候補問題No.8の練習で、丸形のVVRケーブルの外装を電工ナイフで慎重にはぎ取った。心線に傷はない。絶縁被覆にも傷はない。折り曲げても心線は露出しない。結線も締まっていて、導通も問題ない。
それでもこの作品には、欠陥と判定されうる箇所が残っている可能性がある。傷がひとつも付いていないのに、いったい何を落としたのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、その一点を指摘できるようになっている。
配線図に何が描かれているか
令和8年度の公表資料でNo.8の配線図に示されているのは、次の要素だ。
- 電源 1φ2W 100V
- 配線用遮断器(B)
- VVR 2.0-2C
- 「TR」と記された器具(注記により端子台で代用される場合がある)
- ランプレセプタクル(公表資料の注記は「Rは,ランプレセプタクルを示す」としている)
- 「イ」「ロ」「ハ」の記号(Rを冠した表示が器具の傍記なのか端子の記号なのかは、図の現物で確かめておきたい)
- 3心を示す表示のある電線
- 「施工省略」の表示と「ハ」「イ」の記号
ここで重要なのは、この「TR」の部分が何の器具に相当し、傍記の記号が回路上の何を指すのかは、公表資料の配線図だけでは確定しないということだ。公表資料の注記には「器具においては,端子台で代用する場合がある」とあり、詳細は「試験問題に明記します」とされている。つまりこの問題は、当日の結線図を読んで、そのとおりに端子台へ結線する能力を正面から問う構成になっている。
複線図を起こす順序
端子台代用が絡む問題では、複線図を描く前にもうひと手間が入る。
- 試験問題に示された結線図を読み、端子台の各端子が回路上のどこに当たるかを書き出す。 ここを飛ばして複線図に進んではいけない。
- 電源の接地側・非接地側を確定する。 配線用遮断器のN表示側には施工条件で白色が指定されるのが通例だが、色の指定は当日の施工条件で読む。
- 端子台の端子を「入口」と「出口」に分けて、それぞれに来る線を割り当てる。
- 負荷(ランプレセプタクル)までの線を引く。
- VVR で施工する区間を複線図に明記する。 電線の種類が図と違えば、それだけで欠陥(2-3)になる。
この問題特有の難所
難所1:VVRの外装はぎ取り。 公表資料は、VVRやエコケーブル(EM-EEF)について「材質の特性上VVF用ストリッパでは適切に外装をはぎ取れないことがあり,心線を傷つける原因となります」と明記している。電工ナイフを使う場合は、外装に浅く周回する切れ目を入れて折り曲げて割る手順が扱いやすい。ただし公表資料には「近年,カッターナイフでケガをされて,手当のために退出された方が増えています」として、カッターナイフの使用を自粛するよう注意喚起がある点にも留意したい。
難所2:介在物の処理。 上に述べたとおり、抜いてしまえばそれだけで欠陥になる。VVRを扱う練習では、剥く速さより「介在物が残っているか」を毎回確認する癖をつける。
難所3:端子台代用の結線。 実物の器具ではなく端子台が支給されると、端子の並びだけを見ても何が何だか分からない。公表資料は、端子台への結線について「結線図が示されている端子台への結線」の適切例と、「結線図どおりに結線されていない」欠陥例を並べて示している。当日は結線図を複線図に書き写してから手を動かす。
難所4:端子台の心線露出。 低圧側では端子台の端から心線が5mm以上露出すると欠陥(8-3ロ)。座金で絶縁被覆を噛んでも欠陥(8-4)。剥き代の管理がシビアな器具だ。
踏みやすい欠陥項目
「欠陥の判断基準」から、No.8で特に該当しやすい項目を原文で引く。
- 2-3.電線の種類が配線図と相違したもの … VVRの区間をVVFで作らない。
- 3.誤接続,誤結線のもの … 端子台の結線図を読み違えるとここに落ちる。
- 5-1 ケーブル外装を損傷したもの/ロ.外装縦われが20mm以上のもの/ハ.VVR,CVVの介在物が抜けたもの
- 5-2.絶縁被覆の損傷で,電線を折り曲げたときに心線が露出するもの
- 5-3.心線を折り曲げたときに心線が折れる程度の傷があるもの
- 8-1 心線をねじで締め付けていないもの/イ.単線での結線にあっては,電線を引っ張って外れるもの
- 8-3 結線部分の絶縁被覆をむき過ぎたもの/ロ.端子台の低圧側の結線にあっては,端子台の端から心線が5mm以上露出したもの/ハ.配線用遮断器又は押しボタンスイッチ等の結線にあっては,器具の端から心線が5mm以上露出したもの
- 8-4.絶縁被覆を締め付けたもの
- 12-5.器具を破損させたもの … 端子ねじの締めすぎに注意。
時間配分の目安
試験時間は全問題40分と公表されている。以下は目安の一例で、公表資料に定めがあるわけではない。
| 作業 | 目安 |
|---|---|
| 施工条件と端子台結線図の読み込み・複線図 | 7分 |
| ケーブル切断と寸法取り | 4分 |
| VVRの外装はぎ取り | 5分 |
| 端子台・配線用遮断器の結線 | 7分 |
| ランプレセプタクルなど器具の結線 | 6分 |
| 電線相互の接続 | 7分 |
| 見直し | 4分 |
VVRのはぎ取りは、練習量がそのまま時間差になる工程だ。ここを2分台で安定させられるかどうかで、余裕がまるで変わる。
施工条件は当日の問題用紙で確定する
公表資料は「配線図,施工条件等の詳細については,試験問題に明記します」としている。No.8はとりわけこの注記が効く問題だ。端子台の何番が何に相当するか、電線の色をどう振るか、どこを施工省略とするかは、すべて当日の結線図と施工条件で決まる。「去年はこう結線した」という記憶を持ち込むと、そのまま3.誤接続,誤結線に直結する。
引込口から分電盤まで、太い電線を扱う入口
VVRのような丸形ケーブルは、飾りで丸いわけではない。太い電線をまとめて、どの向きにも曲げやすくするための形で、引込口の配線や分電盤への幹線など、家じゅうの電気がまとめて通る部分で使われる。ここを電工ナイフで落ち着いて剥けるということは、細い枝の配線から「幹の配線」へ手が届き始めたということだ。
介在物という詰め物の存在も、知ると見え方が変わる。丸い断面を保ち、心線どうしの隙間を埋めるために入っている紙や繊維で、抜けてしまえばケーブルは設計どおりの形を保てない。だから心線にも被覆にも傷がなくても欠陥になる。「見た目がきれいなら良い」ではない、という基準の作り方がここに表れている。
端子台の結線図を読む作業も同じだ。現場では、初めて見る変圧器や制御機器を、付属の図だけを頼りに結線する場面が必ず来る。その一回一回を落ち着いて処理できるかが、扱える仕事の幅になる。今日は、自宅の引込線から電力量計、分電盤までの経路を目でたどってみるといい。オール電化や充電設備に合わせて幹線を太くする工事は、これから確実に増えていく部分だ。
冒頭の「傷ひとつないのに欠陥になり得る作品」が何を落としていたのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。