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電材基礎規格・法令安全対策

JIS C 60364とは|低圧電気設備の国際整合規格と接地系統(TN-S/TN-C-S/TT/IT)をわかりやすく解説

読了目安: 10分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

「TN-S系統」「TT系統」という言葉を、電気設備の海外規格や輸入機器のマニュアルで見かけて戸惑ったことはないだろうか。結論から言えば、これはJIS C 60364(低圧電気設備、IEC 60364の日本版)が定める接地系統の国際的な分類方式であり、日本国内の低圧電気設備で法的な基準となっているのは、電気事業法に基づく電気設備技術基準とその解釈(電技解釈)である。JIS C 60364は、電技解釈第218条が定める条件のもとで、電技解釈の代わりに選択できる国際整合規格という位置づけにとどまる。この記事では、両者の関係を誤解なく整理したうえで、感電保護の基本的な考え方と、TN-S・TN-C-S・TT・ITという接地系統の分類を、実務でつまずきやすいポイントに絞って解説する。

この記事でわかること

  • JIS C 60364とは何か、日本国内での法的な位置づけ(電技解釈との関係)
  • 感電保護の2つの柱「基本保護」と「故障保護」の考え方
  • TN-S/TN-C-S/TT/IT系統という接地系統の分類と記号の意味
  • 電技解釈第218条が定める適用条件・混在禁止・例外規定
  • 日本の低圧配電が実務上どの接地系統に近いか

JIS C 60364とは何か——低圧電気設備の国際整合規格

JIS C 60364は、正式名称を「低圧電気設備」といい、国際電気標準会議(IEC)が定めるIEC 60364シリーズと整合させた日本産業規格である。中核となるJIS C 60364-1:2010(低圧電気設備-第1部:基本的原則、一般特性の評価及び用語の定義)は、対応国際規格IEC 60364-1:2005とIDT(一致)の関係にあり、交流1,000V以下・直流1,500V以下の低圧電気設備の設計・施工・検証について規定している(日本規格協会 JSA Group Webdesk、kikakurui.com掲載情報による)。

規格群は、基本原則を扱う第1部、感電保護・熱の影響・過電流保護などを扱う第4部(安全保護)、電気機器の選定・施工を扱う第5部、検証を扱う第6部、浴室やプールなど特殊設備・特殊場所を扱う第7部という構成で、多数のパートに分かれている。

ここで押さえておきたいのは、JIS C 60364は工業規格であって、それ自体が日本国内の電気工事を法的に義務づけるものではないという点だ。国内の低圧電気設備で法的拘束力を持つのは、電気事業法に基づく「電気設備に関する技術基準を定める省令」(電技)と、その具体的な仕様・数値基準を定めた「電気設備の技術基準の解釈」(電技解釈)である。JIS C 60364が実務に登場するのは、電技解釈第218条が「一定の条件のもとで、電技解釈の代わりにJIS C 60364シリーズを適用してよい」と定めているためであり、両者は主従が入れ替わる関係ではない。この適用関係の詳細は、後段の「電技解釈第218条とIEC 60364の関係」で扱う。

なお、JIS規格票の条文そのものを転載することは著作権上できないため、この記事では要点の解説にとどめる。正式な条文を確認したい場合は、日本規格協会のJSA Group Webdesk(webdesk.jsa.or.jp)で規格票を購入するか、JISC(日本産業標準調査会、jisc.go.jp)の閲覧サービスを利用してほしい。

感電保護の基本的な考え方——基本保護と故障保護

JIS C 60364-4-41(低圧電気設備-第4-41部:安全保護-感電保護)は、感電保護を基本保護故障保護という2つの柱で整理している(kikakurui.com掲載情報による)。

  • 基本保護(直接接触保護):正常な状態で、人や家畜が充電部(電気が流れている部分)に触れないようにする対策。基礎絶縁、バリア、エンクロージャ(外箱)によって実現する。
  • 故障保護(間接接触保護):電気機器の絶縁が故障し、本来は電気が流れていないはずの露出導電性部分(金属製外箱・配管など)が危険な電圧を帯びた場合に、人への危害を防ぐ対策。保護導体(接地線)への接続と、故障時の自動遮断の組み合わせによって実現する。

この2つの区別は、日本の電技解釈が採っている考え方とも対応させて理解すると分かりやすい。電線・機器そのものの絶縁による感電防止が基本保護に、D種・B種といった接地工事や漏電遮断器の設置が故障保護に、それぞれ近い役割を担っている(接地工事の区分・抵抗値の実務上の考え方は、後述する関連記事で詳しく扱っている)。JIS C 60364の枠組みでは、この基本保護・故障保護をどう組み合わせて実現するかという設計思想の中に、次に説明する接地系統の分類(TN/TT/IT)が位置づけられている。

接地系統の分類——TN-S/TN-C-S/TT/IT系統とは何か

IEC 60364(JIS C 60364)は、電源側の接地方式と、電気機器の露出導電性部分(金属製外箱など)の接地方式の組み合わせによって、接地系統を大きくTN系統・TT系統・IT系統の3種類に分類している。

記号の読み方

分類の記号は、次の2文字(TN系統・TN-C-S系統ではさらに追加の文字)で構成される。

  • 1文字目(電源側の接地方式):T=電源の1点(変圧器の中性点など)を直接接地、I=電源の充電部を大地から絶縁するか、大きなインピーダンスを介して接地
  • 2文字目(機器側・露出導電性部分の接地方式):T=電源側の接地とは電気的に独立した、別の接地極に接続、N=電源側の接地点に保護導体で接続

TN系統——電源と機器側の接地点を保護導体でつなぐ

TN系統は、電源の1点を直接接地し、電気機器の露出導電性部分をその接地点に保護導体で接続する方式で、中性線(N)と保護導体(PE)の扱い方によってさらに3つに分かれる。

  • TN-S:中性線と保護導体を、電源から機器まで系統全体を通じて完全に分離して配線する方式。
  • TN-C:中性線と保護導体を、系統全体を通じて1本の導体(PEN導体)として兼用する方式。
  • TN-C-S:電源側の一部区間では中性線と保護導体を兼用(PEN導体)し、需要家の引き込み以降で中性線と保護導体を分離する方式。海外の低圧配電で広く採用されている構成である。

TT系統——電源側と機器側の接地極を独立させる

TT系統は、電源の1点を直接接地する点はTN系統と同じだが、電気機器の露出導電性部分は、電源側の接地極とは電気的に独立した、別の接地極に接続する。日本国内の一般的な低圧配電は、電力会社の変圧器の接地(B種接地工事)と、需要家側の機器の接地(D種接地工事など)が別々の接地極に接続される構成をとっており、この「電源側と機器側の接地が独立している」というTT系統の定義に相当する、と複数の解説資料で整理されている(目指せ!電気主任技術者~解説ノート~、電験王1による)。

IT系統——電源の充電部を大地から絶縁する

IT系統は、電源の充電部を大地から絶縁するか、大きなインピーダンスを介して接地し、電気機器の露出導電性部分は独立した接地極または保護導体を介して接地する方式。1線地絡が起きても電流が大きく流れにくいため、無停電での運転継続が求められる医療施設の手術室や、一部の産業プラントなどで採用されることがある分類だ。

電技解釈第218条とIEC 60364の関係

適用対象と電圧範囲

電技解釈第218条は「需要場所に施設する省令第2条第1項に規定する低圧で使用する電気設備は、第3条から第217条までの規定によらず、218-1表に掲げる日本産業規格又は国際電気標準会議規格の規定により施設することができる」と定めている(経済産業省「電気設備の技術基準の解釈」第7章より)。218-1表にはJIS C 60364-1をはじめ、感電保護(JIS C 60364-4-41)、電気機器の選定・施工、検証、特殊場所ごとの要求事項まで、多数のパート・規格が列挙されている。

ここで注意したいのは適用範囲の限定だ。IEC 60364自体は交流1,000V以下・直流1,500V以下を対象とするが、電技解釈第218条が適用されるのは、電気設備に関する技術基準を定める省令第2条が定義する「低圧」(交流600V以下・直流750V以下)の範囲に限られる。日本国内で電技解釈の代わりにIEC 60364を適用できるのは、あくまで日本の法令上の「低圧」区分の中だけ、ということになる。

第218条にはもう一つ条件があり、「一般送配電事業者、配電事業者又は特定送配電事業者の電気設備と直接に接続する場合は、これらの事業者の低圧の電気の供給に係る設備の接地工事の施設と整合がとれていること」を求めている。これは、電力会社側の配電設備が実質的にTT系統に相当する構成をとっているため、需要家側だけをTN系統的な設計に切り替えると整合が取れなくなる、という実務上の制約を踏まえた規定と理解できる。

混在禁止と例外

電技解釈第218条第2項は、同一の電気使用場所において、IEC関連規定(218-1表の規格)と第3条から第217条までの規定(従来の電技解釈)を混用して低圧の電気設備を施設してはならないと定めている。ただし、次のいずれかに該当する場合は例外として認められる。

  1. 非接地式高圧電路に接続された変圧器の低圧回路で、接地抵抗値が2Ω以下であるとき
  2. 電技解釈第18条(工作物の金属体を利用した接地工事)の規定により、両方の規定に基づく設備に接地工事を施すとき

いずれかの例外に該当して混在させる場合は、表示等によってどちらの規定に基づく設備かを識別できるようにすることが求められる。2番目の例外にある電技解釈第18条は、鉄骨造ビルの鉄骨を共用接地極として使う場合の対地抵抗2Ω以下の実測義務や、系統間の電位差をなくす等電位ボンディングを扱う条文で、この点については「鉄骨アースの罠|「鉄骨に繋げば安全」という誤解と等電位ボンディングの本当の意味」で詳しく解説している。あわせて参照してほしい。

まとめ

JIS C 60364は、IEC 60364と整合させた日本産業規格であり、日本国内の低圧電気設備を法的に拘束する基準ではない。実務上意味を持つのは、電技解釈第218条が定める条件——需要場所の低圧設備であること、電力会社側の接地工事との整合が取れていること、従来の電技解釈との混在が原則禁止であること——を満たした場合に、電技解釈の代わりに選択できる規格群だという位置づけだ。TN-S・TN-C-S・TT・ITという接地系統の分類は、この規格群の中で使われる国際的な用語体系であり、日本国内の一般的な低圧配電はTT系統に相当すると整理されている。海外規格の機器や資料に触れる機会がある担当者は、まずこの位置づけを押さえておくと、条文や仕様書の記述で迷わずに済むはずだ。

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参考文献・出典

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