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現場のやらかし弱電・通信ノイズ対策

【現場のやらかし】機械が動くたびに通信エラーで生産ライン停止!LANケーブルと動力線の「並行配線ノイズ干渉」の盲点と正しい離隔・シールド対策

・ 読了目安: 9分 ・ 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー)

本記事の場面・会話・数値は、理解を助ける仮想事例です。実際の事故・取引実績を示すものではありません。製品の適合性は個別の仕様で確認してください。

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1. 【現場のやらかし事例】「同じルートだから」と動力線用の金属ダクトにLANケーブルを這わせたら、サーボモーター起動時に制御がフリーズした話

ある食品加工工場のライン自動化(FA化)工事において、新設したコンベアシステムとメインの制御盤(PLC)を接続するため、イーサネット用LANケーブルを新たに敷設する配線工事を行いました。

配線ルートには、三相200Vの動力用電力ケーブル(CVTケーブル)やインバータ制御のサーボモーター用ケーブルが通る、幅300mmの天井金属ダクトがすでに設置されていました。 電気工事の担当者は、「新しく弱電用の配管ルートを作るのはコストも時間もかかる。ダクトの中にまだ十分なスペースがあるから、この中にLANケーブルを一緒に転がしてしまおう」と判断。一般的なオフィス用LANケーブル(UTP Cat6)を動力用ケーブルと束ねる形で、約30メートルにわたって並行して密着配線してしまいました。

工事完了後の試運転では、最初は正常に通信できていました。しかし、製造ラインを本格稼働させ、インバータを介した大型モーターが頻繁に加減速を繰り返すようになると、突如コンベアの通信システムがエラーを起こし、緊急停止するトラブルが発生したのです。 制御盤の通信ログを見ると、モーターの起動タイミングと完全に同期して、通信パケットの損失(パケットロス)が急増し、ネットワークが一時切断されていました。

原因は「動力ケーブルからの電磁誘導による、弱電LANケーブルへのノイズ侵入」でした。 インバータからモーターへ送られる電流には、高速なスイッチングに伴う高周波ノイズが大量に含まれています。これが強電線と密着・並行配線されたLANケーブルに電磁誘導として飛び火し、通信データ(デジタル信号の波形)を壊してしまっていたのです。 結局、LANケーブルをすべてシールド付き(STP)に引き直し、ダクト内に金属製の仕切板(隔壁)を設けて動力線と区画し、接地を取り直す改修工事を行う羽目になりました。

なお、この配線はノイズ以前に、施設方法そのものにも問題がありました。電気設備の技術基準の解釈第167条第3項は、金属ダクト工事などで施設する低圧配線の電線と弱電流電線を、同じ管・線ぴ・ダクトやボックスの中に収めることを原則として認めていません。例外は、両者の間に堅ろうな隔壁を設けて金属製部分にC種接地工事を施したダクト等に収める場合や、C種接地工事を施した金属製の遮へい層を持つ通信用ケーブルを使う場合などに限られます。ケーブル工事として扱う場合でも、弱電流電線と接触しないように施設することが求められます(同条第2項)。「空いているから一緒に転がす」「束ねて密着させる」は、どちらの扱いでも認められない施工です。


2. なぜ強電線と弱電線を近づけると通信障害が起きるのか?「電磁誘導ノイズ」のメカニズム

電気工事の実務において、電気を送る「強電(パワー回路)」と、信号を送る「弱電(信号・通信回路)」は、物理的に交わらないように設計するのが鉄則です。これらが接近すると、以下の電磁気的作用によって通信データが破壊されます。

  • 電磁誘導(トランス作用): 強電線に大電流や急激に変化する電流(インバータ制御やモーター始動電流など)が流れると、その周囲に強力な磁界が発生します。隣接する弱電線(LAN等)がその磁界を横切ることで、弱電線側にもノイズ電圧(誘導起電力)が発生してしまいます。
  • 静電誘導(キャパシタ作用): 強電線の電圧変化によって発生する電界が、周囲の弱電線との間の静電容量を介してノイズ電流を流し込みます。特にインバータのような高周波の電圧変動は、わずかな隙間をも通り抜けて信号線を汚染します。

3. なぜ「モーターが動くたびに」通信が落ちるのか——ノイズの正体をもう一段深く見る

「配線を離せばいい」「シールドを使えばいい」までは知っていても、なぜインバータのノイズがピンポイントでLAN通信を破壊するのか、そのメカニズムまで理解している現場は多くありません。ここを押さえておくと、対策の優先順位を正しく判断できるようになります。

① ノイズは「モーターの回転数」ではなく「スイッチングの速さ」で決まる

インバータは、商用交流をいったん整流して直流にし、それをパワー半導体(IGBTなど)で高速にオン・オフ(PWMスイッチング)することで、モーターの回転数に応じた交流を作り出しています。このスイッチング周波数(キャリア周波数)は一般的な産業用インバータでおおむね15kHz前後まで使われており、この高速なオン・オフの「切り替わりの鋭さ」こそが広帯域のノイズを生み出す震源です。ノイズの発生経路は大きく2つに分かれます。

  • 伝導ノイズ: スイッチングで生じた電圧変動が整流回路を通じて電源配線側に漏れ出し、電源ラインの雑音端子電圧を押し上げ、電源ケーブル自体をノイズの通り道にしてしまう経路。
  • 放射ノイズ: モーターへ向かうケーブル自体がアンテナのように振る舞い、周囲の空間へ電磁波としてノイズをまき散らす経路。

事例のケースで「サーボモーターが加減速するタイミング」に通信エラーが集中したことは、次のように説明できます。PWMスイッチングによるノイズは、インバータやサーボアンプが出力しているあいだは、定速運転中でも出続けています。そのうえで、起動・加減速時は定常運転時より大きな電流がモーターケーブルに流れるため、並行するケーブルへ誘導されるノイズも大きくなりやすく、ふだんはノイズマージンの内側に収まっていた通信が、このタイミングで限界を超えたと考えられます(この段落は出典の富士電機テクニカの解説にある内容ではなく、一般的な説明です)。

② LANケーブルの「ツイスト(より対線)」はなぜ万能ではないのか

LANケーブルの内部は2本の芯線を撚り合わせた「ツイストペア」構造になっており、これは外部から飛び込んでくるノイズが2本の芯線に同じ量だけ乗る場合(コモンモードノイズ)に、受信側の差動回路がその同相成分を打ち消し合う仕組みを利用しています。理論上はノイズに強い構造です。 しかしこの仕組みが効くのは、あくまで「2本の芯線に均等にノイズが乗る」場合に限られます。ケーブルのねじれピッチの乱れ、コネクタ部分での撚り戻し(ほどけ)、あるいは強電線からの距離が芯線ごとに微妙に異なることで2本が受けるノイズ量に差(不平衡)が生まれると、差動回路で打ち消しきれない差動モードノイズに変換されてしまいます。これが一定のノイズマージンを超えると、通信フレームのビット誤り→エラー検出→再送・パケットロスという形で表面化します。事例で密着配線・束ね配線をしていたことが致命的だったのは、束ねることでケーブル同士のねじれや位置関係が乱れやすく、この不平衡変換が起きやすい状態を自ら作っていたためです。

③ シールド接地は「片端」か「両端」か

STPケーブルを導入しても、シールド層の接地方法を誤ると効果が半減、あるいは逆効果になることがあります。実務上のポイントは次の通りです。

  • インバータが出す数kHz〜数MHz帯の高周波ノイズを逃がすには、シールドを両端で確実に接地するのが基本です。片端接地は主に低周波の誘導ノイズ対策として使われる手法で、高周波帯ではシールドがアンテナのように働いてしまい、遮蔽効果を発揮しにくくなります。
  • ただし両端接地には注意点もあります。両端の接地点に電位差がある環境では、シールド線を伝って商用周波数のグラウンドループ電流が流れ込み、逆にノイズ源になることがあります。制御盤内で完結する短距離配線では両端接地、離れた建屋間をまたぐ長距離配線では等電位ボンディングの状況を確認したうえで接地方式を選ぶ、という判断が必要です。

4. ノイズ干渉をシャットアウトする正しい配線設計ルール

現場での通信フリーズや信号誤作動を未然に防ぐための、配線上の3大ルールです。

① 離隔距離(ソーシャルディスタンス)の確保

強電線(AC100V/200V/400V)と弱電線(LAN、同軸、計装用ツイストペア線、信号線)を並行して配線する場合、電磁誘導ノイズを防ぐための実務上の目安として、以下の離隔距離を確保するのが望ましいとされています。

  • 一般配線(管なし・シールドなし): 30cm以上 を目安に離す(法令や規格の値ではなく、実務上の目安。機器メーカーが離隔を指定している場合はそちらに従う)。
  • 金属板(仕切板)や接地された金属管で隔てる場合: シールド効果により、より近接した配線が可能になります。
  • 交差する場合: 並行部を避けるため、可能な限り「直角(90度)」に交差させます。並行する部分が短ければ短いほど、ノイズの発生を抑えられます。

※なお、低圧屋内配線と弱電流電線との離隔や同居については、電気設備の技術基準の解釈第167条に工事方法ごとの規定があります(がいし引き工事は原則10cm以上(第1項)、管・ダクト・ケーブル工事は接触させない(第2項)、同一の管・線ぴ・ダクトへの収容は原則不可で、隔壁とC種接地工事などの条件を満たす場合に限る(第3項))。これは省令第62条が求める混触による感電・火災の防止を目的とした規定であり、上記のノイズ対策としての離隔距離とは別の観点の基準です。ノイズ対策として仕切板で区画する場合も、まずこの規定を満たす必要があります。

② シールド付きケーブル(STP)と適正接地の使用

電磁ノイズの多い工場現場などでは、アルミ箔等の遮蔽層を持つ「STPケーブル(シールドLANケーブル)」が有力な選択肢になります。離隔の確保、接地した金属管や仕切板による区画、光ファイバーへの置き換えといった方法もあり、現場の条件に合わせて選びます。 STPケーブルを使う場合は、シールド層に乗ったノイズ電流をアースに逃がすため、コネクタに金属製シールドプラグを使用し、接地されたスイッチングハブや盤の金属フレームへ落とす処理(グラウンディング)が欠かせません。接続する機器側がシールドに対応していない、あるいは接地されていないと、STPに替えても効果は出ません。接地を両端で取るか片端で取るかは、3節の③で述べたとおり、ノイズの周波数帯と接地点間の電位差を見て決めます。

③ 後付けノイズシールドチューブの活用

既設の配線ルートを大きく変えられない場合は、LANケーブル側、またはノイズ源となる強電線側に「ノイズシールドチューブ(アルミ箔や導電性メッシュが内蔵されたジッパー式チューブ)」を被せて接地させる方法が非常に有効です。

ノイズシールドチューブ・ジッパーチューブ(Amazon) — 既設配線に被せるだけでノイズを大幅に軽減できるジッパー式シールドスリーブを確認できます。


5. 産業用通信電材・ノイズ対策資材の見積・在庫のご相談は「電材サーチ」へ

「工場内のFA通信用に耐ノイズ性に優れたシールド付STP Cat6A/Cat7ケーブルや産業用RJ45コネクタを大量に仕入れたい」「既設ラインのノイズトラブルを解消するため、ジッパー式のノイズシールドチューブ(日本ジッパーチュービング製等)を長さ指定で手配したい」「制御盤内のノイズフィルターやメタル筐体のDINレール取付型スイッチングハブをまとめて揃えたい」という電気工事会社・盤メーカー様へ。

シールド付きLANケーブル・ノイズシールドチューブ・ノイズフィルターなど、ノイズ対策資材の見積・在庫のご相談は、見積フォームからお寄せください。


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よくある質問

一般的なUTPケーブルとシールド付STPケーブルの違いは何ですか?

UTP(Unshielded Twisted Pair)はシールドのない一般的なLANケーブルで、曲げやすく安価ですが外来ノイズに弱いです。STP(Shielded Twisted Pair)は内部の電線をアルミ箔などで包んでおり、電磁ノイズを遮断する構造になっています。ただし、STPケーブルの遮蔽効果を発揮するには、ハブやPCなどの接続機器側もシールド(金属端子)に対応し、適切に接地(アース)されている必要があります。

金属製電線管にLANケーブルを通せば、動力線と密着して並行配線してもノイズは防げますか?

LANケーブルを通す電線管を「金属管(スチール製など)」にし、その金属管を確実に接地(D種接地など)すれば、電磁シールドとして働き、ノイズを大きく減らせます。ただし「密着させても必ず防げる」とまでは言えません。管の継ぎ目や端部、接地の取り方によって効果は変わるため、金属管に収めたうえで動力線とはできる範囲で離すのが確実です。プラスチック製のPF管やVE管は電磁ノイズを通すため、シールド効果は期待できません。

参考文献・出典

  • 電気設備技術基準・解釈の解説〔その7〕電気使用場所の施設の規制(その2)低圧屋内配線の工事方法(日本電気技術者協会 JEEA) (省令第62条(配線が他の配線・弱電流電線等と接近・交差する場合に混触による感電・火災のおそれがないよう施設する)を解釈が具体化していること。がいし引き工事は原則10cm(裸電線は30cm)以上、管・ダクト工事などは接触しなければよいこと。電線と弱電流電線を同一の線ぴや管に入れることは、特別に定められた場合以外は禁止されていること(解釈第167条第3項))
  • 電気設備の技術基準の解釈(経済産業省) (第1条第十六号(弱電流電線等=弱電流電線及び光ファイバケーブル)。第167条第1項(がいし引き工事の低圧配線と弱電流電線等との離隔10cm、裸電線は30cm)、第2項(管・ダクト・ケーブル工事等の低圧配線は弱電流電線又は水管等と接触しないように施設)、第3項(金属ダクト工事等の低圧配線の電線と弱電流電線は同一の管・線ぴ・ダクト・ボックス等に施設しない。ただし堅ろうな隔壁を設け金属製部分にC種接地工事を施したダクト等に収める場合、C種接地工事を施した金属製の電気的遮へい層を有する通信用ケーブルの場合などを除く))
  • インバータやサーボモータから、なぜノイズが発生するのですか?(富士電機テクニカ) (PWMスイッチングによるノイズ発生原理。整流回路を経由した伝導ノイズと、モーターケーブルがアンテナとなる放射ノイズの2経路、キャリア周波数が15kHz付近であること)

確認・変更の記録

出典照合日: (AIによる照合補助)

電気設備の技術基準の解釈(経済産業省PDF)の第1条第十五号・第十六号と第167条第1項〜第3項の条文を確認(クイズ1の号番号と第2項の対象、同一ダクト収容の原則禁止と隔壁・C種接地工事の例外)。JEEA 11107 を開き、省令第62条への言及、がいし引き工事10cm(裸電線30cm)、同一の線ぴ・管への収容禁止(解釈第167条第3項)の記述を確認。富士電機テクニカのFAQを開き、15kHz付近の周波数、伝導ノイズ・放射ノイズの2経路の記述を確認(加減速時にノイズが増えるという記述は無い)。内線規程の原本は開いていない。離隔30cmの目安、シールドの両端・片端接地、金属管の遮蔽効果は出典を開いておらず、一般的な知識による。

個別設備の適合判定・技術者による承認を示すものではありません。

  • :低圧配線と弱電流電線を同じダクトに収める場合の規定(電技解釈第167条第3項の隔壁とC種接地工事)を追記し、クイズの接地種別を訂正。離隔10cmの根拠を解釈第167条第1項に改め、「必ずSTP」「金属管ならノイズを防げる」などの断定と加減速時のノイズの説明を弱めた。自社主張を中立化。
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