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鉄骨アースの罠|「鉄骨に繋げば安全」という誤解と等電位ボンディングの本当の意味

読了目安: 8分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

冒頭の場面・会話は、内容の理解を助けるための例示です。特定の現場・企業・案件を指すものではありません。

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「鉄骨造のビルなんだから、鉄骨にアース線を繋いでおけば接地は万全だろう」――現場でこう考えたことのある技術者は少なくないはずだ。実際、電気設備の技術基準の解釈 第18条は、建物の鉄骨など工作物の金属体を接地極として利用すること自体は認めている。しかし条文をよく読むと、これは「繋げば自動的にOK」という話ではない。求められているのは、建物の鉄骨または鉄筋コンクリートの一部を地中に埋設すること、そして系統間の電位差を防ぐ等電位ボンディングという、もう一段階踏み込んだ要件だ。なお現場でよく引かれる「2Ω以下」は、同じ第18条でも第2項の条件であって、第1項の共用接地極にはかからない。

鉄筋コンクリート造の建物では、柱や梁の鉄筋同士が図面上はつながっていても、施工上の接続不備で電気的な導通が確保されていないことがある。「鉄骨だから低抵抗のはず」という思い込みだけで済ませてしまうと、実測すればD種・B種いずれの基準も満たしていなかった、という事態になりかねない。この記事では、接地工事の基本区分(D種・B種)から、鉄骨を共用接地極として使う際の実務上の注意点、そして落雷時に弱電機器を守る等電位ボンディング、大容量受変電設備で登場する接触電圧・歩幅電圧までを整理する。

この記事でわかること

  • 電技解釈第18条が求める「鉄骨を接地極として使う条件」(第1項=地中埋設と等電位ボンディング/第2項=2Ω以下は非接地式高圧電路のA種・B種に限る)
  • D種接地工事(原則100Ω以下)とB種接地工事(混触防止)の適用対象と抵抗値の根拠
  • 等電位ボンディングが落雷時の弱電機器保護になぜ必要なのか
  • 接地グリッド設計における接触電圧・歩幅電圧という安全指標の考え方

「鉄骨に繋げば安全」という思い込みの落とし穴

電技解釈第18条は、建物の鉄骨・鉄筋コンクリート造の鉄筋のような「工作物の金属体」を、接地工事の接地極として利用してよいと定めている。新しく接地棒を打設しなくても既存の建築構造体を活用できるという実務上のメリットがあるが、条文は2つの項に分かれていて、要求している内容がまったく違う。ここを混ぜて覚えている人が多い。

第1項——共用の接地極として使う場合

鉄骨等を第17条第1項〜第4項の接地工事(A種・B種・C種・D種)その他の接地工事に係る「共用の接地極」に使う場合、条文が求めるのは次の2点だ。

  1. 建物の鉄骨または鉄筋コンクリートの一部を地中に埋設すること
  2. 等電位ボンディング(導電性部分間に発生する電位差を軽減するために施す電気的接続)を施すこと

さらにA種・B種の接地極としても使う場合は、1線地絡電流が流れたときに構造物の導電性部分間・機器の金属製部分間・建物の金属製部分と大地との間に50Vを超える接触電圧が発生しないように施設することが加わる(第一号〜第三号)。接触電圧の推定に使う接地抵抗値は、実測値または「病院電気設備の安全基準」の規定によるとされている(第四号)。

そして条文はこう明記している——「なお、これらの場合において、鉄骨等は、接地抵抗値によらず、共用の接地極として使用することができる。」

つまり共用の接地極として使うこと自体には、2Ω以下という接地抵抗値の要件はない

第2項——2Ωが出てくるのはこちら

一方、第2項は「大地との間の電気抵抗値が2Ω以下の値を保っている建物の鉄骨その他の金属体は、これを次の各号に掲げる接地工事の接地極に使用することができる」と定め、対象を2つに限っている。

  • 非接地式高圧電路に施設する機械器具等に施すA種接地工事
  • 非接地式高圧電路と低圧電路を結合する変圧器に施すB種接地工事

現場でよく聞く「鉄骨を接地極にするなら2Ω以下を実測しないといけない」という言い方は、この第2項の条件を第1項にも当てはめてしまったものだ。低圧機器のD種接地を鉄骨に取る話に2Ωを持ち込むのは、条文の読み違いになる。

では第1項なら何もしなくていいのか

そうではない。接地抵抗値によらないぶん、成立の根拠は地中埋設と等電位ボンディングに移っている。特に注意すべきは鉄筋コンクリート造で、柱・梁の配筋が設計図上は一体でも、施工段階での結束・溶接が不十分だと電気的な導通が確保されていない箇所が生じうる。「鉄骨に繋いだ」という接続の事実だけでは、等電位ボンディングが成立している証明にはならない。確認すべきは抵抗値そのものではなく、金属体どうしが電気的に確実につながっているかどうかだ。

D種接地工事——300V以下の機器に最も広く適用される区分

D種接地工事は300V以下の低圧機器の金属製外箱・配管等に適用される、現場で最も頻繁に登場する接地区分だ(電技解釈第29条)。原則の接地抵抗値は100Ω以下。これは漏電が発生した際に、人体が触れる金属部分の電位(接触電圧)を安全な範囲に抑えるための数値で、接地抵抗が低いほど地絡電流が大地へ逃げやすくなり、人体への電圧分担が小さくなる。

地絡発生から0.5秒以内に自動遮断する漏電遮断器を設置している場合は、500Ω以下まで緩和される。条文が求めているのは遮断時間の条件だけで、遮断器の感度電流までは指定していない点は、実務でも見落とされがちなポイントだ。

B種接地工事——高低圧混触事故から低圧側を守る

B種接地工事は、変圧器の高圧側と低圧側が混触した際に、低圧電路の対地電圧が異常上昇するのを抑えるために施す接地で、変圧器の低圧側中性点または1端子に施工する(電技解釈第17条)。

抵抗値は原則「150 ÷ 高圧側1線地絡電流I〔A〕」で計算する。自動遮断装置が地絡発生後1秒を超え2秒以内に動作する場合は「300 ÷ I」、1秒以内に動作する場合は「600 ÷ I」まで緩和される。分母の1線地絡電流は系統ごとに異なるため、B種の抵抗値は現場ごとに個別計算が必要になる点がD種との大きな違いだ。

等電位ボンディング——落雷が弱電機器を壊す仕組みと対策

建物内に受電用アース・鉄骨アース・避雷針アースといった複数の独立した接地系統が存在する場合、落雷時にはそれぞれの接地点で電位が個別に跳ね上がる。電位は接地抵抗と雷電流の掛け算で決まるため、系統ごとに抵抗値がわずかでも異なれば、瞬間的な電位差が生じる。この電位差を解消しようとする過渡電流が、系統間をまたぐ弱電・通信ケーブルを経由して流れ込み、サーバーやネットワーク機器を破壊する――これが「雷で離れた場所の弱電機器まで壊れる」現象の主な原因だ。

対策となるのが等電位ボンディングで、すべての金属体・接地極を電気的に接続し、系統間の電位差そのものをなくしてしまう考え方だ。電技解釈第18条が工作物の金属体を共用接地とする際にこの措置を要件としているのも、同じ理屈による。SPD(サージ防護デバイス)の設置と接地の等電位化は、片方だけでは効果が限定的で、両方が揃って初めて弱電設備を保護できる。

接触電圧・歩幅電圧——接地グリッド設計で問われる安全指標

変電所やキュービクルなど大容量受変電設備では、単独の接地棒ではなく複数の接地極を網目状に連結した「接地グリッド」を構築する。この設計で評価対象になるのが接触電圧と歩幅電圧だ。

  • 接触電圧(Touch Voltage): 接地された金属構造物に人が触れた際、その構造物と1m離れた地表面との間に生じる電位差
  • 歩幅電圧(Step Voltage): 大地上で1m離れた2点間に生じる電位差

地絡や雷撃で接地系統全体の電位が上昇したとき、この電位差が許容値を超えると、構造物に触れた人や近くを歩いている人が感電する危険がある。接地グリッド設計では、想定される地絡電流・遮断時間・土壌の表層抵抗率をもとに許容接触電圧・歩幅電圧を算出し、それを下回るように接地極の配置間隔やグリッドの網目の細かさを最適化する。国際的にはIEEE Std 80が接地グリッド設計の代表的な参照規格として知られている。

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よくある質問

鉄骨造の建物なら、機器のアース線を鉄骨に繋ぐだけで接地工事は完了ですか?

いいえ、それだけでは不十分です。ただし理由は「2Ωを測っていないから」ではありません。電技解釈第18条第1項は、鉄骨等を共用の接地極に使う場合の要件として、建物の鉄骨または鉄筋コンクリートの一部を地中に埋設すること、および等電位ボンディングを施すことを求めており、条文は「なお、これらの場合において、鉄骨等は、接地抵抗値によらず、共用の接地極として使用することができる」と明記しています。よく引かれる「2Ω以下」は同条第2項の条件で、非接地式高圧電路に施設する機械器具等のA種接地工事と、非接地式高圧電路と低圧電路を結合する変圧器のB種接地工事という限られた場合にだけ適用されます。鉄筋コンクリート造では柱・梁の配筋同士が確実に電気的導通しているとは限らないため、等電位ボンディングが実際に成立しているかの確認は依然として必要です。

D種接地工事において、低圧回路の接地抵抗値は原則として何Ω以下にする必要がありますか?

原則100Ω以下です(電技解釈第29条)。300V以下の低圧機器の金属製外箱等に適用される最も一般的な接地工事の区分で、漏電時の感電電圧(接触電圧)を安全な範囲に抑えることが目的です。地絡発生から0.5秒以内に自動遮断する漏電遮断器を設置している場合は、500Ω以下まで緩和されます。

低圧の変圧器の2次側に施す、混触防止のための接地工事は何種ですか?

B種接地工事です(電技解釈第17条)。高圧と低圧が混触した際に低圧側の対地電圧が異常上昇するのを抑えるため、変圧器の低圧側中性点または1端子に施します。抵抗値は原則「150÷高圧側1線地絡電流I〔A〕」で計算し、地絡時に1秒を超え2秒以内に自動遮断する装置がある場合は「300÷I」、1秒以内なら「600÷I」まで緩和されます。

等電位ボンディングとは何ですか?なぜ落雷対策で重要なのですか?

受電用アース・鉄骨アース・避雷針アースなど、建物内に複数の独立した接地系統があると、落雷時にそれぞれの接地点で個別に電位が跳ね上がります(電位=接地抵抗×雷電流)。系統間に電位差が生じると、その差を埋めようとするサージ電流が弱電・通信機器を経由して流れ込み、機器破壊の原因になります。すべての金属体・接地極を電気的に接続して電位を均一化するのが等電位ボンディングで、電技解釈第18条も工作物の金属体を共用接地とする場合はこの措置を要件としています。

接触電圧・歩幅電圧とは何ですか?

接地された金属構造物に人が触れたときに、その構造物と1m離れた大地面との間に生じる電位差を「接触電圧」、大地上で1m離れた2点間の電位差を「歩幅電圧」と呼びます。地絡や雷撃で接地系統の電位が上昇した際、人体がこの電位差にさらされると感電の危険があるため、大容量受変電設備の接地グリッド設計では、許容接触電圧・歩幅電圧を下回るように接地極の配置間隔を最適化します。

参考文献・出典

この内容は、第二種電気工事士ではこう問われる

接地の種別・抵抗値そのものは第二種電気工事士でも頻出だが、「鉄骨を共用接地極として使ってよいか」「等電位ボンディングとは何か」は電験三種・電気主任技術者レベルで問われる、一段深い論点になる。

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