候補問題No.9の練習で仕上げた作品を点検した。照明もコンセントも配線図どおりの回路になっている。電線の色も施工条件どおり。心線にも絶縁被覆にも傷はなく、圧着マークも差込も申し分ない。寸法も足りている。
それでもこの作品は、「1.未完成のもの」として不合格になり得る。動作は正しいのに未完成、というのはどういうことなのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、その一点を先に確認する習慣が身についている。
配線図に何が描かれているか
令和8年度の公表資料でNo.9の配線図に示されているのは、次の要素だ。
- 電源 1φ2W 100V と VVF 2.0-2C
- ランプレセプタクル(Rイ)
- 傍記「EET」のコンセント
- 「E 1.6」と傍記された電線
- 「ED」の表示
- 点滅器「イ」
- 「施工省略」の表示
傍記のEは接地極付、ETは接地端子を表す。つまりこのコンセントは、接地極を持ち、なおかつ接地線をねじで結線するための接地端子を備えたタイプだ。そこへ「E 1.6」の接地線が伸び、ED(D種接地工事)へ向かう、という構成になっている。
複線図を起こす順序
No.9で他の問題と決定的に違うのは、電源とは別系統の1本(接地線)が加わることだ。順序は次のようになる。
- 接地側(白)を電源から負荷とコンセントへ引く。 ここは他問と同じ。
- 非接地側(黒)をコンセントへ直行、点滅器「イ」のあるルートは点滅器経由でランプレセプタクルへ。
- 接地線を、電源とは無関係な独立した1本として描き足す。 コンセントの接地端子から接地極(ED)へ。ここを「回路の一部」と考えると忘れやすいので、色を変えて描くとよい。
- 施工省略の位置を確認して、そこから先は作らない。
接地線は電流を流して仕事をする線ではないため、動作確認では存在を確かめられない。複線図の上で明示的に1本として扱っておくことが、そのまま忘却防止になる。
この問題特有の難所
難所1:接地線という「もう1系統」の存在。 他の候補問題は電源から負荷へ向かう回路だけを追えばよいが、No.9はそこに接地線が加わる。この1本は電流を流さないため、完成後の見た目のチェックでも意識しないと目に入らない。
難所2:接地端子への結線。 接地端子はねじなし端子として扱われる部分で、心線が差込口から2mm以上露出すれば欠陥(8-9)、引っ張って外れれば欠陥(8-8)。器具のストリップゲージどおりに剥くのが確実だ。
難所3:色の取り違え。 接地線に緑を指定された場合、緑以外を使えば「4.電線の色別,配線器具の極性が施工条件に相違したもの」に該当する。同時に、コンセントの接地側極端子(W表示)には白、という指定も踏みやすい。極性の向きは器具の表示を目視で確認してから差し込む。
難所4:施工省略の読み違え。 No.9の配線図には施工省略の表示が入っている。省略部分まで作り込めば「12-2.不要な工事,余分な工事又は用途外の工事を行ったもの」に該当し得るし、逆に作るべき部分を省けば未完成になる。境界は当日の問題用紙で確認する。
踏みやすい欠陥項目
「欠陥の判断基準」から、No.9で特に該当しやすい項目を原文で引く。
- 1.未完成のもの … 接地線の結線忘れ、取付枠の付け忘れがここに入る。
- 2-2.寸法(器具にあっては中心からの寸法)が,配線図に示された寸法の50%以下のもの
- 4.電線の色別,配線器具の極性が施工条件に相違したもの
- 8-8.電線を引っ張って外れるもの
- 8-9.心線が差込口から2mm以上露出したもの ただし,引掛シーリングローゼットにあっては,1mm以上露出したもの
- 8-3 結線部分の絶縁被覆をむき過ぎたもの/ニ.ランプレセプタクル又は露出形コンセントの結線にあっては,ねじの端から心線が5mm以上露出したもの
- 8-7 ランプレセプタクル又は露出形コンセント等の巻き付けによる結線部分の処理が適切でないもの
- 11-4.取付枠に配線器具の位置を誤って取り付けたもの … 器具が1個なら中央、2個なら中央を空ける。
- 12-2.不要な工事,余分な工事又は用途外の工事を行ったもの
時間配分の目安
試験時間は全問題40分と公表されている。以下は目安の一例で、公表資料に定めがあるわけではない。
| 作業 | 目安 |
|---|---|
| 施工条件の読み込み・複線図(接地線も明記) | 5分 |
| ケーブル切断と寸法取り | 5分 |
| ランプレセプタクルの輪作り・結線 | 7分 |
| コンセント・点滅器・接地線の結線 | 8分 |
| 電線相互の接続 | 9分 |
| 見直し(接地線の有無を最初に確認) | 6分 |
見直しの一番目に「接地線は結線されているか」を置く。動作では検出できない欠落は、チェック順で潰すしかない。
施工条件は当日の問題用紙で確定する
公表資料は「配線図,施工条件等の詳細については,試験問題に明記します」としている。接地線に何色を使うか、コンセントと点滅器を同じ取付枠に何個並べるか、施工省略がどこまでかは、当日の施工条件が決める。ここで扱ったのは骨格と、外しやすい急所の位置だけだ。
洗濯機の裏にある、あの緑の線
接地極付コンセントが使われるのは、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、エアコン、屋外のコンセント——水や湿気が絡む場所だ。機器の中で絶縁が壊れて金属の外箱に電気が漏れたとき、それを人ではなく大地へ逃がすのが接地線の役目になる。普段はまったく電流が流れない線が、たった一度の故障のときだけ仕事をする。だから結線を忘れても照明は点くし、コンセントも使えてしまう。試験がこれを「未完成」として扱うのは、動作確認では絶対に見つからない欠落だからだ。
今日できることは簡単で、洗濯機を少しずらして裏のコンセントを見ればいい。アース端子のふたが開いたまま、緑の線がどこにもつながっていない家は珍しくない。この工事ができるということは、その状態を見つけて直せるということでもある。
接地を必要とする場所は、これから増える方向にある。屋外コンセント、EV充電設備、蓄電池——屋外で、水がかかる場所で、大きな電気を扱う設備ほど、接地は前提になる。No.9 で身につくのは地味な1本の引き方だが、その1本を省かない人だけが任される仕事がある。
冒頭の「動作は正しいのに未完成」という作品が何を欠いていたのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。