家庭のコンセントは100V、工場の動力設備でも200V程度だ。ところが発電所でつくられた電気は、 送電の途中で50万Vという、けた違いに高い電圧まで引き上げられる区間がある。
使う場所の電圧がそんなに低いなら、はじめから低い電圧でつくって、そのまま送ればいいのではないか。 わざわざ電圧を大きく上げてから、また何段階もかけて下げ直すのは、遠回りで無駄なことに思える。
このトピックを読み終えるころには、なぜ電気がそんな遠回りをするのか、そして施工計画書に出てくる 「受電設備」「高圧引込」という言葉が、その遠回りのどの地点を指しているのかを説明できるようになっている。
種明かしは、電圧を上げ下げすること自体に「送電中のロス(電力損失)を減らす」という明確な目的があり、 発電所から需要家までの間に置かれた複数の変電所が、その上げ下げと、電気の集約・保護という役割を 分担しているという事実にある。
電気をつくる5つの方法 — 「回して発電機を回す」か「光を直接変える」か
発電方式にはいくつも種類があるが、原理で見るとまず2つのグループに分かれる。ひとつは、何かを回転させて発電機を回す方式。もうひとつは、回転させずに光を直接電気へ変換する方式だ。
火力発電は、燃料(石炭・LNG・石油など)を燃やした熱で水を蒸気に変え、その蒸気の勢いで発電機につながったタービンを回す。大量の電気を安定してつくれ、需要の変化に合わせて出力を調整しやすいという長所がある一方、燃焼にともなって二酸化炭素が発生する。
水力発電は、ダムなどで確保した落差のある水がもつ位置エネルギーで水車を直接回し、発電機を回す。蒸気を経由しないぶん仕組みがシンプルで、運転中に二酸化炭素を出さない。ただしダムをつくれる地形が限られ、雨量にも発電量が左右される。
原子力発電は、ウラン燃料の核分裂反応で発生する熱を使う。中性子がウラン原子核に当たって核分裂すると、熱エネルギーとともに新たな中性子が生まれて連鎖的に核分裂が続く。この熱で水を蒸気に変え、火力発電と同じように蒸気でタービンを回す。燃料の熱源が燃焼か核分裂かという違いはあるが、「熱→蒸気→タービン」という発電の仕組み自体は火力発電と共通している。
太陽光発電は、ここまでの3つとはまったく異なる原理で発電する。太陽電池は半導体(n型とp型)を重ねた構造をしており、そこに光が当たると電気のもととなる粒子が動き出し、直流の電気が直接発生する。タービンも発電機も持たず、光を電気へ直接変換する方式であることが、他の発電方式との根本的な違いだ。
風力発電は、風を受けて大きな羽根(プロペラ)を回し、ナセル(発電機を収めた箱)の中の発電機を回して発電する。何かを回して発電機を回すという点では火力・水力・原子力と同じグループに属するが、回す動力が風であるため出力が風況に左右される。
なぜ一度、電圧を高く上げるのか — 送電ロスの理屈
発電機の出力電圧は、目安として1万数千V〜2万数千V程度にとどまる。これをそのまま長距離の送電線に流すと、大きな問題が起きる。
電力Pは電圧Vと電流Iの積(P=VI)で決まる。同じ電力を送るなら、電圧Vを高くするほど電流Iは小さくてすむ。ここで、送電線で生じる電力損失は電流の2乗に比例する(損失=I²×送電線の抵抗)ため、電流を小さくできればできるほど、送電中に無駄になる電力(ロス)を大幅に減らせる。
例で確認する
送る電力を変えずに送電電圧を10倍に引き上げると、電流は1/10になる。このとき電力損失は電流の2乗に比例するため、(1/10)²=1/100まで減る。電圧を10倍にするだけで、ロスが100分の1になる計算だ。
変電所の役割 — 変圧・開閉・保護
電圧の上げ下げを担うのが変電所だが、変電所の仕事はそれだけではない。大きく3つの役割に整理できる。
- 変圧:電圧を高くしたり低くしたりする、最も分かりやすい役割。発電所側では送電ロスを抑えるために昇圧し、需要家に近づくにつれて使いやすい電圧まで降圧していく。
- 開閉(集約・分配):複数の送電線・配電線から集まってくる電気を、必要な方向へ振り分ける役割。変電所には多数の遮断器・断路器が並び、電気の流れを切り替えている。
- 保護:送電線や機器に事故(短絡・地絡など)が起きたとき、遮断器で故障区間だけを切り離し、健全な区間への停電拡大を防ぐ役割。避雷器で雷サージから機器を守る働きもここに含まれる。
変電所に設置される機器 — コンサベータ・避雷器・計器用変圧器
変電所には、変圧器のほかにも役割の異なるさまざまな機器が設置されている。名前が似ていたり、同じ「〇〇電力」という言葉を含んでいたりするため、それぞれが何を調整・保護しているのかを区別しておきたい。
- 電力用コンデンサ:系統の無効電力を調整(打ち消す)することで力率を改善する調相設備。「電力を調整する」という名前から有効電力(実際に仕事に使われる電力)を調整する機器だと誤解しやすいが、負荷が行う仕事の量そのものを増減させるわけではない。
- 計器用変圧器(VT):高電圧をそのまま計器・継電器につなぐと危険なため、扱いやすい低電圧に変換する機器。感電防止のため二次側の1線を接地する。
- 変圧器のコンサベータ:油入変圧器の上部に設置する予備タンク。絶縁油と外気の接触面積を減らし、温度変化による油面の上下(呼吸作用)で外気が直接絶縁油に触れるのを防ぎ、絶縁油の酸化・水分吸収による劣化(絶縁性能の低下)を抑える。
- 避雷器:雷サージなどの異常電圧から機器を保護する装置で、現在は非直線抵抗特性に優れた酸化亜鉛形のものが電力設備・電気設備で広く使用されている。
同期調相機 — 「回転する」調相設備だから短絡電流も供給できる
電力用コンデンサ・分路リアクトルと並ぶ調相設備の1つに同期調相機(ロータリーコンデンサ)がある。実体は無負荷で運転する同期電動機で、界磁電流を強めれば進み無効電力を、弱めれば遅れ無効電力を系統に供給でき、電力用コンデンサ(進み側のみ)・分路リアクトル(遅れ側のみ)と違って進み・遅れ両方向の無効電力を連続的に調整できるのが特徴だ。
同期調相機ならではのもう1つの特徴が、短絡電流を供給できることにある。電力用コンデンサや分路リアクトルは静止機器(コンデンサ・リアクトルという受動素子)にすぎず、それ自体が電流を発生させる能力を持たない。これに対して同期調相機は回転する同期発電機と同じ構造を持つ回転機であり、系統に短絡事故が起きた際にも自らの誘起電圧に基づいて短絡電流を系統へ供給できる。この性質により、保護継電器・遮断器が確実に事故を検出・遮断できるよう手助けする役割も担う。半導体素子で無効電力を高速制御する静止形無効電力補償装置(SVC)も同様に静止機器であり、同期調相機のような短絡電流供給能力は持たない。
変電所の母線結線方式 — 単母線と二重母線
変電所の中で、複数の送電線・変圧器から集まる電気を一時的に受け止め、必要な方向へ振り分ける役割を担うのが母線だ。母線をどう構成するかによって、変電所の設備規模と運用のしやすさが変わってくる。
- 単母線:母線が1系統だけの、もっとも単純な構成。所要機器(遮断器・断路器等)が少なく設備コストは低いが、母線そのものに事故が起きると接続されているすべての送電線・変圧器が停止する。点検の際も、その母線を全停止させる必要がある。
- 二重母線:同じ役割の母線を2系統用意し、送電線・変圧器をどちらの母線からでも引き込める構成。片方の母線を停止して点検・切替を行っても、もう一方の母線で送電を継続できるため、点検・系統運用の自由度と信頼度が高い。ただし遮断器・断路器等の所要機器が増え、保護回路も複雑になるぶん、単母線よりコストは高くなる。
火力発電所の環境保全設備 — 燃焼ガスをきれいにしてから排出する
火力発電所は燃料を燃やして発電するため、燃焼にともなって発生するばいじん(すす等の微粒子)・硫黄酸化物(SOx)・窒素酸化物(NOx)を、排出する前に取り除く設備を備えている。
- 電気集じん器:燃焼ガス中のばいじんに高電圧で電荷を与え、電極に付着させて除去する装置
- 排煙脱硫装置:燃焼ガス中の硫黄酸化物(SOx)を、石灰石などを使って除去する装置
- 排煙脱硝装置:燃焼ガス中の窒素酸化物(NOx)を、アンモニアなどを使って除去する装置
これに対して脱気器は、ボイラに送る給水中に溶け込んだ酸素や二酸化炭素を取り除き、配管やボイラ本体の腐食を防ぐための設備で、大気汚染防止とは目的がまったく異なる。名前に「脱」が付く点や、燃焼設備の近くにある点は共通しているため混同しやすいが、脱気器は水処理設備、電気集じん器・脱硫装置・脱硝装置は排ガス処理設備、と扱う対象が違う。
電圧階級の階層 — 発電所から需要家まで
発電所でつくられ、所内で昇圧された電気は、複数の変電所を経由しながら段階的に降圧され、最終的に工場やビル、家庭に届く。電圧の呼び名と目安の値は次のような階層になっている。
工場やビルの多くは、配電用変電所から送られてくる6600V(高圧)を構内の変圧器で低圧に落として使う。大規模な工場やデータセンターなど、より大きな電力を必要とする需要家では、一次変電所に近い特別高圧の段階で直接受電することもある。
汽力発電のボイラ附属設備 — 過熱器と再熱器はどう違うか
火力発電所のボイラは、燃料を燃やして水を蒸気に変えるだけの単純な装置ではない。大容量のボイラでは、水の対流だけに頼る自然循環ボイラに対し、循環ポンプで水を強制的に循環させる強制循環ボイラが使われる。ポンプで循環させることで、ボイラの高さを抑えながら大容量化しやすくなるという利点がある。
ボイラ本体で発生した蒸気は、そのままではタービンを効率よく回せる状態になっていないため、複数の附属設備を経由する。
- 過熱器:ボイラ本体で発生した飽和蒸気を、さらに加熱して過熱蒸気にする設備。タービンへ送る前段階の加熱を担う。
- 再熱器:高圧タービンで一度仕事をして温度・圧力が下がった蒸気を、再びボイラへ戻して加熱し直す設備。加熱し直した蒸気を低圧タービンへ送ることで、熱効率を高める。
水車発電機と蒸気タービン発電機 — 同じ「発電機」でも特性が違う
水力発電所の水車発電機と、火力発電所の蒸気タービン発電機は、どちらも同期発電機である点は共通しているが、回転速度が大きく異なるため、機械的な特性にも違いが出る。
水車発電機は、水車の回転速度が比較的低い(目安として100〜1,200min⁻¹程度)ため、同期速度Ns=120f/pの式から、極数が多くなる。これに対し蒸気タービン発電機は高速回転(目安として1,500〜3,600min⁻¹程度)で運転されるため、極数は少なくなる。
また、短絡比(発電機の安定度や電圧変動の指標)も異なる。水車発電機は短絡比が0.8〜1.2程度と大きく、同期インピーダンスが小さいぶん電圧変動率が小さく安定しやすい。一方、蒸気タービン発電機は発電機を小型化する設計上の理由から短絡比0.5〜0.7程度と小さめに作られ、電圧変動はやや大きくなる。
回転子の構造にも違いがある。水車発電機は極数が多いため、回転子の直径が大きく軸方向に短い突極形(または横軸形の立軸形)になりやすく、立軸形の場合は回転部の軸方向の荷重を支えるスラスト軸受を備える。蒸気タービン発電機は高速回転に耐えるため、軸方向に長い円筒形の回転子が使われる。
高圧計器用変成器 — CT・VT・ZCTの取り扱い
変電所やキュービクルには、高電圧・大電流をそのまま計器や保護継電器に接続できないため、電圧・電流を測定しやすい値に変換する計器用変成器が使われる。
- 計器用変流器(CT):一次側の大電流を、計器・継電器で扱いやすい小電流に変換する。CTには「通電中に二次側を絶対に開放してはならない」という鉄則がある。二次側を開放すると、一次側の電流がすべて励磁電流となって鉄心に異常な磁束を生じさせ、二次側に高電圧が発生して絶縁破壊や感電の危険が生じる。点検等で二次側を切り離す必要があるときは、先に短絡片で二次側を短絡してから作業する。
- 計器用変圧器(VT):一次側の高電圧を、計器・継電器で扱いやすい低電圧に変換する。感電防止のため、二次側の1線を接地する(混触時に高電圧が二次側の計器類に及ぶのを防ぐ)。
- 零相変流器(ZCT):地絡事故を検出するための変流器で、CTとは構造が異なり、3相分の電線をまとめて1個の変流器に貫通させる。正常時は3相分の電流のベクトル和がゼロになるため二次側には電流が流れないが、地絡が発生してこの平衡が崩れると、二次側に不平衡電流(零相電流)が現れ、地絡継電器がこれを検出する。各相ごとに別々の変流器を用意する構造ではない点に注意する。
地絡方向継電器(DGR) — 「量」だけでなくその「向き」まで見る保護継電器
ZCTが検出する零相電流だけでは、地絡事故が「自分の受電設備の中(構内)」で起きたのか、「隣接する他の需要家の設備(構外)」で起きたのかを区別できない。高圧配電線には複数の需要家がぶら下がっており、他の需要家の構内で地絡が起きても、その事故電流の一部が自分の設備を経由して流れ込み、ZCTが零相電流を検出してしまう(いわゆる「もらい事故」)ことがあるためだ。
この問題を解決するのが地絡方向継電器(DGR、67)で、ZCTが検出する零相電流に加えて、零相電圧検出器(ZPD、コンデンサ形の接地形計器用変圧器など)が検出する零相電圧の両方を同時に取り込み、両者の位相関係(向き)を比較して動作の可否を判定する。自分の設備内で地絡が発生した場合と、他の設備(構外)で地絡が発生した場合とでは、零相電流と零相電圧の位相関係が逆になるという性質を利用し、構内地絡のときだけ動作して遮断器を開き、構外(もらい事故)では動作しないようにできる。単純な地絡継電器(GR)が零相電流の大きさだけで動作するのに対し、DGRは電流と電圧の位相という「向き」の情報を追加することで、不必要な遮断(もらい事故によるトリップ)を防ぐ。
変電所の遮断器 — 真空遮断器・ガス遮断器・空気遮断器
変電所の遮断器は、電路を開閉するだけでなく、事故電流を遮断するときに発生するアーク(電極間に生じる高温の放電)を、いかに早く安全に消すか(消弧)が性能を左右する。消弧に使う媒体の違いによって、いくつかの種類に分かれる。
- 真空遮断器(VCB):高真空に保った真空バルブ内で電極を開閉し、アークが真空中で拡散する性質を利用して消弧する遮断器。電極の消耗が少なく長寿命なため多頻度の開閉操作に向き、圧縮空気やSF6ガスのような消弧媒体そのものを使わない密閉構造のため保守が容易で、アークによる火災のおそれも小さい。高圧受電設備で広く採用されている。
- ガス遮断器(GCB):消弧能力に優れた六フッ化硫黄(SF₆)ガスを絶縁・消弧媒体に使う遮断器。消弧能力が高く、小電流遮断時に生じやすい異常電圧(遮断時サージ)も小さく抑えられる。構造がコンパクトで、比較的静かに動作する(遮断時の騒音が小さい)ため、都市部の変電所を中心に広く採用されている。
- 空気遮断器(ABB):圧縮空気を吹き付けてアークを消す遮断器。ガス遮断器が普及する以前に広く使われていたが、遮断時に圧縮空気を勢いよく噴出させるため、動作音(騒音)が大きいという特徴がある。
変圧器の保護継電器 — 比率差動継電器と衝撃圧力継電器
変電所に設置する油入変圧器は、内部の巻線や絶縁油に異常が生じても、外観からは異常に気づきにくい。そこで、変圧器の内部異常を検出するための専用の継電器がいくつか使われる。
- 比率差動継電器:変圧器の一次側・二次側それぞれに設けたCTの電流を比較し、両者の差(本来ゼロになるはずの差)が一定の比率を超えたときに動作する。巻線の層間短絡・地絡など、変圧器内部の電気的な故障を検出するのに使われる。
- 衝撃圧力継電器:変圧器内部で異常(短絡・アーク放電など)が起きると、絶縁油が急激に分解・気化して圧力が急上昇する。この急激な圧力変化(衝撃)を検出して動作する継電器で、機械的な圧力の変化から内部異常を捉える点が比率差動継電器とは異なる。
これらに対し、過電流継電器(OCR)や過電圧継電器は、変圧器そのものの内部異常専用というより、電路一般の過電流・過電圧を検出する汎用の保護装置であり、変圧器内部異常を直接検出する目的では使われない。
保護継電器の使い分け一覧 — 何を検出し、どこに設置するか
ここまで比率差動継電器・衝撃圧力継電器・地絡方向継電器(DGR)を個別に見てきたが、高圧受電設備や配電系統には、これら以外にも目的の異なる保護継電器がいくつも設置されている。「何を検出するか」を軸に、代表的な7種類を整理しておく。
- 過電流継電器(OCR):短絡事故や過負荷によって電路に一定値以上の電流が流れたときに動作する、電路一般の保護に使われる最も基本的な継電器。高圧受電設備の主遮断装置(VCB・PAS等)に組み込まれ、短絡・過負荷から電路と機器を守る。
- 過電圧継電器(OVR):電路の電圧が予定値を超えて上昇したときに動作する。発電機の故障などで異常な電圧上昇が生じた場合に、機器を保護する目的で使われる。
- 不足電圧継電器(UVR):電路の電圧が予定値以下に低下したときに動作する。停電や負荷の短絡にともなう電圧低下を検知して警報を出したり、予備発電機の起動指令に使ったりする。
- 地絡継電器(GR):零相変流器(ZCT)で検出する地絡電流(零相電流)の大きさだけを見て動作する。事故が構内か構外かという方向は判別しない。
- 地絡方向継電器(DGR):GRと同じく零相電流を検出するが、これに加えて零相電圧検出器(ZPD)で零相電圧も取り込み、両者の位相関係(向き)から地絡事故が構内か構外かを判別する。複数の需要家がぶら下がる配電系統で、事故の起きた区間だけを選択的に遮断するために使われる。
- 比率差動継電器:変圧器の一次側・二次側のCT電流の差を検出し、巻線の短絡・地絡といった変圧器内部の電気的な異常を捉える。
- 衝撃圧力継電器:変圧器内部の異常にともなう絶縁油の急激な圧力変化を検出し、機械的な異常を捉える。
屋外変電所の雷害対策・塩害対策
屋外に設置される変電所の機器は、自然環境の影響を直接受ける。代表的な対策として、雷害対策と塩害対策の2系統がある。
雷害対策は、雷サージから機器を保護するための対策だ。避雷器を架空電線の引込口・引出口に設置して雷サージを大地へ逃がし、避雷器自体の接地は感電・火災防止のためA種接地工事とする。変電所全体の接地は、複数の機器の接地極を網目状につないだメッシュ方式が主流で、電位差による事故を防ぐ。屋外鉄構の上部には架空地線を設け、直撃雷を受け止めて大地へ逃がす。
塩害対策は、海に近い地域などでがいし表面に塩分が付着し、湿気で溶けて漏れ電流やフラッシオーバ(絶縁破壊)を起こすのを防ぐ対策だ。がいしの定期的な洗浄、がいし表面へのシリコンコンパウンド塗布(撥水性を持たせる)、耐塩がいし・耐霧がいし(スモッグがいし)の採用などが代表例になる。これに対しアーマロッド(電線の支持点に巻き付ける補強材)は、微風によって電線が振動し続ける微風振動対策の部品であり、塩害対策には含まれない。
架空地線の役割 — 直撃雷を防ぐだけではない
先ほどの屋外変電所の雷害対策では「屋外鉄構上部への架空地線設置」に触れたが、架空送電線路の鉄塔に張る架空地線も、同じ考え方で電力線を雷から守っている。ただしその役割は、直撃雷を防ぐことだけにとどまらない。
- 直撃雷の遮へい:電力線よりも高い位置に架空地線を張ることで、雷が電力線に直接落ちるのを防ぐ。架空地線の条数を増やして遮へい角(架空地線から電力線を見込む角度)を小さくするほど、遮へい効果は高まる。
- 誘導雷の軽減:雷雲の接近による静電誘導や、近隣への落雷にともなう電磁誘導によって電力線に生じる異常電圧(誘導雷サージ)を、架空地線が軽減する。
- 通信線への電磁誘導障害の軽減:電力線に地絡事故が起きたとき、地絡電流の一部が大地だけでなく架空地線を通っても戻ることで、大地を流れる電流が減り、近くの通信線に生じる電磁誘導障害(誘導電圧)を小さく抑えられる。
一方、鉄塔の塔脚接地抵抗を下げて、雷撃時に鉄塔の電位が上がりすぎて電力線側へ逆流するように放電する逆フラッシオーバを防ぐ対策は、架空地線そのものではなく、鉄塔の脚部から地中に埋設する埋設地線(カウンタポイズ)や、複数の鉄塔の埋設地線を地中でつなぐ連接接地によって行う。架空地線と埋設地線はどちらも「地線」という名前を持ち、雷害対策という目的も共通しているため混同しやすいが、架空地線は「電力線の上空を覆う遮へい線」、埋設地線は「鉄塔の足元の接地抵抗を下げる地中の導体」と、設置場所も直接の役割も別物だと区別しておきたい。
中性点接地方式 — 地絡電流と健全相電圧上昇はトレードオフ
変電所の変圧器は、Y結線の中性点をどう接地するかによって、1線地絡事故が起きたときの挙動が大きく変わる。中性点接地方式には主に4種類があり、それぞれ採用される電圧階級も異なる。
- 直接接地方式:中性点を直接大地に接続する。1線地絡時に大きな地絡電流が流れる一方、健全相(地絡していない相)の電位は大地電位に近く保たれ、健全相の電圧上昇はもっとも小さい。絶縁設計を合理化しやすく、187kV以上の超高圧系統で採用される。
- 抵抗接地方式:中性点と大地の間に抵抗を挿入する。地絡電流を抑えて通信線への誘導障害などを防ぐ目的で、22〜154kV系統で広く採用されるが、健全相の電圧上昇は直接接地方式より大きくなる。
- 非接地方式:中性点を大地に接続しない。地絡電流はもっとも小さく抑えられるが、健全相の電圧上昇はもっとも大きくなりやすい。国内の高圧配電系統(6.6kVなど)で広く採用されている。
- 消弧リアクトル接地方式:中性点と大地の間にリアクトルを挿入し、そのリアクタンスを系統の対地静電容量と並列共振させることで、1線地絡時の地絡電流そのものをほぼゼロまで抑制する方式。
水車の種類 — 衝動水車と反動水車
水力発電の水車は、水のエネルギーをどう作用させてランナ(羽根車)を回すかによって、大きく衝動水車と反動水車に分けられる。
- 衝動水車:ノズルから大気中に噴射した水を、羽根(バケット)に当ててその運動エネルギーだけでランナを回す方式。代表例がペルトン水車で、高落差・比較的少流量の発電所に向いている。
- 反動水車:水の圧力エネルギーと速度エネルギーの両方をランナに作用させる方式。代表例がフランシス水車で、流水がランナの外周から流入し、ランナ内で軸方向に向きを変えて流出する構造をもつ。10〜300m程度と幅広い落差に対応でき、国内水力発電所の約7割がこのフランシス水車を採用している。ほかにプロペラ水車・カプラン水車も反動水車に分類される。
ボイラ附属設備の続き — 節炭器と空気予熱器
前段で扱った過熱器・再熱器は、いずれも「蒸気そのもの」を加熱する設備だった。ボイラにはこれとは別に、燃焼を終えてボイラ本体を出た燃焼ガス(排ガス)の余熱を回収する設備として、節炭器と空気予熱器がある。
- 節炭器:排ガスの余熱を利用してボイラ給水を予熱する装置。給水をあらかじめ温めておくことで、ボイラでの加熱に必要な熱量を減らし、ボイラ全体の熱効率を高める。
- 空気予熱器:排ガスの余熱を利用して、燃焼用の空気を予熱する装置。燃焼用空気を温めておくことで燃焼効率が上がり、こちらも熱効率の向上に寄与する。
排ガスの熱回収は、一般に過熱器→(タービンへ)→節炭器→空気予熱器の順に配置され、可能な限り熱を回収したうえで煙突から排出される。
水力発電の水撃作用 — 弁を急に閉じると水圧管に何が起きるか
水力発電所のうち、河川からダムまで水路で水を導き、そこから水圧管を通して水車へ落とし込む方式をダム水路式という。この水圧管の中で注意しなければならない現象が水撃作用(ウォーターハンマー)だ。
水車の使用水量を急激に変化させる(たとえば発電機が系統から切り離され、水車入口弁を急いで閉じる)と、それまで水圧管の中を勢いよく流れていた水が、行き場を失って急激に圧力変動を起こす。この圧力変動が水撃作用で、大きくなると水圧管そのものを破裂させることもある重大な現象だ。
水撃作用の大きさは、次の2つの要因で決まる。
- 水圧管の長さ:長いほど、管内に蓄えられている水の運動エネルギー(慣性)が大きくなるため、水撃作用は大きくなる
- 弁の閉鎖に要する時間:短いほど(急に閉じるほど)、水の流れを急激に止めることになるため、水撃作用は大きくなる
「管が短い方が勢いを止めやすそうだ」という直感から、水圧管の長さが短いほど水撃作用が大きくなると誤解しやすいが、実際には逆で、長い水圧管ほど水撃作用は大きくなる。対策としては、圧力トンネルの末端付近にサージタンクを設け、弁の急閉時に生じる圧力変動を吸収する方法が広く使われている。
電車線のちょう架方式 — 速度に応じて構造が複雑になる
電気鉄道のトロリ線(架線)は、集電・送電を兼ねる導体としての性能だけでなく、どのように吊るか(ちょう架方式)によっても種類が分かれる。速度が上がるほど、パンタグラフとの接触が離れる(離線する)リスクが高まるため、構造を複雑にして対応する。
- 直接ちょう架式:ちょう架線を持たず、トロリ線を直接吊るだけの最も簡素な構造。コストは低いが、速度100km/h未満(路面電車・側線など)の低速区間向け。
- シンプルカテナリ式:ちょう架線からハンガーでトロリ線を吊るす構造で、電車線の中で最も広く採用されている。速度100km/h程度までの一般鉄道線に適用される。
- コンパウンドカテナリ式:ちょう架線とトロリ線の間に、さらに補助ちょう架線を加えた構造。横方向の線が3本になり、高速走行時でも離線しにくいため、100km/h以上の在来線特急区間や都市間鉄道で採用される。
- ヘビーコンパウンドカテナリ式:コンパウンドカテナリ式をさらに強化した構造で、新幹線など速度300km/h程度までの区間に用いられる。
架空電車線の区分装置 — 電気的に切り離しつつパンタグラフは通す
電車線(トロリ線)はパンタグラフが連続して滑走できるよう機械的にはつながっていなければならないが、変電所ごとの給電区間の切り分けや、保守・事故時の停電範囲の限定のためには、電気的には区間ごとに絶縁して分ける必要がある。この相反する要求を両立させるのが区分装置(セクション)だ。
- エアセクション:2本のトロリ線を空間的にわずかに重ね、その区間ではパンタグラフが両方のトロリ線に同時接触しながら通過することで、電気的には別回路のまま機械的な連続性を保つ方式。構造が単純で広く使われるが、パンタグラフが2本のトロリ線をまたぐ区間では、万一その区間で停車すると異なる相(区分)を短絡してしまう恐れがあるため、停車禁止区間として扱われる。
- インシュレータセクション(がいし区分装置・FRP区分装置):2本のトロリ線の間にFRP(繊維強化プラスチック)やがいしなど絶縁性の部材を挟み込み、電気的な絶縁性能を高めた方式。エアセクションより全長を短くできるため、駅構内や車両基地など、限られたスペースで区分が必要な箇所に採用される。
区分装置によって仕切られた区間は、変電所の故障時にその区間だけを切り離して停電範囲を限定したり、饋電区分ごとに独立した保守作業を可能にしたりする役割を果たす。
復水器の真空度 — 熱効率を上げるには「圧力を下げる」
汽力発電所の熱効率向上対策として、再熱器・給水加熱器・空気予熱器のように熱を回収する設備とは別に、復水器の運転状態そのものも熱効率を左右する。
復水器は、タービンを出た蒸気を冷却して水に戻す設備で、内部はできるだけ圧力の低い状態(真空に近い状態)に保たれている。この「真空にどれだけ近いか」を表す指標が真空度で、真空度が高い(=内部圧力が低い)ほど、タービン出口の排気圧が下がり、タービン入口から出口までの圧力差(熱落差)が大きくなる。熱落差が大きいほど、蒸気が持つエネルギーをより多くタービンの回転仕事に変換できるため、熱効率が向上する。
逆に、復水器の内部圧力を高くすると、真空度が下がってタービン出口の排気圧が上がり、熱落差が縮まってしまう。これは熱効率をかえって悪化させる方向の変化であり、熱効率向上対策としては不適当だ。真空度を高く保つには、冷却水の温度を下げる、冷却水の循環流量を増やす、細管を定期的に洗浄して熱交換の効率低下を防ぐ、といった保守が重要になる。
施工管理技士にとって、この全体像を知る意味
電気工事士が「その現場の配線をどう施工するか」を扱うのに対し、施工管理技士は現場に電気を引き込む受電設備そのものの計画・調整にも関わることがある。受電設備の更新工事や新設工事の施工計画を立てるとき、「その現場の受電電圧が、この階層のどの段階に位置するのか」「配電用変電所からの引込みなのか、より上流の特別高圧からの引込みなのか」を把握していると、工事の規模や必要な保安体制のイメージがつかみやすくなる。
この資格を取ったあと、現場で何が変わるか
この資格を取ったあと、受変電設備の更新工事や新設工事の相談を受けたとき、あなたは「その現場がどの電圧階級で受電しているか」を、施主や設計者の説明を鵜呑みにせず自分で確認できるようになる。「配電用変電所からの6,600V引込みです」と言われたとき、それが特別高圧からの直接受電とは工事の規模も保安体制もまったく違うことが分かるので、見積りの前提を取り違えずに済む。
工場やデータセンターのような大口需要家の案件では、「一次変電所に近い特別高圧の段階で受電するか、配電用変電所からの高圧受電にとどめるか」という選択が、工事費だけでなく保安規程や主任技術者の要否にまで影響する。この判断に施工管理者として関わるとき、送電・変電の全体像を知っているかどうかが、発注者に「なぜこの受電方式を選ぶのか」を説明できるかどうかを分ける。
電材商社の立場からも、受電電圧の階層を把握していると、その現場が扱う変圧器やキュービクルの規模を、図面を見る前におおよそ見当づけられるようになる。「この現場は高圧受電だからこのクラスのキュービクル」という提案の精度が上がり、取引先の技術者との会話も、電圧の数字だけでなくその数字が送配電のどの段階のものかという文脈込みで進むようになる。
冒頭の「なぜ電圧を大きく上げてから、また下げ直すのか」という遠回りに見えた仕組みの答え合わせは、理解度チェックの計算問題でしてみよう。