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電気機器、配線器具並びに電気工事用の材料及び工具 ・ 2 / 8

電動機(モーター)の始動の仕組み

読み終えると、こうなる

換気扇が「ブーン」と唸るのに羽根が回らないという音を、電圧不足ではなく回転磁界ができていない兆候として聞き分けられるようになる

  • 同期速度Ns=120f/pを計算したら、極数が増えるほど遅くなるという向きで検算し、分子と分母の入れ替えに気づける
  • スターデルタ始動の効果を聞かれたら、電圧を下げる方式だという一点に戻り、電流だけでなく始動トルクも同時に下がると判断できる
  • 設問が「同期速度」か「回転速度」かを末尾で読み直し、すべりの分だけ実回転が必ず同期速度より遅いと判定できる
考えてみよう

換気扇のスイッチを入れると「ブーン」と低い音は鳴るのに、羽根がピクリとも回らない。テスターを当てて確認すると、モーターにはちゃんと100Vが来ている。電気は流れているのに、なぜ回転だけが起きないのか。

音がするということは、少なくともコイルには電流が流れて磁界ができている。それなのに回らない——これは単相誘導電動機の始動の仕組みを知らないと、まったく見当がつかない現象だ。

単相誘導電動機は、単相交流(一般家庭用の100Vなど)で動く電動機だ。固定子に主巻線と補助巻線の2つのコイルを持ち、この2つに位相差(タイミングのズレ)のある磁界を作ることで、初めて「回転磁界」という、ぐるぐると向きを変えながら回る磁界を作り出せる。

単相の交流だけでは、磁界は強くなったり弱くなったりを繰り返すだけで、向きは一方向のまま脈動する。回転を始めるには、もう1つ位相のずれた磁界を組み合わせて、磁界そのものを「回転」させてやる必要がある。

補助巻線側にコンデンサを直列に入れることで、主巻線側の磁界と位相をずらす方式をコンデンサ始動と呼ぶ。コンデンサを使わず、巻線そのものの抵抗差だけで位相差を作る方式が分相始動だ。エアコン室外機や換気扇など、家庭・小規模施設の機器に広く使われている。

一方、三相200V(動力)で動く三相誘導電動機(かご形)は、そもそも電源自体に3本の位相差がある。そのためコンデンサのような始動用の部品を使わなくても、3つの巻線に電気を流すだけで自然に回転磁界ができる。回転子は積層鉄心のスロットに棒状の導体を差し込み、両端を導体環で短絡した「かご形」の構造をしており、頑丈でメンテナンスがほとんど不要なことから工場設備の主力になっている。

回る速さを決めているのは、電源の周波数だ

回転磁界そのものが1分間に何回転するか。これを同期速度と呼び、1つの式で決まる。

Ns=120fp [min1]N_s = \frac{120f}{p}\ [\text{min}^{-1}]

ff は電源の周波数(Hz)、pp は電動機の極数だ。この式の中に、現場で調整できる数字はほとんどない。周波数は東日本50Hz・西日本60Hzで固定されており、極数は電動機を作った時点で決まっている。4極の電動機なら、60Hzで 120×60÷4=1800 min⁻¹、50Hzなら1500 min⁻¹。同じ機械でも、使う土地の周波数だけで回る速さが変わる。

ただし、回転子が実際に回る速度は同期速度ぴったりにはならない。回転磁界にわずかに遅れてついていくからこそ回転子に誘導電流が流れ、回す力が生まれる——遅れがゼロなら力もゼロになる。この遅れの割合をすべりと呼び、負荷がかかった状態で数%、無負荷ならほぼ同期速度まで近づく。銘板に「1740 min⁻¹」のような中途半端な数字が刻まれているのは、1800 min⁻¹からすべりの分を差し引いた、実際の回転速度だからだ。

逆転は配線2本、始動は電流との勝負

回転方向を逆にしたいときは、3本の結線のうちいずれか2本を入れ替える。位相の並び順が逆になり、回転磁界ごと逆向きに回る。3本すべてを入れ替えても並び順は元と同じままなので、回転方向は変わらない。届いたポンプが逆に回っていた、という現場の定番トラブルは、配線2本の入れ替えで直る。

もう1つの実務が、始動の瞬間の電流だ。かご形誘導電動機に定格電圧をそのまま加えて始動する方法をじか入れ(全電圧始動)と呼ぶが、止まっている回転子を回し始める瞬間には、全負荷電流の4〜8倍程度の始動電流が流れ込む。この倍率は資料によって幅がある。第二種向けの教材は4〜8倍と書くものが多い一方、大形の高圧モータを扱うメーカー資料では定格電流の6〜10倍とされる。試験で問われるのは「およそ何倍か」であり、選択肢は1〜2倍・20〜30倍のように桁で離して置かれるので、数倍から10倍程度に収まる値を選べば正解になる。小さな電動機なら一瞬で済んでも、容量が大きくなると電源側の電圧を揺らし、同じ回路の照明やブレーカーに影響が出る。そこで始動時だけ巻線をスター結線にして各巻線への電圧を下げ、加速してからデルタ結線に切り替えるスターデルタ始動が使われる。始動電流は1/3に抑えられるが、引き換えに始動トルク(回し始める力)も1/3になる。

「音はするのに回らない」を、その場で切り分ける

始動の仕組みを知っていると、故障の切り分けが一気に速くなる。音がしているなら通電はしている、それでも回らないなら回転磁界ができていない——この2段階でたどれるからだ。換気扇でも循環ポンプでもエアコンの室外機でも、単相機であれば同じ順序で疑える。今日試せることとしては、家の換気扇や扇風機の銘板を見て「単相100V」と書かれているか確かめてみるといい。単相と書いてあれば、その中には必ず位相差を作るための仕掛けが入っている。

コンデンサは電子部品であり、経年で容量が抜けていく消耗品でもある。この仕組みを知らなければ「モーターの寿命だ」と判断して機器ごと交換することになるし、知っていれば部品1つを疑うところから入れる。試験がこの原理を問うのは、外から見た症状と内部で起きていることが一致しない典型例だからだ。

三相誘導電動機は、頑丈さとメンテナンス性の高さから工場設備の主力であり続けている。近年はインバータで回転数を変えて必要な分だけ回す省エネ改修も広く行われており、モーターまわりの仕事はむしろ増えている。容量に応じた保護機器の選び方は電動機のブレーカー選定ツールでも確かめられる。

冒頭の換気扇がなぜ音だけして回らなかったのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. Ns=120f/p の f と p を入れ替えるか、50Hzと60Hzを取り違えさせる

    なぜ引っかかるこの式は分子と分母に1つずつしか数字が入らないため、どちらがどちらか迷った瞬間に半々の賭けになる。しかも選択肢は、正しい値の半分・1.5倍・3倍にあたる回転数でていねいに埋められる。たとえば極数6を60Hzで使えば120×60÷6=1200 min⁻¹だが、その脇に600や1800や3600が並ぶ。どれも「それらしい回転数」なので、計算し直すまで誤りに気づけない。

    見破り方極が増えるほど遅くなる、という物理の向きで検算する。極数が2倍になれば回転は半分。周波数が上がれば速くなる。求めた値をこの2つの向きに当ててみて、極数6が極数4より速い答えになっていたら、その時点で分母と分子が入れ替わっている。

  2. スターデルタ始動の効果を、始動電流の側だけ書いて始動トルクの側を落とす

    なぜ引っかかる「始動電流を3分の1に抑える方法」として覚えているため、その代償として始動トルクも同時に3分の1になることが記憶から抜ける。選択肢では「始動トルクが大きくなる」と正反対に書かれるか、始動時間が短くなると書かれる。実際にはトルクが減るぶん、定格速度に達するまでの時間はむしろ長くなる。

    見破り方電圧を下げて始動する方式だ、という一点に戻す。巻線にかかる電圧を下げれば、流れる電流も、生まれる力も一緒に小さくなる。電流だけが都合よく減る方法は存在しない、と考えれば選択肢を切れる。あわせて、この方式を使うのは一般用の三相かご形誘導電動機であって、巻線形や単相機ではないことも押さえる。

  3. 同期速度と、銘板に書かれた実際の回転速度を同じものとして扱わせる

    なぜ引っかかる計算で出るのは回転磁界の速さ(同期速度)であり、回転子はすべりの分だけ必ず遅れて回る。設問が「同期速度」を聞いているのか「回転速度」を聞いているのかで、1800と1740のような近い2つの値が正解になり分かれる。選択肢にすべりを引いた値が置かれると、計算した本人ほど迷う。

    見破り方設問の末尾の名詞を読み直す。同期速度なら式の値をそのまま、回転速度なら「最も近い値」という指示とあわせて式の値に寄せる。遅れがゼロなら回す力も生まれない、という理屈を思い出せば、実回転が同期速度を超えることはないと判断できる。

参考文献・出典

理解度チェック(6問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、6問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 6 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 単相誘導電動機は、位相差のある2つの磁界(回転磁界)がないと自力で回転を始められない
  2. 補助巻線にコンデンサを入れて位相差を作るのがコンデンサ始動、巻線の抵抗差だけで位相差を作るのが分相始動
  3. 三相誘導電動機(かご形)は3本の電源自体に位相差があるため、始動用の部品なしで回転磁界ができる
  4. 同期速度は Ns=120f/p [min⁻¹]。周波数fに比例し、極数pに反比例する。実際の回転速度は同期速度より数%遅く、この遅れの割合を「すべり」と呼ぶ
  5. 3本の結線のうちいずれか2本を入れ替えると逆転する。じか入れ(全電圧)始動の始動電流は全負荷電流の4〜8倍程度(資料によって幅があり、大形の高圧機を扱う資料では定格電流の6〜10倍とするものもある)で、スターデルタ始動にすると始動電流・始動トルクとも1/3になる
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