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法規 ・ 1 / 8

建設業法の基礎 — 許可の区分と請負契約のルール

読み終えると、こうなる

「この工事は許可がなくても請け負えるか」を、金額と工事の種類の両面から自分で判断できるようになる

  • 軽微な建設工事の基準(500万円未満、建築一式工事は1,500万円未満)を挙げ、許可の要否を判断できる
  • 営業所の所在地から、その業者が国土交通大臣許可と都道府県知事許可のどちらを受けるべきか判断できる
  • 一般建設業許可と特定建設業許可の違いを、下請契約の金額という基準で説明できる
  • 著しく短い工期や不当に低い請負代金の禁止など、請負契約における発注者側の義務を挙げられる
考えてみよう

近所の店舗で「コンセントを1つ増やしてほしい」という小さな電気工事の依頼が来た。この工事、建設業の許可を持っていなくても請け負ってよいのだろうか。

一方で、ビル1棟分の受変電設備を新設するような大規模な電気工事は、当然どこかで許可が必要になりそうだ。両者の境界線はどこに引かれているのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、建設業許可が必要になる境界線を、金額と工事の種類の両面から自分で判断できるようになっている。

2級電気工事施工管理技士が根拠とする建設業法は、「誰が建設業を営んでよいか」「営むときにどんな義務を負うか」を定めた法律だ。その入口にあるのが、建設業の許可という制度になる。

そもそも「建設工事」とは何か — 定義は別表第一が決める

許可の話に入る前に、そもそも建設業法がいう「建設工事」とは何を指すのかを確認しておく。建設業法2条1項は、建設工事を「土木建築に関する工事で別表第一の上欄に掲げるもの」と定義している。別表第一には、土木一式工事・建築一式工事の2つの一式工事と、電気工事業・解体工事業などの専門工事、あわせて29業種が列挙されている。

ここで見落としやすいのが、**解体工事も建設工事の定義に含まれる**という点だ。「建設工事」という言葉の響きから、新たに何かを作り上げる工事(新築・改築)だけを思い浮かべ、解体という逆方向の工事は別枠だと考えてしまいやすい。しかし別表第一には解体工事業(解体工事)が明文で列挙されており、2016年の建設業法改正でとび・土工工事業から独立した業種として追加された経緯がある。「建設工事とは、解体工事を除く土木建築に関する工事をいう」という記述を見かけたら、それは定義に存在しない除外事項を紛れ込ませた誤りだと見抜く必要がある。

あわせて、条文でよく使われる立場を表す用語も2条にまとめて定義されている。「建設業」(2条2項)は元請、下請その他いかなる名義をもってするかを問わず建設工事の完成を請け負う営業、「建設業者」(2条3項)は3条1項の許可を受けて建設業を営む者をいう。そして「発注者」(2条5項)は建設工事(他の者から請け負ったものを除く)の注文者、「元請負人」は下請契約における注文者で建設業者であるもの、「下請負人」は下請契約における請負人と定義されている。

「発注者」と「元請負人」は、どちらも下請に対して工事を注文する立場という点で似ているが、決定的な違いは**その工事を他の者から請け負ったかどうか**にある。発注者は建設工事を他の者から請け負っていない(自らの工事として発注する)注文者、元請負人は建設業者から工事を請け負ったうえで、それをさらに下請に出す注文者だ。この2条の用語定義は、後で見る一括下請負の禁止(22条3項)や附帯工事(4条)を理解する土台になる。

許可が要らない工事もある — 軽微な建設工事の基準

建設業を営もうとする者は、原則として建設業の許可を受けなければならない(建設業法3条1項)。だがこの原則には、実務上とても重要な例外がある。軽微な建設工事のみを請け負う場合は、許可がなくても営業できる(3条1項ただし書)。

軽微な建設工事の基準は、建設業法施行令1条の2に定められている。

工事の種類許可が不要な基準
建築一式工事以外の工事(電気工事を含む)請負代金の額が500万円未満
建築一式工事請負代金の額が1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事
冒頭のコンセント増設工事のような小規模な電気工事は、請負代金が500万円未満であれば、建設業許可がなくても請け負える。逆に言えば、電気工事業を営む以上、いつかは500万円以上の工事を任される場面が来ると考えたほうがよい。許可の取得は「大きな仕事を受けるための入口」だと捉えると、この基準の意味が見えてくる。なお請負代金は、同一の工事を複数の契約に分割して請け負う場合、原則としてそれらの契約の合計額で判断される。

大臣許可と知事許可、一般建設業と特定建設業 — 2つの軸で決まる区分

建設業許可には2つの軸がある。1つは「どこに営業所を置くか」、もう1つは「下請にどれだけの規模の仕事を出すか」だ。

営業所の所在地による区分は、2以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業する場合は国土交通大臣、1つの都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業する場合はその営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受ける(3条1項)。

下請契約の規模による区分は、一般建設業と特定建設業の2種類だ。発注者から直接建設工事を請け負った者が、その工事を施工するために締結する下請契約の請負代金の額(2以上あるときはその総額)が、政令で定める金額(4,500万円以上、建築一式工事は7,000万円以上)になる場合は、特定建設業の許可が必要になる(3条1項2号)。

大臣許可・知事許可の区分と、一般建設業・特定建設業の区分は、**まったく別の軸**だ。「大臣許可=大企業」「知事許可=小規模業者」という思い込みは誤り。1つの都道府県内でしか営業していない知事許可業者でも、大規模な工事を元請として請け負い、下請への発注額が基準を超えれば特定建設業の許可が必要になる。「どこで営業するか」と「どれだけの規模の下請契約を結ぶか」を、別々の質問として切り分けて考える。

特定建設業の許可が必要かどうかを判断する基準は、あくまで下請契約の請負代金の総額であって、発注者が誰かは基準に含まれていない。「国や地方公共団体が発注者の工事だから、特定建設業の許可が必要なはずだ」という判断は誤りだ。公共工事であっても下請契約の総額が基準未満であれば一般建設業の許可で足り、逆に民間工事であっても基準を超える下請契約を結ぶなら特定建設業の許可が必要になる。「誰から発注されたか」ではなく「下請にどれだけ出すか」で判断する、という軸を最後まで崩さないようにしたい。

許可の有効期間は5年で、更新を受けなければその期間の経過によって効力を失う(3条3項)。5年ごとに更新の手続きが必要になる点は、電気工事士免状のような一度取得すれば更新不要の資格とは違う仕組みだと意識しておきたい。

ここでもう1つ、実務でも過去問でも狙われやすい誤解を正しておく。**大臣許可・知事許可の区分は、営業所をいくつの都道府県に設けているかで決まる基準にすぎず、実際に工事を施工できる地理的区域とは無関係**だ。都道府県知事の許可を受けた業者であっても、許可を受けた都道府県以外の全国どこの工事でも請け負い、施工することができる(国土交通省「建設業の許可とは」)。「知事許可=その都道府県内でしか仕事ができない許可」という思い込みは誤りで、東京都知事の許可を受けた業者が北海道の現場を施工しても何ら問題はない。

29業種のうち、電気工事業はどこに位置するか

建設工事の種類は、建設業法別表第一で29業種に区分されている。内訳は、土木一式工事・建築一式工事という2つの「一式工事」と、電気工事・管工事・大工工事などの27の「専門工事」だ。電気工事業はこの専門工事の1つになる。

一式工事と専門工事は、上位・下位の関係ではなく別々の許可区分だ。一式工事とは、総合的な企画・指導のもとで土木工作物や建築物を建設する工事のことで、基本的に元請業者が全体をまとめる工事を指す。建築一式工事の許可を持っていても、その中に含まれる電気工事や塗装工事を単独で請け負うには、それぞれの専門工事の許可が別途必要になる。「一式=すべて含む上位互換」ではない、という点を押さえておく。

許可を受けた業種以外の工事もできる場合がある — 附帯工事

ここまでの説明だと、「許可を受けた業種の工事しか請け負えない」と理解したくなるが、建設業法4条には例外がある。建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事を請け負う場合には、それに附帯する他の建設業に係る建設工事(附帯工事)を、その建設業の許可を別途受けていなくても請け負うことができる。

たとえば電気工事業の許可を受けた業者が、受変電設備の更新工事を請け負う際、その工事に付随して発生する小規模な壁の補修(本来は内装仕上工事や左官工事の範囲)まで、内装仕上工事業の許可なしに請け負えるようなケースがこれに当たる。あくまで主たる工事(電気工事)に附帯するものに限られ、附帯工事だけを独立して請け負うことはできない。

現場に掲げる標識 — 何が書かれていなければならないか

建設業者は、その店舗及び発注者から直接請け負った建設工事の現場ごとに、公衆の見やすい場所に標識を掲げなければならない(40条)。記載事項は建設業法施行規則25条に定められている。

掲示場所記載事項
店舗・現場共通一般建設業又は特定建設業の別/許可年月日・許可番号・許可を受けた建設業/商号又は名称/代表者の氏名
現場のみ追加主任技術者又は監理技術者の氏名
現場でよく耳にする「現場代理人」は、この標識の記載事項には含まれていない。現場代理人は請負契約上の当事者(受注者側)の代理人であり、標識で公示すべき「その工事の許可と技術上の管理体制」とは別の役割だからだ。標識に何を書くべきかを問われたら、「許可の内容」と「技術上の管理者(主任技術者・監理技術者)」の2系統で覚えると整理しやすい。

請負契約に関する規定 — 対等な立場と、禁止される行為

建設業法は、建設工事の請負契約についても規定を置いている。基本原則は18条にある。建設工事の請負契約の当事者は、各々対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行しなければならない。

この原則を具体化する形で、契約内容を書面に記載する義務(19条)が定められ、工事内容・請負代金の額・工事着手や完成の時期などを記載しなければならない。19条1項は、記載すべき事項を工事内容・請負代金の額・工事着手及び完成の時期・工事を施工しない日又は時間帯の定め・前金払等の支払時期と方法・設計変更等による工期又は請負代金の変更等の定め・天災等不可抗力による工期変更又は損害負担の定め・価格等の変動に基づく変更の定め・工事施工により第三者に及ぼした損害の負担の定め・注文者が資材提供や機械貸与をする場合の内容及び方法・完成検査の時期及び方法並びに引渡しの時期・完成後の支払時期及び方法・契約不適合責任等の定め・遅延利息や違約金等の定め・紛争解決方法など、16項目にわたって限定列挙している。

ここで見落としやすいのが、この19条1項の列挙に**下請負人の選定の時期は含まれていない**という点だ。元請・下請という構造をイメージすると、「いつ下請負人を決めるか」も契約書に書くべき重要事項に思えるが、19条1項が定めているのはあくまで発注者・受注者間の請負契約の内容(工事内容・金額・時期・変更や損害負担の定めなど)であり、下請負人の選定そのものは対象外だ。列挙にない項目は、実務上重要そうに見えても19条1項の法定記載事項ではないと判断する。

さらに、発注者側の優位な立場を利用した不公正な取引を防ぐため、次のような禁止規定が置かれている。

  • 不当に低い請負代金の禁止(19条の3): 注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金とする契約を締結してはならない
  • 著しく短い工期の禁止(19条の5): 注文者は、通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない

また、見積りについても規定があり(20条)、注文者が請負契約を締結する際に必要な見積り期間を確保することなどが求められている。

これらの禁止規定は、いずれも発注者(注文者)側の優位な立場の濫用を防ぐための規定だ。施工管理の実務では、自社が受注者として不当な条件を押し付けられていないかを確認する視点にもなるし、逆に自社が発注者側(下請への発注元)になる場面では、これらの規定を自ら守る側に立つことになる。

一括下請負の禁止 — 下請に丸投げしてはならない

請負契約に関するもう1つの重要な規制が、22条の一括下請負の禁止だ。建設業者は、その請け負った建設工事を、いかなる方法をもってするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない(22条1項)。逆側から見ても、建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負った建設工事を一括して請け負ってはならない(22条2項)。元請・下請どちらの立場からも、丸投げは原則として禁止されている。

この禁止には例外があるが、条件が2つ重なる。22条3項は、当該建設工事が「多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの」以外の建設工事であって、かつ元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得たときに限り、一括下請負の禁止規定を適用しないと定めている。そして建設業法施行令6条の4は、この「政令で定める重要な建設工事」を共同住宅を新築する建設工事と定めている。

ここで見落としやすいのが2点ある。1点目は、**承諾を得るべき相手は発注者であって、下請負人ではない**という点だ。元請・下請という構造をイメージすると、「下請負人が納得していれば問題ない」と思いがちだが、22条3項が求めているのはあくまで発注者の書面による承諾であり、下請負人がどれだけ承諾していても一括下請負が認められることにはならない。2点目は、**共同住宅を新築する建設工事は、発注者の承諾があっても一括下請負が認められない**という点だ。マンションのような共同住宅は、多数の入居者の生命・財産に関わる重要な建設工事として、施行令6条の4により例外の対象からあらかじめ除かれている。「発注者の承諾さえあれば、どんな工事でも一括下請負できる」という単純化は誤りで、承諾の相手と、工事の種類(共同住宅の新築かどうか)の両方を確認する必要がある。

電材商社の現場で、この境界線がどう効いてくるか

電材を扱う立場から見ても、取引先の電気工事業者が「どの許可を持っているか」「どの区分の業者か」を把握しておくことは、案件の規模を見極めるうえで役立つ。小規模な修繕工事しか請け負わない業者と、大規模な受変電設備工事を元請として管理できる特定建設業許可業者とでは、対応できる案件の規模がまったく違う。

建設業許可は「持っているかどうか」の二択ではなく、「どの区分の許可を、どの営業所単位で持っているか」まで見ると、その業者の実力がより具体的に見えてくる。

この資格を取ったあと、現場で何が変わるか

この資格を取ったあと、取引先から「500万円未満の小規模な電気工事なら、うちは建設業許可がなくても請け負えますよね」と相談されたとき、あなたはその境界線を建築一式工事とそれ以外で条件が違うことまで含めて、その場で正確に答えられるようになる。「うちは知事許可だから小規模業者だ」という思い込みを、大臣許可・知事許可の区分が営業所の所在地の話であって規模の話ではないと訂正できるのも、この知識があるからだ。

見積もり合わせの場面では、相手の業者が一般建設業と特定建設業のどちらの許可かを確認し、下請への発注額が基準を超える規模の元請案件を、その業者が本当にこなせる体制かを見極める材料にできる。附帯工事の範囲を正しく理解しているので、「この工事に付随するこの補修は、別の許可がなくても請け負えますか」という現場の疑問にもその場で答えられる。

電材商社との関係では、現場に掲げられた標識を見て、その業者の許可区分や主任技術者の氏名を読み取り、案件の規模に見合った体制かどうかを判断する視点を持てるようになる。許可の有無を「持っているか、いないか」の二択ではなく、区分・営業所単位まで踏み込んで見られる担当者として、取引先との商談の解像度が上がっていく。

冒頭の疑問、建設業許可が必要になる境界線はどこにあるのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 建設工事の定義(2条1項)に、解体工事は含まれないと思い込む

    なぜ引っかかる『建設工事』という言葉から、新たに何かを作り上げる工事(新築・改築)だけを連想し、解体という逆方向の工事は別枠だと錯覚しやすい

    見破り方建設業法2条1項は建設工事を『土木建築に関する工事で別表第一の上欄に掲げるもの』と定義しており、別表第一には解体工事業(解体工事)が明文で列挙されていると確認する。2016年の建設業法改正でとび・土工工事業から独立した業種として解体工事業が追加されており、解体工事は建設工事の定義から除外されていない

  2. 軽微な建設工事の金額基準を、すべての工事で一律500万円未満だと思い込む

    なぜ引っかかる『500万円の壁』という数字だけが強く印象に残り、建築一式工事に別の基準(1,500万円)があることを見落としやすい

    見破り方工事の種類が建築一式工事かどうかを必ず確認する。建築一式工事以外は500万円未満、建築一式工事は1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事、と条件を分けて覚える

  3. 一式工事の許可を持っていれば、含まれる専門工事も単独で請け負えると思い込む

    なぜ引っかかる『一式』という言葉から、専門工事をまとめて含む上位の許可だと連想しやすい

    見破り方一式工事は総合的な企画・指導のもとで工作物を建設する工事で、専門工事とは別の許可区分だと確認する。建築一式工事の許可だけでは、電気工事を単独で請け負うことはできない

  4. 一般建設業と特定建設業の違いを、会社の規模(資本金や従業員数)の違いだと誤解する

    なぜ引っかかる『特定』という言葉の響きから、大企業向けの特別な許可だと連想しやすい

    見破り方区分の基準は会社の規模ではなく、発注者から直接請け負った工事で、下請に出す金額の総額が一定額(4,500万円以上、建築一式工事は7,000万円以上)になるかどうかだと確認する。下請に出さない、または金額が小さい業者は特定建設業の許可を必要としない

  5. 大臣許可を『全国的に有名な大手企業向けの許可』、知事許可を『地元の小規模業者向けの許可』のようにランク付けして捉える

    なぜ引っかかる大臣と知事という肩書きの上下関係を、許可のランクに置き換えて連想しやすい

    見破り方区分の基準は業者の規模や実績ではなく、営業所が2以上の都道府県にあるかどうかという単純な事実だと確認する。1つの都道府県内でしか営業していなくても、大規模な工事を請け負う知事許可業者はいくらでもいる

  6. 都道府県知事の許可を、その都道府県内でしか工事を施工できない許可だと誤解する

    なぜ引っかかる『都道府県知事』という許可権者の名称から、許可の効力もその都道府県内の工事に限られると連想しやすい

    見破り方大臣許可・知事許可の区分は、営業所をいくつの都道府県に設けているかで許可権者が決まるだけの基準であり、実際に施工できる工事現場の地理的区域には建設業法上の制限がないと確認する。東京都知事の許可を受けた業者が北海道の工事を施工しても問題はない

  7. 許可を受けた建設業以外の工事は、金額の大小にかかわらず一切請け負えないと思い込む

    なぜ引っかかる『許可を受けた業種でなければ請け負えない』という原則を厳格に捉えすぎ、附帯工事という例外を見落としやすい

    見破り方建設業法4条は、許可を受けた建設業に係る建設工事を請け負う場合に、それに附帯する他の建設業に係る建設工事(附帯工事)も併せて請け負えると定めていると確認する。たとえば電気工事業の許可業者が、電気設備工事に附帯する小規模な内装の補修工事を、内装工事業の許可なしで請け負えるような場面がこれに当たる

  8. 国や地方公共団体が発注者である工事は、それだけで特定建設業の許可が必要だと思い込む

    なぜ引っかかる『公共工事=規模も金額も大きい特別な工事』という漠然としたイメージから、発注者が公的機関であること自体が特定建設業許可の要件だと連想しやすい

    見破り方建設業法3条1項2号は、特定建設業の許可が必要になる基準を『発注者から直接請け負った工事について締結する下請契約の請負代金の総額が政令で定める金額以上になること』とのみ定めており、発注者が国・地方公共団体か民間かは基準に含まれていないと確認する。国や地方公共団体が発注者でも、下請契約の総額が基準未満であれば一般建設業の許可で足りる

  9. 建設業法19条1項が定める請負契約書の法定記載事項に、『下請負人の選定の時期』のような下請に関する事項まで含めてしまう

    なぜ引っかかる元請・下請という構造を意識するあまり、下請負人をいつ決めるかも契約書に明記すべき重要事項だと連想しやすい

    見破り方19条1項各号は、工事内容・請負代金の額・工事着手及び完成の時期・支払時期と方法・工期や請負代金の変更に関する定めなど16項目を限定列挙していると確認する。下請負人の選定の時期はこの列挙のいずれにも当たらず、法定記載事項には含まれない。列挙にない項目は、実務上重要そうに見えても19条1項の対象外だと判断する

  10. 一括下請負の禁止(22条3項)の例外要件を、『下請負人の承諾があれば認められる』と取り違える

    なぜ引っかかる元請・下請という当事者間の合意を重視するあまり、承諾の相手が発注者であることを見落としやすい

    見破り方22条3項は、元請負人があらかじめ『発注者』の書面による承諾を得た場合に限り、一括下請負の禁止規定が適用されないと定めていると確認する。下請負人がいくら承諾していても、発注者の承諾がなければ一括下請負は認められない

  11. 一括下請負の禁止の例外(発注者の書面による承諾)が、あらゆる建設工事に適用できると思い込む

    なぜ引っかかる『発注者の承諾さえあれば一括下請負が認められる』という原則だけを覚えると、例外の対象から外れる工事類型があることを見落としやすい

    見破り方建設業法施行令6条の4は、22条3項の例外が適用されない『政令で定める重要な建設工事』を共同住宅を新築する建設工事と定めていると確認する。共同住宅の新築工事は、発注者の書面による承諾があっても一括下請負が認められない

参考文献・出典

  • 建設業法(e-Gov法令検索) (2条(用語の定義:建設工事・建設業・建設業者・下請契約・発注者・元請負人・下請負人)、3条(許可)、4条(附帯工事)、18条(請負契約の原則)、19条(請負契約の内容)、19条の3(不当に低い請負代金の禁止)、19条の5(著しく短い工期の禁止)、20条(見積り等)、22条(一括下請負の禁止)、40条(標識の掲示)、別表第一(業種区分:解体工事業を含む))
  • 建設業法施行令(e-Gov法令検索) (1条の2(軽微な建設工事)、6条の4(一括下請負の禁止の対象となる重要な建設工事:共同住宅を新築する建設工事))
  • 建設業法施行規則(e-Gov法令検索) (25条(標識の記載事項及び様式))
  • 国土交通省「建設業の許可とは」 (大臣許可・知事許可の区分と施工区域の関係)

理解度チェック(17問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、17問で確認しよう。 内訳は基本6問・応用3問・ひっかけ8問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 17 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 建設業法2条1項は『建設工事』を、土木建築に関する工事で別表第一の上欄に掲げるものと定義する。別表第一には土木一式工事・建築一式工事に加え、電気工事業・解体工事業など29業種が列挙されており、解体工事(工作物の除去)もこの別表に含まれる建設工事の一種である。『建設工事とは解体工事を除く土木建築に関する工事をいう』という記述は誤り
  2. 建設業法2条2項は『建設業』を元請、下請その他いかなる名義をもってするかを問わず建設工事の完成を請け負う営業と定義し、2条3項は『建設業者』を3条1項の許可を受けて建設業を営む者と定義する。2条5項は『発注者』を建設工事(他の者から請け負ったものを除く)の注文者、『元請負人』を下請契約における注文者で建設業者であるもの、『下請負人』を下請契約における請負人と定義する
  3. 建設業を営もうとする者は、原則として建設業の許可が必要(建設業法3条1項)。ただし軽微な建設工事のみを請け負う場合は許可不要(3条1項ただし書)
  4. 軽微な建設工事の基準は、建築一式工事以外は請負代金500万円未満、建築一式工事は1,500万円未満または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事(建設業法施行令1条の2)
  5. 許可は営業所の所在地で区分される。2以上の都道府県に営業所を設ける場合は国土交通大臣、1つの都道府県内にのみ営業所を設ける場合はその都道府県知事の許可(3条1項)
  6. 許可は一般建設業と特定建設業の2区分。発注者から直接請け負った工事で、下請契約の請負代金の総額が政令で定める金額(4,500万円以上、建築一式工事は7,000万円以上)になる場合は特定建設業の許可が必要(3条1項2号)
  7. 特定建設業の許可が必要かどうかは、発注者が国や地方公共団体などの公的機関であるかどうかとは無関係で、発注者から直接請け負った工事について締結する下請契約の請負代金の総額が政令で定める金額(4,500万円以上、建築一式工事は7,000万円以上)になるかどうかのみで判断される(建設業法3条1項2号)。国・地方公共団体が発注者の工事であっても、下請契約の総額がこの基準未満であれば一般建設業の許可で足りる
  8. 許可の有効期間は5年で、更新を受けなければ効力を失う(3条3項)
  9. 大臣許可・知事許可の区分は、営業所をいくつの都道府県に設けているかで決まる基準にすぎない。実際に建設工事を施工できる地理的区域には、建設業法上の制限はない。都道府県知事の許可を受けた建設業者でも、許可を受けた都道府県以外の全国どこでも工事を請け負い、施工することができる(建設業法3条1項、国土交通省『建設業の許可とは』)
  10. 建設工事の種類は別表第一で29業種(2つの一式工事+27の専門工事)に区分され、電気工事業もその一つ。一式工事の許可があっても、含まれる専門工事を単独で請け負うには、その専門工事の許可が別途必要
  11. 請負契約は当事者の対等な立場における合意・信義誠実の履行が原則(18条)。書面には工事内容・請負代金額・工期などを記載する義務があり(19条)、不当に低い請負代金(19条の3)や著しく短い工期(19条の5)を定める契約は禁止されている
  12. 建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事を請け負う場合には、当該建設工事に附帯する他の建設業に係る建設工事(附帯工事)を、その建設業の許可を別途受けていなくても請け負うことができる(4条)
  13. 建設業法19条1項が定める請負契約書の法定記載事項は、工事内容・請負代金の額・工事着手及び完成の時期・工事を施工しない日又は時間帯の定め・前金払等の支払時期と方法・設計変更等による工期又は請負代金の変更等の定め・天災等不可抗力による工期変更又は損害負担の定め・価格等の変動に基づく変更の定め・工事施工により第三者に及ぼした損害の負担の定め・注文者が資材提供や機械貸与をする場合の内容及び方法・完成検査の時期及び方法並びに引渡しの時期・完成後の請負代金の支払時期及び方法・契約不適合責任等の定め・遅延利息や違約金等の定め・紛争解決方法など16項目にわたる(19条1項各号)。下請負人の選定の時期は、この法定記載事項のいずれにも当たらない
  14. 建設業者は、その店舗及び発注者から直接請け負った建設工事の現場ごとに、公衆の見やすい場所に標識を掲げなければならない(40条)。記載事項は、一般建設業又は特定建設業の別、許可年月日・許可番号・許可を受けた建設業、商号又は名称、代表者の氏名(現場の標識にはさらに主任技術者又は監理技術者の氏名を追加)で、現場代理人の氏名は含まれない(建設業法施行規則25条)
  15. 建設業者は、その請け負った建設工事を、いかなる方法をもってするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない(22条1項、一括下請負の禁止)。建設業を営む者も、建設業者から当該建設業者の請け負った建設工事を一括して請け負ってはならない(22条2項)。この禁止規定は、当該建設工事が『多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの』以外の建設工事であって、かつ元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得たときに限り、適用されない(22条3項)。承諾を得るべき相手は発注者であって、下請負人ではない
  16. 建設業法施行令6条の4は、22条3項の例外(発注者の書面による承諾があれば一括下請負が認められる)が適用されない『政令で定める重要な建設工事』を、共同住宅を新築する建設工事と定めている。したがって共同住宅の新築工事は、発注者の書面による承諾があっても一括下請負が認められない
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