住宅の天井裏で、電気工事士がVVFケーブルを配線した。造営材(天井の下地材)に沿わせながら、サドルで固定していく作業だ。急ぎの現場だったこともあり、間隔はだいたい3mおきという感覚で打っていった。
数年後、リフォームで天井裏を点検した別の業者が、ケーブルが自重でたるみ、一部の被覆に負荷がかかっているのを見つけた。固定自体はしてあったのに、なぜこんなことになったのか。
このトピックを読み終えるころには、この点検結果を見ただけで原因が分かるようになっている。
ケーブル工事は電線管を使わずケーブルをそのまま配線する工法で、施工が比較的簡易なため住宅配線で広く使われる。VVFケーブル・VVRケーブル・CVケーブルなどがこの工法に当たる。
造営材(壁・天井の下地材等)の下面または側面に沿わせて取り付ける場合、電線を造営材に接触させたまま固定してよいが、支持点間の距離には決まりがある。
この2mには、覚えておくべき例外が2つある。1つは緩和の側で、接触防護措置(人が容易に触れないよう高い位置に施設するか、さくや覆いを設ける措置)を施した場所において垂直に取り付ける場合は、支持点間を6m以下まで広げられる。パイプシャフトの中を何階分も立ち上がる幹線がその典型で、垂直のケーブルは自重で横にたるむことがなく、重さは下向きの張力として支持点が受け止めるからだ。たるみ防止という2mの目的を思い出せば、垂直で緩む理屈はそのまま導ける。もう1つは厳しくなる側で、キャブタイヤケーブルをケーブル工事として施設する場合は1m以下。外装が柔らかく変形しやすいぶん、支持は細かく取る必要がある。
ケーブル同士の接続も、電線管工事と同様に必ずジョイントボックス等の中で行い、リングスリーブや差込形コネクタで接続部を保護する。天井裏や壁の中でボックスを使わずに接続することは認められない。なお、ケーブル自体は絶縁物で覆われているため、ケーブルそのものに接地工事は要らない。ここが金属管工事との大きな違いだ。ただし「ケーブル工事だから接地は不要」と丸ごと覚えると危ない。第164条第1項第四号は、300V以下の場合に、電線の被覆に使用する金属体(MIケーブル・鉛被ケーブル・がい装ケーブル)だけでなく、金属製の電線接続箱や、電線を収める防護装置の金属製部分にもD種接地工事を求めている。VVFを使う工事でも、金属製アウトレットボックスを使えば接地の話が出てくる(防護装置の金属製部分については、乾燥した場所で長さ4m以下などの除外規定がある)。
曲げすぎたケーブルは、外側と内側で別々に壊れる
支持点の間隔が「まっすぐな区間の話」だとすれば、まっすぐでない区間にも決まりがある。盤に引き込む手前、梁をかわす箇所、ボックスの直前。ケーブルは必ずどこかで曲がる。
曲げると、断面の外側と内側で正反対のことが起きる。外側のシースと絶縁体は引っ張られて薄く伸び、内側は逃げ場を失って押し縮められ、しわが寄る。中の導体も曲げの内側へ寄ろうとするので、まわりの絶縁体の厚みは均一ではなくなる。薄くなった側は、その薄さぶんの絶縁しか持たない。しかもこの状態は、曲げた瞬間に事故になるわけではない。壁の中に収まったまま、通電のたびの温度変化を何年も受け続け、いちばん無理をしている一点から劣化していく。支持点間の2mと同じで、この数字が守っているのは施工した日の安全ではなく、何年も先の絶縁だ。
「外径の6倍」は、法令が決めた数字ではない
ところが、その数字を条文の中に探しても見つからない。電気設備の技術基準の解釈の第164条は、まさにケーブル工事そのものの条文だ。第1項から第3項まで、使える電線の種類、重量物の圧力や機械的衝撃を受ける場所での防護装置、支持点間の距離、金属製防護装置の接地、コンクリートへの直接埋込み、パイプシャフト内での垂直つり下げまで細かく定めている。ところが、曲げ半径についての規定はどこにも出てこない。金属管工事の第159条を第1項から第4項まで読んでも同じで、管の厚さや端口の処理は決めているのに、管の曲げ半径は書かれていない。
数値がはっきり書かれているのは、法令の外側だ。ひとつは、工事の発注者が定める標準仕様書。国土交通省の公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版は、表2.10.1「ケーブルの曲げ半径」でこう定めている。
- 低圧ケーブル:単心以外は仕上り外径の6倍以上、単心は8倍以上
- 低圧遮へい付ケーブル・高圧ケーブル:単心以外は8倍以上、単心は10倍以上
備考として、デュプレックス形・トリプレックス形・カドラプレックス形のより線は、より合せ外径を仕上り外径とみなして「単心以外」を適用すること、低圧ケーブルには低圧の耐火ケーブル・耐熱ケーブルを含むことが添えられている。東京都交通局の電気設備工事標準仕様書(平成31年4月)も同じ数値だ。もうひとつは電線メーカーの技術資料で、SWCCやフジクラ・ダイヤケーブルが公開している許容曲げ半径の表も、遮へいのないケーブルは単心8倍・多心6倍、遮へい付きは単心10倍・多心8倍で一致している(これらの資料に根拠規格名の記載は無い)。
発注者もメーカーも別々に書いているのに、6・8・10という骨格は動かない。第二種で扱う低圧ケーブルなら、覚えるのは「単心以外(多心)は6倍以上、単心は8倍以上」。遮へい付きと高圧はそれぞれ1段厳しくなって8倍・10倍、と付け足しておけばいい。なお、確認できた仕様書とメーカー資料はいずれも「単心」と「単心以外」でしか区分しておらず、丸形と平形で値を分ける記載は無い。
そして電線管の側については、業界団体である合成樹脂製可とう電線管工業会が、最小曲げ半径を内側の半径で管内径の6倍以上とし、その参考条文として内線規程3110-8「管の屈曲」を挙げている。内線規程(JEAC 8001)は日本電気協会が発行するもので、発行元自身が「電気需要場所における電気工作物の設計・施工・維持・管理について規定した民間規格」と説明している。法令ではない。最新版は第14版のJEAC8001-2022(2022年12月25日発行)だ。曲げ半径は、法令が命じている数字ではなく、業界と発注者が守っている数字である——この出どころの違いは、覚え方にも効いてくる。条文を探しても出てこないからだ。
同じ6倍でも、ケーブルは外径、金属管は内径
混同しやすいのが金属管だ。公共建築工事標準仕様書の2.2.3(5)は「管の曲げ半径(内側半径とする。)は、管内径の6倍以上とし、曲げ角度は90度を超えてはならない」と定め、太さ25mm以下で施工上やむを得ない場合に限って、管内断面が著しく変形せずひび割れの生じない程度まで小さくできるという緩和を置いている。東京都交通局の仕様書も同じだ。
並べると、ケーブルにも金属管にも6倍という数字が出てくる。だが基準にしている寸法が違う。ケーブルは仕上り外径の6倍、金属管は管内径の6倍だ。倍数だけを覚えると、この2つは同じ顔をして見える。
現場で確かめるのに定規は要らない。ただし数えるのは弧の長さではなく半径だ。曲がりの中心にあたる点を目で置き、そこから内側の弧までを、ケーブル自身の太さ何本ぶんで当たれるかを見る。多心で6本ぶんに届かなければ曲げすぎ、単心なら8本ぶん。中心が取りにくい姿勢なら、Uターンさせた折り返しの内側どうしの差し渡し(半径の2倍にあたる)で見てもいい。こちらは多心で太さ12本ぶん、単心で16本ぶん空いていれば足りている。倍数はもともと、その電線の太さを物差しにした数え方である。
8倍という数字は、単心でも多心でも安全側に倒れる
学科試験でケーブル工事の適否を問われたとき、選択肢に「屈曲部の内側の半径をケーブル外径の8倍にして曲げた」と書かれていたとする。この記述は、単心以外に当てる6倍以上も、単心に当てる8倍以上も、どちらの基準も満たす。つまり単心か多心かが明示されていなくても、どちらの区分を当てはめても適切側に倒れる。逆に6倍を下回る数字なら、どちらの区分でも下限を割るので不適切側に倒れる。判断に迷いが残るのは、6倍以上8倍未満という中間の値が、単心かどうかを伏せたまま出されたときだけだ。
そして知っておきたいのは、ケーブル工事の適否を問う設問で並ぶ不適切側の記述が、曲げ半径ではなく別の条文で切れることが多い、という事実である。定番は次の3つだ。
- 接触防護措置を施した場所で造営材に沿って垂直に取り付けたが、支持点間の距離を6mより長くとった → 第164条第1項第三号。垂直で緩和されても上限は6mで、これを超えれば不適切
- 金属製遮へい層のない電話用弱電流電線と、低圧配線を同一の管に収めた → 第167条(低圧配線と弱電流電線等との接近又は交差)。低圧配線と弱電流電線を同一の管に収めることは原則として認められず、認められる例外も限定的で、金属製遮へい層のない電話用弱電流電線はそこに含まれない
- 600Vビニル絶縁ビニルシースケーブルを、建物のコンクリート壁の中に直接埋設した → 第164条第2項第一号。直接コンクリートに埋め込めるのはMIケーブル、コンクリート直埋用ケーブル、第120条第6項の性能を満たすがい装を有するケーブルに限られる
つまり曲げ半径は、決め手にならない回のほうが多い。ほかの記述を条文で落とせば、残った1つが自動的に残る。曲げ半径が要るのは、むしろ「ここでは切れない」と判断して手を止めないためだ。倍数を1つも思い出せないまま最後の選択肢の前で固まる、という止まり方が、いちばん高くつく。
金属管の側は、同じ試験の別の問題で数えさせられることがある。薄鋼電線管の曲げ半径(内側)を管の内径の5倍にした、という記述は、管内径の6倍以上を下回るので不適切だ。ケーブルの外径と管の内径は、同じ試験の中で、別々に数えさせられている。片方の物差ししか持たずに会場へ入ると、もう片方で必ず取り違える。
引込口の4択を1つに絞る — 消せる順に消す
選択肢に複数の工事が並び、一見どれも使えそうに見えることがある。 消せるものから順に消すと1つに絞れる。
1. 金属線ぴ工事は、まず消える 線ぴが使えるのは乾燥した場所に限られ(156-1表で○が付くのは展開した場所と 点検できる隠ぺい場所の2区分。どちらも乾燥・300V以下)、雨のかかる屋外には使えない。 引込口の立上りは屋外なので、この時点で外れる。
2. 金属可とう電線管は、種別の指定を見る 屋外(湿気・水気のある場所)で使えるのは2種金属製可とう電線管だ。 選択肢が「金属可とう電線管工事」とだけ書かれ、1種か2種かの指定がないなら、 確実に適切とは言い切れない。1種は乾燥した露出場所・点検できる隠ぺい場所に限られる。
3. 残るのは金属管工事とVVRケーブル工事 どちらも屋外の立上りに使える。設問がどちらか一方を答えにしているなら、 図に描かれた記号(管なのかケーブルなのか)で決まる。
「屋外で使えるか」を判定する物差しは、雨がかかるか(水気のある場所か)の1点だ。 線ぴ・1種可とう電線管・VVFは屋内向き、金属管・2種可とう電線管・VVRは屋外に耐える、 と2列に分けて覚えておく。
引込口まわりに使える工事は、限られている
電力量計の付近、屋外から屋内へ電気を引き込む立上り部分は、雨がかかり、人が触れうる場所だ。だから使える工事の種類が絞られる。
一般に用いられるのは次のものだ。
| 使えるもの | 補足 |
|---|---|
| 金属管工事 | 外傷に強い。屋外の立上りの定番 |
| 金属可とう電線管工事(2種) | 曲げが必要な部分に |
| 合成樹脂管工事 | 塩害・腐食に強い |
| ケーブル工事(VVR等) | VVRは丸形で外装が厚く、屋外露出に向く |
引込口の写真や図で「どのケーブルを使うか」と問われたら、 屋外の露出=VVR、屋内の造営材沿い=VVFと切り分ける。 配線図では引込口から電力量計までの短い区間がこれに当たる。
電話線やLANケーブルと出会ったら — 弱電流電線との接近・交差
天井裏では、電力の配線と弱電流電線(電話・LAN・インターホン・テレビの線)がしばしば交差する。ここには専用の規定があり(電技解釈第167条)、試験でも「適否」を問われる。
規定は2段構えになっている。
② 管に入っていなくても、接触させない(第2項) 上記の工事+ケーブル工事・ライティングダクト工事・平形保護層工事で施設した低圧配線が弱電流電線と接近または交差する場合は、接触しないように施設する。
「同一管に入れない」だけを覚えていると、ケーブル工事の天井裏で電話線と触れ合っているという設問に反応できない。管に入っていなくても、触れさせてはいけない——これが第2項だ。
例外もある。第3項ただし書きは、堅ろうな隔壁を設けてC種接地工事を施したダクト・ボックスの中であれば、同一のボックス内に収めてよいとしている(ただし管や線ぴに収める工事では、電線と弱電流電線は別個の管・線ぴに入れる)。また、リモコンスイッチや保護リレーの制御用で絶縁電線と同等以上の絶縁効力があり低圧配線と識別しやすいもの、C種接地を施した金属製遮へい層を持つ通信用ケーブルも、同居が認められている。
なぜここまで厳しいのか。 弱電流電線は、そもそも数V〜数十Vの世界の線だ。そこへ100Vや200Vが混触すれば、つながっている電話機やLAN機器を壊すだけでなく、その線を触った人が感電する。しかも弱電流側は「電気が来ていないもの」として扱われがちで、無防備に触られる。低圧側から見れば「弱い相手」でも、弱電側から見れば「桁違いに強い相手」——この非対称が、離隔と隔壁の要求になっている。
なお、がいし引き工事の場合は数値が定められていて、離隔距離10cm以上(裸電線なら30cm以上)、または300V以下で絶縁性の隔壁を設けるか堅ろうな絶縁管に収める、とされている(第1項)。むき出しの電線を張る工事だけ、距離そのものが規定されている。
サドル1個の間隔は、建物が建っている間ずっと残る
2m以下という数字は、施工しているあいだは「サドルを何本打つか」という手間の話でしかない。だが天井板が張られた瞬間、そのケーブルは建物の寿命と同じ年月を、その支持間隔のまま過ごすことになる。やり直しが効かないから、基準は「今日落ちないか」ではなく「20年後に被覆が傷んでいないか」で決められている。冒頭のたるみが数年後に見つかったのは偶然ではなく、そういう時間軸で現れる不具合だからだ。
確かめるのは難しくない。屋根裏の点検口、ガレージ、分電盤まわりなど、露出配線が見える場所で固定金具の間隔を目で追ってみる。両腕を広げた幅はだいたい自分の身長ぶんなので、それより明らかに広い間隔で留められていれば怪しい。リフォームで既存配線を活かすか引き直すかを決める場面でも、最初に見るのはこの支持状態だ。関連する現場の失敗はステップルの叩きすぎによる被覆破損、ケーブル自体の基礎はVVFケーブルとはにまとめてある。
冒頭の天井裏でなぜたるみが生じたのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。