キュービクル(受変電設備)を新設する工事が終わった。配線もつながり、見た目には いつでも電気を流せそうだ。だが法令上、この設備は「工事が終わった瞬間」に 使い始めてよいわけではない。何を確認し終えて初めて、使用を開始できるのか。
逆に、老朽化した設備の使用をやめるとき、ブレーカーを落として電源を切れば それで法令上の義務からも解放されるのだろうか。
このトピックを読み終えるころには、設備が生まれてから役目を終えるまでの 手続きの流れを、法令の言葉で説明できるようになっている。
種明かしは、電気事業法が設備の「生まれるとき」と「役目を終えるとき」のそれぞれに、 別々の手続きを用意しているという構造にある。
新設・変更工事 — 届け出て、待って、確認してから使う
一定規模以上の事業用電気工作物を新たに設置したり、変更する工事を行おうとする者は、 その工事の計画を主務大臣(経済産業大臣)に届け出なければならない(電気事業法48条)。 そしてこの届出には「待機期間」がある。届出が受理された日から30日を経過した後 でなければ、その届出に係る工事を開始してはならない。国が内容を確認する猶予期間が 置かれている、と理解すればよい。
使用開始前の確認 — 使用前自主検査と使用前自己確認
工事が終わったからといって、そのまま使い始めてよいわけでもない。工事計画の届出を して設置・変更工事をした事業用電気工作物を設置する者は、使用開始前に自ら自主検査を 行い、次の2点を確認し、結果を記録・保存しなければならない(使用前自主検査、 電気事業法51条)。
- 届出をした工事の計画どおりに施工されたものであること
- 技術基準に適合するものであること
さらに、公共の安全確保上特に重要なものとして主務省令で定める事業用電気工作物には、 使用前自主検査に加えて、より重い確認義務が課される。これが使用前自己確認 (電気事業法51条の2)だ。設置者は、使用を開始しようとするとき、その事業用電気工作物が 技術基準に適合することについて、自ら確認しなければならない。
使用前自主検査は「対象になる規模」と「検査体制の審査」の2段構え
ここまでは、使用前自主検査を「何を確認するか」という中身の話として見てきた。だが実務では、その手前にもう2つ、見落としやすい論点がある。
1つ目は、使用前自主検査の対象になるかどうかは、工事計画の届出をしたすべての事業用電気工作物に一律に課されるわけではない、という点だ。対象は一定規模以上のものに限られ、需要設備であれば受電容量がおおむね2,000kW以上というのが実務上の目安になる(発電設備など設備の種類ごとに規模の基準は異なるため、具体的な数値は最新の電気事業法施行規則で確認すること)。小規模な需要設備の工事は、工事計画の届出自体は必要でも、使用前自主検査までは求められないことがある。
2つ目が、検査の「体制」に対する審査だ。使用前自主検査を行う事業用電気工作物を設置する者は、技術基準適合・工事計画どおりの施工という検査の中身を自ら確認するだけでなく、その検査をどのような組織で、どんな方法・工程管理のもとで実施するのかという「体制」についても、主務大臣(原子力発電関係を除く)が行う審査を受けなければならない。この審査は、当該事業用電気工作物の安全管理を旨として行われる。
設備の終わり方 — 「休止」と「廃止」は別物
設備の使用をやめるとき、法令上の扱いは2つに分かれる。
休止は、ブレーカーを落とす、開閉器を開放するなどして電気の使用を止めただけの 状態を指す。電気工作物として物理的に存在し続けているため、技術基準適合維持義務・ 保安規程・主任技術者の選任義務は、休止中も継続する。
廃止は、これとは扱いが異なる。引込線を物理的に撤去するなどして、電気工作物として 二度と使用しない状態にしたうえで、その旨を所轄の産業保安監督部長へ届け出て初めて 「廃止」となり、これらの義務が消滅する(電気関係報告規則5条2項)。
電材商社の実務で、この知識がどう効いてくる
設備更新や増設の相談を受けたとき、「工事計画の届出が必要な規模かどうか」「使用前 自主検査・自己確認の対象になるかどうか」を早い段階で把握できていれば、工事スケジュールに 30日の待機期間や検査の工程を組み込んだ、現実的な提案ができる。また、老朽設備の 更新・撤去の相談では、「休止のまま放置されている設備」と「正式に廃止された設備」を 区別する視点を持っていることが、義務の所在をめぐる思わぬトラブルを未然に防ぐことにも つながる。
キュービクルの新設工事が終わったあと、何を確認し終えて初めて使用を開始できるのか。 答え合わせは、理解度チェックの最後の問題でしてみよう。