令和8年度の候補問題13問を並べてみると、ほとんどの問題の電源は VVF 2.0-2C だ。ところが No.1 だけは、電源に EM-EEF 2.0-2C と書かれている。
公表資料の注記には「記載のない電線の種類は,VVF1.6とする」とある。つまり図にわざわざ書き込まれた電線種別は、そこだけ別物を使えという明確な指示だ。No.1 はその指示を、いちばん最初の電源部分で出してきている。
なぜ、13問のうちこの問題だけ、電源のケーブルが EM-EEF に変えてあるのか。単に「エコケーブルもあるよ」と紹介したいだけなら、もっと目立たない場所でもいいはずだ。
見当がつかなくて当然だ。ヒントは、試験センター自身がこのケーブルについて公式資料で名指しの注意喚起をしていることにある。読み終えるころには、No.1 の練習でどこに時間を使うべきかがはっきりする。
まず前提を確認しておく。ここでは配線図そのものは載せない。試験センターが公表している候補問題のPDFを手元に開き、No.1 の図を見ながら読み進めてほしい。
図から読み取るもの
No.1 の配線図に描かれているのは、次の要素だ。
- 電源:EM-EEF 2.0-2C、1φ2W 100V
- ランプレセプタクル(図中の「R」。公表資料の注2に「R は,ランプレセプタクルを示す」とある)
- イ・ロ・ハ の記号が振られた器具と、それに対応する負荷
- 「施工省略」と書かれた部分
これ以上の情報、たとえば「どの電線を何色にするか」「接続はリングスリーブか差込形コネクタか」「施工省略部分の端末をどう処理するか」は、公表資料には書かれていない。公表資料の出題方法にはこうある——「配線図,施工条件等の詳細については,試験問題に明記します」。当日の問題用紙を開くまで確定しないということだ。
だから練習の目的は「No.1 の作り方を覚える」ことではない。「No.1 の骨格を、当日示された施工条件に合わせて組み立て直せるようにする」ことだ。
複線図を起こす思考の順序
複線図は、ひらめきで描くものではない。次の順序で機械的にたどれば、どの候補問題でも同じ手つきで起こせる。
- 接地側(白)を配る。 電源の接地側から、ランプレセプタクルの受金ねじ部、コンセントの接地側極端子、引掛シーリングの接地側極端子へ引く。点滅器には引かない。
- 非接地側(黒)を配る。 電源の非接地側から、すべての点滅器と、すべてのコンセントの非接地側極端子へ引く。
- 戻り線を引く。 各点滅器のもう一方の端子から、同じ文字(イならイ、ロならロ)の負荷へ引く。
- ジョイントボックスで束ねる。 上の3本の流れがボックスを通過する箇所を、接続点としてまとめる。
- 接地線は別系統として最後に描く。(No.1 の図には接地線は現れないが、他の問題ではここが効いてくる)
この順序で描けば、器具が増えても迷わない。逆にいえば、この順序を身体に入れないまま「No.1 の複線図」を丸暗記すると、当日わずかに条件が違うだけで手が止まる。
この問題特有の難所
同じ資料は続けて、「これらのケーブルを扱う際は,電工ナイフを用いるなど,ケーブルの種類に応じた適切な方法で作業を行うことが重要です。また,本番で確実に作業できるよう事前に十分な練習を行ってください」と求めている。
つまり No.1 が問うているのは、回路の複雑さではない。手に馴染んだ工具が通用しない材料を渡されたとき、正しく持ち替えられるかだ。だから練習では、VVF ばかり剥いて満足せず、EM-EEF を実際に何度かはぎ取っておく必要がある。
なお、電動工具は使用できない。充電式の電動機能付工具も、電動機能をOFFにして使う場合であっても不可で、使用すれば不正行為として失格となる。
踏みやすい欠陥項目
No.1 で特に距離が近い欠陥を、判断基準の原文で引いておく。
- 2-3.電線の種類が配線図と相違したもの——EM-EEF と指定された箇所に別のケーブルを使えばここに該当する。
- 5-1.ケーブル外装を損傷したもの(イ.ケーブルを折り曲げたときに絶縁被覆が露出するもの/ロ.外装縦われが 20mm 以上のもの)——硬いエコケーブルを無理に剥くと出やすい。
- 5-2.絶縁被覆の損傷で,電線を折り曲げたときに心線が露出するもの——ただしリングスリーブの下端から 10mm 以内の絶縁被覆の傷は欠陥としない。
- 5-3.心線を折り曲げたときに心線が折れる程度の傷があるもの——ストリッパの刃が心線をかじった痕がこれにあたる。
- 8-6.ランプレセプタクル又は露出形コンセントへの結線で,ケーブル外装が台座の中に入っていないもの——外装を剥きすぎたときの典型。
- 8-7.ランプレセプタクル又は露出形コンセント等の巻き付けによる結線部分の処理が適切でないもの(イ.心線の巻き付けが不足〈3/4周以下〉,又は重ね巻きしたもの/ロ.心線を左巻きにしたもの/ハ.心線がねじの端から 5mm 以上はみ出したもの/ニ.カバーが締まらないもの)——輪作りは右回り、これは全問共通の基本。
時間配分の目安
試験時間は全問共通で40分の予定と公表されている。以下はあくまで練習用の目安で、試験センターが示した配分ではない。
| 工程 | 目安 |
|---|---|
| 施工条件の読み込みと複線図 | 5分 |
| 寸法出しとケーブル切断 | 5分 |
| EM-EEF を含む外装・被覆のはぎ取り | 8分 |
| 器具への結線(輪作りを含む) | 10分 |
| 電線相互の接続 | 7分 |
| 見直し | 5分 |
はぎ取りに他問より1〜2分多く見ておくのが No.1 の考え方だ。慌てて剥いて心線に傷を入れれば、そこで作り直しになり、結局その1分では済まなくなる。
見直しの5分は削らないこと。試験センターも「本番の試験では作品が完成したら必ず確認するように心がけてください」と書いている。
エコケーブルが選ばれる建物
EM-EEF が実際に使われる理由は、「環境にやさしい」の一言よりもう少し具体的だ。絶縁体にもシースにも塩化ビニルを使わないので、燃えたときに塩化水素のような腐食性の強いガスを出しにくい。だから地下街やトンネル、病院や学校のように、火災のときに人が逃げる数分間の空気の質がそのまま被害の大きさになる建物で選ばれる。官公庁の仕様書で名指しされることもある。No.1 のはぎ取りができるということは、そういう物件の材料を渡されても手が止まらないということだ。
今日できることが一つある。手元のケーブルや売り場の電線を見て、シースに印字された文字を読んでみるといい。種別、電圧、太さ、心線数——ケーブルは自分が何者かを表面に書いている。読めるようになると、現場の写真を見ただけで何を使った工事か見当がつくようになる。
試験センターが13問のうち No.1 だけ、電源のケーブルを EM-EEF と名指ししているのも、ここに理由がある。ただし、工具の持ち替えを迫ってくるケーブルが No.1 だけだと思ってはいけない。同じ注意喚起の対象である VVR は、No.8 では配線用遮断器のすぐ先(VVR 2.0-2C)に、No.13 では回路の途中(VVR 1.6-2C)に置かれている。電工ナイフへの切り替えは、この3問すべてで練習しておく必要がある。材料が変われば工具を持ち替える、という判断ができない人は、いずれ心線を傷つけたまま壁の中に納めてしまう。剥き方の練習は、二度と見えなくなる場所の品質を守る訓練だ。そしてこの感覚は、太陽光発電用や耐熱用など、これから手にする新しいケーブルを扱うときにもそのまま効いてくる。
冒頭の「なぜ No.1 だけ電源が EM-EEF なのか」——答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。