過去問は安定して合格点を超えている。当日、いつもどおり筆箱と電卓を鞄に入れ、腕時計をして会場へ向かった。
このうち2つは、方式によっては持ち込んだ時点で問題になる。どれか分かるだろうか。
知識では足りているのに、当日のルールを知らないだけで点を落とす人がいる。このトピックでは、電気技術者試験センターが公表している受験案内の原文で確認した事実だけを扱う。ネットの体験談ではなく、一次情報だ。
電卓は使えない。だが、それは悪い知らせではない
まず結論から。電卓(電子式卓上計算機)及び計算尺は使用できない。
多くの人はここで身構える。「計算問題が不利になる」と。ところが受験案内には、その直後にこう書かれている。
学科試験問題の計算については、四則計算(加減乗除)等の筆算によって十分解答できる前提の問題となっています。
これは受験者にとって、かなり有利な情報だ。計算の答えが割り切れない、桁が異常に大きくなる—— そうなったら、それは解き方を間違えたサインだと判断できる。
試験センター自身が「筆算で解ける」と明言している以上、正しい手順で進めば数字はきれいに収まる。 電卓が無いことは不利ではなく、検算の手がかりになっている。
√3=1.73、√2=1.41 を覚え、約分してから計算を進める——この練習を日頃からやっておけば足りる。
CBT方式と筆記方式で、持ち物のルールが正反対
令和8年度の第二種は、上期・下期とも学科試験がCBT方式か筆記方式の選択制だ。そして選んだ方式で持ち物が変わる。ここが実務的にいちばん効く。
| CBT方式 | 筆記方式・技能試験 | |
|---|---|---|
| 筆記用具 | 会場で貸出(黒ボールペンとメモ用紙) | 持参する |
| 持参の筆記用具 | 使用不可 | 使用する |
| 時計 | 使用不可(画面に残り時間が出る) | 使用できる |
| ストップウォッチ | — | 音が出ないものなら可 |
| 眼鏡・ルーペ | 使用できる(ルーペは事前申請が要る場合あり) | 使用できる |
| 飲み物 | 水のみ。無色透明なペットボトル、ラベルを剥がし1人1本・1000ml以下 | — |
CBT方式を選ぶなら、メモ計算は貸与のボールペンで行うことになる。消せないので、 書き直しではなく書き足す前提でメモを取る練習を、直前に一度しておくといい。 複線図を鉛筆で描き慣れている人ほど、ここで戸惑う。
なお第一種は、令和8年度の上期がCBT方式のみ(筆記方式を実施しない)で、第二種とは扱いが違う。両方を受ける予定なら、それぞれの受験案内を確認する。
技能試験は「使えない工具」のほうを先に読む
技能試験には、使ってはいけないものが明記されている。練習で身につけた段取りが、本番で使えなくなることがあるので、練習の初日に読んでおきたい。
使用できないもの
- 電動工具(充電式を含む)
- 改造した工具(持ち手の延伸、工具への書き込みなど)
- 自作した工具
- 配布される「保護板」以外の下敷き・作業用シート類
- ネジやリングスリーブなどを仮置きするための小箱や皿類
- 支給された材料以外の材料
- その他、工具として一般に販売されていないもの
本番と同じ条件で練習する——これが技能試験でいちばん効く準備になる。 支給材料だけを机に広げ、保護板の上で、手持ちの工具だけで組む。 この形で13問(第二種の候補問題)を回しておけば、当日に段取りが崩れない。
全問2点。配線図20問をまとめて取る
合格基準は原文でこうなっている。
学科試験における合格基準点は、60点とする。 技能試験における合格基準は、作品に欠陥がないこととする。
学科試験の構成は、一般問題30問・配線図20問の計50問で、いずれも1問2点だ。
だから解く順序は、こう組み立てるのが合理的になる。
- 一般問題のうち、暗記で即答できるもの(法令・材料・工具)を先に回収する
- 配線図20問にまとまった時間を確保し、図面を読み込んでから一気に片付ける
- 計算問題は最後に、残った時間を充てる
60点=50問中30問で届く。配線図20問を安定させれば、それだけで40点になる。 分からない問題は飛ばして、必ず一周する——これが最も基本的で、最も効く戦術だ。
知識の外側にある失点を、先に潰しておく
冒頭の問いに戻る。筆箱・電卓・腕時計のうち、電卓は方式を問わず使用不可、筆記用具と腕時計はCBT方式では使用不可。3つのうち2つが引っかかる。
今日試せることとして、自分が申し込む期の受験案内を開き、「持参するもの」「使用できるもの」「使用できないもの」の3項目だけ読んでおくといい。5分で終わる。この5分を惜しんだせいで、120分の試験や40分の技能試験が無駄になることがある。
試験センターがここまで細かく規定しているのは、CBT方式が会場も日時も受験者ごとにばらばらな仕組みだからだ。全員が同じ部屋で同じ問題を解く筆記方式と違い、公平性を担保する手段が「持ち込みを絞ること」に寄っている。ルールの細かさは意地悪ではなく、その方式を成立させるための条件になっている。