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電気機器、配線器具並びに電気工事用の材料及び工具 ・ 1 / 8

変圧器(トランス)の仕組み

読み終えると、こうなる

巻数比という1つの割り算だけで、電圧が「決まっているもの」ではなく「作るもの」に見えてくる

  • 巻数比を使うとき、電圧を加えた側の巻数を分母に固定してから計算し、向きの取り違えで100倍ずれる誤りを避けられる
  • 降圧すれば電流はどうなるかと聞かれても、一次側と二次側の電力がほぼ等しいという一点に戻り、電圧と逆向きに動くと即答できる
  • 小勢力回路や接地工事の省略条件に変圧器が出てきたら、「絶縁」の2文字が付いているかを指で確認してから当てはめられる
考えてみよう

古いインターホン用の変圧器(トランス)を交換することになった。一次側(100V電源側)と二次側(インターホン側、通常は数V〜十数V)の2組の端子があるが、配線が劣化して色があいまいになっていた。「まあ、どちらから電気を入れても同じ変圧器だから大丈夫だろう」と、逆向きに接続して電源を入れてしまった。

この変圧器は一次巻線600回・二次巻線60回で、本来なら100Vを10Vに降圧するはずのものだ。ところが逆につないだことで、想定よりはるかに高い電圧が発生してしまった。

同じ部品なのに、つなぐ向きを変えただけで、なぜ危険なほど電圧が跳ね上がるのか。このトピックを読み終えるころには、その理由を巻数の数字だけで説明できるようになっている。

変圧器の構造はいたってシンプルだ。「鉄心(コア)」に「一次巻線」と「二次巻線」という2つのコイルを巻きつけただけで、両者は電気的には絶縁されており、磁気を介してのみ結ばれている。

一次側と二次側の電圧比は、巻数比(コイルの巻き数の比)と一致する。二次側の巻き数を一次側より少なくすれば電圧は下がり(降圧)、多くすれば電圧は上がる(昇圧)。

巻数比は「一次→二次」という向きだけで決まっているわけではない。どちらのコイルに電気を流し込んでも、出てくる側の電圧は同じ比率で決まる——つまり、逆向きに使えば降圧の関係がそのまま昇圧の関係に反転してしまう。

例題

一次巻線600回、二次巻線60回の変圧器の一次側に100Vを加えたとき、二次側の電圧は何Vか。

10V=100V×6060010\text{V} = 100\text{V} \times \frac{60}{600}

この式の分数部分をひっくり返して、逆向きに電気を流したらどうなるか考えてみてほしい。600/60、つまり10倍だ。降圧のつもりだった10分の1の関係が、そのまま10倍の昇圧に変わる。

なお電圧比が下がれば下がるほど、電流比は逆に上がる。二次側の巻き数を減らして電圧を下げるほど、二次側に流れる電流は大きくなる関係にあることも合わせて覚えておきたい。

100Vから10Vを作る割り算が、そのまま仕事になる

巻数比が読めるようになると、電圧が「決まっているもの」ではなく「作るもの」に見えてくる。今日できることを一つ挙げるなら、家の外に出て電柱を見上げてみるといい。柱の上に載っている灰色の円筒形の箱が柱上変圧器で、6600Vの高圧配電を、住宅で使う100V・200Vに落としている。中身は鉄心に巻いた2つのコイル、つまりこのトピックで見たものと構造は同じだ。

この論点が試験に出続けるのは、冒頭のような逆接続が現実に事故を起こすからだ。巻数比はどちら向きに使っても同じ比率で働く——この一点を知らないだけで、10Vのつもりの端子に1000Vが出る。出題者が守らせたいのは式そのものではなく、この向きの非対称さのほうだといえる。

同じ原理の変圧器が、ビルや工場のキュービクル(受変電設備)にも入っている。太陽光発電や蓄電池を建物の電気設備につなぐ工事も、結局は電圧を合わせる工程からは逃れられない。巻数比という割り算ひとつが、住宅のインターホンから工場の受電設備まで、規模を変えて並んでいる。

冒頭のインターホン用変圧器で、逆につないだ結果どれくらいの電圧が発生したのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 巻数比を、問われている向きと逆に割らせる

    なぜ引っかかる600回と60回という2つの数字が並ぶと、どちらを分母に置くかは半ば反射で決まってしまう。ところが同じ数字の組でも、向きを取り違えれば答えは10Vと1000V、つまり100倍ずれる。選択肢にはその逆数側の値が必ず置かれているため、間違えても不自然さに気づけない。

    見破り方計算に入る前に「電圧を加えたのはどちらの巻線か」を先に確定させ、その巻線の巻数を分母に固定する。加えた電圧×(出てくる側の巻数÷入れた側の巻数)という一つの形に書き直してから数字を入れれば、向きを取り違えようがない。

  2. 電圧の比と電流の比が、同じ向きに動くと思い込ませる

    なぜ引っかかる「降圧したのだから二次側は小さくなる」という感覚を、電流にもそのまま当てはめてしまう。電圧比が巻数比と同じ向きなのに対し、電流比はその逆になる。降圧側では電圧が下がったぶん、電流はむしろ増える。

    見破り方一次側の電力と二次側の電力はほぼ等しい、という一点に戻して確かめる。V×Iが両側でほぼ同じなら、Vが10分の1になったときIは10倍でなければ辻褄が合わない。電圧と電流のどちらを問われているかを、設問の末尾で読み直す。

  3. 条文が「絶縁変圧器」を求めている場面に、ただの変圧器や単巻変圧器を差し替える

    なぜ引っかかる小勢力回路の電源(電技解釈第181条)や、機械器具の接地工事を省略できる条件(同第29条第2項)で認められているのは、一次巻線と二次巻線が電気的に切り離された絶縁変圧器に限られる。単巻変圧器は1つの巻線の途中から取り出す構造で、一次側と二次側がつながったままのため、これらの条件を満たさない。選択肢では「絶縁」の2文字だけが抜き取られる。

    見破り方条文がらみで変圧器が出てきたら、「絶縁」の2文字が付いているかを指で押さえて確認する。付いていなければ、一次側の電圧が故障時に二次側へ回り込む経路が残っている構造だとみなして落とす。

参考文献・出典

理解度チェック(5問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、5問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 5 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 変圧器は鉄心に一次巻線と二次巻線を巻いただけの構造。両者は電気的に絶縁され、磁気だけで結ばれている
  2. 電圧比は巻数比と一致する。二次側の巻数を減らせば降圧、増やせば昇圧になる
  3. 一次・二次を逆につなぐと、降圧のはずが逆に大きく昇圧されてしまうことがある。巻数比はどちら向きに電気を流しても同じ比率で働くため
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