新築店舗の天井裏で、電気工事士が照明用の配線を通した。使ったのはオレンジ色の電線管。工事は無事終わり、天井板も張られた。
ところが数か月後の定期点検で、この配管がやり直しを指摘された。管の種類も、接続方法も、見た目には何も問題がなさそうに見える。実際、同じ形をした電線管の中には、まったく同じ使い方をしても問題ないものもある。
何が違ったのか。このトピックを読み終えるころには、電線管の色と形だけで正誤を判断できるようになっている。
第二種電気工事士が扱う一般用電気工作物の低圧屋内配線では、主に次の工事方法が使われる。
- 金属管工事(厚鋼電線管・薄鋼電線管・ねじなし電線管)
- 合成樹脂管工事(硬質ポリ塩化ビニル電線管=VE管、合成樹脂製可とう電線管=PF管・CD管)
- 金属可とう電線管工事(2種金属製可とう電線管=プリカチューブ等)
- ケーブル工事(VVFケーブル等。別トピックで扱う)
| 工事の種類 | 主な管材 | 接地工事 | 特徴・注意点 |
|---|---|---|---|
| 金属管工事 | 厚鋼・薄鋼・ねじなし電線管 | 原則必要(D種、300V超はC種) | 機械的強度が高く露出・隠ぺいとも使用可 |
| 合成樹脂管(硬質) | VE管 | 不要(絶縁物) | 屋内外とも使用可。耐衝撃性が高い |
| 合成樹脂製可とう電線管 | PF管 | 不要 | 自己消火性があり、露出配線にも使用できる |
| 合成樹脂製可とう電線管 | CD管(オレンジ色) | 不要 | 自己消火性がなく、直接コンクリート埋込みか、専用の不燃性・自消性のある難燃性の管・ダクト内に限る |
| 金属可とう電線管 | プリカチューブ | 原則必要 | 振動する機器まわりの配線などに使用 |
冒頭のCD管とPF管は、色以外の外観がよく似ている。だがこの2つには決定的な違いがある。
これに対してPF管は自己消火性があるため、天井裏の露出配線や二重天井内の配線にも使うことができる。「可とう性のある合成樹脂管」という点では同じ2つの資材が、施工できる場所ではまったく違う扱いになるのは、この性質の違いによる。
また、電線管を使った工事に共通するルールとして、電線管・ダクトの中では電線を接続してはならない。電線同士の接続は必ずアウトレットボックスやジョイントボックスの中で行い、管との接続部は堅ろうかつ電気的に完全に接続する必要がある。
往きだけを通した金属管は、電気ストーブになる
金属管ならではの大原則が、もうひとつある。交流回路の電線を金属管に収めるときは、往きと帰り——1回路の電線全部——を必ず同じ管の中に収める、というルールだ。単相2線式なら2本とも、単相3線式・三相3線式なら3本とも。電線を金属製の箱や鉄板に貫通させるときも同じで、1回路の電線は同じ穴にまとめて通す。
なぜ分けてはいけないのか。交流の電流は、まわりに向きが入れ替わり続ける磁界を作る。変圧器で見たとおり、変化する磁界の中に置かれた鉄には、電磁誘導で電流が湧く。鉄の管に往きの1本だけを通すと、管そのものが鉄心のようにふるまい、内部に渦電流が流れてジュール熱を出す。IHクッキングヒーターが鍋底を発熱させるのと同じ現象が、天井裏の配管で起きるということだ。管が熱を持ち、うなり音を出し、放っておけば中の電線の被覆を傷める。
往きと帰りが同じ管にいれば、2本の電流は大きさが同じで向きが逆だから、作る磁界は互いに打ち消し合ってほぼ消える。この状態を電磁的平衡と呼び、崩れた状態が「電磁的不平衡」だ。学科試験では、複数の金属管に電線をどう振り分けるかを図で示して「電磁的不平衡を生じない入れ方はどれか」と問う形が定番で、判定はいたって単純——1本しか通っていない金属管が図の中にあれば、その時点で誤りである。
なお、VE管やPF管のような樹脂の管は磁性体ではないので、この発熱は起きない。接地が要るのも、往復同管が効いてくるのも金属管だから。管の材料が、施工ルールを2つとも決めている。
その「25」は外側の寸法 — 管の呼び方は2系統ある
薄鋼電線管の「C25」とねじなし電線管の「E25」。この25は、管の外径(約25.4mm)にほぼ等しい数字だ。ところが硬質ポリ塩化ビニル電線管の「VE22」やPF管の「PF16」の数字は、管の内径にほぼ等しい。同じような2桁の数字なのに、測っている場所が外側と内側で違う。
| 管の種類 | 呼びの基準 | 数字の並び |
|---|---|---|
| 薄鋼電線管(C) | 外径に近い値 | 奇数系(C19・C25・C31・C39…) |
| ねじなし電線管(E) | 外径に近い値 | 薄鋼と同じ並び(E19・E25・E31…) |
| 厚鋼電線管(G) | 内径に近い値 | 偶数系(G16・G22・G28・G36…) |
| VE管・PF管・CD管 | 内径に近い値 | VE14・VE16・VE22/PF14・PF16・PF22… |
樹脂管の呼びが内径なのは、この管の存在理由が「中に電線を何本通せるか」だからだ。通線能力を、内径の数字がそのまま表す。一方、鋼製電線管の呼びはねじや継手の寸法体系とともに歴史的に決まってきたもので、薄鋼・ねじなしは外径、厚鋼だけは内径の基準になっている。整理するなら「薄鋼・ねじなし=外径・奇数系、厚鋼と樹脂系=内径」。学科試験では「呼び方が内径に近い値で示される管はどれか」という形で出るし、実務でも電線管サイズの計算で通線本数を検討するとき、この基準を取り違えると結論が変わってしまう。
サドルを何m間隔で打つか — 1.5mと2mと、書かれていない数字
管を選んだら、次は建物に留める作業になる。ここでも管の材料が数字を決めている。
合成樹脂管工事の条文——第158条第3項第三号——はこう書いている。
管の支持点間の距離は1.5m以下とし、かつ、その支持点は、管端、管とボックスとの接続点及び管相互の接続点のそれぞれの近くの箇所に設けること。
1.5m以下。ケーブル工事の2m以下(第164条第1項第三号)とは別の数字だ。しかもこの条文は、間隔だけでなく支持点をどこに置くかまで指定している。管端、ボックスとの接続点、管相互の接続点——要するに継ぎ目のそばだ。
理由は素直に導ける。樹脂の管は、受け口に差し込んで接着剤で固めてあるだけだ。継ぎ目に曲げや引っ張りの力がかかり続ければ、いずれ抜けるか割れる。継ぎ目の近くを押さえてしまえば、力は支持点が受け止め、接着面には届かない。1.5mという間隔と「継ぎ目の近くに置く」という指定は、別々の決まりではなく、1つの目的を2つの角度から書いたものになっている。
では金属管は何mか。条文を素直に探すと——見つからない。第159条は金属管工事そのものの条文で、管の厚さ(コンクリートに埋め込むものは1.2mm以上ほか)、端口のブッシング、D種接地の省略条件まで細かく定めているのに、支持点間の距離だけが書かれていない。第160条の金属可とう電線管工事も同じだ。現場で言われる「金属管は2m以下」という数字は、法令ではなく内線規程(民間の規程)が示す目安である。
| 工事の種類 | 支持点間の距離 | 出どころ |
|---|---|---|
| 合成樹脂管工事 | 1.5m以下(支持点は管端・管とボックスとの接続点・管相互の接続点の近く) | 電技解釈 第158条第3項第三号 |
| ケーブル工事 | 2m以下(接触防護措置を施した場所で垂直に取り付ける場合は6m以下、キャブタイヤケーブルは1m以下) | 電技解釈 第164条第1項第三号 |
| 金属管工事 | 解釈に規定なし(実務の目安として2m以下) | 内線規程 |
| 金属可とう電線管工事 | 解釈に規定なし | — |
覚え方は「1.5は樹脂、2はケーブル」と、数字を工事名とセットで持つこと。そのうえで「金属管の2mは法令の数字ではない」と一段落として置いておくと、条文の正誤を問う設問でも、サドルの数を数える材料拾いでも足を取られない。
図面の線が地面に潜ったら、管の名前が変わる
ここまでの管は、どれも建物の中か、壁の表面を走っていた。ところが配線図をたどると、引込柱の足元や屋外の分電盤から、線がそのまま地面の下へ潜っていくことがある。駐車場の外灯、離れた倉庫、集合住宅の共用部。架空で渡せない距離を、地面をくぐって運ぶ区間だ。
そこに現れる傍記が(FEP)である。波付硬質合成樹脂管——製造者によっては波付硬質ポリエチレン管とも呼ぶ——の記号で、カタログでの分類はそのまま「地中埋設管」。適合規格はJIS C 3653「電力用ケーブルの地中埋設の施工方法」で、VE管・PF管・CD管が屋内配線用の電線管であるのに対し、FEPは地中にケーブルを通すための管路材という、別系統の資材になっている。
外観はひと目で違う。表面が波打っていて、太い。この波が2つの仕事を同時にしている。1つは可とう性で、手で曲げられるから掘った溝のカーブにそのまま沿わせられる。もう1つは潰れにくさだ。上に土が載り、車が通る場所に埋める管には、条文が性能を要求している。
電線を収める管は、これに加わる車両その他の重量物の圧力に耐えるものであること。 ——電気設備の技術基準の解釈 第120条第2項第一号(管路式)
長さの単位も屋内の管とは桁が違う。未来工業のカタログでは、呼び30の製品が1把30mまたは50m巻。掘った溝に転がして延ばせば、継手を作らずに数十m先まで届く。継ぎ目が少ないほど、水が入る口も減る。
呼び方は樹脂系の仲間らしく内径基準だ。同じ寸法表で、呼び30の管内径は30mm、外径は41mm。呼び50なら内径50mm、外径66mm。VE管・PF管と同じ読み方がそのまま通じる。
| 管 | 主な居場所 | 呼びの基準 | 拠りどころ |
|---|---|---|---|
| VE管・PF管・CD管 | 屋内配線(露出・隠ぺい・コンクリート埋込) | 内径に近い値 | 電気用品安全法の適用を受ける合成樹脂製の電線管(電技解釈 第158条第2項第一号) |
| FEP | 地中埋設(管路式の地中電線路) | 内径に近い値 | JIS C 3653 電力用ケーブルの地中埋設の施工方法 |
天井裏や壁の中の配管としてFEPが出てこないのは、この右端の列の違いによる。屋内配線の合成樹脂管工事に使える管は、条文が「電気用品安全法の適用を受ける合成樹脂製の電線管」と指定している(第158条第2項第一号)。FEPはその電線管ではなく、地中でケーブルを守る管だ。裏を返せば、図面でFEPの3文字を見つけたら、そこは地面の下だと確定する。
そして、その管の中を通るのはケーブルである。第120条第1項が「地中電線路は、電線にケーブルを使用し、かつ、管路式、暗きょ式又は直接埋設式により施設すること」と定めているので、管に収めたからといってIVのような絶縁電線を通すことはできない。中身の選び方は電線・ケーブルの種類と使い分けへ、コンクリート埋設の樹脂管とFEPの実務上の使い分けはコンクリート埋設PF管とFEP管の施工要領にまとめてある。
数字だけの傍記は、薄鋼電線管
傍記にアルファベットが付かず、数字だけが書かれていることがある。(19) (25) のような形だ。
これは薄鋼電線管を表す。
理由は、JIS C 0303:2000 が管の種類を示す記号を表2にまとめており、そこに薄鋼電線管の記号が無いからだ。 E・PF・CD・F2・VE のように表2に記号を持つ管は必ずその記号を冠して書き、記号を持たない薄鋼電線管だけが 呼び径の数字のみになる。VE管は「VE16」とVEを冠するので、数字だけの傍記がVE管を指すことはない。
| 傍記の見え方 | 管の種類 |
|---|---|
| 数字だけ(例:19、25) | 薄鋼電線管 |
| E+数字 | ねじなし電線管 |
| VE+数字 | 硬質塩化ビニル電線管(VE管) |
| PF+数字 | 合成樹脂製可とう電線管(PF管) |
| F2+数字 | 2種金属製可とう電線管 |
- 厚鋼電線管(G)・VE管・PF管・CD管 … 内径基準
- 薄鋼電線管(C)・ねじなし電線管(E) … 外径基準(C25の外径は25.4mm、E19の外径は19.1mm)
だからE19は外径19mm、VE16は内径16mmを指す。同じ「19」でも意味が違う。 「線種と施工方法の組合せ」を問う問題では、傍記の記号と管の名前が一致しているかを まず確かめ、記号が無ければ薄鋼電線管だと読む。
配線図の傍記は、管の種類の略号で書かれる
配線図では、どの管を使うかが線に添えた略号で示される。呼び径の数字とセットで書かれる。
| 傍記 | 管の種類 |
|---|---|
| E | ねじなし電線管(E19、E25…) |
| (記号なし・数字のみ) | 薄鋼電線管(19、25…。材料表では「C19」のようにCを付けて呼ぶが、図面の傍記に記号は付かない) |
| G | 厚鋼電線管(G16、G22…) |
| F2 | 2種金属製可とう電線管(プリカチューブ) |
| PF | 合成樹脂製可とう電線管(PF管) |
| CD | 合成樹脂製可とう電線管(CD管。オレンジ色。コンクリート直接埋込みか、専用の不燃性・自消性ダクト内に限る) |
| VE | 硬質塩化ビニル電線管 |
| HIVE | 耐衝撃性硬質塩化ビニル電線管 |
| FEP | 波付硬質合成樹脂管(地中埋設用) |
覚え方は、アルファベットが管の材質・構造を、数字が呼び径を表すと分けること。 E19なら「ねじなし電線管の19」。F2だけは数字が種別(2種)を表すので、 そこだけ例外だと押さえておく。
街を歩くと、外壁の配管が読めるようになる
この使い分けを覚えると、身のまわりの建物の見え方が変わる。工場の外壁や立体駐車場の柱に走っている管を見上げて、金属の光沢とねじ山があれば金属管、灰色の硬い管ならVE管、クリーム色の蛇腹ならPF管と分かる。同時に、施工者が何を優先したのか——屋外か屋内か、露出か隠ぺいか、曲げが要るか、ぶつけられる場所か——まで読める。今日の帰り道、通り沿いの建物の壁を一度見上げてみるといい。
この読み方がそのまま仕事になるのが、後付けの工事だ。太陽光パネルやEV充電器のように、建物ができたあとから屋外へ配線を通す仕事では、壁を伝う露出配管が避けられない。そこでCD管を選べないことも、屋外の日射と雨に耐える管を選ぶことも、このトピックの延長線上にある。資材が色と形で厳密に分けられているのは暗記させるためではなく、天井裏で振り返った職人が一目で誤りに気づけるようにするためだ。選定の詳細は電線管・配線ダクトの種類と選び方にまとめてある。
冒頭の店舗でなぜやり直しになったのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。