古いインターホン用の変圧器(トランス)を交換することになった。一次側(100V電源側)と二次側(インターホン側、通常は数V〜十数V)の2組の端子があるが、配線が劣化して色があいまいになっていた。「まあ、どちらから電気を入れても同じ変圧器だから大丈夫だろう」と、逆向きに接続して電源を入れてしまった。
この変圧器は一次巻線600回・二次巻線60回で、本来なら100Vを10Vに降圧するはずのものだ。ところが逆につないだことで、想定よりはるかに高い電圧が発生してしまった。
同じ部品なのに、つなぐ向きを変えただけで、なぜ危険なほど電圧が跳ね上がるのか。このトピックを読み終えるころには、その理由を巻数の数字だけで説明できるようになっている。
変圧器の構造はいたってシンプルだ。「鉄心(コア)」に「一次巻線」と「二次巻線」という2つのコイルを巻きつけただけで、両者は電気的には絶縁されており、磁気を介してのみ結ばれている。
一次側と二次側の電圧比は、巻数比(コイルの巻き数の比)と一致する。二次側の巻き数を一次側より少なくすれば電圧は下がり(降圧)、多くすれば電圧は上がる(昇圧)。
例題
一次巻線600回、二次巻線60回の変圧器の一次側に100Vを加えたとき、二次側の電圧は何Vか。
この式の分数部分をひっくり返して、逆向きに電気を流したらどうなるか考えてみてほしい。600/60、つまり10倍だ。降圧のつもりだった10分の1の関係が、そのまま10倍の昇圧に変わる。
なお電圧比が下がれば下がるほど、電流比は逆に上がる。二次側の巻き数を減らして電圧を下げるほど、二次側に流れる電流は大きくなる関係にあることも合わせて覚えておきたい。
100Vから10Vを作る割り算が、そのまま仕事になる
巻数比が読めるようになると、電圧が「決まっているもの」ではなく「作るもの」に見えてくる。今日できることを一つ挙げるなら、家の外に出て電柱を見上げてみるといい。柱の上に載っている灰色の円筒形の箱が柱上変圧器で、6600Vの高圧配電を、住宅で使う100V・200Vに落としている。中身は鉄心に巻いた2つのコイル、つまりこのトピックで見たものと構造は同じだ。
この論点が試験に出続けるのは、冒頭のような逆接続が現実に事故を起こすからだ。巻数比はどちら向きに使っても同じ比率で働く——この一点を知らないだけで、10Vのつもりの端子に1000Vが出る。出題者が守らせたいのは式そのものではなく、この向きの非対称さのほうだといえる。
同じ原理の変圧器が、ビルや工場のキュービクル(受変電設備)にも入っている。太陽光発電や蓄電池を建物の電気設備につなぐ工事も、結局は電圧を合わせる工程からは逃れられない。巻数比という割り算ひとつが、住宅のインターホンから工場の受電設備まで、規模を変えて並んでいる。
冒頭のインターホン用変圧器で、逆につないだ結果どれくらいの電圧が発生したのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。