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電力 ・ 7 / 16

送電線のたるみと弛度計算

読み終えると、こうなる

電柱や鉄塔の間でたわんで見える電線を見たとき、それが施工の甘さではなく計算された設計であることが分かるようになる

  • 径間・電線の単位重量・水平張力の3つの値から弛度をその場で計算でき、弛度が径間の2乗に比例する関係を踏まえて径間を変えたときの弛度の変化も暗算に近い速さで見積もれる
  • 弛度の公式に使う張力が、支持点の張力ではなく電線最下点の水平張力であることを説明できる。あわせて、電線を引き留める支持物(電柱・鉄塔)において、電線の水平張力を支線(ガイワイヤ)が受け止める仕組みを、力のつり合い(ベクトルの分解・合成)から計算できる
  • 気温の変化に伴う電線の伸縮から、線膨張係数を使って別の温度でのたるみを推定する考え方を説明できる
  • 微風振動・サブスパン振動・ギャロッピング・スリートジャンプという架空送電線の代表的な振動現象を、発生条件と対策の違いで区別して説明できる
考えてみよう

電柱と電柱の間、鉄塔と鉄塔の間に張られた電線は、よく見ると必ずわずかにたわんでいる。 真っ直ぐピンと張った方が、地表からの高さも稼げて安全に見えるのに、なぜあえてたるませて 張るのか。たるみを完全になくすことを目指してはいけないのだろうか。

このトピックを読み終えるころには、架空電線がたわんで見えるのを見て、それが施工の甘さ ではなく計算された設計であることが分かるようになっている。

種明かしは、電線には温度変化で伸び縮みする余裕が必要だという事情にある。 夏の高温時に電線が伸びて弛度が増えても地表との離隔を保てるように、そして冬の低温時に 電線が縮んで張力が高まりすぎても断線しないように、あらかじめ計算した分だけたるませて 張っておく。そのたるみの量を求めるのが「弛度計算」だ。

弛度の公式 — たるみは径間の2乗に比例する

支持物(電柱・鉄塔)の間隔を径間 SS、電線の単位長さあたりの荷重(自重や着氷雪・風圧荷重を 含めた合成荷重)を WW、電線最下点にかかる水平方向の張力を TT とすると、電線が最も 垂れ下がった位置(径間中央付近)でのたるみ、すなわち弛度 DD は次の近似式で求められる。

D=WS28TD = \frac{W S^2}{8T}

放物線に近い形でたるむ電線の形状を単純化した式だが、実務でも十分な精度で使われている。 ここで注目してほしいのは、分子に径間の2乗が入っていることだ。他の条件を変えずに 径間を2倍にすると、弛度はおよそ4倍に増える。径間が長い送電線ほど、たるみの管理が シビアになる理由はここにある。

例題

径間200m、電線の単位長さあたりの荷重20N/m、水平張力40000N(40kN)の電線がある。弛度はいくらか。

D=20×20028×40000=800000320000=2.5mD = \frac{20 \times 200^2}{8 \times 40000} = \frac{800000}{320000} = 2.5\text{m}
弛度の式は、径間Sが分子で2乗されている点だけ意識すればよい。径間が2倍ならS²は4倍、 径間が3倍ならS²は9倍——弛度もそれに比例して増えていく。「径間が伸びると弛度は 急激に増える」というこの感覚を持っておくと、選択肢を見ただけで単純な線形比例の 誤答を弾けるようになる。

電線の実際の長さは、径間よりわずかに長い

電線はたるんだ分だけ、径間の直線距離よりも実際には長い距離を張られていることになる。 この差(実長と径間の差)も、弛度から近似的に求められる。

LS+8D23SL \approx S + \frac{8D^2}{3S}

例題

径間100m、弛度2mの電線の場合、実長は径間よりどれだけ長いか。

ΔL=8×223×100=323000.107m10.7cm\Delta L = \frac{8 \times 2^2}{3 \times 100} = \frac{32}{300} \approx 0.107\text{m} \approx 10.7\text{cm}

数センチ〜十数センチの差だが、電線を発注する際の必要延長を見積もる場面や、電線メーカーが 定尺・ドラム巻きの長さを設計する場面では、この「径間より少し長い」という前提が 土台になっている。ケーブルの延線工事でドラムの残尺を管理する実務にも、同じ考え方が 生きている。

気温が変わると、たるみも変わる

弛度の公式 D=WS2/(8T)D = WS^2/(8T) は、ある1つの温度条件のもとでの静的な関係式だ。しかし実際の 架空電線は、夏と冬、昼と夜で気温が大きく変わる屋外に張られている。気温が変わると電線は 線膨張係数の分だけ伸び縮みし、実長が変わることで、弛度もそれにあわせて変化する。

ある温度での弛度 D1D_1 から、径間 SS を使って実長 L1S+8D12/(3S)L_1 \approx S + 8D_1^2/(3S) を求め、 そこに気温変化分の伸び(線膨張係数 α\alpha、温度差 ΔT\Delta T を使って ΔLαΔTS\Delta L \approx \alpha \Delta T S)を足し合わせれば、変化後の実長 L2=L1+ΔLL_2 = L_1 + \Delta L が 求まる。この L2L_2 を弛度の式に逆算して当てはめれば、変化後の弛度 D2D_2 を見積もれる。

D23S(L2S)8D_2 \approx \sqrt{\frac{3S(L_2 - S)}{8}}

例題

径間150m、電線温度20℃のときの弛度が3mだった電線がある。線膨張係数を1℃につき 1.2×1051.2\times10^{-5}として、電線温度が40℃に上昇したときの弛度はいくらか。

20℃時点の実長は L1=150+8×323×150=150.16L_1 = 150 + \dfrac{8\times3^2}{3\times150} = 150.16m。 温度が20℃上昇した分の伸びは ΔL=1.2×105×20×150=0.036\Delta L = 1.2\times10^{-5}\times20\times150 = 0.036m。 40℃時点の実長は L2=150.16+0.036=150.196L_2 = 150.16+0.036 = 150.196m。

D2=3×150×(150.196150)8=11.0253.32mD_2 = \sqrt{\frac{3\times150\times(150.196-150)}{8}} = \sqrt{11.025} \approx 3.32\text{m}

気温が20℃上がっただけで、弛度は3mから約3.32mへとわずかに増える。

「気温が上がる→張力が緩んでたるみが減る」という直感は逆だ。正しくは「気温が上がる→ 電線が物理的に伸びる→実長が長くなる→たるみが増える」という一直線の因果関係で考える。 逆に気温が下がれば電線は縮んで弛度は小さくなるが、その代わり張力が高まり、断線のリスクが 上がる。夏の高温時にたるみが増えても地表との離隔を保てるように、冬の低温時に張力が 増えすぎても断線しないように、あらかじめ弛度を計算して設計しておくのはこのためだ。

弛度の式に使う張力Tは、「どこの」張力か

ここが試験でもよく狙われるポイントだ。弛度の式の TT は、電線が最も垂れ下がった 最下点における水平方向の張力成分であり、電線全体にかかる張力の中では最小に近い値になる。

一方、支持物(電柱・鉄塔)への取り付け点では、電線の自重による鉛直方向の分力が 加わるため、実際にかかる張力は TT よりわずかに大きくなる。電線自体の強度や、支持物・ がいしの強度を設計するときは、この最下点の水平張力ではなく、より大きい支持点側の 張力(最大張力)を基準にする必要がある。「弛度の計算に使うT」と「強度設計に使うT」は、 似ているようで指している場所が違う、という点を押さえておきたい。

弛度は小さいほど良い、というものではない。弛度を小さくするには水平張力Tを大きくする 必要があるが、張力を上げすぎれば電線の許容強度に近づき、気温低下による収縮でさらに 張力が増したときに断線のリスクが高まる。弛度は「地表との離隔を確保するための下限」と 「電線の強度余裕を確保するための上限」に挟まれた設計値であり、単純に最小化を目指す 数値ではない。

支線の張力計算 — 電線の水平張力を、支持物はどう受け止めているか

弛度の計算は「電線1本がどれだけたわむか」を扱ってきたが、電線を引き留める側の支持物 (電柱・鉄塔)にも目を向けてみよう。電線には常に水平方向の張力がかかっており、支持物は その力に引っ張られて倒れないよう支えなければならない。この役目を担うのが支線 (ガイワイヤ)だ。

最も単純な引き留め柱を考える。電線が支持物の一方向だけに水平に張られており、その反対側に 支線が斜めに張られているとする。支持物の頂部では、電線の水平張力Tと、支線の張力T1の 水平方向の成分がつり合っている。支線が支持物(鉛直方向)となす角度をθとすると、支線の 水平方向の分力は T1sinθT_1\sin\theta と表せるので、つり合いの式は次のようになる。

T1sinθ=TT1=TsinθT_1 \sin\theta = T \quad \Longrightarrow \quad T_1 = \frac{T}{\sin\theta}

例題

電線の水平張力T=12kN、支線が支持物と30°の角度をなす場合、支線に生じる張力T1は、

T1=12sin30=120.5=24kNT_1 = \frac{12}{\sin 30^\circ} = \frac{12}{0.5} = 24\text{kN}
支線の張力計算でつまずくとしたら、角度θを「どこから測っているか」の取り違えだ。ここでは 支持物(鉛直方向)を基準にした角度として扱っており、支線の水平方向の分力が$T_1\sin\theta$に なる。図を描かずに公式だけを丸暗記すると、sinとcosを逆にしてしまいやすいので、必ず 「支持物・電線・支線が作る直角三角形」を思い浮かべてから式を立てる。

電線が1本だけとは限らない。方向の異なる複数の電線が同じ支持物に張られている場合は、 各電線の張力をベクトルとして図示し、ベクトル合成(平行四辺形の法則や、水平・鉛直 それぞれの成分ごとの足し算)で合力を求めたうえで、その合力とつり合うように支線の張力を 求める必要がある。方向の異なる力を単純に数値だけ足し合わせると、向きの違いが打ち消し合う 分を正しく反映できず、実際より過大な(あるいは過小な)支線張力を見積もってしまう。

支線の張力計算は「弛度=電線1本のたわみ」から一歩進んで、「複数の力がどう釣り合っているか」 を扱う設計計算だ。電線の本数・方向が増えるほど、支線が実際に受け止める力はベクトル合成の 結果として決まる、という発想の転換がポイントになる。

弛度計算だけでは語れない、もう一つの動き — 架空送電線の振動

弛度計算が扱ってきたのは、静止した状態での電線のたわみだった。しかし実際の架空送電線は、 風や氷雪という外力を受けて動くことがある。この振動には性質の異なる複数の現象があり、 名前も似ているため混同しやすい。

微風振動は、電線と直角方向に数m/s程度の弱い風を受けたとき、電線の後方に渦(カルマン渦)が 交互に生じ、その渦の力で電線が上下に細かく振動し続ける現象だ。氷雪の付着は前提にならず、 電線が軽いほど、径間が長いほど、張力が大きいほど発生しやすい。長期間続くと、 電線の支持点付近で金属疲労による断線事故につながることがあるため、振動エネルギーを吸収する ダンパ(重錘のついた制振装置)を電線に取り付けて対策する。

サブスパン振動は、微風振動と見た目が似ているが原因は異なる、多導体特有の振動現象だ。 多導体線路では、素導体どうしをスペーサで一定間隔に保っているが、束ねた導体全体が風を 受けると、風上側の素導体が起こした後流(風の乱れ)が風下側の素導体に当たり、風下側の 素導体だけが振動することがある。スペーサとスペーサの間の区間(サブスパン)で起きるため この名がある。単導体の背後に生じるカルマン渦が原因の微風振動とは発生の仕組みそのものが 異なり、単導体には起こりえない現象だ。対策には、素導体間の間隔やスペーサの配置を工夫し、 後流の影響を受けにくくする方法がとられる。

ギャロッピングは、微風振動とは発生条件がまったく異なる。多導体(複数本を束ねた)の 架空送電線に、氷雪が非対称に付着して電線の断面が翼のような形に変わった状態で、風速数〜 20m/s程度のやや強い風を受けたときに生じる、大振幅・低周波数の振動だ。風速が上がるほど 激しくなる傾向があり、電線どうしの接触(相間短絡)や、支持物への機械的な負担が問題になる。 多導体線路の素導体間にスペーサを取り付け、氷雪の非対称付着そのものを起きにくくすることが 主な対策になる。

スリートジャンプは、風とは無関係に起きる別の現象だ。電線に付着していた氷雪が、気温上昇 などで一気に脱落すると、電線は重さを急に失った反動で跳ね上がる。跳ね上がった電線が上部の 電線と接触して短絡事故を起こす危険があるため、電線相互の垂直間隔(離隔)をあらかじめ 広めに設計しておくことが対策になる。

4つの振動現象は「何がきっかけで揺れているか」で区別すると混同しない。微風振動は氷雪と無関係な 弱い風による単導体の共振、サブスパン振動は多導体特有の後流干渉による振動、ギャロッピングは 氷雪の非対称付着+やや強い風による大振幅振動、スリートジャンプは氷雪の**落下**という一瞬の 出来事による跳ね上がり——ときっかけを軸に整理すれば、名前が似ていても取り違えにくい。 微風振動とサブスパン振動は特に見た目が似ているが、「単導体でも起こるか(微風振動)、多導体 でしか起こらないか(サブスパン振動)」という一点で区別できる。

なぜ弛度計算が実務に直結するのか

電材商社の実務では、架空電線そのものを扱う場面は限られるかもしれないが、弛度計算の 考え方は身近なところにも顔を出す。ケーブルラックやケーブルトレイの上で電線・ケーブルを 延線する工事でも、支持点の間隔(径間に相当)を空けすぎるとケーブル自身の自重でたわみが 大きくなり、許容曲げ半径やケーブルへの機械的ストレスの観点から問題になることがある。 「支持間隔を空けるほど、たわみは急激に増える」という弛度計算の感覚は、送電線に限らず、 ケーブルの支持設計全般に通じる考え方だ。

なお、架空電線と地表・建造物との離隔距離には、電気設備技術基準による具体的な基準が 定められている。弛度が大きくなりすぎるとこの離隔を割り込む恐れがあるため、実際の設計では 必ず基準値を確認する必要がある。具体的な数値は最新の電気設備技術基準を確認すること。

冒頭の「なぜ電線はあえてたるませて張るのか」——答え合わせは理解度チェックの最後の 問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 径間Sを2倍にすると弛度も2倍になる、と線形に考えてしまう

    なぜ引っかかる弛度の公式 D = WS²/(8T) の分子にはSの2乗が入っている。この2乗の項を見落とし、他の物理量と同じように「Sが2倍なら結果も2倍」という直感で計算してしまう。

    見破り方式を分解し、分子のS²を意識する。径間が2倍ならS²は4倍になるため、弛度もおよそ4倍になる。極端な値(径間を非常に長くとる)で検算し、弛度が急激に増えていくことを確認するとよい。

  2. 弛度の式に使う張力Tを、支持点(電柱・鉄塔)にかかる実際の張力と同じものだと思い込む

    なぜ引っかかる弛度の公式のTは、電線がもっとも垂れ下がった最下点における水平方向の張力成分であり、電線にかかる張力の中では最小に近い値。支持点では電線の自重による鉛直分力が加わるため、実際の張力はTよりわずかに大きくなるが、この違いを意識せずに同じ値として扱ってしまう。

    見破り方「弛度の式のTはどこの張力か」を毎回言葉で確認する。答えは常に「電線最下点の水平張力」。支持物や電線自体の強度設計をするときは、この最下点の水平張力ではなく、より大きい支持点の張力(最大張力)を基準にする、という役割の違いを覚えておく。

  3. 弛度は小さければ小さいほど望ましいと単純に考えてしまう

    なぜ引っかかる弛度が小さいほど地表との離隔は確保しやすく、一見「安全」に思える。だが弛度を小さくするには水平張力Tを大きくする必要があり、張力を上げすぎれば電線の許容強度に近づき、気温低下による収縮でさらに張力が増したときに断線のリスクが高まる。弛度は単独で最小化する対象ではなく、離隔確保と強度余裕のバランスで決める設計値だという視点が抜け落ちやすい。

    見破り方弛度を「小さいほど良い数値」ではなく「離隔確保のための下限」と「強度余裕のための上限」に挟まれた設計値として捉える。選択肢に「弛度は限りなく小さくするのが最適」とあれば、まずトレードオフの見落としを疑う。

  4. 気温が上がると弛度は小さくなる、と向きを逆に考えてしまう

    なぜ引っかかる「気温が上がる→張力が緩む→たるみが減る」という直感的なイメージを持ちやすいが、実際には電線は温度上昇で物理的に伸びるため、実長が長くなった分だけたるみは増える方向に働く。

    見破り方「気温が上がる→電線が伸びる→実長が長くなる→たるみが増える」という一直線の因果関係で考え直す。逆に気温が下がると電線は縮んで実長が短くなり、たるみは小さくなる代わりに、電線を引っ張る張力が増して断線のリスクが高まる。

  5. 微風振動とギャロッピングを、どちらも「風で電線が揺れる現象」とひとまとめにし、発生条件の違いを見落とす

    なぜ引っかかるどちらも架空送電線が風を受けて振動するという現象面の見た目が似ているため、風速の大きさや氷雪付着の有無といった発生条件の違いが曖昧になりやすい。

    見破り方微風振動は氷雪の付着がなくても数m/s程度の弱い風だけで生じる、電線自体の共振現象だと覚える。ギャロッピングは多導体線路に氷雪が非対称に付着した状態で、より強い風(数〜20m/s程度)を受けたときに生じる大振幅・低周波数の振動で、氷雪付着という前提条件が必要な点が微風振動と決定的に違う。

  6. サブスパン振動を微風振動と同一視し、原因の違いを見落とす

    なぜ引っかかるどちらも『弱い風で電線が振動する』という見た目が似ているため混同しやすいが、原因はまったく別物である。

    見破り方微風振動は単導体の背後にできるカルマン渦が原因、サブスパン振動は多導体特有の、前方の素導体が起こす後流が後方の素導体に当たることが原因——多導体でなければ起こりえない現象だという点が、サブスパン振動を見分ける最大の手がかりになる。

  7. 支線の張力を求める式で、角度θにsinを使うかcosを使うかを取り違える、あるいはθを鉛直となす角と水平となす角のどちらで測っているかを混同する

    なぜ引っかかる三角関数を使う力のつり合いの問題では、角度をどこから測るか(鉛直基準か水平基準か)によってsinとcosが入れ替わるため、図を描かずに公式だけを丸暗記すると符号や関数を取り違えやすい。

    見破り方支線が支持物(鉄塔・電柱)となす角度θを、支持物(鉛直方向)を基準にした角度だと決めて図を描き直す。支線の水平方向の分力はT1sinθになるので、これが電線の水平張力Tとつり合う式T1sinθ=Tから逆算する、という手順を毎回同じ順序で踏む。

  8. 電線が複数本・複数方向に張られている場合に、各電線の張力をそのまま足し算(スカラー和)して支線の負担を求めてしまう

    なぜ引っかかる『支線が受け止める力の大きさ』を求めようとするとき、方向の異なる力を単純に数値だけ足し合わせてしまいやすい。

    見破り方力は大きさと向きを持つベクトルであることに立ち返る。電線が複数の方向に張られている場合は、各電線の張力をベクトルとして図示し、ベクトル合成(平行四辺形の法則や成分ごとの足し算)で合力を求めてから、その合力を支線が受け止めると考える。単純な数値の足し算では、向きの違いが打ち消し合う分を正しく反映できない。

参考文献・出典

理解度チェック(13問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、13問で確認しよう。 内訳は基本5問・応用3問・ひっかけ5問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 13 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 弛度の公式: D = W S² / (8T)(W:電線の単位長さあたりの荷重、S:径間、T:電線最下点の水平張力)
  2. 弛度は径間Sの2乗に比例する。径間を2倍にすると、弛度はおよそ4倍になる(単純な比例ではない)
  3. 弛度の式に使う張力Tは電線最下点の水平張力成分であり、支持点(電柱・鉄塔側)にかかる実際の張力はこれよりわずかに大きい
  4. 電線を引き留める支持物(電柱・鉄塔)は、電線の張力に引っ張られて倒れないよう、反対側に支線(ガイワイヤ)を張って支えている。支線が支持物となす角度をθとすると、支持物の頂部での水平方向の力のつり合いから、支線に生じる張力T1は、電線の水平張力Tを用いてT1=T/sinθで求まる。電線が複数本・複数方向に張られている場合は、各電線の張力をベクトルとして合成してから支線の張力を求める必要がある
  5. 弛度は小さいほど良いわけではなく、地表との離隔確保と、電線の強度・温度変化に対する伸縮余裕とのトレードオフで決める
  6. 気温が上がると電線は線膨張係数の分だけわずかに伸び、実長が長くなった分だけ弛度も大きくなる。逆に気温が下がると電線は縮み、弛度は小さくなる代わりに張力が増して断線のリスクが高まる
  7. 架空電線には弛度計算とは別に、風による振動の問題もある。数m/s程度の弱い風を電線が直角方向に受けると、電線の背後に渦(カルマン渦)が生じて電線が上下に振動する微風振動が起きやすく、電線が軽いほど・径間が長いほど・張力が大きいほど発生しやすい。多導体線路に氷雪が非対称に付着した状態で風速数〜20m/s程度の風を受けると、大振幅・低周波数のギャロッピングが起きることがあり、これは電線自体の共振である微風振動とは発生条件も揺れ方も異なる。電線に付着した氷雪が落下する反動で電線が跳ね上がるスリートジャンプは、風とは無関係に起きる別の現象として区別する
  8. 多導体線路では、微風振動・ギャロッピングとは別に、前方の素導体が起こす後流が後方の素導体に当たって振動するサブスパン振動が起こることがある。スペーサとスペーサの間の区間(サブスパン)で発生し、単導体には起こりえない多導体特有の現象である点が、カルマン渦が原因の微風振動との違い
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