エアコンの室外機を新設し、接地工事を終えた。電気工事士は接地抵抗計(アーステスタ)を接地極に接続して測定ボタンを押す。表示された値は120Ωだった。
このエアコンはD種接地工事の対象、つまり基準は100Ω以下のはずだ。120Ωという数字は、基準よりわずかに高いだけに見える。しかし、これは合格なのか不合格なのか。もし不合格だとしたら、何をやり直せばこの数字を下げられるのか。
このトピックを読み終えるころには、この120Ωが何を意味するのか、迷わず判定できるようになっている。
接地抵抗測定は、接地抵抗計(アーステスタ)を使い、接地極(アース)が大地としっかり導通しているか=接地抵抗値が基準値以下になっているかを確認する試験だ。
絶縁抵抗測定との違い(直流 vs 交流)
絶縁抵抗計が直流電圧で測定するのに対し、接地抵抗計は交流の測定電流を使って測定する。直流で測定すると大地との間で電気分解のような分極作用が起き、正確な値が測れなくなるためだ。
測定の原理と実測手順(電位降下法・3点法)
一般的な接地抵抗計は「電位降下法(3点法)」という原理で測定する。現場での手順は、地面に棒を打つ前の確認から始まる。
- 電池容量を確認する — 電池式の計器は、電池が消耗していると正確な値を表示できない
- 地電圧を確認する — 大地には、付近の設備からの漏れ電流などで生じた電圧(地電圧)が元々存在することがある。これが大きいと測定値に誤差が出るため、地電圧が許容値以下であることを確かめてから測定に移る
- 補助接地棒を打ち込む — 測定対象の接地極(E)を端として、電位用のP、電流用のCの順に、約10m間隔でほぼ一直線上に打ち込む。並び順は必ずE→P→Cになる
- 測定する — E-C間に接地抵抗計から交流の測定電流を流し、E-P間に生じる電位差から接地抵抗値(R = V/I)を算出する
学科試験では、この手順のうち「E→P→Cの並び順」「約10m間隔」「ほぼ一直線」「測定前の電池・地電圧の確認」が、記述の正誤を判定させる形で繰り返し問われている。順番を入れ替えた選択肢(P→E→Cなど)が定番のひっかけだ。
接地工事の種類と接地抵抗値の基準
接地工事は電気設備の技術基準の解釈 第17条により、対象機器の使用電圧などに応じてA種〜D種に区分され、それぞれ接地抵抗値の基準が定められている。第二種電気工事士の試験では、一般用電気工作物(600V以下)で主に使われるC種・D種が中心に問われる。
| 接地工事の種類 | 主な対象 | 接地抵抗値の基準 |
|---|---|---|
| A種接地工事 | 高圧・特別高圧の機器の金属製外箱など | 10Ω以下 |
| C種接地工事 | 300Vを超える低圧用機器の金属製外箱など | 10Ω以下(0.5秒以内に動作する漏電遮断器を施設した場合は500Ω以下に緩和) |
| D種接地工事 | 300V以下の低圧用機器の金属製外箱など | 100Ω以下(0.5秒以内に動作する漏電遮断器を施設した場合は500Ω以下に緩和) |
一般家庭のエアコン・電気温水器など300V以下の機器はD種、工場の動力機器など300Vを超える低圧機器はC種が対象になる。
アース線の先を、数字で疑えるようになる
接地は「つないである」ことと「効いている」ことが別物だ。端子のねじがきちんと締まっていても、接地極が乾いた砂利層にしか刺さっていなければ抵抗は落ちない。それを見抜けるのが接地抵抗計で、基準を超えていたら打つ手も決まっている。深く打ち直す、複数本を並列に打ち増す、接地抵抗低減剤を使う。原因を推測して悩む仕事ではなく、測って対処する仕事だ。
今日できるのは、家の中でアース線を探すことだ。洗濯機、電子レンジ、エアコン、温水洗浄便座。コンセントにアース端子があるか、そこに線が実際につながっているか。端子はあるのに線が遊んでいる例は珍しくない。それを見つけたら、接地が「ある」のに「効いていない」いちばん単純な形を、自分の目で確認したことになる。
D種の100Ωが、0.5秒以内に動作する漏電遮断器があると500Ωまで緩む。この一見不可解な条件も、並べてみると筋が通っている。接地は地絡した電流を大地へ逃がすための道であり、その目的は感電を防ぐことにある。素早く電源を切る仕組みが別にあるなら、道の細さは同じ意味を持たない。数字だけを覚えると意味不明な緩和規定も、「何を守るための数字か」から見ると素直に読める。土に打ち込んだ1本の棒と最新の遮断器が、同じ目的で役割を分け合っている。
冒頭のエアコンの接地抵抗120Ωが合格なのか不合格なのか、そしてどうすればこの数字を下げられるのか——答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。