新しく買った200V用のエアコンを設置しようとしたら、コンセントの穴の形が微妙に違っていて、プラグが物理的に挿し込めなかった。サイズを測ってみても、どう見ても一般的な100Vのコンセントとは刃の並びが違う。
電気屋さんを呼ぶ前に、少し考えてみてほしい。なぜメーカーは、わざわざ挿せない形にしているのだろうか。単なる規格の違いなのか、それとも理由があるのか。
住宅・店舗で使われるスイッチには複数の種類がある。1箇所からの点滅に使う最も基本的なものが片切スイッチ。階段の上下や廊下の両端など、2箇所から同じ照明を点滅させたいときは3路スイッチを2個1組で使う。さらに3箇所以上から点滅させたい場合は、3路スイッチの間に4路スイッチを追加する。
パイロットランプ付スイッチには2系統ある。ランプがON時に点灯して「今つけていますよ」と知らせる確認表示灯タイプと、OFF時に点灯して暗闇でもスイッチの位置が分かるようにした「ホタルスイッチ」(位置表示灯)タイプだ。
コンセントは、定格電流(15A・20A等)・定格電圧(単相100Vは125V、単相200V・三相200Vは250V)・接地極の有無によって刃受けの形状が異なる。エアコンなど大きな電流を扱う機器では、20A用の刃受け形状や、抜けにくい「引掛形」のコンセントが使われることも多い。
この形の体系を決めているのがJIS C 8303(配線用差込接続器)だ。同規格は「種別,極数及び定格の組合せは,極配置とともに図A.1〜図A.29で規定する」と定め、附属書Aに極配置図を並べている。2極15A125Vが図A.1、2極15A250Vが図A.2、2極20A125Vが図A.3、接地極付の15A125Vが図A.9——という具合に、定格電流・定格電圧・接地極の有無の組合せ1つひとつに図が割り当てられている。刃と刃受穴の形状・寸法も「極数,極配置及び定格に従い,図A.1〜図A.29による」(箇条6.6)とされていて、形は各社が自由に決められるものではない。
「挿さらない」は全方向ではない — 規格が認めている兼用
ここで一段踏み込んでおきたい。「規格が違えば挿さらない」と丸ごと覚えると、規格の書きぶりからずれる。JIS C 8303の表1には注記があり、刃受が図A.15(2極接地極付20A125V)のものに対しては、図A.1(15A125V)・図A.3(20A125V)・図A.9(接地極付15A125V)のプラグも兼用できると明記されている。250V側にも同じ形の注記(注d)がある。
つまり「小は大に挿さる」方向——15A用のプラグを20A用のコンセントに挿すこと——は、規格が正面から認めている。家庭の20A兼用コンセントに普通の家電のプラグが問題なく挿さるのは、この規定があるからだ。逆に20A専用のプラグを15A用のコンセントへ、という方向は認められていない。
一方、125V用と250V用をまたぐ兼用は、この注記のどこにも出てこない。だから「200Vのプラグが100Vのコンセントに挿さらない」は成り立つが、「定格電流が違えば挿さらない」は成り立たない。物理的に止めているのは主に電圧の側だ、と分けて覚えておくと選択肢に振り回されない。
「ここにもう1個スイッチが欲しい」に答えられるようになる
片切・3路・4路の使い分けが頭に入ると、暮らしの中の不満を回路の言葉に翻訳できるようになる。「玄関で点けた廊下の照明を、寝室の前でも消したい」は3路スイッチ2個で片づく話だし、「途中の階段でも操作したい」なら、その2個の間に4路を1個挟めばいい。今日試せることとして、家の中を歩いて、同じ照明を2箇所から操作できる場所がいくつあるか数えてみるといい。そこには3路スイッチが2個入っている。仕組みの詳細は3路スイッチの解説でも読める。
コンセントの刃受け形状が試験に出るのは、これが「使う人の注意力に頼らない安全設計」の代表例だからだ。200Vのプラグが100Vのコンセントに挿さらないという不便さは、誰かが必ずやる誤接続を、物理的に不可能にすることで防いでいる。マニュアルや注意書きではなく形そのもので事故を止める、という考え方がここに現れている。
ホタルスイッチのように「暗いところでスイッチを探させない」工夫も、この分野の延長線上にある。近年は通信機能を持つスイッチも増えてきたが、片切か3路か、どの線を切っているのかという基本の理解がないと、置き換えの可否すら判断できない。器具の種類を実物で見比べたいときは、サイト内の品種カテゴリから配線器具をたどってみるといい。
冒頭のエアコンのプラグがなぜ挿さらなかったのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。