電柱の根元やキュービクルの脇を見ると、細い線が塩ビ管のような樹脂の管に包まれて、地面から人の背丈ほどの高さまで立ち上がっている。ただの電線を保護するだけなら、地面の中に埋めてしまえば十分そうなのに、なぜわざわざ地上に出た部分まで、しかもある決まった高さまで覆われているのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この防護管がどこからどこまでを、何のために覆っているのかを説明できるようになっている。
A種接地工事の抵抗値(10Ω以下)や、どんな機器に必要かという話は、第二種や検査方法の科目ですでに扱った。第一種の施工方法で新しく問われるのは、「実際にどう埋めるか」という施工そのものだ。
まず接地線の太さから見ておく。A種接地工事の接地線は、引張強さ1.04kN以上の金属線又は直径2.6mm以上の軟銅線(第17条第1項第二号ロ)。高圧・特別高圧の機器を対象とするA種は、低圧機器を対象とするC種・D種(引張強さ0.39kN以上又は直径1.6mm以上)よりも太い電線が求められる。対象とする電圧が高いほど、万一の際に流れる電流も大きくなりうるため、電線自体の耐久力にも余裕を持たせている。
人が触れるおそれがある場所では、接地極を地下75cm以上に埋設する(第三号イ)。そのうえで、接地線のうち地下75cmから地表上2mまでの区間を、合成樹脂管(厚さ2mm未満の合成樹脂製電線管・CD管を除く)等で覆う(第三号ニ)。この2つの数字が組み合わさることで、「地面の浅い部分を歩行時の踏みつけや工具の接触から守る」ことと、「地上に出た部分を人の手が届く高さまで守る」ことの両方が1本の防護管でまかなわれる。地下だけ、あるいは地上だけを覆っても、この規定は満たせない。
もう1つ、接地極を鉄柱のような金属体の近くに埋める場合の規定がある(第三号ロ)。金属体の底面から30cm以上の深さに埋設するか、金属体から1m以上水平に離すか、どちらかを満たせばよい。深さで対応するか距離で対応するかは選べるが、どちらも満たさずに金属体のすぐそばに浅く埋めることは認められない。これは、金属体を通じて別の電位が伝わり、接地極本来の役割(大地に電流を安全に逃がす)が損なわれるのを防ぐためだ。加えて、避雷針用地線を施設してある支持物には、A種接地工事の接地線を施設しないという規定もある(第四号)。禁じられているのは接地極ではなく接地線で、雷電流が流れる避雷針の引下げ導線と、機器側の接地線とを同じ柱に沿わせるな、という意味だ。同じ支持物に並べると、雷サージが機器側へ回り込む経路になりかねない。
ケーブルラックの接地 ― 種別は「載っているケーブルの電圧」で決まる
天井から吊られたはしご状の金属製ケーブルラックは、写真鑑別でも施工方法でも問われる定番の設備だが、実は電技解釈の条文を「ケーブルラック」という言葉で探しても、ほとんど見つからない。ラックの接地は、ケーブル工事の規定にある「管その他の電線(ケーブル)を収める防護装置の金属製部分」への接地として扱われる(低圧は第164条第1項第四号・第五号、高圧は第168条第1項第三号ハ。なお第113条第2項第二号ハは、ラックに施設する低圧屋上電線路にこの第164条の接地規定を準用すると明記しており、ラックがこの枠組みで扱われることの条文上の手がかりになっている)。
種別は、ラックそのものではなく載っているケーブルの電圧区分で決まる。
- 低圧300V以下:D種接地工事。ただし、金属製部分の長さが4m以下のものを乾燥した場所に施設する場合、または使用電圧が直流300V・交流対地電圧150V以下で長さ8m以下のものに簡易接触防護措置を施すか乾燥した場所に施設する場合は省略できる
- 低圧300V超:C種接地工事。接触防護措置を施す場合はD種でよい
- 高圧:A種接地工事。接触防護措置を施す場合はD種でよい
ここで1つ、似た規定との違いに注意したい。金属線ぴのD種接地は「長さ4m以下」だけで省略できるが、ケーブル工事の防護装置(ラック)の4m省略には「乾燥した場所」という条件が付いている。同じ4mという数字でも、条文が違えば付帯条件が違う。そして省略の規定はいずれも低圧の第164条の話であって、高圧ケーブルを載せたラックのA種接地には、長さによる省略はない。
接地極そのものの材料は、電技解釈ではなく内線規程が決めている
ここまでの太さ・埋設深さ・防護範囲は、いずれも電技解釈第17条が根拠だった。ところが「接地極そのものに何を使ってよいか」という材料・寸法になると、電技解釈には規定が無い。第17条が定めているのは埋設の深さや接地線の太さといった施設方法までで、接地極の材質・板厚・長さといった仕様は書かれていない。
この具体的な材料・寸法を定めているのは、内線規程(JEAC 8001)1350-7「接地極」 だ。銅板は厚さ0.7mm以上・大きさ900cm²(片面)以上、銅棒・銅溶覆鋼棒は直径8mm以上・長さ0.9m以上、鉄管は外径25mm以上・長さ0.9m以上の亜鉛めっきガス鉄管又は厚鋼電線管、銅覆鋼板は厚さ1.6mm以上・長さ0.9m以上・面積250cm²(片面)以上、炭素被覆鋼棒(黒鉛接地極)は直径8mm以上(鋼心)・長さ0.9m以上、といった具合に材料ごとの下限が列挙されている。
この太さの規定を軽く見て施工すると、あとで手戻りが起きる。設計変更で低圧設備の一部が高圧側に組み込まれることになったのに、接地線をC種・D種の細い規格(1.6mm)のまま流用してしまうと、A種として要求される太さ(2.6mm)を満たせず、検査で指摘されてやり直しになる。接地線は完成後は地中や壁内に隠れてしまうため、施工段階で対象設備の電圧区分を正しく見極め、太さを合わせておくことが手戻りを防ぐ唯一の手段になる。
地面から立ち上がる樹脂管を見て、その区間の意味を言い当てられるようになる
この規定が頭に入ると、電柱やキュービクルの周りで見かける防護管付きの接地線が、単なる保護カバーではなく、地下75cmから地上2mという明確な区間を守る法令上の要件の現れだと分かるようになる。今日試せることとして、近所の電柱の根元やキュービクルの脇を見て、接地線が管で覆われている高さを目測してみるといい。だいたい大人の背丈に近い高さまで続いていれば、この規定が反映されている可能性が高い。
接地極の埋設深さや防護範囲がここまで細かく定められているのは、接地線が「感電したときに電流を安全に受け止める最後の砦」だからだ。防護が不十分で接地線が損傷すれば、いざというときにその役割を果たせない。第一種電気工事士が高圧受電設備の接地工事に関わるとき、この施工上の要件を正確に守れるかどうかが、目に見えない安全性を左右する。
冒頭の樹脂管、地下と地上のどこからどこまでを守っていたのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。