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施工管理法(知識) ・ 4 / 8

品質管理の基礎 — 『検査に合格すること』と『品質を確保すること』は同じではない

読み終えると、こうなる

検査記録を見たとき、それが『合否を判定する紙』ではなく『あとから追跡できる証拠』だと分かるようになる。

  • 品質管理をPDCAサイクルの中で説明できる
  • 竣工検査で行う測定・試験の一般的な順序を、根拠(安全確認が先)とあわせて説明できる
  • 隠れてしまう部分(配管・埋設配線等)の記録を、仕上げ工事の前に残しておくべき理由を説明できる
考えてみよう

ある電気工事の現場で、竣工検査はすべて合格した。書類上は何の問題もない。ところが数年後、その建物で改修工事をしようとしたとき、天井裏の配管がどこをどう通っているのか、誰にも分からなかった。

検査には合格していたのに、なぜ「分からない」という事態が起きたのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、検査に合格することと、品質を確保することの違いを説明できるようになっている。

品質管理と聞くと、多くの人は「検査に合格すること」を思い浮かべる。しかし検査は、品質を確認するための手段であって、それ自体が目的ではない。目的は、設計図書どおりの性能・仕上がりを実現し、施主が求める品質を確保することにある。この手段と目的の順序を取り違えると、「検査さえ通ればいい」という発想に陥り、記録を軽視したり、あとから確認できない施工を残したりする落とし穴にはまる。

PDCAサイクルで品質管理を運用する

品質管理は、一度きりの検査で完結するものではなく、Plan(計画)→Do(施工)→Check(検査・確認)→Action(是正・改善)というサイクルを回し続けることで維持される。

品質管理のPDCAサイクル Plan(品質計画) Do(施工) Check(検査・確認) Action(是正・改善) 検査で見つかった不具合は、原因を確認し次の計画に反映させる 品質管理はCheckで終わらず、Actionを経て次のPlanへつながる(自作の概念図)

検査(Check)で不具合が見つかったとき、その場で直すだけで終わらせず、なぜその不具合が起きたのかを確認し、同じ原因で再発しないよう次の計画(Plan)に反映させる。この一巡があって初めて、品質管理は「検査のたびに一喜一憂する作業」から「品質を継続的に底上げする仕組み」に変わる。

出題では、Plan・Do・Check・Actionという名称ではなく、「品質に関する方針に基づき、品質の仕様を決定する」「標準どおりに作業を実施する」「品質を測定・試験し、結果を基準と比較して確認する」「不具合が出たら、原因を調べて処置する」というように、活動の内容だけを(ア)〜(エ)でラベル付けして、正しい順序に並べ替えさせる形式が出ることもある。

このタイプの設問は、名称の暗記だけでは解けない。「方針・仕様を決める=Plan」「標準どおり作業する=Do」「測定・試験して基準と比較する=Check」「原因を調べて処置する=Action」という、活動内容の動詞と段階の対応を先に押さえておき、説明文がラベル化されて出てきても、この骨格に当てはめ直して順序を特定する。

竣工検査の順序 — 安全に確認できることを先に

竣工検査では、複数の測定・試験を決まった順序で行う。一般的な順序は次のとおりだ。

順序検査・試験確認すること
1目視点検図面どおりの施工か、外観に異常がないか
2絶縁抵抗測定電路・機器の絶縁が保たれているか(無電圧の状態で実施)
3接地抵抗測定各接地工事が規定の抵抗値に収まっているか
4導通試験配線が図面どおりに正しくつながっているか(未通電の状態で実施)
5通電試験(試送電)実際に電気を通し、機器が正常に動作するか
この順序には理由がある。**絶縁抵抗測定や導通試験は、電気を通す前(無電圧・未通電)に確認できる項目だ。** もし絶縁不良や誤配線が残ったまま先に通電してしまえば、感電や機器の損傷、最悪の場合は火災につながりかねない。だからこそ、無電圧・未通電の状態で安全に確認できる項目をすべて済ませたあとで、最後に通電試験に進む、という順序が守られている。「早く動作確認をしたい」という実務の気持ちで通電試験を前に持ってくることは、安全上できない。

電気工事特有の検査項目としては、この絶縁抵抗測定・接地抵抗測定・導通試験に加えて、保護継電器(漏電遮断器・過電流継電器等)が正しく動作するかの確認や、高圧受電設備であれば絶縁耐力試験のような、電気設備ならではの検査が加わる。これらは電圧・電流という目に見えないものの状態を、測定器を通じて数値に翻訳して確認する検査だ。

記録は「合否の証明書」ではなく「あとから追跡できる証拠」

検査に合格したという結果だけでなく、その過程を記録として残しておくことも、品質管理の重要な一部だ。とりわけ電線管の配管や埋設配線のように、仕上げ工事(天井材・壁材の設置、土の埋め戻しなど)が終わると目視で確認できなくなる部分は、隠れてしまう前に写真や試験記録として残しておく必要がある。

冒頭の現場のように、検査にはすべて合格していても、施工途中の記録が残っていなければ、数年後の改修工事で「配管がどこを通っているか分からない」という事態を招く。検査記録は、その場の合否を証明する紙ではなく、施工した内容をあとから第三者が追跡・検証できるようにするための証拠だと捉え直すと、記録を残す優先順位の付け方が変わってくる。

絶縁抵抗測定の実務 — 「合格」の数字はどう測られたか

竣工検査の順序(目視点検→絶縁抵抗測定→接地抵抗測定→導通試験→通電試験)はすでに見た。ここでは、その2番目に行う絶縁抵抗測定を、実際にどう測るかを見ていく。

絶縁抵抗計(メガー)は、測定する回路の使用電圧に応じて定格電圧を使い分ける機器だ。目安として、高圧回路の測定には1000V絶縁抵抗計、低圧幹線の測定には500V絶縁抵抗計を用いる。定格電圧の違う絶縁抵抗計を取り違えると、正しい絶縁性能を評価できない。

測定に入る前には、絶縁抵抗計そのものが正常に機能しているかを確認する3つのチェックを行う。

チェック項目確認すること
電池チェック絶縁抵抗計本体の電池残量が十分かを確認する
開放(∞)チェック測定端子を開放した状態で指示値が∞(無限大)を示すかを確認する
0(ゼロ)チェック測定端子を短絡した状態で指示値が0Ωを示すかを確認する
測定を開始した直後の指示値を、そのまま測定値として記録してはいけない。電線・ケーブルは静電容量を持つため、絶縁抵抗計を接続した瞬間は充電電流が流れ、指示値が不安定になる。**指示値が落ち着くのを待ってから**読み取った値を、測定値として採用する。「針が動いた瞬間の数字」を急いで記録すると、実際の絶縁性能より低い(あるいは不安定な)値を誤って記載してしまうことがある。

冒頭の「検査記録に合格と書かれていた」という話に戻ると、その合格の数字は、正しい定格電圧の絶縁抵抗計で、事前のチェックを済ませたうえで、指示値が安定してから読み取られたものか——という測定の手順そのものも、記録の信頼性を左右する要素になる。

接地抵抗測定の実務 — 端子は「切り離して」測る

竣工検査の順序で絶縁抵抗測定の次に行う接地抵抗測定にも、見落としやすい手順がある。接地抵抗計(電位差計式)で接地極の接地抵抗を測定する前には、次の3点を確認する。

チェック項目確認すること
地電圧の確認測定対象の接地極に、測定を乱すほどの地電圧が生じていないか
電池電圧の確認接地抵抗計本体の電池残量が十分か
検流計零位の確認検流計の指針が零を示したときのダイヤル指示値を読み取る
この3点に加えてもう1つ、見落とすと測定値そのものが無意味になる手順がある。接地端子盤内で、機器側の配線と接地極側の配線をつなぐ端子は、測定の前に**切り離す**必要がある。端子が接続されたままだと、測定電流が対象の接地極だけでなく、他の機器につながった別系統の接地極を経由しても流れてしまい、対象の接地極単独の正しい抵抗値が測定できない。「機器側と接地極側の端子が接続されていることを確認したうえで測定した」という記載は、確認する向きが逆であり、正しくは「切り離されていることを確認したうえで測定する」でなければならない。

接地抵抗計(電位差計式)そのものの測定原理にも、見落としやすい配置のルールがある。一般に使われる電圧降下式(電位降下法)は、被測定接地極(E)に電流を流し、電位用の補助接地棒(P)と電流用の補助接地棒(C)の間に生じる電位差から抵抗値を求める測定法だ。この3本の電極は、E→P→Cの順に一直線上へ、同じ方向へおおむね5〜10m程度の間隔で打ち込む。

「E・P・Cをそれぞれ離して配置する」という説明だけを覚えると、Eを中心にPとCを両側(逆方向)へ振り分けるほうが均等で合理的に見えてしまう。しかし電位降下法は、Eに流した電流がP・C間の電位差として一直線上の電界を通じて戻ってくることを利用する測定法であり、**E・P・Cは必ず同じ方向へ一直線上に並べる**。Eを中心に両側へ振り分ける配置は、この一直線上という原則そのものに反しており、離す距離が十分でも正しい測定にはならない。

ISO 9000の用語 — 「起きた後」か「起きる前」かで区別する

品質管理の国際規格であるISO 9000(日本産業規格ではJIS Q 9000)には、品質マネジメントの活動を表す共通の用語が定められている。中でも紛らわしいのが、是正処置予防処置だ。

用語意味時系列
是正処置すでに発生した不適合の原因を除去し、再発を防止するための処置不適合が起きた「後」
予防処置まだ発生していない、起こりうる不適合の原因を除去する処置不適合が起きる「前」
トレーサビリティ対象の履歴、適用又は所在を追跡できること
レビュー目標を達成するための対象の適切性・妥当性・有効性を判定する活動
継続的改善パフォーマンスを向上するために繰り返し行われる活動
是正処置と予防処置は、どちらも「不適合への対応」という点で似て見えるが、区別の軸は**時系列**にある。すでに起きてしまった不適合(例えば配線ミス)の原因を分析し、再発を防ぐ対策を打つのが是正処置。まだ起きていないが、類似の工事で起こりうる不適合をあらかじめ予測し、事前に対策を講じるのが予防処置だ。「重大さ」や「規模」ではなく、「起きた後か、起きる前か」で判断する。

ヒストグラムの読み方 — 中央値と平均値を混同しない

竣工検査の各項目や資材の受入検査では、測定値のばらつきをヒストグラム(柱状図)で確認することがある。ヒストグラムは、測定値の範囲をいくつかの区間に区切り、各区間に入るデータの個数を棒の高さで示した図で、規格値の上限・下限を線で加えると、そこからはみ出す測定値(規格外れ)も一目で分かる。

ヒストグラムの読み方でつまずきやすいのが、**中央値と平均値の混同**だ。中央値(メジアン)は、データを大きさの順に並べたときに真ん中に位置する値であり、平均値(データの総和をデータの個数で割った値)とはまったく別の統計量になる。両者は多くの場合近い値になるが、極端に大きい・小さい測定値(外れ値)が混じると、平均値だけが引っ張られてずれることがある。『中央値=総和÷個数』という説明が出てきたら、それは平均値の定義を中央値に取り違えたものだと判断する。

分布の形状にも読み方がある。測定値のばらつきが特定の原因(工具の摩耗、材料のロット差など)に偏っていなければ、分布は中心付近からほぼ左右対称になるのが一般的な形だ。左右どちらかに大きく偏った分布や、山が2つに分かれた分布は、何らかの異常要因が混ざっているサインとして読み取る。ばらつきの大きさそのものは標準偏差で表され、標準偏差が大きいほど、平均から遠く離れた測定値が多く含まれていることを意味する。

離れ小島形 — 少数だからこそ、見過ごしてはいけない分布

一般形(左右対称)のほかにも、ヒストグラムにはいくつかの特徴的な形状パターンがある。その中でも見つけたときの対応を間違えやすいのが、離れ小島形だ。メインの山(大部分のデータが集まる山)からは離れた場所に、少数のデータだけがぽつんと孤立して現れる形状を指す。

離れ小島形は「件数が少ないから、誤差の範囲だろう」と読み飛ばしたくなるが、それは逆だ。メインの山と離れた場所に孤立して現れるということ自体が、**メインの分布とは別の原因が混ざっている**サインになる。考えられる原因としては、測定そのもののミス、試作品や前工程のロットが誤って混入したこと、別の作業者・別の条件で作られた材料が紛れ込んだことなどがある。「少数だから気にしなくてよい」のではなく、**その孤立したデータがなぜそこに現れたのかを個別に調べる対象**だと捉え直す必要がある。

離れ小島形が現れたヒストグラムをそのまま「平均値〇〇、標準偏差〇〇」と読み上げてしまうと、孤立したデータの影響で平均値そのものが引っ張られていることにも気づけない。分布の形を見て「一般形からズレていないか」を先に確認してから、平均値や標準偏差といった数値の計算に進む、という順序で読むとよい。

管理図 — 「ダイヤグラム」という似た名前の別物に注意する

ヒストグラムと並んで、品質管理でよく使われる図表に管理図がある。中心線(CL)を挟んで、上方管理限界線(UCL)と下方管理限界線(LCL)を設定し、そこに測定値を時系列でプロットして折れ線でつないでいく図だ。線が管理限界線の内側に収まっている間は「工程は安定している(偶然のばらつきの範囲内)」と判断でき、限界線をはみ出す点が現れたら「見過ごせない異常な原因が発生している」というサインとして読み取る。

管理図と名前が紛らわしいのが**ダイヤグラム**だ。ダイヤグラムは、トンネルや道路のように工事区間が線状に延び、一定方向にしか進捗できない工事で使われる**座標式工程表(斜線式工程表)**の一種で、縦軸に工期、横軸に距離程(施工位置)をとり、進捗を1本の斜めの線で示す。「時系列にデータをプロットする図」という見た目の共通点から、品質管理のQC七つ道具(パレート図・特性要因図・ヒストグラム・散布図・管理図・チェックシート・グラフ)の一つだと誤解しやすいが、ダイヤグラムはあくまで**工程管理**のための図表であり、品質のばらつきを判定する図ではない。「品質のばらつきを時系列で見たい」ときに選ぶべきは、管理図であってダイヤグラムではない。

試験・測定機器 — 「何を確認する機器か」で区別する

電気工事の試験・測定では、目的の異なる複数の機器を使い分ける。竣工検査で扱う絶縁抵抗計・接地抵抗計に加えて、日常の施工でもよく使う機器を整理しておく。

機器使用目的
検電器充電の有無の確認
検相器三相動力回路の相順(U-V-W等の接続順序)の確認
接地抵抗計接地極の接地抵抗の測定
絶縁抵抗計(メガー)電路・機器の絶縁抵抗値〔MΩ〕の測定
絶縁耐力試験器高圧回路が規定の試験電圧に一定時間耐えられるか(絶縁耐力)の試験
回路計(テスタ)低圧回路の電圧値などの測定
この中で取り違えやすいのが、**接地抵抗計**と**絶縁抵抗計**だ。どちらも「〇〇抵抗計」という名前を持ち、抵抗を測る計器という共通点があるため、同じように使えると錯覚しやすい。しかし接地抵抗計が測るのは接地極そのものの接地抵抗であって、電路・機器の絶縁性能(絶縁抵抗)ではない。絶縁抵抗を測定したいときは、必ず絶縁抵抗計(メガー)を使う。名前の共通点ではなく、「何の抵抗を測る機器か」で区別する必要がある。

もう一つ紛らわしいのが、絶縁抵抗計絶縁耐力試験器だ。どちらも「絶縁」の状態を確認する機器だが、測定対象と目的が違う。絶縁抵抗計は、比較的低い電圧をかけて絶縁抵抗値〔MΩ〕という数値を読み取る試験で、いわば「健康診断」にあたる。これに対し絶縁耐力試験器は、高圧・特別高圧回路に規定の試験電圧を連続した一定時間(目安10分間)かけ続け、絶縁破壊やフラッシュオーバーが起きずに実際に耐えられるかを実証する試験で、いわば「耐久テスト」にあたる。竣工検査で高圧設備の絶縁抵抗値が良好だったとしても、それだけで絶縁耐力試験を省略してよいことにはならない。

絶縁抵抗測定と絶縁耐力試験は、どちらも「絶縁」を確認する試験という共通点があるため、片方の結果でもう片方を代替できると誤解しやすい。しかし絶縁抵抗計は数値(MΩ)を測る試験、絶縁耐力試験器は規定電圧に一定時間耐えられるかを合否で確認する試験と、測定対象・目的がそもそも異なる。高圧受電設備の竣工検査では、絶縁抵抗測定に加えて絶縁耐力試験も実施することが求められる場面がある、という前提で機器を使い分ける。

品質管理は、次に工事を任される理由になる

品質管理をきちんと行うことは、単に検査に通るためだけの作業ではない。竣工後に何年も使われ続ける設備の記録を、施主や後続の工事業者が確認できる形で残しておくことは、電気工事会社としての信頼に直結する。「あの会社の記録はいつも整理されている」という評判は、次の工事を任されるかどうかにも関わってくる。

今日試せることとして、身近な工事の検査記録や試験成績書を見る機会があれば、そこに書かれている数値だけでなく、いつ・誰が・どの状態で測定したかという記録の残し方に注目してみるといい。合格の数字の裏に、あとから確認できるようにするための配慮が積み重なっていることが見えてくる。

この資格を取ったあと、現場で何が変わるか

取引先が「配管は仕上げ材で隠れるので、写真記録は省略して急ぎたい」と言ってきたとき、これまでは工期優先の要望をそのまま受け入れていたのが、合格後は「今のうちに記録しておかないと、数年後の改修で誰も確認できなくなります」と、検査記録の役割を根拠を持って説明できるようになる。合否だけを見る担当者から、記録が持つあとから追跡できる証拠としての価値を理解した担当者への変化だ。

竣工検査で提出された絶縁抵抗測定の記録に目を通すときも、「合格」の文字をそのまま受け取るのではなく、その検査が正しい順序(無電圧・未通電の項目を先に、通電試験を最後に)で行われているかを意識できるようになる。取引先の記録に違和感を覚えたとき、それを指摘できる立場は、単に製品を納めるだけの業者にはない役割だ。

不具合が起きたときの対応を「是正処置」なのか「まだ起きていない不具合への予防処置」なのかを時系列で区別して話せるようになると、取引先との再発防止の相談が、感覚的な「気をつけます」から、記録として残る具体的な合意に変わる。品質管理を語れる商社担当者だという評判は、次の工事の相談が最初に自社へ来る理由の一つになる。

冒頭の問い、検査には合格していたのに、なぜ配管の場所が分からなくなったのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 竣工検査の順序を入れ替え、通電試験を絶縁抵抗測定より先に行わせる選択肢を混ぜる

    なぜ引っかかる『早く通電して動作を確認したい』という実務の感覚から、通電試験を早い段階に置いてしまいやすい

    見破り方検査の順序は、安全に確認できる項目(無電圧・未通電の状態でできる項目)を先に、通電をともなう確認を最後に、という原則で並んでいる。絶縁不良が残ったまま通電すれば事故につながるため、絶縁抵抗測定は必ず通電試験より前に行う

  2. 品質管理の目的を『検査に合格すること』そのものにすり替える

    なぜ引っかかる検査という行為に注目しすぎると、合否判定そのものがゴールだと錯覚しやすい

    見破り方検査は品質を確認するための手段であって、目的そのものではない。目的は、設計図書どおりの性能・仕上がりを実現し、施主が求める品質を確保することにある、という手段と目的の区別を意識する

  3. 記録は『合格した項目だけ』残せばよいと思わせる、あるいは隠れる部分の記録を省略させる

    なぜ引っかかる検査記録を『合格の証明書』としてだけ捉えると、不合格や仕掛かり中の状態を記録する意味を見落としやすい

    見破り方配管・埋設配線のように仕上げ後は目視できなくなる部分は、施工途中の状態を写真や試験記録で残しておかないと、あとから確認する手段が失われる。記録は合否の証明だけでなく、あとから追跡・検証するための証拠だという役割で捉え直す

  4. 是正処置と予防処置を、時系列(不適合が起きた後か前か)ではなく、重要度や規模の違いだと思い込む

    なぜ引っかかる『是正』と『予防』という言葉の響きだけでは、どちらも『問題への対応』という点で似て見え、時間軸の違いに意識が向きにくい

    見破り方是正処置は、すでに発生した不適合の原因を除去し再発を防止する処置。予防処置は、まだ発生していない、起こりうる不適合の原因をあらかじめ除去する未然防止の処置。『すでに起きたか、まだ起きていないか』という時系列の違いで区別する

  5. 絶縁抵抗計をつないだ直後の指示値を、そのまま測定値として記録させる

    なぜ引っかかる計器の針が動いた瞬間に読み取れば早く済むという実務の感覚から、最初に見えた数字をそのまま採用したくなる

    見破り方絶縁抵抗計は測定を開始した直後、電線・ケーブルが持つ静電容量による充電電流の影響で指示値が不安定になる。指示値が落ち着くのを待ってから読み取った値を、測定値として採用する

  6. 高圧回路・低圧幹線のどちらにも、同じ定格電圧の絶縁抵抗計を使ってよいと思わせる

    なぜ引っかかる『絶縁抵抗計』という同じ機器を使うため、電圧による使い分けまで意識が向きにくい

    見破り方絶縁抵抗計は、測定する回路の使用電圧に応じて定格電圧を使い分ける。目安として、高圧回路は1000V絶縁抵抗計、低圧幹線は500V絶縁抵抗計を用いる、という組み合わせで覚え直す

  7. 接地抵抗測定の前に、接地端子盤内の機器側と接地極側の端子が『接続されている』ことを確認させる

    なぜ引っかかる導通試験のような他の試験では『接続されていること』を確認するのが正しい手順のため、同じ感覚で接地抵抗測定にも当てはめてしまいやすい

    見破り方接地抵抗測定は、測定対象の接地極だけの抵抗を測るための試験だ。機器側と接地極側の端子が接続されたままだと、他の機器の接地系統を経由した電流が混ざり、正しい値が測れない。測定前には、この2つの端子を**切り離す**ことを確認する

  8. PDCAの各段階を、名称(Plan/Do/Check/Action)ではなく活動内容の説明文だけで示され、対応関係を取り違える

    なぜ引っかかる『品質の仕様を決定する』のような表現は、具体的な決定事項に見えるため、計画(Plan)ではなくDoやActionの活動だと錯覚しやすい

    見破り方活動内容を『方針・仕様を決める(Plan)→標準どおり作業する(Do)→測定・試験して基準と比較する(Check)→原因を調べて処置する(Action)』という4つの動詞のパターンに当てはめ直す。説明文がラベル化されていても、この動詞の骨格と照合すれば対応関係を特定できる

  9. ヒストグラムの説明で『中央値とは、データの総和をデータの個数で割った値』と、中央値と平均値の定義を入れ替える

    なぜ引っかかるどちらも『データ全体を代表する1つの値』という点で似ており、日常会話でも『平均的な』『真ん中あたりの』という言い回しを区別せずに使うため、統計用語としての定義の違いを意識しにくい

    見破り方中央値(メジアン)はデータを大きさの順に並べたときの真ん中の値、平均値はデータの総和をデータの個数で割った値。『総和÷個数』という説明が出てきたら、それは平均値の定義であって中央値の定義ではないと判定する

  10. ヒストグラムに離れ小島形の分布が現れているのを、『たまたま出た誤差だから気にしなくてよい』と読み流させる

    なぜ引っかかるメインの山から離れた少数のデータは、全体の中では目立たず『誤差の範囲』のように見えてしまいやすい

    見破り方離れ小島形は、メインの分布とは別の原因(測定ミス、試作品や前ロットの混入、別の作業者・条件によるばらつき)が混ざっているサインだ。『少数だから無視してよい』のではなく、その孤立したデータがなぜ生まれたのかを個別に調べる対象だと判断する

  11. 『ダイヤグラム』を、品質管理に使うQC七つ道具の一種だと思わせる

    なぜ引っかかる『グラフ』『図表』という言葉の響きが似ており、品質管理の図表と工程管理の図表を同じ分類だと錯覚しやすい

    見破り方ダイヤグラムは、トンネルや道路のような線状の工事で、縦軸に工期、横軸に距離程(施工位置)をとって進捗を示す座標式工程表(斜線式工程表)の一種であり、工程管理のための図表。品質管理のQC七つ道具(パレート図・特性要因図・ヒストグラム・散布図・管理図・チェックシート・グラフ)とは目的も分類も異なる

  12. 電位降下法の補助接地棒(P・C)を、被測定接地極(E)を中心として両側(逆方向)に配置させる

    なぜ引っかかる『Eを挟んで両側に補助棒を置けば、E-P間・E-C間の距離をそれぞれ確保できて合理的』という直感的な配置イメージに引きずられやすい

    見破り方電位降下法は、E(被測定接地極)に流した電流がP(電位用)とC(電流用)の間の電位差として戻ってくることを利用する測定法で、E・P・Cは一直線上にE→P→Cの順(同じ方向へ)に、それぞれおおむね5〜10m程度の間隔で配置する。Eを中心に両側へ振り分ける配置は、この一直線上の原則から外れており誤り

  13. 接地抵抗計を『絶縁抵抗を測定する機器』だと取り違えさせる

    なぜ引っかかるどちらも『抵抗を測る計器』という共通点があるため、絶縁抵抗計と接地抵抗計を同じ用途の機器だと混同しやすい

    見破り方接地抵抗計は接地極の接地抵抗を測定する機器であり、絶縁抵抗の測定には使わない。絶縁抵抗の測定には絶縁抵抗計(メガー)を使う、という対応で区別する。『抵抗計』という名前の共通点ではなく、『何の抵抗を測る機器か』で見分ける

  14. 絶縁耐力試験器を、絶縁抵抗計(メガー)と同じ機器、あるいは絶縁抵抗値を読み取る機器だと取り違えさせる

    なぜ引っかかるどちらも『絶縁』の状態を確認する機器という共通点があるため、試験電圧の水準や試験の目的(数値を測るのか、耐えられるかを実証するのか)の違いを意識せずに同一視しやすい

    見破り方絶縁抵抗計は比較的低い電圧をかけて絶縁抵抗値〔MΩ〕という数値を測定する試験、絶縁耐力試験器は高圧回路に規定の試験電圧を一定時間(連続10分間が目安)かけ続け、絶縁破壊やフラッシュオーバーが起きずに耐えられるかを実証する試験だと区別する。前者は数値を読み取る『健康診断』、後者は合否を実証する『耐久テスト』というイメージで対比しておく

  15. 絶縁抵抗計の端子を短絡させたときに指針が無限大(∞)を示すのを、正常な点検結果だと思わせる

    なぜ引っかかる『短絡=つながっている状態』『無限大=抵抗がない状態』という言葉のイメージが結びつきにくく、開放チェックと0Ωチェックのどちらがどちらの結果に対応するかを逆に覚えてしまいやすい

    見破り方絶縁抵抗計の点検は、端子を開放(切り離す)した状態で指針が無限大(∞)を示すことを確認する開放チェックと、端子を短絡させた状態で指針が0Ω(ゼロ)を示すことを確認する0Ωチェックの2つで構成される。短絡させているのに無限大を示す場合は、点検に合格したのではなく、断線や接触不良などの異常を疑うべき結果であり、そのまま測定を始めてはならない

参考文献・出典

理解度チェック(22問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、22問で確認しよう。 内訳は基本9問・応用2問・ひっかけ11問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 22 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 品質管理の目的は、検査に合格することそのものではなく、設計図書どおりの性能・仕上がりを実現し、施主が求める品質を確保すること
  2. 品質管理はPDCAサイクル(計画Plan→施工Do→検査・確認Check→是正・改善Action)で運用し、検査で見つかった不具合は、その場しのぎでなく原因を確認して再発防止につなげる
  3. 竣工検査は一般に、目視点検→絶縁抵抗測定→接地抵抗測定→導通試験→通電試験(試送電)の順で行う。無電圧・未通電の状態で確認できる項目を先に済ませ、通電をともなう確認は最後に回す
  4. 電気工事特有の検査項目には、絶縁抵抗測定・接地抵抗測定・導通試験のほか、保護継電器の動作確認や、高圧設備では絶縁耐力試験などがある
  5. 配管・埋設配線のように、仕上げ工事後は目視で確認できなくなる部分は、隠れてしまう前に写真や試験記録として残しておく必要がある
  6. ISO 9000(JIS Q 9000)の品質マネジメント用語では、是正処置(すでに発生した不適合の原因を除去し、再発を防止するための処置)と予防処置(まだ発生していない、起こりうる不適合の原因を除去するための未然防止の処置)を区別する。ほかにトレーサビリティ(対象の履歴・適用・所在を追跡できること)、レビュー(目標達成のための適切性・妥当性・有効性を判定する活動)、継続的改善(パフォーマンスを向上するために繰り返し行う活動)といった用語がある
  7. 絶縁抵抗測定は、電路の使用電圧に応じて絶縁抵抗計(メガー)の定格電圧を使い分ける。目安として、高圧回路の測定には1000V絶縁抵抗計、低圧幹線の測定には500V絶縁抵抗計を用いる。測定前には電池チェック・開放(∞)チェック・0Ω(ゼロ)チェックを行い、計器が正常に機能することを確認してから測定に入る
  8. 絶縁抵抗計は、測定を開始した直後は電線・ケーブルの静電容量による充電電流の影響で指示値が不安定になる。測定開始直後の指示値をそのまま測定値として採用してはならず、指示値が安定してから読み取った値を測定値とする
  9. 接地抵抗計(電位差計式)による接地極の接地抵抗測定では、測定前に地電圧が小さいことの確認、接地抵抗計の電池電圧の確認、検流計が零を示したときのダイヤル指示値の読み取りに加えて、接地端子盤内で機器側と接地極側の端子を切り離した状態で測定する必要がある。端子を接続したまま測定すると、他の機器の接地系統を経由した電流が混ざり、対象の接地極単独の正しい接地抵抗値が測定できない
  10. 電圧降下式(電位降下法)の接地抵抗測定では、被測定接地極(E)・電位用の補助接地棒(P)・電流用の補助接地棒(C)を、E→P→Cの順に一直線上に、それぞれおおむね5〜10m程度の間隔で配置する。Eを中心にPとCを両側(逆方向)へ振り分ける配置は、電位降下法の測定原理から外れており誤り
  11. 品質管理のPDCAサイクルは、活動の名称(Plan/Do/Check/Action)ではなく、活動内容の説明文だけをア〜エのようにラベル付けして順序を並べ替えさせる形式で出題されることがある。『品質に関する方針に基づき、品質の仕様を決定する』はPlan、『標準どおりに作業を実施する』はDo、『品質を測定・試験し、結果を基準と比較して確認する』はCheck、『不具合が出たら、原因を調べて処置する』はActionに対応する、という活動内容とP・D・C・Aの結びつきを、名称の暗記だけでなく内容の言い換えでも判断できるようにしておく
  12. ヒストグラム(柱状図)はデータのばらつきの分布を棒状に示す図で、分布は中心付近からほぼ左右対称になるのが一般的な形。中央値(メジアン)と平均値は別の統計量で、中央値はデータを大きさの順に並べたときの中央(真ん中)に位置する値、平均値はデータの総和をデータの個数で割った値。『中央値=総和÷個数』という説明は平均値の定義であり、中央値の定義として持ち出すと誤り
  13. 標準偏差はデータのばらつきの大きさを表す指標で、標準偏差が大きいほど、個々の測定値が平均から遠く離れているものが多いことを意味する。ヒストグラムでは規格値の上限・下限を線で示し、その線の外側にはみ出す測定値があれば、規格を外れた不良の可能性として読み取る
  14. ヒストグラムの形状には、左右対称の一般形のほかに、離れ小島形(メインの分布から離れた場所に、少数のデータだけが孤立して現れる形)がある。離れ小島形が現れたときは『たまたま出た誤差』として無視するのではなく、測定ミスや測定機器の誤差、あるいは別のロット・別の作業者・別の条件で作られた材料が混入していないかを調べる必要がある
  15. QC七つ道具のうち管理図は、中心線(CL)を挟んで上方管理限界線(UCL)・下方管理限界線(LCL)を設定し、時系列に測定値をプロットして折れ線で結ぶことで、工程のばらつきが偶然によるものか、見過ごせない異常な原因によるものかを判定するための図表。名前の似た『ダイヤグラム』は、トンネルや道路のように工事区間が線状に延び、一定方向にしか進捗できない工事で使う座標式工程表(斜線式工程表。縦軸に工期、横軸に距離程=施工位置をとり、進捗を斜めの線で示す)の一種であり、品質管理のためのQC七つ道具(パレート図・特性要因図・ヒストグラム・散布図・管理図・チェックシート・グラフ)には含まれない
  16. 電気工事の試験・測定に使う機器は、それぞれ確認する対象が異なる。検電器は充電の有無の確認、検相器は三相動力回路の相順(U-V-W等の接続順序)の確認、回路計(テスタ)は低圧回路の電圧値などの測定に用いる。接地抵抗計は、その名のとおり接地極の接地抵抗を測定する機器であり、絶縁抵抗の測定には使わない。絶縁抵抗を測定するのは絶縁抵抗計(メガー)であり、『接地抵抗計で絶縁抵抗値を測る』という組み合わせは誤り
  17. 絶縁耐力試験器は、高圧回路が規定の試験電圧に一定時間(一般的に連続10分間)耐えられるかを確認する機器で、絶縁抵抗計(メガー)とは測定対象・目的が異なる。絶縁抵抗計は比較的低い電圧をかけて絶縁抵抗値〔MΩ〕という数値を測る試験、絶縁耐力試験は高圧の試験電圧を一定時間かけ続けて絶縁破壊やフラッシュオーバーが起きないことを実証する試験であり、『絶縁耐力試験器で絶縁抵抗値を読み取る』という組み合わせは誤り
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