在庫確認・見積は今すぐ フォームで依頼する 24時間受付 / 電話は平日 9:00〜17:00 03-3833-6431
電力 ・ 1 / 16

水力発電の仕組みと出力計算

読み終えると、こうなる

ダムや水力発電所の案内板にある「有効落差」「最大使用水量」の数字を見ただけで、その発電所がどれくらいの電力を作れるかを暗算できるようになる

  • 流量・落差(総落差と有効落差の違いに注意)・効率の3つの数値から、水力発電の出力をP=9.8QHηで計算できる。また、水圧管内を満たして流れる水の流速・圧力を、連続の式とベルヌーイの定理を組み合わせて計算でき、負荷急変時に水圧管内で起こる水撃作用とサージタンクの役割も説明できる
  • 落差と流量の条件から、その地点に適した水車の種類(ペルトン・フランシス・カプラン)を選べる。あわせて衝動水車・反動水車の原理の違い(圧力水頭を速度水頭に変換してから羽根に当てるか、圧力水頭を保ったまま反動力を利用するか)とガイドベーン(案内羽根)の役割、揚水発電所の3方式(別置式・タンデム式・ポンプ水車式)の違い、水車発電機の一般的な構造(大径・多極の突極形回転界磁形三相同期発電機、立軸形が多い理由)、調速機と自動電圧調整器(AVR)の役割の違いを説明できる
  • 流況曲線を読み、渇水量や調整運転の条件から、発電所の最大使用流量や必要な有効貯水容量を計算できる。また、流域面積・年間降水量・流出係数から発電計画に用いる年間平均流量を概算でき、設備利用率を使って年間発電電力量を計算できる
  • 揚水発電所の揚水時電動機入力・発電時発電機出力を効率から計算でき、水車の比速度・回転速度・発電機の磁極数の関係も計算できる
考えてみよう

ダムの案内板に「有効落差100m、最大使用水量20m³/s」と書かれているのを見て、 この発電所が最大で何kWの電力を作れるか、その場で計算できるだろうか。

落差と流量という、目で見てわかる2つの数字だけから、電力という目に見えないものが どうやって求まるのか。

このトピックを読み終えるころには、案内板の数字を見ただけで、その水力発電所の 出力をその場で暗算できるようになっている。

種明かしは、水力発電の出力が P=9.8QHη という、たった1つの掛け算の式で決まる という事実にある。

水力発電の仕組み — 位置エネルギーを電気エネルギーに変える

水力発電は、高い場所にある水が持つ位置エネルギーを、落差を利用して水車の回転エネルギーに変え、 水車に直結した発電機で電気エネルギーに変換する仕組みだ。取水方式には、川の水をそのまま 利用する水路式、ダムでせき止めた水を使うダム式、両者を組み合わせたダム水路式などがあるが、 「落差のある水を水車に落として回す」という原理はどれも共通している。

このとき出力は、次の式で求まる。

P=9.8×Q×H×η[kW]P = 9.8 \times Q \times H \times \eta \quad [\text{kW}]

QQ は流量[m³/s]、HH は有効落差[m]、η\eta は水車効率と発電機効率を掛け合わせた総合効率だ。 9.8という係数は、水の密度(1000kg/m³)と重力加速度(約9.8m/s²)から導かれるもので、 「1秒間に落ちてくる水の重さ×落差」という水の持つ力学的なエネルギーを、 そのままkW単位の電気出力に読み替えるための橋渡し役をしている。

例題

流量5m³/s、有効落差50m、総合効率0.8の水力発電所の出力は何kWか。

P=9.8×5×50×0.8=1960kWP = 9.8 \times 5 \times 50 \times 0.8 = 1960\text{kW}
Pの式は「水の重さ×落差×効率」という力学的なイメージそのままだ。流量が2倍になれば 出力も2倍、落差が2倍になっても出力は2倍——QとHはどちらも1乗で式に入っているので、 単純に比例すると覚えておけば、条件が変わったときの出力の増減を暗算で見積もれる。

有効落差と総落差の違い

案内板や資料には「総落差」の数値が大きく書かれていることが多いが、公式のHに そのまま代入してよいのは 有効落差 の方だ。

有効落差=総落差損失落差\text{有効落差} = \text{総落差} - \text{損失落差}

総落差は、取水口の水位から放水口の水位までの高さの差。これに対して、水が導水路や 水圧管路を流れる間には、摩擦などによって必ずエネルギーの一部が失われる。この失われた分を 落差に換算したものが損失落差で、総落差から損失落差を引いたものが、実際に水車を回す仕事に 使える有効落差になる。

水圧管内の流れ — 連続の式とベルヌーイの定理

P=9.8QHηの式は、水車の入口と出口を結んだ「全体としての」出力を求める式だった。これとは別に、 水圧管の途中にある特定の断面で、水がどれくらいの速さで流れ、どれくらいの圧力がかかっているかを 問われることもある。この計算に使うのが連続の式ベルヌーイの定理だ。

水圧管内をすき間なく水が満たして流れているとき、管の途中で断面積が変わっても、単位時間に 通過する体積(流量)は変わらない。これを連続の式という。

A1v1=A2v2A_1 v_1 = A_2 v_2

AAは断面積[m²]、vvは流速[m/s]だ。断面積が小さくなる部分では、その分だけ流速が 速くなる——ホースの先をつまむと水の勢いが増すのと同じ関係だ。

もう一つの関係がベルヌーイの定理で、水が持つ「圧力のエネルギー」「速度のエネルギー」 「高さのエネルギー」の合計(全水頭)が、管のどの断面でも一定に保たれるという法則だ。

p1+12ρv12+ρgz1=p2+12ρv22+ρgz2p_1 + \frac{1}{2}\rho v_1^2 + \rho g z_1 = p_2 + \frac{1}{2}\rho v_2^2 + \rho g z_2

ppは圧力[Pa]、ρ\rhoは水の密度[kg/m³]、vvは流速[m/s]、ggは重力加速度[m/s²]、zzは 基準面からの高さ[m]だ。

2つの式は役割が分かれている。連続の式は「流速」を求めるための式、ベルヌーイの定理は その流速をもとに「圧力」を求めるための式だ。まず連続の式で知りたい断面の流速を求め、 その値をベルヌーイの定理に代入して圧力を求める、という2段階の手順で解くと迷わない。

例題

水圧管内を水が満たして流れている。断面Aでは内径2.0m、流速2.5m/s、圧力30kPaである。 断面Aとの落差20m、内径1.6mの断面Bにおける流速と水圧を求める。

まず連続の式から断面Bの流速を求める。断面積は内径の2乗に比例するので、

vB=vA×(DADB)2=2.5×(2.01.6)2=2.5×1.56253.91m/sv_B = v_A \times \left(\frac{D_A}{D_B}\right)^2 = 2.5 \times \left(\frac{2.0}{1.6}\right)^2 = 2.5 \times 1.5625 \approx 3.91\text{m/s}

次にベルヌーイの定理に代入する。断面Aは断面Bより20m高い位置にあるので、zAzB=20z_A-z_B=20と 置くと、

pB=pA+ρg(zAzB)+12ρ(vA2vB2)p_B = p_A + \rho g (z_A - z_B) + \frac{1}{2}\rho (v_A^2 - v_B^2) pB=30000+1000×9.8×20+500×(2.523.912)30000+1960004520221,500Pa221kPap_B = 30000 + 1000 \times 9.8 \times 20 + 500 \times (2.5^2 - 3.91^2) \approx 30000 + 196000 - 4520 \approx 221{,}500\text{Pa} \approx 221\text{kPa}
この計算でつまずくとしたら、ほぼ確実に位置水頭($\rho g z$の項)の見落としだ。水圧管には 必ず落差があるので、断面Aと断面Bの高さの差を「圧力の変化」に必ず換算して加える。落差の分だけ 水が「落ちる」ので、位置エネルギーが圧力・速度のエネルギーに変わり、圧力側は大きく増える 方向に働く、という向きも合わせて押さえておくとよい。

水撃作用とサージタンク — 水圧管に生じる圧力変動を吸収する

発電所の負荷が急激に変化すると、それに応じて水車を通過する使用水量も急激に変化させる 必要がある。しかし水圧管の中を流れる水には慣性があるため、流速を急に変えようとすると、 水圧管内の圧力が急上昇・急降下する。この圧力変動を水撃作用(ウォーターハンマ)と呼ぶ。

水撃作用の大きさは、水圧管が長いほど、そして水車の案内羽根や入口弁の閉鎖・開放にかける 時間が短いほど大きくなる。管が長いほど中の水の質量(慣性)が大きく、弁を閉じる時間が 短いほど流速の変化が急激になるため、どちらも圧力変動を増大させる方向に働く。

この水撃作用による圧力変動を緩和するために設けるのがサージタンク(水圧調整用水槽)だ。 圧力水路と水圧管の接続箇所に設置し、水位が昇降することで圧力変動を吸収する。

サージタンクは密閉容器ではなく、大気に開放された(または大気と連絡した)水槽である点を 押さえておきたい。密閉してしまうと水位の昇降そのものができず、圧力変動を吸収する仕組みが 成り立たなくなる。「圧力を閉じ込める」のではなく「水位という形で圧力変動を逃がす」装置だと イメージすると、密閉構造という誤った説明に惑わされない。

サージタンクにはいくつかの構造があり、代表的なものに差動式サージタンクがある。差動式は、 タンクの中に細い管(ライザ、上昇管)を設け、負荷が急激に遮断されたときの圧力上昇エネルギーを、 まずライザ内の水面上昇によってすばやく吸収し、そのあと小さな穴(オリフィス)を通してゆっくりと タンク本体の水位に戻す、という2段構えの動作をする。このほか、小孔式・水室式といった構造も あり、いずれも水位の昇降で圧力変動を吸収するという基本原理は共通している。

水車の種類と選定 — 落差と流量の組み合わせで決まる

水車には大きく分けて衝動水車と反動水車があり、設置する地点の落差・流量の条件に応じて 使い分けられる。

  • ペルトン水車(衝動水車):高落差・小流量に適する。水をノズルから噴射して羽根に当てる方式。
  • フランシス水車(反動水車):中落差に適し、最も広く使われる水車。
  • カプラン水車(反動水車、プロペラ水車の一種):低落差・大流量に適し、羽根の角度を可変にできるものが多い。
水車の選び方に迷ったら、「落差が高いほど水を勢いよく噴射する形」「落差が低いほど大量の水を ゆったり通す形」というイメージで考えるとよい。ペルトン水車のノズル噴射は前者、 カプラン水車の大口径プロペラ形状は後者の典型だ。

水車の分類ともう一段深い構造 — 衝動水車と反動水車、ガイドベーン、揚水発電所の方式

前節では「落差と流量に応じて水車の種類を選ぶ」という使い分けを見たが、そもそもペルトン水車と フランシス水車・カプラン水車は、水の持つエネルギーをランナ(羽根車)に伝える原理そのものが 異なる。

衝動水車(ペルトン水車が代表)は、水圧管が持つ圧力水頭を、いったんノズルで速度水頭 (流速のエネルギー)に変換してから、大気圧のもとで水をランナのバケットに噴射し、その 衝突力(衝動力)でランナを回す。ノズルを出た時点で水はすでに大気圧まで圧力を失っている 点が特徴だ。

反動水車(フランシス水車・カプラン水車が代表)は、これとは逆に、圧力水頭を保ったまま 水をランナ内部へ導き入れ、水がランナの中を通り抜けて出ていくときの反動力で回転する。 ランナの入口と出口で圧力差が残っている点が、圧力をすべて速度に変えてしまう衝動水車との 大きな違いになる。

反動水車の入口にはガイドベーン(案内羽根)と呼ばれる可動の羽根が並んでおり、その 開度を変えることでランナに流入する水の流量を調整し、水車の出力を加減する役割を持つ。

衝動水車と反動水車の違いに迷ったら「圧力水頭をどこで使い切るか」で考えるとよい。衝動水車は ノズルの時点で圧力水頭を速度水頭に変換し尽くしてしまうのに対し、反動水車は圧力水頭を ランナの中まで持ち込み、そこでの反動力も回転に利用する。ガイドベーンは、この反動水車の 「入口での水量調整弁」に相当する部品だと考えると位置づけやすい。

揚水発電所の3つの構成方式

これまで見てきた揚水発電所の効率計算では「水車・ポンプ・発電機・電動機」をひとまとめに 扱ってきたが、実際の設備構成には3つの方式がある。

  • 別置式:水車と発電機、ポンプと電動機を、それぞれ別々の軸に分けて設置する方式。水車と ポンプを個別に最適設計できる反面、設備点数が多くなる。
  • タンデム式:水車・ポンプ・発電電動機を同一の軸上に一列に並べて設置する方式。
  • ポンプ水車式:水車とポンプの機能を1台の可逆式機械(ポンプ水車)が兼ね、発電機と 電動機も同一軸を共用する方式。水車・ポンプをそれぞれ専用設計する別置式・タンデム式に 比べて設備がコンパクトになるため、国内で建設される揚水発電所の大半はこの方式が採用されている。

水車発電機の構造と、調速機・AVRの役割分担

水力発電機は、火力発電のタービン発電機(高速回転・円筒形回転子)とは対照的に、比較的 低速で回転するため、大径で磁極が外側に突き出た突極形の回転界磁形三相同期発電機が 広く使われている。落差を有効に利用するために、水車を発電機の下方に直結する立軸形に することも多い。

水力発電所の運転には、2つの異なる自動制御装置が組み込まれている。調速機(ガバナ)は 水車の回転速度——系統周波数と直結する量——を一定に保つための装置で、ガイドベーンの開度を 自動調整することで実現する。一方、自動電圧調整器(AVR)は、発電機の界磁電流を調整して 出力電圧の大きさを一定に保つための装置だ。

調速機とAVRは、どちらも「発電所の運転を安定させる自動制御装置」という点でひとまとめに 語られがちだが、制御している物理量はまったく別。調速機は「回転速度=周波数」、AVRは 「電圧の大きさ」——この対応を取り違えないようにしたい。

流況曲線と調整池式発電所の計算

河川を流れる水量は季節や天候によって大きく変動する。1年間の日々の流量を、多い順に並べ替えてグラフにしたものを流況曲線と呼び、水力発電所の計画・運用でよく使われる。

流況曲線上には、1年365日のうち何日はその流量以上が確保できるかという基準で、代表的な流量に名前が付けられている。多い方から、豊水量・平水量・低水量・渇水量という4つの代表値があり、渇水量はその年のほとんどの期間で確保できる最低限の流量にあたる。

河川の全流量をそのまま発電に使う「流れ込み式」とは別に、川の水を一時的にせき止めて貯めておく池(調整池)を持ち、電力需要の多い時間帯に集中して発電する方式を調整池式発電と呼ぶ。調整池式発電では、河川から流れ込む水量よりも大きい流量で、短い時間だけ発電することができる。

例題

ある河川の渇水量が10m³/sであるとする。この流量を使って、1日のうち8時間だけ集中して発電する調整池式発電所を考える。運転しない残り16時間は、河川から流れ込む水をすべて調整池に貯めるものとする。

1日(24時間)を通じて河川から流れ込む水の総量と、8時間の運転で使い切る水の総量は等しくなるはずなので、最大使用流量Qmaxは次のように求まる。

Qmax×8h=10m3/s×24hQ_{\max} \times 8\text{h} = 10\text{m}^3/\text{s} \times 24\text{h} Qmax=10×248=30m3/sQ_{\max} = 10 \times \frac{24}{8} = 30\text{m}^3/\text{s}

運転しない16時間の間に調整池へ貯める必要がある水量は、河川からの流入量と発電に使う量の差(Qmax−渇水量)に、貯める時間(16時間を秒に換算)を掛けて求める。

(3010)m3/s×16×3600s=20×57600=1,152,000m3(30 - 10)\text{m}^3/\text{s} \times 16 \times 3600\text{s} = 20 \times 57600 = 1{,}152{,}000\text{m}^3
調整池式発電所の計算は、「1日を通じて流れ込む水の総量」と「発電で使い切る水の総量」が等しくなるという水収支(水のつじつま合わせ)がすべての出発点だ。運転時間を短くするほど、その時間に集中して使う最大使用流量は大きくなり、逆に非運転時間に貯めておかなければならない貯水量も増える、という関係をイメージしておくと立式しやすい。

発電計画の概算 — 流域面積・降水量から流量を、設備利用率から年間発電電力量を求める

水力発電所を新設する計画段階では、実測した流量データがまだない地点でも、その河川の 流域面積年間降水量流出係数という3つの数値から、年間の平均的な流量を おおまかに見積もることができる。

流域に降った雨のすべてが川に流れ込むわけではなく、地表への浸透や蒸発によって一部は 失われる。降った雨のうち実際に河川の流量として流れ出る割合を流出係数と呼ぶ。 流域面積[km²]に年間降水量[mm]と流出係数を掛け合わせれば、1年間に河川を流れる水の 総量(体積)が求まり、これを1年間の秒数で割れば、年間の平均流量Qが求まる。

Q=流域面積×年間降水量×流出係数年間秒数(約31,536,000秒)Q = \frac{\text{流域面積} \times \text{年間降水量} \times \text{流出係数}}{\text{年間秒数(約31{,}536{,}000秒)}}

単位をそろえる際は、流域面積[km²]をm²に(×10⁶)、年間降水量[mm]をmに(×10⁻³)変換して から体積[m³]を求める、という手順を踏む。

例題

流域面積2,000km²、年間降水量1,600mm、流出係数0.7の河川で、年間の平均流量を求める。

まず年間の総流出量を求める。

2000×106m2×1600×103m×0.7=2.24×109m32000\times10^6\text{m}^2 \times 1600\times10^{-3}\text{m} \times 0.7 = 2.24\times10^9\text{m}^3

これを年間秒数(365日×24時間×3600秒=31,536,000秒)で割ると、

Q=2.24×10931,536,00071.0m3/sQ = \frac{2.24\times10^9}{31{,}536{,}000} \approx 71.0\text{m}^3/\text{s}
この計算のつまずきどころは単位換算だ。流域面積は[km²]、降水量は[mm]という日常でよく使う 単位で与えられることが多く、そのまま掛け算すると体積の単位が合わない。km²→m²は10⁶倍、 mm→mは10⁻³倍——この2つの変換を先に済ませてから掛け算する、という順序を徹底する。

このようにして求めた平均流量Qと、計画する有効落差H・総合効率ηから、P=9.8QHηで発電所の 出力を見積もれる。さらに、その発電所が実際にどれだけの電力量を1年間に発電できるかを 見積もるには、設備利用率という指標を使う。

設備利用率は、発電所が定格出力で24時間365日フル稼働し続けたと仮定した場合の年間発電 電力量に対して、実際の年間発電電力量が何%にあたるかを表す割合だ。

年間発電電力量=定格出力×24×365×設備利用率\text{年間発電電力量} = \text{定格出力} \times 24 \times 365 \times \text{設備利用率}

例題

出力8,000kWの水力発電所が、設備利用率60%で1年間運転した場合の年間発電電力量を求める。

8000kW×24×365×0.642,048,000kWh4205万kWh8000\text{kW} \times 24 \times 365 \times 0.6 \approx 42{,}048{,}000\text{kWh} \approx 4205\text{万kWh}
設備利用率を掛け忘れると、定格出力のままフル稼働し続けたと仮定した過大な電力量になって しまう。「定格出力×8760時間(1年の時間数)」がまず理論上の上限で、そこに実際の稼働状況を 反映する設備利用率を掛けて初めて、現実的な年間発電電力量になる、という順序で考える。

揚水発電所の効率計算 — 揚水時と発電時で「使う落差」が違う

これまで見てきたP=9.8QHηは、川の水を一方向に流して発電する場合の式だった。夜間などの余剰電力でポンプを回し、下池の水を上池へ汲み上げておき、電力需要の多い時間帯に汲み上げた水で発電する揚水発電所では、揚水時と発電時それぞれで計算の向きが変わる。

揚水発電所には、ポンプと水車を1台の可逆式機械(ポンプ水車)で兼ねる方式が多く、電動機と発電機も同様に兼用されることが多い。揚水時・発電時のどちらでも、導水路の摩擦などによる損失水頭が生じる点は共通しているが、この損失が効く向きが逆になる。

  • 揚水時:電動機がポンプを回し、下池の水を上池へ押し上げる。ポンプは総落差に加えて、損失水頭の分まで余計に水を押し上げなければならない。使う落差は H揚水=総落差+損失水頭H_{\text{揚水}} = \text{総落差} + \text{損失水頭}。電動機入力は次の式で求まる。
P電動機入力=9.8×Q×H揚水ηポンプ×η電動機[kW]P_{\text{電動機入力}} = \frac{9.8 \times Q \times H_{\text{揚水}}}{\eta_{\text{ポンプ}} \times \eta_{\text{電動機}}} \quad [\text{kW}]
  • 発電時:上池の水を落として水車・発電機を回す。損失水頭の分だけ、実際に水車が使える落差は目減りする。使う落差は H発電=総落差損失水頭H_{\text{発電}} = \text{総落差} - \text{損失水頭}。発電機出力は通常の水力発電と同じ形の式で求まる。
P発電機出力=9.8×Q×H発電×η水車×η発電機[kW]P_{\text{発電機出力}} = 9.8 \times Q \times H_{\text{発電}} \times \eta_{\text{水車}} \times \eta_{\text{発電機}} \quad [\text{kW}]
揚水時は効率で「割る」、発電時は効率を「掛ける」——という形の違いも見落としやすい。電動機入力は、ポンプ・電動機の効率が悪いほど、より多くの電力を投入しないと必要な水量を汲み上げられないから分母に来る。発電機出力は、水車・発電機の効率が悪いほど、同じ水量から取り出せる電力が減るから掛け算になる。どちらも「効率が悪いほど損をする」方向は同じだが、式の形(割るか掛けるか)は入力側か出力側かで変わる。

例題

総落差100m、流量50m³/s、損失水頭は揚水時・発電時共に総落差の3%、ポンプ効率・水車効率共に89%、電動機効率・発電機効率共に97%とする揚水発電所を考える。

発電時に水車が使える有効落差は H発電=100×(10.03)=97mH_{\text{発電}} = 100 \times (1-0.03) = 97\text{m}

P発電機出力=9.8×50×97×0.89×0.9741,032kW41.0MWP_{\text{発電機出力}} = 9.8 \times 50 \times 97 \times 0.89 \times 0.97 \approx 41{,}032\text{kW} \approx 41.0\text{MW}

揚水時に電動機が押し上げるべき落差は H揚水=100×(1+0.03)=103mH_{\text{揚水}} = 100 \times (1+0.03) = 103\text{m}

P電動機入力=9.8×50×1030.89×0.9750,4700.863358,461kW58.5MWP_{\text{電動機入力}} = \frac{9.8 \times 50 \times 103}{0.89 \times 0.97} \approx \frac{50{,}470}{0.8633} \approx 58{,}461\text{kW} \approx 58.5\text{MW}

同じ流量・同じ総落差でも、揚水時に投入する電力(約58.5MW)の方が、発電時に取り出せる電力(約41.0MW)よりはるかに大きい。この差が、揚水発電所を運用するうえでの往復効率(約70%程度)にあたる。

水車の比速度 — 水車の「形」を1つの数値で表す

水力発電の出力計算とは別に、水車そのものの形状的な特徴を表す指標として比速度がある。比速度Nsは、「同じ形をした水車を1mの落差で運転したとき、1kWの出力を出すために必要な回転速度」という考え方から定義される量で、次の式で求まる。

Ns=N×P1/2H5/4N_s = \frac{N \times P^{1/2}}{H^{5/4}}

NNは回転速度[min⁻¹]、PPは出力[kW]、HHは有効落差[m]だ。比速度の値が大きいほど、低落差・大流量に向くカプラン水車のような形状に近づき、比速度が小さいほど、高落差・小流量に向くペルトン水車のような形状に近づく——第1節で見た「落差と流量による水車の使い分け」を、1つの数値に集約した指標だと考えるとよい。

一方、水車に直結する同期発電機の回転速度Nは、周波数fと磁極数pから決まる。

N=120fpN = \frac{120f}{p}

磁極数pは必ず偶数になる。この2つの式を組み合わせると、「この落差・この出力なら、比速度の目安から回転速度の見当がつき、そこから50Hz(または60Hz)に合う磁極数が絞り込める」という流れで、水車の仕様を検討できる。

例題

有効落差300m、水車出力60,000kWの水車を回転速度200min⁻¹で運転する場合の比速度は、

Ns=200×600001/23005/4200×245.01248.639.2m・kWN_s = \frac{200 \times 60000^{1/2}}{300^{5/4}} \approx \frac{200 \times 245.0}{1248.6} \approx 39.2\text{m・kW}

この発電機を50Hzの系統に接続する場合の磁極数は、

p=120fN=120×50200=30p = \frac{120f}{N} = \frac{120 \times 50}{200} = 30\text{極}
比速度の式は指数の付き方が非対称な点だけ押さえればよい。出力Pには平方根(1/2乗)、落差Hにはそれより強く効く5/4乗がつく。落差が大きく変わったときの比速度への影響が、出力の変化より大きく出る、という感覚を持っておくと、選択肢の桁を見ただけで計算ミスに気づきやすくなる。

実務との接点 — 「掛け算で実出力を出す」考え方はどこにでも使われている

水力発電の出力計算は「複数の要素を掛け合わせて、実際に取り出せる値を求める」という 考え方の典型だが、これは電材業界の実務にもそのまま通じる。受変電設備の変圧器容量や 遮断器の定格を選定する際も、皮相電力・力率・効率といった複数の要素を掛け合わせて 実際に必要な容量を割り出す。水力発電のP=9.8QHηも、受変電設備の容量計算も、 「単一の数値ではなく、複数の要素の積で実力値が決まる」という発想の応用という点は変わらない。

冒頭の案内板の数字から出力を暗算する練習は、理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 有効落差の代わりに総落差をそのまま公式に代入する

    なぜ引っかかる案内板や資料には総落差の数値が大きく書かれていることが多く、損失落差を差し引く工程を忘れやすい。

    見破り方公式に代入する前に「このHは損失を引いた後の値か」を必ず確認する。総落差としか書かれていない場合は、損失落差の記載がないか資料を再確認する。

  2. 総合効率ηを水車効率だけで計算し、発電機効率を掛け忘れる

    なぜ引っかかる水車と発電機は別々の機器なので、片方の効率だけで満足してしまいやすい。特に水車効率だけが資料に大きく書かれている場合に起きやすい。

    見破り方ηは「水車効率×発電機効率」の掛け算であることを式の形で覚えておき、2つの効率が与えられていないか設問文を見直す。

  3. 流量の単位をm³/sとm³/minで取り違える

    なぜ引っかかる水量は日常感覚だとm³/minやm³/hで語られることも多く、公式のQが秒あたり基準であることを見落とすと60倍・3600倍の誤差が生まれる。

    見破り方公式に代入する前に、与えられた流量の単位が秒あたりかどうかを確認し、違えば単位変換してから計算する。

  4. 調整池式発電所の計算で、運転時間と非運転時間を取り違え、貯水量を求める時間を24時間や運転時間そのもので計算してしまう

    なぜ引っかかる「1日〇時間だけ発電する」という条件から、24時間全体や運転時間そのものを貯水量の計算にそのまま使ってしまい、貯水が行われるのは残りの非運転時間だけだという点を見落としやすい。

    見破り方水が貯まるのは水車・発電機を止めている非運転時間だけ、という前提を先に確認し、24時間から運転時間を差し引いた非運転時間を使って貯水量を計算する。

  5. 揚水発電所の効率計算で、揚水時と発電時に同じ落差・同じ効率の向きを使ってしまう

    なぜ引っかかる『損失水頭』という1つの言葉に引きずられ、揚水時も発電時も同じように落差を目減りさせると考えやすいが、実際には揚水時は電動機がその損失分まで余計に汲み上げなければならず、発電時は水車が使える落差がその分減る、というように損失の効き方の向きが逆になる。

    見破り方『ポンプは損失に打ち勝って余分に押し上げる(総落差+損失水頭)』『水車は損失に食われた分しか使えない(総落差-損失水頭)』という2つの向きをセットで覚え、揚水時の落差の方が発電時の落差より大きくなることを確認してから計算する。

  6. 比速度の公式で、出力Pと有効落差Hのどちらに平方根・どちらに5/4乗を使うかを取り違える

    なぜ引っかかるNs=N×P^(1/2)/H^(5/4)という指数の異なる2つの項が同居する式のため、PとHのどちらにどの指数がつくかを丸暗記だけで済ませようとすると混同しやすい。

    見破り方『比速度は水車の形を表す指標で、単位は[m・kW]』という定義に立ち返り、Pには単純な平方根、Hにはより強く効く5/4乗がつく、という非対称な形をセットで覚え直す。

  7. 水圧管の流速・圧力をベルヌーイの定理で計算するとき、断面Aと断面Bの高さの違い(位置水頭)を計算に入れ忘れ、速度水頭と圧力水頭だけで済ませてしまう

    なぜ引っかかるベルヌーイの定理は圧力水頭・速度水頭・位置水頭の3項の合計が一定という式だが、水圧管は必ず高低差(落差)を伴って設置されているにもかかわらず、平らな配管の圧力計算のイメージにひきずられて位置水頭の項を見落としやすい。

    見破り方水圧管の問題では必ず断面図を思い浮かべ、2つの断面の間に落差(高さの差)があるかを確認する。落差がある場合は、その分の位置エネルギーの変化(ρg×落差)を必ず圧力の変化に加味してから計算する。

  8. サージタンクを『圧力変動を閉じ込めて防ぐ密閉構造』だと誤解する

    なぜ引っかかる水撃作用という言葉から『圧力を封じ込める頑丈な容器』というイメージを持ちやすく、水位の昇降で圧力を『逃がす』という開放構造の発想と逆に理解してしまう。

    見破り方サージタンクの目的は『圧力変動そのものをなくす』のではなく『水位の昇降という形に変換して吸収する』ことだと立ち返る。水位が自由に昇降できなければ機能しないため、大気に開放された構造であることを、密閉という言葉が出てきたら疑う目印にする。

  9. 流域面積[km²]・年間降水量[mm]の単位変換を行わずそのまま掛け算し、桁を大きく誤る

    なぜ引っかかるkm²とmmという日常的な単位のまま「流域面積×降水量×流出係数」を計算してしまい、体積の単位[m³]にそろえる変換(km²→m²は10⁶倍、mm→mは10⁻³倍)を省略しやすい。

    見破り方計算の最初に、流域面積をm²に、年間降水量をmに変換してから掛け算する、という順序を徹底する。単位をそろえた後の数値が『1年間に流域へ降った雨の総体積』を表しているという意味を確認してから次の計算に進む。

  10. 調速機と自動電圧調整器(AVR)を同じ「発電機を安定させる装置」として混同し、それぞれが制御している対象を取り違える

    なぜ引っかかるどちらも発電所の運転を安定させるための自動制御装置という点で似た文脈に登場するため、片方が担う量ともう片方が担う量を入れ替えて覚えてしまいやすい。

    見破り方「調速機は水車の回転速度=系統周波数を一定に保つ」「AVRは発電機の出力電圧の大きさを一定に保つ」という対応を、制御する物理量(速度か電圧か)で区別する。回転速度の話には調速機、電圧の大きさの話にはAVR、と対応させて考え直す。

参考文献・出典

理解度チェック(20問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、20問で確認しよう。 内訳は基本8問・応用8問・ひっかけ4問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 20 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 水力発電の出力はP=9.8QHη[kW]で求まる。Qは流量[m³/s]、Hは有効落差[m]、ηは水車効率×発電機効率の総合効率
  2. 9.8は重力加速度9.8m/s²と水の密度から導かれる係数で、水の位置エネルギーを電気出力に変換する橋渡し
  3. 計算に使う落差は必ず「有効落差」(総落差から導水路等の損失落差を差し引いたもの)
  4. 水車は落差と流量の組み合わせで使い分ける:高落差・小流量→ペルトン水車、中落差→フランシス水車、低落差・大流量→カプラン水車
  5. 水車には、水の圧力水頭をノズルで速度水頭に変換し、噴射した水をランナ(羽根車)に当てて回す衝動水車(ペルトン水車)と、圧力水頭を保ったままランナ内で反動力を利用する反動水車(フランシス水車・カプラン水車)がある。ガイドベーン(案内羽根)は開度によってランナへ流入する水の流量を変え、水車の出力を調整する部品。揚水発電所には、水車・発電機とポンプ・電動機をそれぞれ別の軸に置く別置式、同一軸上に水車・ポンプ・発電電動機を並べるタンデム式、1台の可逆式ポンプ水車と発電電動機を同一軸で兼用するポンプ水車式があり、国内で建設される揚水発電所の大半はポンプ水車式。水車発電機は低速回転のため大径・多極の突極形回転界磁形三相同期発電機が主流で、落差を有効に使うため水車を発電機の下方に直結する立軸形にすることも多い。調速機は水車の回転速度(=周波数)を一定に保つ装置、自動電圧調整器(AVR)は出力電圧の大きさを一定に保つ装置というように、両者の役割は明確に分かれている
  6. 河川の流量を多い順に並べた流況曲線には、豊水量・平水量・低水量・渇水量という代表的な流量があり、調整池式発電所では『1日に流れ込む水の総量=発電で使う水の総量』という水収支から、最大使用流量や必要な貯水容量を計算する
  7. 揚水発電所は、揚水時(ポンプ・電動機で水を上池へ汲み上げる)と発電時(水車・発電機で電気を作る)で使う落差が異なる。損失水頭の分だけ、揚水時は総落差より高い落差を電動機が押し上げる必要があり、発電時は総落差より低い落差しか水車で使えない
  8. 水車の比速度Ns=N×P^(1/2)/H^(5/4)(N:回転速度[min⁻¹]、P:出力[kW]、H:有効落差[m])は水車の形状を特徴づける指標で、同期発電機の回転速度Nは磁極数pと周波数fからN=120f/pで決まる。両者を組み合わせると、落差・出力・周波数の条件から使える磁極数(=水車の回転速度)を絞り込める
  9. 水圧管内をすき間なく水が満たして流れているとき、断面が変わっても単位時間に通過する体積(流量)は変わらない(連続の式 A1v1=A2v2)。この関係とベルヌーイの定理(圧力水頭・速度水頭・位置水頭の合計=全水頭が一定という法則)を組み合わせると、水圧管の途中にある断面ごとの流速・圧力を計算できる
  10. 発電所の負荷急変で水車の使用水量が急激に変わると、水圧管内の圧力が急上昇・急降下する水撃作用が起こる。水圧管が長いほど、水車案内羽根や入口弁の閉鎖時間が短いほど大きくなる。圧力水路と水圧管の接続箇所に設けるサージタンク(水圧調整用水槽)は、大気に開放された水槽内の水位の昇降でこの圧力変動を吸収する仕組みで、密閉構造ではない点に注意する
  11. 実測データがない地点でも、流域面積・年間降水量・流出係数の3つの数値から年間平均流量を概算でき(流域面積×年間降水量×流出係数÷年間秒数)、その流量と有効落差・総合効率からP=9.8QHηで出力を、さらに設備利用率を使えば年間発電電力量(定格出力×8760時間×設備利用率)を見積もれる
Xでシェア
打ち合わせを予約 見積依頼