線ダクトの中に複数の電線を通す場合、本数に応じて以下の電流減少係数(補正係数)を、電線の基本許容電流に掛け算しなければなりません(内線規程より)。
電線管内の電線数と電流減少係数の一覧
- 1〜3本: 係数 0.70 (許容電流が30%ダウン)
- 4本: 係数 0.63 (許容電流が37%ダウン)
- 5〜6本: 係数 0.56 (許容電流が44%ダウン)
- 7〜15本: 係数 0.49 (許容電流が51%ダウン)
例えば直径2.0mmの絶縁電線は基準の許容電流が35Aですが、金属管やプラスチック管の中に他の配線と一緒に通す本数が増えると、7〜15本で係数0.49がかかり17A程度まで小さくなります(よく見る24Aという値は、すでに3本以下の係数0.70を掛けたあとの数字です)。
3. 管路設計でやらかさないための防止策
現場での通線発熱トラブルを防ぐための、設計・施工上の3つの鉄則です。
① 電線占有率の厳守(32%ルール)
電線サイズの外径から「断面積」を計算し、管の断面積に対して32%以下(同一サイズの電線で、屈曲が少なく、引き入れ・引き替えが容易な場合に限り48%以下)に収まっているかを確認します。これにより、物理的な放熱スペースと通線時の遊びが確保されます。
② 計算シミュレーションの実施
電流・配線長・電線サイズから電圧降下や許容電流の余裕値を事前に必ず計算します。特に熱がこもりやすい盤内配線や管内配線では、ギリギリの電線サイズを選定せず、余裕を持った(1ランク太い)sq数を選定することが現場トラブルを防ぐ基本です。
③ 高耐候・高放熱な電線管・保護具の選定
屋外配線や過酷な環境では、放熱性の高い配管(波付金属管等)や、内部の結露を防ぐ防雨キャビネット、保護カバーを適切に選定します。
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