在庫確認・見積は今すぐ フォームで依頼する 写真の添付もOK / 24時間受付
法規 ・ 4 / 8

電気事業法との関わり — 施工計画は「保安の体制」を知らないと立てられない

読み終えると、こうなる

電気工事の工程表を組むとき、電気事業法上の手続き(届出・保安体制)がその工程にどう影響するかを見落とさずに判断できるようになる

  • 事業用電気工作物の区分(自家用電気工作物・電気事業用電気工作物、小規模事業用電気工作物)を挙げ、現場の設備がどの区分に当たるか見当をつけられる
  • 設置者が負う技術基準適合維持義務・保安規程の届出義務・主任技術者の選任義務を、施工管理者の立場から説明できる
  • 工事計画の届出が必要な工事では、届出受理から30日間は着工できないと工程管理に反映できる
  • 電気主任技術者と施工管理者(主任技術者)の役割の違い、および主任技術者免状の種類(第一種・第二種・第三種)によって保安の監督ができる電圧の範囲が異なることを説明できる
考えてみよう

工場の受変電設備を更新する工事で、施工管理者が発注者から「来月頭には着工してほしい」と頼まれた。届出書類はすでに準備できている。だが、いざ工程表を組もうとすると、先輩から「その日程では間に合わないかもしれない」と指摘される。届出は済ませているのに、なぜ間に合わない可能性があるのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、電気事業法が施工管理者の工程管理にどう影響するかを、自分で説明できるようになっている。

電気事業法は、電気工作物の保安に関する規定を定めた法律だ。電験三種や電気工事士向けのコンテンツでは電気主任技術者の視点を中心に扱っているが、ここでは施工管理者がこの法律とどう関わるかという視点で整理する。

「電気工作物」とは何か — ダムや水路も含まれる、意外と広い定義

区分の話に入る前に、そもそも「電気工作物」という言葉が何を指すのかを確認しておく。電気事業法2条1項18号は、電気工作物を「発電、蓄電、変電、送電若しくは配電又は電気の使用のために設置する機械、器具、ダム、水路、貯水池、電線路その他の工作物」と定義している。ただし、船舶・車両又は航空機に設置されるものその他政令で定めるものは除かれる。

この定義で見落としやすいのが、**ダム・水路・貯水池も電気工作物に含まれる**という点だ。水力発電のための取水設備や導水路は、一見すると土木工事の対象であって電気とは無関係に思えるが、法律上は発電のために設置する工作物として、変圧器や電線路と同じ「電気工作物」の枠に入る。逆に、電気鉄道の車両に設置する電気設備は、条文のかっこ書きにより電気工作物から除かれる。「電気を扱う設備に見えるかどうか」ではなく、条文の除外規定に該当するかどうかで判断する必要がある。

電気工作物の区分 — その現場はどこに当たるか

電気工作物は、まず一般用電気工作物と事業用電気工作物に大別される(電気事業法38条)。事業用電気工作物はさらに、電気事業の用に供する電気工作物と、自家用電気工作物(電力会社から高圧以上の電圧で受電する需要設備など)に分かれる。加えて、出力の小さい太陽電池発電設備・風力発電設備は、自家用電気工作物のうち規模の小さいものとして小規模事業用電気工作物に区分され、後述する保安規程・主任技術者の義務が軽減されている。

施工管理者が現場に入るとき、まず「この設備はどの区分に当たるのか」を意識しておくと、その現場にどんな保安上の義務がかかっているかの見当がつく。一般家庭のような一般用電気工作物の現場と、高圧受電の工場のような自家用電気工作物の現場とでは、関わってくる規制の厚みがまったく違う。

太陽電池発電設備のように出力が小さい設備では、「小規模事業用電気工作物」に当たる出力の範囲を具体的に押さえておくと、現場でどの区分の保安義務が生じるかを判断しやすい。低圧で受電している需要設備の構内に単独で設置する太陽電池発電設備の場合、出力10kW以上のものが小規模事業用電気工作物として区分される対象になる(38条3項、電気事業法施行規則48条4項)。低圧で受電できる出力には実務上の上限があり、太陽電池発電設備では出力50kW未満がその目安になるため、「10kW以上50kW未満」が典型的な小規模事業用電気工作物の範囲として扱われる。

数値を丸暗記するより、「小規模」という言葉の意味を出力の帯で捉えると理解しやすい。10kW未満は一般用電気工作物(ほぼ規制なし)、10kW以上50kW未満は小規模事業用電気工作物(技術基準適合維持義務・基礎情報の届出義務はあるが、保安規程・主任技術者の選任義務までは課されない)、50kW以上は通常の自家用電気工作物(保安規程・主任技術者の選任義務まで課される)という3段階の帯で整理すると、出力の数字を聞いただけでその設備に何が求められるかの見当がつく。

出力の帯とは別に、そもそも一般用電気工作物として扱われるための電圧の要件もある。38条1項ただし書は、一般用電気工作物の対象となる「小規模発電設備」を、低圧(経済産業省令で定める電圧以下の電圧)の電気に係る発電用の電気工作物と定義している。この経済産業省令で定める電圧は、電気事業法施行規則48条1項により600ボルトと定められている。

出力の基準(10kW以上50kW未満で小規模事業用電気工作物)と、電圧の基準(600V以下でなければ小規模発電設備=一般用電気工作物の対象にならない)は、別の軸の話だ。たとえ出力が10kW未満で小さくても、電圧が600Vを超える発電設備は、そもそも38条1項ただし書の小規模発電設備に当たらず、一般用電気工作物としては扱われない。「出力が小さければ一律に一般用電気工作物」という単純化をせず、出力と電圧の両方の基準を満たしているかを確認する必要がある。

設置者の義務 — 施工管理者はこの義務の「外」にいるが、「無関係」ではない

事業用電気工作物を設置する者は、これを主務省令で定める技術基準に適合するように維持しなければならない(39条1項)。これに加え、事業用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く)の設置者は、保安規程を定めて主務大臣に届け出る義務(42条1項)と、主任技術者免状の交付を受けている者から主任技術者を選任する義務(43条1項)を負う。

これらの義務は、いずれも「設置者」が負うものであって、施工管理者本人が直接負う義務ではない。だが施工管理者が管理する工事は、この設置者の保安体制の中で実施されるものだ。工事によって技術基準への不適合を生じさせないこと、保安規程に定められた手順を守ること、選任された電気主任技術者の指示系統の中で作業を進めることは、施工管理者が現場で意識すべき前提条件になる。

保安規程には、具体的に何を書けばよいのか。一般の自家用電気工作物であれば、電気事業法施行規則50条3項に9項目が列挙されている。(1)業務管理者の職務及び組織、(2)保安教育、(3)巡視・点検及び検査、(4)運転又は操作、(5)発電所・蓄電所の運転を相当期間停止する場合の保全方法、(6)災害等非常時に採るべき措置、(7)保安についての記録、(8)法定自主検査等の実施体制及び記録の保存、(9)その他保安に関し必要な事項だ。

ここで見落としやすいのが、**「電気エネルギーの使用の合理化」に関することは、この9項目のいずれにも当たらない**という点だ。保安規程は「保安」、つまり感電・火災・設備の損傷といった危険を防ぐための書類であって、省エネルギーという別の政策目的の書類ではない。電気エネルギーの使用の合理化は、省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)が別途規律する事項であり、保安規程に書くべき事項ではない。「設置者が果たすべき社会的な責務」という漠然とした括りで両者を混同しないようにしたい。

43条1項は「主任技術者免状の交付を受けている者」から選任するのが原則だが、43条2項には例外がある。自家用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く)を設置する者は、主務大臣の許可を受ければ、免状の交付を受けていない者を主任技術者として選任することができる。免状を持つ技術者の確保が難しい小規模な自家用施設向けの救済的な仕組みだが、あくまで主務大臣の許可という手続きを経て初めて認められるものであり、設置者の独断で無資格者を選任できるわけではない。

ここまでは自家用電気工作物側の話だが、一般家庭のような一般用電気工作物の側にも、技術基準への適合を確認する仕組みがある。ただし、その調査義務を負うのは一般用電気工作物の所有者自身ではない。電気事業法57条1項は、一般用電気工作物と直接に電気的に接続する電線路を維持し、及び運用する者(電線路維持運用者。実務上は一般送配電事業者等)に、その一般用電気工作物が技術基準に適合しているかどうかを調査する義務を課している。調査の結果、技術基準に適合していないと認めるときは、電線路維持運用者は遅滞なく、とるべき措置とその措置をとらなかった場合に生ずる結果を、所有者又は占有者に通知しなければならない(57条2項)。

「自分の設備は自分で調べるはず」という直感で、一般用電気工作物の調査義務を所有者側の義務だと思い込みやすい。だが実際に調査するのは、その一般用電気工作物とつながる電線路側(一般送配電事業者等)だ。事業用電気工作物の設置者が自ら技術基準適合維持義務(39条1項)を負うのとは、義務の負い方の構造が違う点を区別しておきたい。

工事計画の届出 — 着工日を工程表に落とし込む前に確認すること

事業用電気工作物の設置・変更の工事のうち、主務省令で定めるものをしようとする者は、その工事の計画を主務大臣に届け出なければならない。そして、届出が受理された日から30日を経過するまでは、その工事に着手できない(48条)。

冒頭の疑問はここに答えがある。「届出書類の準備ができている」ことと「着工できる」ことは別だ。届出という手続きが完了しても、そこから30日間の待機期間を経なければ着工できない。施工管理者が工程表を組むときは、この30日間を逆算し、いつまでに届出を提出し終えている必要があるかを最初に計算しておく必要がある。着工日から30日を引いた日が、実質的な届出の期限になる。

対象になる工事の範囲は主務省令の別表に細かく定められており、受変電設備の新設・増設や、一定規模以上の設備変更など、現場で扱う電気工事の多くが関係してくる。個々の工事が届出対象に当たるかどうかは、その都度、主務省令の該当条項で確認する必要がある。

事故が起きたときの報告 — 提出先は都道府県知事ではない

工事計画の届出とは別に、施工管理者が知っておきたいのが事故発生時の報告義務だ。自家用電気工作物を設置する者は、感電により人が死傷した事故(死亡又は入院に限る)や、半焼以上の電気火災事故などが発生したときは、電気関係報告規則3条に基づき報告書を提出しなければならない。

この報告書の提出先は、**当該電気工作物の設置場所を管轄する産業保安監督部長**であって、都道府県知事ではない。建設業許可(都道府県知事又は国土交通大臣)や道路占用許可(道路管理者)など、他の許可・届出制度で都道府県が窓口になる場面を多く見てきていると、電気事業法の手続きも同じように都道府県が窓口だと思い込みやすい。だが電気工作物の保安に関する行政は経済産業省の系列(産業保安監督部)が担っており、報告先を問われたら「経済産業省側の機関」を思い浮かべる習慣をつけておきたい。

電気主任技術者と施工管理者 — 「主任技術者」という同じ呼び名の、別の役割

現場で気をつけたいのが、電気事業法上の主任技術者(電気主任技術者)と、建設業法上の主任技術者(施工管理者)の違いだ。名前は似ているが、根拠法令も役割もまったく異なる。

電気事業法上の主任技術者建設業法上の主任技術者
役割事業用電気工作物の保安の監督工事現場における施工の技術上の管理
選任・設置する者電気工作物の設置者建設業者
免状・資格電気主任技術者免状(経済産業大臣系)施工管理技士等(建設業法7条2号等)

電気事業法43条5項は、事業用電気工作物の工事・維持又は運用に従事する者は、電気主任技術者がその保安のためにする指示に従わなければならないと定めている。施工管理者もこの「工事に従事する者」に含まれるため、電気主任技術者から作業の中止や手順の変更を指示されれば、それに従う必要がある。

施工管理者は、施工の技術上の管理では現場の中心にいるが、保安の監督では電気主任技術者の指示系統の中にいる。**2つの「主任技術者」は上下関係ではなく役割分担**であり、施工管理者はこの役割分担を理解したうえで、電気主任技術者と連携しながら工程を進める必要がある。

主任技術者免状の種類と監督範囲 — 電圧の上限は免状ごとに違う

現場に選任されている電気主任技術者は、誰でも同じ範囲の設備を監督できるわけではない。電気事業法44条5項は、主任技術者免状の交付を受けている者が保安について監督をすることができる事業用電気工作物の工事、維持及び運用の範囲を、経済産業省令で定めると規定している。この委任を受けた電気事業法施行規則56条が、免状の種類ごとに監督範囲を具体的に定めている。

主任技術者免状の種類保安の監督をすることができる範囲
第一種電気主任技術者免状事業用電気工作物の工事、維持及び運用(ダム水路・ボイラータービン関係を除く)
第二種電気主任技術者免状電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物
第三種電気主任技術者免状電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5,000kW以上の発電所又は蓄電所を除く)
数字だけを丸暗記すると、第二種の17万ボルトと第三種の5万ボルトを取り違えやすい。免状の「格」が上がるほど監督できる範囲も広がるという構造で捉えると、第三種(最も基礎的)=5万ボルト未満、第二種=17万ボルト未満、第一種(最上位)=範囲の制限なし、という順序が自然に整理できる。

ここでもう1つ見落としやすいのが、第三種電気主任技術者免状の監督範囲に付いているかっこ書きの除外だ。「電圧5万ボルト未満」という条件だけを満たしていても、出力5,000kW以上の発電所又は蓄電所は、この監督範囲から除かれている。電圧が低くても出力の大きい発電所・蓄電所は、第三種電気主任技術者の手に余る規模として扱われる、という趣旨だ。

「電圧の基準さえ満たしていれば監督できる」という思い込みで、出力側の除外条件を見落とさないようにしたい。電圧と出力は別の軸のチェック項目であり、第三種電気主任技術者の監督範囲を判断するときは、両方を確認する必要がある。

施工管理者にとってこの区分が意味を持つのは、現場に選任されている電気主任技術者が、その現場の設備規模に見合った免状を持っているかどうかを、間接的にでも把握しておく必要がある場面だ。受変電設備の電圧・発電設備の出力を見たときに、「この規模なら第三種で足りるはずだ」「この規模には第二種以上が必要になる」という見当がつけば、現場の保安体制に対する解像度が上がる。

電材商社の現場で、この関わり方がどう効いてくるか

受変電設備の更新提案をするとき、その工事が工事計画の届出を必要とする規模かどうかを早い段階で意識できると、発注者側の着工希望日と実際に着工可能な日のギャップを、提案の段階から説明できるようになる。届出の要否や30日の待機期間を知らずに納期を約束してしまうと、後から工程全体を組み直す事態になりかねない。

電気事業法の保安規制は、施工管理者にとって「自分が直接負う義務」ではなく「工程管理の前提条件」だ。この前提を知っているかどうかが、現実的な工程表を組めるかどうかを左右する。

この資格を取ったあと、現場で何が変わるか

この資格を取ったあと、受変電設備の更新提案をするとき、あなたは「発注者の希望する着工日」から逆算して、工事計画の届出をいつまでに提出し終えていなければならないかを、自分で計算できるようになる。届出が受理された日から30日を経過するまでは着工できないという規定を知らずに納期を約束してしまう先輩を、「その日程では届出の待機期間が足りません」と指摘して止められる立場に変わる。

現場で電気主任技術者から作業の中止や手順の変更を指示されたとき、それが電気事業法43条5項に基づく正当な指示だと理解しているからこそ、感情的に反発するのではなく、保安の監督者としての電気主任技術者と、施工の技術上の管理者としての自分の役割分担を踏まえて対応できる。「主任技術者」という同じ呼び名の2つの資格を混同せず、それぞれの指示系統の中で動ける施工管理者になる。

電材商社との関係でも、太陽電池発電設備の提案をする場面で「この出力なら小規模事業用電気工作物の範囲に収まるので、保安規程や主任技術者の選任までは不要です」といった、電気事業法の区分を踏まえた具体的な提案ができるようになる。届出や保安体制の負担まで見据えた提案は、発注者にとって工事費以外の判断材料としても価値を持つ。

冒頭の工程表がなぜ間に合わない可能性があったのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 技術基準適合維持義務・保安規程・主任技術者選任の3つの義務を、すべての電気工作物に一律に課されるものだと思い込む

    なぜ引っかかる『事業用電気工作物』という同じ枠組みで語られるため、区分による義務の軽重の違いを見落としやすい

    見破り方技術基準適合維持義務(39条)は事業用電気工作物であれば常に課されるが、保安規程の届出(42条)・主任技術者の選任(43条)は小規模事業用電気工作物を除いた事業用電気工作物にのみ課されると、条文のかっこ書を確認する

  2. 工事計画の届出を、工事の完了後に事後報告すればよい手続きだと思い込む

    なぜ引っかかる『届出』という言葉から、実施後に知らせるだけの軽い手続きだと連想しやすい

    見破り方工事計画の届出は着工「前」の手続きであり、届出が受理された日から30日を経過するまでは工事に着手できないと確認する。この30日間を見込まずに工程表を組むと、着工予定日に間に合わなくなる

  3. 施工管理者(主任技術者)と電気主任技術者を同じ役割だと混同する

    なぜ引っかかるどちらも『主任技術者』という言葉を含み、現場で権限を持つ立場のため、同一の資格・同一の役割だと錯覚しやすい

    見破り方建設業法上の主任技術者は施工の技術上の管理者、電気事業法上の主任技術者(電気主任技術者)は保安の監督者という、別の法律に基づく別の役割だと確認する。工事・維持・運用に従事する者は電気主任技術者の指示に従う義務(電気事業法43条5項)があり、施工管理者もその指示系統の中で工事を進める

  4. 電気事業法43条5項(工事・維持・運用に従事する者は主任技術者の指示に従う)の向きを、逆に読み替えてしまう

    なぜ引っかかる主任技術者・設置者・作業従事者という3者が登場するため、『誰が誰の指示に従うか』の向きを取り違えやすい

    見破り方43条5項は『事業用電気工作物の工事、維持又は運用に従事する者は、主任技術者がその保安のためにする指示に従わなければならない』という向きで定められていると確認する。『主任技術者が設置者の指示に従う』という逆向きの記述が出てきたら誤りだと見抜く

  5. 主任技術者は必ず免状の交付を受けた者でなければならず、例外は一切ないと思い込む

    なぜ引っかかる43条1項の原則(免状の交付を受けている者から選任)だけを覚えると、それがすべてのケースに当てはまると錯覚しやすい

    見破り方43条2項は、自家用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く)の設置者が、主務大臣の許可を受ければ、免状の交付を受けていない者を主任技術者として選任できると定めていると確認する。無資格者を無条件に選べるわけではなく、あくまで主務大臣の許可という手続きが前提になる

  6. 水力発電のために設置するダムや水路を、電気工作物には含まれない土木構造物だと思い込む

    なぜ引っかかるダムや水路は『土木の構造物』という印象が強く、機械や器具と並んで『電気工作物』に分類されることを見落としやすい

    見破り方電気事業法2条1項18号は、電気工作物を『発電・蓄電・変電・送電若しくは配電又は電気の使用のために設置する機械、器具、ダム、水路、貯水池、電線路その他の工作物』と定義しており、発電目的で設置するダム・水路・貯水池は明文で電気工作物に含まれると確認する。一方、船舶・車両・航空機に設置されるもの(電気鉄道の車両の電気設備など)は除外されており、この区別を取り違えないようにする

  7. 自家用電気工作物の事故報告書の提出先を、建設業許可などと同じ都道府県知事だと思い込む

    なぜ引っかかる電気事業に関する行政手続きの多くを『県の仕事』だとひとまとめにして連想しやすい

    見破り方電気関係報告規則3条は、事故報告の報告先を、当該電気工作物の設置場所を管轄する産業保安監督部長(経済産業省の地方支分部局)と定めていると確認する。都道府県知事への提出という選択肢が出てきたら誤りだと見抜く

  8. 一般用電気工作物が技術基準に適合しているかどうかの調査義務を、その所有者自身が負うと思い込む

    なぜ引っかかる『自分の設備は自分で調査するはず』という直感が働きやすく、事業用電気工作物の設置者が技術基準適合維持義務(39条1項)を負うのと同じ発想で、一般用電気工作物も所有者側の義務だと連想しやすい

    見破り方電気事業法57条1項は、一般用電気工作物が技術基準に適合しているかどうかを調査する義務を、その一般用電気工作物と直接に電気的に接続する電線路を維持し、及び運用する者(電線路維持運用者。実務上は一般送配電事業者等)に課していると確認する。所有者・占有者は調査を受ける側であり、自ら調査する義務は負わない

  9. 保安規程に定める事項に、『電気エネルギーの使用の合理化』のような省エネに関する事項を紛れ込ませる

    なぜ引っかかる『保安』と『合理化』はどちらも設置者が果たすべき社会的責務という漠然とした共通点があり、保安規程という1つの書類にまとめて記載されそうに感じられる

    見破り方電気事業法施行規則50条3項が列挙する保安規程の記載事項9項目(業務管理者の職務・組織、保安教育、巡視点検検査、運転操作、発電所等の保全方法、非常時の措置、保安の記録、法定自主検査等の実施体制記録保存、その他必要事項)のいずれにも『電気エネルギーの使用の合理化』は含まれないと確認する。エネルギーの使用の合理化は、省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)が別途規律する事項であり、電気事業法上の保安規程とは根拠法令が異なる

  10. 一般用電気工作物として扱われる小規模発電設備の電圧基準を、300Vや750Vなど別の数字に置き換えてしまう

    なぜ引っかかる電気設備の電圧区分には低圧(交流600V以下・直流750V以下)・高圧・特別高圧という複数の数字が登場するため、38条1項ただし書が定める小規模発電設備の基準もどれかの数字と混同しやすい

    見破り方電気事業法施行規則48条1項は、38条1項ただし書の経済産業省令で定める電圧を600ボルトと定めていると確認する。一般用電気工作物として扱われる小規模発電設備は、この600V以下という基準を満たすものに限られる

  11. 第三種電気主任技術者は、すべての事業用電気工作物の保安の監督ができると思い込む

    なぜ引っかかる『電気主任技術者』という同じ肩書きのため、免状の種類(第一種・第二種・第三種)による監督範囲の違いを見落とし、資格を持っていれば規模を問わず監督できると錯覚しやすい

    見破り方電気事業法施行規則56条は、免状の種類ごとに監督できる範囲を限定していると確認する。第三種電気主任技術者免状は電圧5万ボルト未満(かつ出力5,000kW以上の発電所又は蓄電所を除く)に限られ、それを超える規模の設備には第二種(17万ボルト未満)や第一種(範囲の制限なし)の免状が必要になる

  12. 第二種電気主任技術者免状の監督範囲(17万ボルト未満)と、第三種電気主任技術者免状の監督範囲(5万ボルト未満)の数字を取り違える

    なぜ引っかかるどちらも『◯万ボルト未満』という同じ形式の基準のため、免状の種類とセットになった数字を逆に覚えやすい

    見破り方免状の格が上がるほど監督できる電圧の範囲も広がるという構造で覚える。第三種(最も基礎的な免状)=5万ボルト未満、第二種=17万ボルト未満、第一種=範囲の制限なし、という順序で整理すると数字を取り違えにくい

参考文献・出典

理解度チェック(20問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、20問で確認しよう。 内訳は基本7問・応用4問・ひっかけ9問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 20 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 「電気工作物」とは、発電・蓄電・変電・送電若しくは配電又は電気の使用のために設置する機械、器具、ダム、水路、貯水池、電線路その他の工作物をいう(電気事業法2条1項18号)。水力発電のために設置するダム・水路・貯水池も、この定義に含まれる電気工作物にあたる。ただし船舶・車両又は航空機に設置されるものその他政令で定めるものは除かれ、電気鉄道の車両に設置する電気設備はこの除外に該当し、電気工作物には含まれない
  2. 自家用電気工作物を設置する者が、感電による死傷事故・半焼以上の電気火災事故等の一定の事故を発生させたときは、電気関係報告規則3条に基づき、当該電気工作物の設置場所を管轄する産業保安監督部長に報告しなければならない。報告先は都道府県知事ではない
  3. 一般用電気工作物が技術基準に適合しているかどうかを調査する義務を負うのは、その一般用電気工作物の所有者や占有者ではなく、一般用電気工作物と直接に電気的に接続する電線路を維持し、及び運用する者(電線路維持運用者。実務上は一般送配電事業者等)である(電気事業法57条1項)。調査の結果、技術基準に適合していないと認めるときは、電線路維持運用者は遅滞なく、とるべき措置等を所有者又は占有者に通知しなければならない(57条2項)
  4. 電気工作物は、一般用電気工作物と事業用電気工作物に大別される。事業用電気工作物はさらに、電気事業の用に供する電気工作物と、自家用電気工作物(電力会社から高圧以上で受電する需要設備など)に分かれる(電気事業法38条)
  5. 小規模な太陽電池発電設備・風力発電設備は、自家用電気工作物のうち規模の小さいものとして小規模事業用電気工作物に区分され、保安規程・主任技術者の義務が軽減されている(38条3項)。低圧で受電している需要設備の構内に単独で設置する太陽電池発電設備では、出力10kW以上のものが小規模事業用電気工作物に区分される対象になり、低圧受電の実務上の上限に対応する出力50kW未満のものが典型例になる(電気事業法施行規則48条4項、資源エネルギー庁の公表資料)
  6. 38条1項ただし書は、一般用電気工作物の要件から除外される『小規模発電設備』を、低圧(経済産業省令で定める電圧以下の電圧)の電気に係る発電用の電気工作物と定義している。この経済産業省令で定める電圧は、電気事業法施行規則48条1項により600ボルトと定められている。したがって一般用電気工作物として扱われる小規模な発電設備は、電圧600ボルト以下のものに限られる
  7. 事業用電気工作物を設置する者は、これを主務省令で定める技術基準に適合するように維持しなければならない(39条1項)。この技術基準適合維持義務は、事業用電気工作物である限り常に課される
  8. 事業用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く)の設置者は保安規程を定めて主務大臣に届け出る義務(42条1項)と、主任技術者免状の交付を受けている者から主任技術者を選任する義務(43条1項)を負う
  9. 一般の自家用電気工作物の設置者が保安規程に定めるべき事項は、電気事業法施行規則50条3項に9項目が列挙されている。(1)工事・維持又は運用に関する業務を管理する者の職務及び組織、(2)工事・維持又は運用に従事する者に対する保安教育、(3)巡視・点検及び検査、(4)運転又は操作、(5)発電所又は蓄電所の運転を相当期間停止する場合の保全の方法、(6)災害その他非常の場合に採るべき措置、(7)保安についての記録、(8)法定自主検査又は使用前自己確認に係る実施体制及び記録の保存、(9)その他保安に関し必要な事項。電気エネルギーの使用の合理化に関することは、この9項目のいずれにも当たらず、保安規程の記載事項ではない(それは省エネ法上のトップランナー制度など別の法律の話)
  10. 自家用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く)の設置者は、43条1項の原則にかかわらず、主務大臣の許可を受ければ、主任技術者免状の交付を受けていない者を主任技術者として選任することができる(43条2項)。無資格者を自由に選任できるわけではなく、あくまで主務大臣の許可が前提になる
  11. 事業用電気工作物の設置・変更の工事のうち、主務省令で定めるものをしようとする者は、その工事の計画を主務大臣に届け出なければならず、届出が受理された日から30日を経過するまでは工事に着手できない(48条)
  12. 施工管理者は、電気工事士のように作業に従事する立場でも、電気主任技術者のように保安を監督する立場でもない。現場の技術上の管理者として、工事計画届出のスケジュールを工程表に組み込み、保安規程・主任技術者による指示・立会いに従いながら工事を進める立場になる
  13. 主任技術者免状の交付を受けている者が保安について監督をすることができる事業用電気工作物の工事、維持及び運用の範囲は、免状の種類ごとに経済産業省令で定められている(電気事業法44条5項)。具体的な範囲は電気事業法施行規則56条が定め、第一種電気主任技術者免状はダム水路・ボイラータービン関係を除く事業用電気工作物のすべて、第二種電気主任技術者免状は電圧17万ボルト未満、第三種電気主任技術者免状は電圧5万ボルト未満(出力5,000kW以上の発電所又は蓄電所を除く)の範囲に限られる
  14. 第三種電気主任技術者免状の監督範囲(電圧5万ボルト未満)には『出力5,000kW以上の発電所又は蓄電所を除く』という除外がかっこ書きで付されている。電圧が5万ボルト未満であっても、出力5,000kW以上の大規模な発電所・蓄電所は第三種電気主任技術者の監督範囲に含まれない点を見落としやすい
Xでシェア
打ち合わせを予約 見積依頼