在庫確認・見積は今すぐ フォームで依頼する 24時間受付 / 電話は平日 9:00〜17:00 03-3833-6431
機械 ・ 4 / 16

誘導電動機のトルク特性と始動法

読み終えると、こうなる

制御盤にスターデルタ始動器や二次抵抗始動器が組まれているのを見たとき、「なぜこの部品構成が必要なのか」を電流とトルクの両面から説明できるようになる

  • 同期速度・すべりの式から誘導電動機の回転速度を計算でき、始動電流の大きさが遮断器・電磁開閉器・熱動継電器の選定にどう影響するかを説明できる
  • トルク-すべり曲線の形(最大トルクの位置と、始動点・運転点の関係)を図に描いて説明でき、電動機と負荷のトルク-速度曲線の交点が安定な運転点か不安定な運転点かも判定できる
  • 全電圧始動・スターデルタ始動・二次抵抗始動・インバータ始動を、電流とトルクへの影響で比較して使い分けを判断でき、二重かご形・深溝かご形誘導電動機が表皮効果を利用して始動トルクと運転効率を両立させる仕組みや、回転子導体の材料変更が二次抵抗・効率に与える影響も説明できる
  • 極数変換制御・二次抵抗制御・インバータ制御(VVVF)という誘導電動機の速度制御方式を比較して説明でき、CVCF電源とVVVF電源の違いも区別できる
考えてみよう

制御盤の中に、誘導電動機の始動用としてスターデルタ始動器や、巻線形電動機用の 二次抵抗始動器が組まれているのを見たことがあるはずだ。なぜ、電源にただつなぐだけの 「全電圧始動」ではなく、わざわざ複雑な結線切り替えや抵抗器を用意する必要があるのか。

電動機を電源に直接つないだ瞬間、いったい何が起きているのか。 このトピックを読み終えるころには、始動法ごとに何が変わり、何を犠牲にしているのかを、 電流とトルクの両面から説明できるようになっている。

種明かしは、誘導電動機が止まっている瞬間(始動の瞬間)に流れる電流とトルクの関係、 すなわちトルク-すべり曲線の形にある。

同期速度とすべり — 電動機の「基準速度」と「遅れ」

誘導電動機の回転磁界の速さ(同期速度)は、電源周波数と極数だけで決まる。

Ns=120fpN_s = \frac{120f}{p}

ff は電源周波数[Hz]、pp は極数。誘導電動機の回転子は、この同期速度より必ずわずかに遅れて 回る。この遅れの割合をすべり ss という。

s=NsNNs,N=Ns(1s)s = \frac{N_s - N}{N_s}, \quad N = N_s(1-s)

例題

4極の三相誘導電動機を60Hzの電源で運転すると、同期速度は Ns=120×60/4=1800N_s = 120\times60/4 = 1800rpm。すべり5%で運転しているなら、実際の回転速度は N=1800×(10.05)=1710N = 1800\times(1-0.05) = 1710rpm となる。

トルク-すべり曲線 — なぜ始動の瞬間が一番苦しいのか

誘導電動機のトルクは、すべりに対して単純な比例関係ではなく、山型の曲線を描く。

  • すべり s=0s=0(同期速度で回っている状態)では、トルクはゼロ
  • すべりが大きくなるにつれてトルクは増加し、あるすべり sms_m で最大値(停動トルク、最大トルク)を迎える
  • そこからさらにすべりが大きくなると、トルクはむしろ減少していく
  • s=1s=1(回転子が完全に静止している始動の瞬間)のトルクが、始動トルクである

最大トルクが生じるすべり sms_m は、二次抵抗 r2r_2 と二次リアクタンス x2x_2 の比で決まる。

sm=r2x2s_m = \frac{r_2}{x_2}
ここで押さえておきたいのは、**最大トルクの値そのものは $r_2$ を変えても変化しない**という点だ。 $r_2$ を大きくすると変わるのは、あくまで「最大トルクが生じるすべりの位置」だけ。 山の高さは同じまま、山がすべり1(始動点)側にスライドしていくイメージを持つと、 このあとの二次抵抗始動の効果がすんなり理解できる。

通常の運転範囲(定格近く)は、この曲線のうち同期速度に近い小さなすべりの領域にあたる。 一方、始動の瞬間(s=1s=1)は曲線の反対側の端であり、多くの電動機では最大トルクの山からは 外れた、比較的トルクの出にくい位置にある。にもかかわらず電流だけは非常に大きい—— これが誘導電動機の始動が難しい理由である。

始動法の使い分け — 電流を抑えるか、トルクを稼ぐか

全電圧始動(直入れ始動)

電源電圧をそのまま電動機に加える、もっとも単純な始動法。構成が単純な分、 目安として定格電流の5〜7倍程度という大きな始動電流が流れる。小容量の電動機や、 配電系統・電源設備に余裕がある場合に限って使われる。

スターデルタ始動

かご形誘導電動機の固定子巻線を、始動時だけスター(Y)結線にし、電圧を1/√3倍に落として 始動する方法。運転速度に近づいたところでデルタ(Δ)結線に切り替える。

始動電流13×直入れ始動電流,始動トルク13×直入れ始動トルク\text{始動電流} \approx \frac{1}{3}\times\text{直入れ始動電流}, \quad \text{始動トルク} \approx \frac{1}{3}\times\text{直入れ始動トルク}

電圧を落とせば電流もトルクも下がる——このトレードオフを理解した上で、 負荷側が始動時に大きなトルクを必要としない用途(ポンプ・送風機など)に使われる。

結線を変えて始動電流を見積もる — Δでの拘束試験結果をYの始動電流に変換する

現場や工場試験では、電動機の巻線をΔ結線のまま拘束試験(回転子を固定した状態で 低い電圧を加え、始動時に相当する状態を測定する試験)を行い、線間電圧V1V_1・線電流I1I_1を 得ることがある。この結果から、同じ電動機をY結線に組み替えて、別の電源電圧V2V_2で 始動したときの始動電流を計算で求められる。

考え方は2段階だ。

  1. Δ結線での相インピーダンスZを求める。Δ結線では相電圧=線間電圧V1V_1、 相電流=線電流の1/√3倍(線電流I1I_1=√3×相電流)なので、
Z=V1I1/3=3V1I1Z = \frac{V_1}{I_1/\sqrt3} = \frac{\sqrt3 V_1}{I_1}
  1. Y結線に組み替えて電源電圧V2V_2をかけたときの始動電流(Y結線では線電流=相電流)を、 相電圧V2/3V_2/\sqrt3をZで割って求める。
Istart=V2/3Z=V2/33V1/I1=V2×I13×V1I_{\text{start}} = \frac{V_2/\sqrt3}{Z} = \frac{V_2/\sqrt3}{\sqrt3V_1/I_1} = \frac{V_2 \times I_1}{3 \times V_1}

例題(自作の数値例)

Δ結線のまま拘束試験を行ったところ、線間電圧33.0V、線電流8.00Aが得られた。 この電動機をY結線に切り替え、200Vの三相電源に接続して始動するときの始動電流を求める。

Istart=200×8.003×33.0=16009916.2AI_{\text{start}} = \frac{200\times8.00}{3\times33.0} = \frac{1600}{99} \approx 16.2\text{A}
Δ→Y変換で見落としやすいのは、電圧の変換(1/√3倍)と、結線変更によるインピーダンスの 見え方の変化(3倍)が同時に効いてくる点だ。もし電源電圧が試験時の線間電圧と同じ ($V_2=V_1$)だったとすれば、$I_{\text{start}}=I_1/3$ となる——これは、上で見た スターデルタ始動で始動電流が約1/3に下がるのと**まったく同じ関係**になっている。 「結線をΔからYへ変えることそのものが、電流を1/3に落とす効果を持つ」と対応づけて 覚えておくと、拘束試験の換算計算でも見通しが立てやすい。

二重かご形・深溝かご形(かご形機自身が持つ始動トルク改善の工夫)

巻線形誘導電動機の二次抵抗始動は、外部から抵抗器を挿入するという「人の手による」 工夫だった。これに対し、かご形誘導電動機の中にも、回転子導体の形状だけで 同じような効果を自動的に得る工夫がある。

  • 二重かご形誘導電動機:回転子スロットに、入口に近い高抵抗の外側導体と、 内部の低抵抗の内側導体という2層の導体を持つ。始動時(すべりが大きく、 回転子側の電流の周波数が電源周波数に近いほど高い)は、表皮効果によって 電流が外側の高抵抗導体に集中し、大きな始動トルクを生む。定格運転に近づき すべりが小さくなる(回転子側の周波数が下がる)と表皮効果が弱まり、電流は 内側の低抵抗導体にも流れるようになるため、効率よく運転できる。
  • 深溝かご形誘導電動機:2層に分けず、幅が狭く深いスロットの導体1本で 同じ効果をねらう。始動時は表皮効果によって導体の実効的な断面積が小さくなり (=実効抵抗が上がり)大きな始動トルクを生み、定格運転時は表皮効果が弱まって 実効抵抗が下がり、効率よく運転できる。
どちらも「始動時は大きな二次抵抗、運転時は小さな二次抵抗」という、二次抵抗始動と 似た結果を生む。だが決め手はまったく違う——巻線形の二次抵抗始動は外部抵抗器という 人為的な操作、二重かご形・深溝かご形は回転子導体の構造と**表皮効果**という物理現象 だけで、すべりに応じて実効的な二次抵抗が自動的に変化する。外部からの操作が一切不要な 点が、これらのかご形機ならではの工夫だ。

もう一つ、かご形誘導電動機の始動特性は、回転子導体の材料によっても変わる。 回転子導体を銅から、電気抵抗率の高い銅合金に変更すると、二次抵抗r2r_2の値が 増大する。この結果、始動トルクは大きくなりやすい一方、定格負荷時は二次入力のうち 二次銅損として失われる割合(すべりssそのもの、というより二次抵抗が大きい分だけ すべりが増えて損失が増える方向)が増えるため、定格負荷時の効率はむしろ低下する。 始動特性の改善と運転効率は、二次抵抗を巡って表裏一体のトレードオフにある。

始動補償器(リアクトル始動・オートトランス始動)

始動時だけ電動機の手前にリアクトルやオートトランス(単巻変圧器)を挿入し、 電動機にかかる電圧を一時的に下げて始動電流を抑える方法。スターデルタ始動より 電圧の下げ幅を細かく調整できる。

二次抵抗始動(巻線形誘導電動機専用)

回転子側の巻線をスリップリングで外部に引き出せる巻線形誘導電動機だけに使える方法。 外部抵抗を回転子回路に挿入することで r2r_2 を大きくし、最大トルクの位置を始動点 (すべり1)側へ寄せる。これにより、電流を大きく増やさずに始動トルクを稼ぐことができる。 負荷側が始動時に大きなトルクを必要とする用途(クレーン、大型のポンプ・コンプレッサ) に向く。

インバータ始動(VVVF始動)

インバータで周波数と電圧を低い値から徐々に上げていく方法。始動電流をなだらかに抑えながら、 必要なトルクを確保しやすく、現在はコストが許せば最も柔軟な始動法として広く使われている。

始動法の選び方は、結局のところ「電流をどこまで抑えたいか」と「始動トルクをどこまで 確保したいか」のバランスで決まる。全電圧始動は両方妥協しない代わりに電流が最大、 スターデルタは両方を1/3に妥協、二次抵抗始動は巻線形限定で電流を抑えつつトルクを稼ぐ、 インバータ始動は両方を高い自由度で調整できる——という位置づけで整理すると迷わない。

誘導電動機の速度制御 — 始動法とは別の切り口

ここまで見てきた始動法は「動き出す一瞬」をどう乗り切るかの話だった。これとは別に、 運転中の回転速度そのものを変えたい(連続的に、あるいは段階的に)という場面もある。 誘導電動機の速度制御は、同期速度の式にどの変数を操作するかで、いくつかの方式に分かれる。

Ns=120fpN_s = \frac{120f}{p}

極数変換制御 — 段階的にしか変えられない代わりに効率がよい

固定子巻線の結線を切り替えて、極数ppそのものを2段階(例えば4極↔8極)などに切り替える方式。 運転中の効率は元の電動機の特性のままなので良好だが、ppは整数の組合せでしか選べないため、 速度は「連続的」ではなく「段階的」にしか変えられない。

二次抵抗制御 — 巻線形限定で、比例推移を使って連続的に変える

前節で見た二次抵抗始動と同じ仕組み(巻線形誘導電動機の二次側に外部抵抗を挿入する)を、 始動時だけでなく運転中の速度制御にも応用したものが二次抵抗制御だ。二次抵抗r2r_2を 大きくするほど、トルク-すべり曲線の山(最大トルクの位置)がすべりの大きい側へ寄っていく ため、同じ負荷トルクでもより大きなすべり(=より低い回転速度)で釣り合うようになる。 外部抵抗の値を連続的に変えられるので速度も連続的に変わるが、安定に運転できる速度範囲を 広げようと二次抵抗を大きくとるほど、定格負荷時の二次銅損(すべりに比例する損失)が 増え、運転効率はかえって悪化する。

インバータ制御(VVVF)— 周波数そのものを動かして同期速度を変える

電源周波数ffを変えれば、同期速度NsN_sそのものを動かせる。パワーエレクトロニクスの トピックで見たとおり、周波数だけを変えて電圧を一定に保つと磁束が過大・過小になるため、 電圧も周波数に比例させて一緒に変える「V/f一定制御」を行う。この、出力の電圧・周波数を どちらも自在に変えられる方式をVVVF(Variable Voltage Variable Frequency)と呼ぶ。

これに対して、商用電源のように電圧・周波数がどちらもほぼ一定に保たれている電源は CVCF(Constant Voltage Constant Frequency:定電圧定周波数)電源と呼ばれる。「電圧も 周波数も変わらない電源」と「電圧も周波数も自在に変えられる電源」という、対になる 2つの略語として区別しておきたい。

3つの速度制御方式は、同期速度の式Ns=120f/pのどの文字を動かしているかで整理すると 取り違えにくい。極数変換制御はpを(段階的に)、二次抵抗制御は式には直接出てこない すべりsを比例推移で(連続的に、ただし巻線形限定で)、インバータ制御はfを(連続的に) それぞれ動かしている。「段階的か連続的か」「効率は良いか悪化するか」「かご形でも 使えるか、巻線形限定か」という3つの軸で比較すると、混同しにくい。

電動機と負荷のトルク-速度曲線 — 交わっていれば安定とは限らない

始動が終わったあとの定常運転でも、電動機のトルク曲線だけを見ていては足りない。 実際に何回転で運転し続けるかは、電動機のトルク曲線と、負荷のトルク曲線が交わる点 (動作点)で決まる。ここで注意したいのは、交わっていれば必ず安定に運転できるとは 限らないという点だ。

動作点が安定であるためには、その速度からわずかにずれたとき、自動的に元の速度へ 戻ろうとする力が働く必要がある。

  • 速度が動作点よりわずかに上がったとき、電動機トルクが負荷トルクを下回れば (減速方向の力が働けば)、速度は元に戻ろうとする。
  • 速度が動作点よりわずかに下がったとき、電動機トルクが負荷トルクを上回れば (加速方向の力が働けば)、速度は元に戻ろうとする。

この2条件がそろっている交点だけが安定な運転点であり、そろっていない交点は 不安定(わずかなずれがどんどん拡大していく)とみなされる。

「トルクが釣り合っている=安定」と早合点しないこと。釣り合いには、速度がずれたときに それを打ち消す向きの力が働く『復元力のある釣り合い』と、ずれがさらに拡大していく 『崩れやすい釣り合い』の両方がありうる。交点を見たら、その周辺で電動機トルクと 負荷トルクの大小関係がどちらへ動くかを、必ず確認する癖をつけたい。

安定な組み合わせの例

  • 直流分巻電動機と送風機負荷:分巻電動機は速度が上がってもトルクがほぼ一定 (わずかに減少する程度)なのに対し、送風機のトルクは速度の上昇とともに増大する。 低速側では電動機トルクが負荷トルクを上回り加速し、高速側では負荷トルクが電動機 トルクを上回り減速するため、交点は安定になる。
  • 二次抵抗を大きくした巻線形誘導電動機と、速度とともにトルクが増える負荷: 二次抵抗を大きくすると、始動点付近から速度上昇とともにトルクが減少していく領域が 広がる。この領域を、速度とともにトルクが増える負荷と組み合わせると、同じ理屈で 安定な交点ができる。

2つの交点が生じる例 — 山型のトルク曲線と定トルク負荷

かご形誘導電動機のように山型のトルク-速度曲線を持つ電動機を、回転速度によらず トルクがほぼ一定の定トルク負荷と組み合わせると、電動機トルク曲線と負荷トルク曲線が 2点で交わることがある。

  • 最大トルクより低速側(速度上昇とともにトルクが増加する領域)での交点: 速度が上がると電動機トルクがさらに負荷トルクを上回ってしまい、加速し続ける——不安定
  • 最大トルクを超えた高速側(速度上昇とともにトルクが減少する領域)での交点: 速度が上がると電動機トルクが負荷トルクを下回り、減速方向に戻る——安定
同じ2本の曲線から生じる2つの交点でも、安定・不安定は交点ごとに分かれる。「山の登り坂 (低速側)の交点は不安定になりやすく、山を越えた下り坂(高速側)の交点は安定になりやすい」 というイメージを持っておくと、加速時と減速時でどちらの動作点に落ち着くかを判断しやすくなる。

実務との接続 — 始動電流が制御盤の部品選定を左右する

始動法の違いは、制御盤に組み込む機器の選定に直結する。全電圧始動を選ぶ場合、 配線用遮断器・電磁接触器・熱動継電器(サーマルリレー)はいずれも、その大きな始動電流に 瞬間的に耐えられる(あるいは始動電流では誤動作しない)ものを選ぶ必要がある。 スターデルタ始動器や二次抵抗始動器が制御盤に組まれているのは、単に電動機を回すためだけでなく、 上流の遮断器やケーブルサイズを過大にしないための、電流を抑える工夫でもある。

冒頭の制御盤で見た始動器の中身——電流とトルクをどう配分していたか、 答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 二次抵抗始動で始動トルクが増える理由を「最大トルク自体が大きくなるから」と誤解する

    なぜ引っかかる外部抵抗を入れると始動トルクが実際に増えるため、最大トルクの値そのものが底上げされたと考えがちだが、増えるのはトルクの大きさではなくトルクが最大になる「位置(すべり)」である。

    見破り方トルク-すべり曲線を思い浮かべ、二次抵抗を変えても山の高さ(最大トルクの値)は同じで、山の位置だけがすべり1(始動点)側にスライドする、という形で覚える。

  2. スターデルタ始動の効果を、電流だけが1/3になり、トルクは変わらないと考えてしまう

    なぜ引っかかる始動電流を減らすことが目的の始動法だという印象が強く、トルクへの影響(電圧の2乗で効いてくること)が抜け落ちやすい。

    見破り方トルクは電圧の2乗に比例するという関係を先に思い出す。電圧が1/√3倍になれば、トルクは (1/√3)^2 = 1/3 倍になる。電流を減らす始動法は、同時にトルクも犠牲にしていることを必ずセットで考える。

  3. 巻線形誘導電動機専用の始動法(二次抵抗始動)を、かご形誘導電動機にも使えると誤認する

    なぜ引っかかる二次抵抗始動は、回転子側(二次側)の巻線をスリップリングで外部に引き出せる巻線形誘導電動機だからこそ成立する方法である。かご形誘導電動機は回転子側の巻線が短絡されたバー構造で、外部から抵抗を挿入する経路がない。

    見破り方始動法の話が出たら、まず対象がかご形か巻線形かを確認する。二次抵抗始動・二次インピーダンス制御は巻線形限定、スターデルタ・全電圧・インバータ始動はかご形にも使える、という対応を先に整理する。

  4. 電動機トルク曲線と負荷トルク曲線の交点であれば、どの交点も一様に安定な運転点だと思い込む

    なぜ引っかかる『交わっている=トルクが釣り合っている』という状態だけを見ると、その釣り合いが速度のわずかな変化に対して自己修正的(安定)か、発散的(不安定)かという、交点ごとの性質の違いを見落としやすい。

    見破り方交点ごとに『速度がわずかに上がったら電動機トルクと負荷トルクのどちらが大きくなるか』を必ず個別に確認する。電動機トルクが負荷トルクを下回れば減速方向に戻る力が働く(安定)、上回れば加速し続ける(不安定)、という向きで1つずつ判定する。

  5. Δ結線で行った拘束試験の結果を、そのままY結線の始動時にも使えると考え、結線が変わることで生じる√3・3倍の重なりを見落とす

    なぜ引っかかる『試験で測った電圧・電流を使うだけ』という感覚が先に立つと、Δ結線とY結線とでは同じ巻線でも相電圧・相電流の出方(線間電圧との関係)が違うという点が抜け落ち、結線を変える効果をゼロとして計算してしまいやすい。

    見破り方極端な検算をする。もし新しい電源電圧V2が試験時の線間電圧V1と同じだったとすると、Δ→Yへ結線を変えるだけでIstart=I1/3となり、これはスターデルタ始動で電流が約1/3に下がるのと同じ関係になる。結線変更そのものが電流を1/3に落とす効果を持つ、という対応づけで検算すれば、√3や3の重なりを見落とさない。

  6. 二重かご形・深溝かご形誘導電動機の始動特性向上を、巻線形誘導電動機の二次抵抗始動(外部から抵抗器を挿入する方法)と同じ仕組みだと誤解する

    なぜ引っかかる『始動時に実効的な二次抵抗が大きくなり、始動トルクが増える』という結果だけを見ると、巻線形の二次抵抗始動と同じ発想の応用だと錯覚しやすい。だが二重かご形・深溝かご形はかご形誘導電動機であり、外部から抵抗器を挿入する経路そのものを持たない。

    見破り方『誰が、何によって二次抵抗を変えているか』を確認する。巻線形は外部抵抗器という人為的な操作で二次抵抗を変える。二重かご形・深溝かご形は、回転子導体の構造(二層構造や深いスロット形状)と表皮効果という物理現象だけで、すべりに応じて実効的な二次抵抗が自動的に変化する——外部操作が一切不要な点が、かご形機ならではの工夫だと整理する。

  7. 極数変換制御を、二次抵抗制御やインバータ制御と同じ『連続的に速度を変えられる方式』だと誤解する

    なぜ引っかかる『速度制御』という言葉のくくりだけで3つの方式を覚えると、極数変換制御だけが極数pという整数の切り替えでしか速度を動かせない(連続的ではなく段階的な制御になる)という違いを見落としやすい。

    見破り方同期速度の式Ns=120f/pを思い出す。fを連続的に変えられるインバータ制御、二次抵抗rを連続的に変えられる二次抵抗制御(巻線形限定)に対し、極数pは巻線の結線を切り替えて2極・4極のように整数個の値しか選べない——だから極数変換制御は段階的な速度切替になる、と区別する。

参考文献・出典

理解度チェック(12問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、12問で確認しよう。 内訳は基本6問・応用2問・ひっかけ4問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 12 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 同期速度 $N_s = \dfrac{120f}{p}$($f$:周波数、$p$:極数)。実際の回転速度はすべり $s$ の分だけ同期速度より遅い:$N = N_s(1-s)$
  2. トルクはすべりとともに増え、あるすべり($s_m = r_2/x_2$)で最大値(停動トルク)を取ったあと、すべりがさらに増えると逆に減少する山型の曲線を描く
  3. 最大トルクの大きさ自体は二次抵抗 $r_2$ を変えても変化しない。変わるのは最大トルクが生じるすべりの位置だけ
  4. スターデルタ始動は、始動電流・始動トルクをどちらも直入れ始動の約1/3に抑える(電圧が1/√3倍になり、トルクは電圧の2乗に比例するため)
  5. 巻線形誘導電動機の二次抵抗始動は、外部抵抗で最大トルクの位置を始動点(すべり1)側へ寄せることで、電流を抑えながら始動トルクを増やす方法
  6. 電動機トルク曲線と負荷トルク曲線の交点が安定な運転点であるための条件は、交点よりわずかに速度が上がると電動機トルクが負荷トルクを下回り(減速方向)、わずかに速度が下がると電動機トルクが負荷トルクを上回る(加速方向)ことである
  7. 山型のトルク-速度曲線を持つ電動機(かご形誘導電動機など)と、回転速度によらずトルクがほぼ一定の負荷(定トルク負荷)を組み合わせると、交点が2つ生じることがあり、安定・不安定は交点ごとに個別に判定する必要がある
  8. Δ結線のまま拘束試験(回転子を固定した状態での測定)を行い線間電圧V1・線電流I1を得た場合、その巻線をY結線に組み替えて電源電圧V2で始動したときの始動電流は、Δ結線での相インピーダンスZ=√3V1/I1を経由して Istart = V2×I1/(3×V1) で求まる
  9. 二重かご形誘導電動機は、回転子スロット入口に近い高抵抗の外側導体と、内部の低抵抗の内側導体という二層構造を持つ。始動時(すべりが大きく回転子電流の周波数が高い)は表皮効果で電流が外側の高抵抗導体に集中し大きな始動トルクを生み、定格運転時(すべりが小さく周波数が低い)は表皮効果が弱まり内側の低抵抗導体にも電流が流れて効率よく運転できる
  10. 深溝かご形誘導電動機は、幅が狭く深いスロットの導体1本で同じ効果を実現する。始動時は表皮効果により導体の実効的な断面積が減って抵抗値が上がり大きな始動トルクを生み、定格運転時は表皮効果が弱まり実効抵抗が下がって効率よく運転できる——外部から抵抗器を追加する巻線形の二次抵抗始動とは異なり、回転子導体の形状だけで自動的に二次抵抗が変化する
  11. かご形誘導電動機の回転子導体の材料を銅から銅合金(電気抵抗率の高い材料)に変更すると、二次抵抗の値が増大する。これにより始動トルクは大きくなりやすいが、定格負荷時は二次銅損(すべりに比例する損失)が増えるため効率は低下する
  12. 誘導電動機の速度制御には、電源周波数fを変えるインバータ制御(VVVF:可変電圧可変周波数)、固定子巻線の結線を切り替えて極数pを段階的に変える極数変換制御、二次抵抗を変えて比例推移を利用する二次抵抗制御(巻線形限定)がある。極数変換は効率がよい代わりに速度が段階的にしか変わらず、二次抵抗制御は安定な速度範囲を広げるため二次抵抗を大きくすると二次銅損が増えて効率が悪化する。商用電源のように電圧・周波数がどちらもほぼ一定の電源をCVCF(定電圧定周波数)電源と呼び、インバータのように電圧・周波数を自在に変えられる電源をVVVFと呼ぶ
Xでシェア
打ち合わせを予約 見積依頼