40分。ケーブルを1本剥いて器具に結線するだけでも数分かかるのに、その中で複線図を描き、何本ものケーブルを寸法どおりに切り、器具を付け、すべての接続を終わらせなければならない。
同じ候補問題を作った2人がいる。一方は39分ですべての作業を終え、残り1分を座って過ごした。もう一方は35分で作業を終え、残りの5分をあることに使った。作業中の手際はほぼ互角で、どちらの作品も配線図どおりに動く。合格したのは、後者だけだった。
見当がつかなくて当然だ。速く作れる人が受かる試験だと思っていると、この差は説明できない。読み終えるころには、残り5分の使い道に自分で優先順位をつけられるようになっている。
第二種電気工事士技能試験の試験時間(作業時間)は40分だ。令和8年度の候補問題の公表資料にも「試験時間は,すべての問題について40分の予定です」と書かれている。13問のうちどれが出ても40分。問題の重さは多少違っても、時間は一律だ。
なお40分は作業時間であって、当日の拘束時間ではない。試験開始前に、試験問題と材料箱が配られ、材料表との照合確認を行う時間が別に取られている。この確認は試験時間に含まれないので、ここで材料の不足・不良を見つけておく。試験開始後の材料交換には一切応じてもらえない。
40分の割り方(一例)
区間の中身はこうなる。
- 複線図(目安5分) — 単線図から複線図を起こし、接続点ごとの電線の色とリングスリーブの刻印まで書き込む。試験センターも、誤接続・誤結線への対策として「複線図を正しく描く練習」を挙げている。ここを削ると3番目の欠陥項目(誤接続,誤結線のもの)に直行する
- 寸法取り・ケーブル切断(目安6分) — 判断基準2-2は「寸法(器具にあっては中心からの寸法)が,配線図に示された寸法の50%以下のもの」を欠陥とする。器具までの寸法は器具の中心から測る。ケーブルは追加支給されないので、切る前に一度は確認する
- 器具付け(目安12分) — 輪作り、ストリップゲージに合わせた差し込み、取付枠への取り付け。1箇所ずつ完成させ、完成したそばから判断基準を思い出して確認する
- 電線相互の接続(目安10分) — リングスリーブの圧着と差込形コネクタの差し込み。刻印は圧着する前に指差しで確認する
- 見直し(目安7分) — ここを最初に確保する
この数字はあくまで出発点だ。候補問題13問には器具の数も接続点の数も違いがあるので、実際に時間を計って自分の数字に置き換えていく。目的は「40分に収まる配分を1つ作ること」ではなく、「どの問題でも見直しの時間が残る手順を身につけること」にある。
なぜ見直しに時間を割くのか
試験センター自身も繰り返し書いている。「本番の試験では,完成した作品の見直しを忘れずに行いましょう」。リングスリーブについても「本番の試験では作品が完成したら必ず確認するように心がけてください」。
見直しは、漫然と眺めても意味がない。判断基準の項目順にチェックリスト化しておくと数分で回せる。
- 未完成の箇所はないか(取付枠の付け忘れ、接地線の結線忘れ)
- 電線の色別と極性は施工条件どおりか
- リングスリーブは上から心線の先端が見えるか、上端の出しすぎ・下端の露出はないか、刻印は正しいか
- 差込形コネクタは先端から心線が見え、下端から見えていないか
- 器具の結線部から心線が出ていないか、カバーは締まるか
- 取付枠の器具の位置は正しいか
やり直しの時間を、最初から見込む
作業中にミスに気づいたときの手当ても、時間配分の一部だ。
刻印を間違えたリングスリーブは、新しいリングスリーブで正しくやり直す。同じスリーブにもう一度圧着すると「1つのリングスリーブに2つ以上の圧着マークがあるもの」、1箇所に2個使うと「1箇所の接続に2個以上のリングスリーブを使用したもの」で、どちらも欠陥になる。
差込形コネクタをやり直すときは、コネクタの下部から切断して、新しいコネクタで接続し直す。引き抜いて再使用すると心線が傷つき、折れる可能性があるためだ。差込形コネクタは追加支給を受けても欠陥の対象にはならない。
つまり、やり直しには「時間」と「ケーブルの長さ」の両方を使う。この余地を残しておくためにも、切断段階での寸法確認が効いてくる。
練習のときに測るもの
13問すべてを一度は時間を計って通す。そのとき記録するのは合計時間だけではない。複線図に何分、切断に何分、と区間ごとに測っておくと、自分がどこで遅れるのかが分かる。遅い区間が分かれば、そこだけ反復すればいい。
そして本番と同じく、必ず最後に見直しまでやる。練習で見直しを省略していると、本番で「時間が余ったのに何を見ればいいか分からない」という状態になる。見直しも練習する作業のうちだ。
終わりの時間を先に取る、という段取りの型
見直しの時間を最初に確保してから前半の配分を決める、という順序は、試験のためのテクニックではない。現場の1日も同じ組み方をする。片付けと点検と施工写真の時間を先に引いてから、その日に着手する範囲を決める。終わりから逆算しない段取りは、たいてい最後で破綻する。
区間ごとに時間を測る習慣も、そのまま持ち越せる。ストップウォッチのラップ機能を使って、複線図・切断・器具付け・接続を分けて記録してみるといい。合計だけを見ていたときには気づかなかった「自分が遅い区間」が、2〜3回計っただけで浮かび上がる。そこだけ反復すれば、全体が縮む。この測り方は、1人で1日に何箇所こなせるかという見積りの感覚に、そのままつながっていく。
判断基準の第1項目が「未完成のもの」であることの意味も、ここで効いてくる。問われているのは手の速さではなく、決めた時間の中で確実に終わらせる段取りの力だ。任される仕事の大きさを決めるのは、たいていそちらのほうになる。
冒頭の2人のうち、残り5分を使ったほうが何をしていたのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。