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施工管理法(能力) ・ 1 / 5

工程表の読み取り・誤りの見つけ方

読み終えると、こうなる

工程表を渡されたとき、数字を目で追うだけでなく「この工程表はどこかに矛盾を隠していないか」という前提で読めるようになる

  • ネットワーク工程表の結合点ごとに最早開始時刻・最遅完了時刻を計算し、フロートが0の経路(クリティカルパス)を自分で特定できる
  • バーチャート工程表の作業順序が、実際の施工手順(配管配線が先、試験調整は最後など)と矛盾していないかを照合できる
  • 出来高累計曲線が上方・下方の許容限界線のどちら側にはみ出しているかを見て、遅れているのか進みすぎているのかを判断できる
  • フロートが0の作業に遅れが出た場合とフロートが残っている場合の違い、工事費と施工期間のグラフから短縮が得か損かを判断できる
考えてみよう

制御盤の更新工事の現場で、監督員からバーチャート工程表を渡された。ケーブル布設、盤据付、結線、試験調整という順に棒グラフが並んでいる。日数の合計は工期にきちんと収まっている。だが棒の並びをよく見ると、「試験調整」の棒が「結線」の棒の終わりより2日早く始まっている。

日数の計算はどこも間違っていないのに、この工程表はなぜ「おかしい」と言えるのか。

このトピックを読み終えるころには、工程表を数字ではなく手順として読み、矛盾を指させるようになっている。

種明かしは、能力問題の工程表が「計算問題」ではなく「読解問題」だという点にある。日数の足し算が合っているかどうかより、その並び順が実際の施工手順として成立しているかどうかが問われている。

バーチャート工程表 — 見るのは日数ではなく並び順

バーチャート工程表は、縦軸に作業名、横軸に日数をとり、各作業の期間を横棒(バー)で表す工程表だ。作成が簡単で誰でも直感的に読めるため、電気工事の現場では最も広く使われている。

バーチャート工程表を読むときに最初に確認すべきは、棒の長さ(日数)ではなく**棒の並び順**だ。電気工事には「配管配線が終わっていなければケーブルを引けない」「盤が据え付いていなければ結線できない」「結線が終わっていなければ試験調整に入れない」という、施工上動かせない前後関係がある。この前後関係を無視して棒が引かれていれば、日数のつじつまがどれだけ合っていても、その工程表は矛盾している。

冒頭のシナリオでいえば、「試験調整」は「結線」がすべて完了して初めて着手できる工程だ。結線の完了前に試験調整の棒が始まっているという記載は、日数の帳尻を合わせるためだけに書かれた、施工手順として成立しない工程表だと判断できる。

ネットワーク工程表 — 3つの部品で読む

ネットワーク工程表は、作業どうしの前後関係(どの作業が終わらないと次の作業に進めないか)を矢印でつないで表す工程表だ。バーチャートより複雑だが、どの作業を遅らせると全体工期に響くかまで見える。

ネットワーク工程表は次の3つの部品でできている。

  • 結合点(○):作業の開始点・終了点を表す丸印。その結合点に入ってくる矢線の作業がすべて完了した状態を意味する
  • アクティビティ(矢線→):実際の作業そのもの。矢線の上に作業名、下に所要日数を書く
  • ダミー(点線の矢印-→):実際の作業ではなく、作業順序の関係だけを表すための線。所要日数は0

作図のルールとして、同一の結合点どうしを2本以上のアクティビティで直接結ぶことはできない(同じ2点間に別々の矢線を引くと区別がつかなくなるため、間にダミーを挟んで区別する)。この作図ルールを知っていると、「同じ2つの結合点の間に矢線が2本並んで描かれている」というネットワーク工程表は、それだけで作図として不適切だと見抜ける。

最早開始時刻・最遅完了時刻・フロートを、自作の工程表で計算する

言葉の定義だけでは実感が湧きにくいので、制御盤更新工事を想定した架空の工程表で実際に計算してみる。

作業内容所要日数先行作業
A準備工3日なし
B盤搬入4日A
C配管配線6日A
D盤据付5日B
E結線4日C・D の両方が完了
F試験調整3日E

この関係をネットワーク工程表にすると、結合点は①(開始)→②(Aの終わり)→③(Bの終わり)/④(Cの終わり)→⑤(DとCの両方が合流する点。④からはダミーで結ぶ)→⑥(Eの終わり)→⑦(完了)という形になる。

最早開始時刻(その作業に最も早く着手できる時刻)は、起点から足し算で求める。複数の経路が合流する結合点では、合流する経路のうち最大値をとる(すべての先行作業が終わっていないと次に進めないため)。

  • ①=0
  • ②=①+A(3)=3
  • ③=②+B(4)=7
  • ④=②+C(6)=9
  • ⑤=max(③+D(5)=12、④+ダミー(0)=9)=12
  • ⑥=⑤+E(4)=16
  • ⑦=⑥+F(3)=19

工事全体で19日かかる計算になる。

最遅完了時刻(全体工期を19日に保つために、その結合点までに完了していなければならない時刻)は、終点から引き算で求める。複数の経路に分岐する結合点では最小値をとる(どちらの経路も期日に間に合わせる必要があるため)。

  • ⑦=19
  • ⑥=⑦-F(3)=16
  • ⑤=⑥-E(4)=12
  • ④=⑤-ダミー(0)=12
  • ③=⑤-D(5)=7
  • ②=min(③-B(4)=3、④-C(6)=6)=3
  • ①=②-A(3)=0

各結合点のフロート(最遅完了時刻-最早開始時刻)を求めると、①〜③、⑤〜⑦はすべて0だが、④だけは12-9=3日の余裕がある。

フロートが0の結合点をつないだ経路(①→②→③→⑤→⑥→⑦、つまりA→B→D→E→F)が**クリティカルパス**で、合計日数3+4+5+4+3=19日は、さきほど求めた工期そのものと一致する。この経路上の作業が1日でも遅れれば、全体工期もそのまま1日延びる。一方、C(配管配線)は3日の余裕があるので、多少の遅れがあっても他の作業に吸収され、全体工期には影響しない。「遅れが出た」という情報だけでは対応の緊急度は決まらない。その作業がクリティカルパス上にあるかどうかで、初めて緊急度が決まる。

計算せずに矢印だけを読む出題 — 合流点は「両方そろって初めて」

ここまではEST・LFT・フロートを実際に計算する出題を見てきたが、能力問題にはもう1つ別の形式がある。数値を計算させず、図に描かれた矢印の関係を読んで、ある作業の開始条件についての記述が正しいかどうかを直接判定させる出題だ。

この形式で必ず問われるのが、合流点の扱いだ。1つの結合点に複数の作業(矢印)が合流しているとき、そこから始まる後続作業は、合流するすべての作業が完了して初めて開始できる。

「作業Xが終了していなくても、作業Yが終了すれば後続の作業Zを開始できる」という記述を見たら、まず**Zが始まる結合点に、XとYの両方の矢印が合流しているかどうか**を図で確認する。合流しているなら、XとYの両方が終わっていなければZは開始できないため、この記述は誤りになる。合流しているのがYの矢印だけで、Xは無関係の経路にあるなら、この記述は正しい。**結合点ごとに『何が合流しているか』を1つずつ確認する**という地道な作業が、この形式の出題を解く唯一の方法だ。

例えば、①→②が作業P(3日)、①→③が作業Q(2日)、②→④が作業R(2日)、③→④が作業S(4日)という自作の工程表があるとする。結合点④には、②経由の作業Rと③経由の作業Sという2本の矢印が合流している。このとき「作業Sが終了していなくても、作業Rが終了すれば、④から始まる作業Tを開始できる」という記述は誤りだ。④はR・S両方の合流点であり、Sが終わっていなければRだけが終わってもTには進めない。一方、「作業Qが終了していなくても、作業Pが終了すれば作業Rを開始できる」という記述は正しい。作業Rは②(作業Pの完了)だけを条件に始まる作業で、③経由の作業Qの完了・未完了とは無関係だからだ。

出来高累計曲線(バナナ曲線) — 許容限界のどちら側か

工程全体の進み具合を一目で把握する道具として、出来高累計曲線(横軸に日数、縦軸に工事全体の進捗度をとった曲線)がある。着工直後と竣工間際は進捗が緩やかで、中盤に進捗が急になるため、全体としてS字型(バナナ型)の曲線を描く。この曲線に、実績が収まってよいとされる上方許容限界線下方許容限界線を添えたものを工程管理曲線と呼ぶ。

実績の曲線が上方・下方の許容限界線の間に収まっていれば、その工程は概ね順調と判断できる。下方限界を下回っていれば工程が遅延しているサインで、原因を特定して対策を打つ必要がある。逆に上方限界を超えて進みすぎている場合も放置してよいわけではなく、労務や資材が特定の時期に過度に集中している可能性があり、後工程への皺寄せや品質低下を招くことがある。

「進みすぎているなら問題ない」と考えるのは早計だ。出来高累計曲線が上方限界を超えているのは、計画より速いペースで工事が進んでいるという意味であり、それ自体は歓迎できることもあるが、労務・資材の投入が計画から外れているサインでもある。能力問題では「進捗が早いから対応不要」という選択肢が誤りとして置かれることがある点に注意する。

工程表のミスを見つける5つの視点

能力問題で「この工程表の誤りはどれか」と問われたとき、確認する視点を整理しておく。

  1. 施工手順として成立しているか:後工程が先行工程の完了前に始まっていないか(バーチャート・ネットワークどちらでも起こりうる)
  2. 作図ルールを守っているか:同一の結合点間に矢線が2本以上直接引かれていないか、ダミーが正しく使われているか(ネットワーク工程表)
  3. フロート0の作業を軽視していないか:クリティカルパス上の作業に遅れが出ているのに、それを「まだ余裕がある」と判断していないか
  4. 出来高累計曲線の許容限界を無視していないか:曲線が下方限界を下回っているのに「順調」と判断していないか
  5. 工期を短くすれば必ず得をすると決めつけていないか:工事費と施工期間の関係を示すグラフを見るときは、直接費の増加分と間接費の減少分を両方確認してから、その短縮が総費用の面で得か損かを判断する
  6. 工程表の種類を、目的に合わせて選んでいるか:タクト工程表は稼働人員の把握や階層別の進行管理には向くが、区画間の複雑な依存関係を細かく分析する形式ではないため、全工程のクリティカルパスを詳細に把握したいという目的にはネットワーク工程表を選ぶのが適切
6つの視点はすべて「日数の計算」ではなく「関係性の読み取り」を問うている。能力問題は暗記した公式を当てはめる問題ではなく、工程表という架空の資料から矛盾を読み取れるかどうかを試す問題だ、という前提で臨むとよい。

総合工程表は「受電日から逆算できているか」も読み取る

これまで見てきたバーチャート・ネットワーク工程表・出来高累計曲線は、いずれも工事全体の中の「進み方」を扱うものだった。能力問題では、工事全体を俯瞰する総合工程表そのものの組み立て方が問われることもある。

電気工事の総合工程表を評価するときに欠かせない視点が、受電日からの逆算だ。受変電設備や幹線の工事は、電力会社からの受電(送電開始)が完了しなければ、機器の動作試験のような後工程に進めない。着工日から日数を積み上げただけの工程表は、一見きちんと並んでいるように見えても、受電予定日という後工程側の固定点に間に合うかどうかを保証しない。

総合工程表を読むときは、「着工日から積み上げて工期内に収まっているか」だけでなく、「受電予定日という後ろのゴールから逆算して、各作業の期限が設定されているか」を確認する。工程上動かせない作業(検査日・受電手続きなど)を中心に、他の作業との関連性を踏まえて計画されているかも、あわせて見ておきたい視点だ。

クリティカルパスを短縮するとき、何を検討すべきか

工程表の読み取りには、遅れを見つけるだけでなく、「工期を短縮したい」という要求にどう応えるかを判断する場面もある。クリティカルパスの日数を短縮する検討では、次の4つの視点を確認する。

  1. 人員・機械の増加限度:投入できる人員・機械をどこまで増やせるか、その限度を検討する
  2. 所要日数見積りの精度:各作業の所要日数の見積りが、そもそも適切だったかを確認する
  3. 作業順序の入替え:作業の順序を入れ替えることで、短縮できる余地がないかを確認する
  4. 直列作業の並列化:直列で進めている作業のうち、条件が整えば並列で進められるものがないかを検討する
この4つの視点に**含まれていない**のが、「品質や安全性の基準を緩めてでも日程を短縮する」という発想だ。工期はクリティカルパス上の作業を管理して守るものであって、品質・安全性という守るべき下限線を犠牲にする手段ではない。能力問題の選択肢に、もっともらしい言い回しでこの発想が紛れ込んでいたら、他の選択肢を検討するまでもなく消去してよい。

「進捗の把握」はネットワーク工程表の役割ではない

ここまでネットワーク工程表の計算力を見てきたが、能力問題では「ネットワーク工程表なら何でも把握できる」という過大評価を誤りとして仕込む出題もある。

ネットワーク工程表が答えられるのは「どの経路が工期を左右するか」「どの作業に何日の余裕があるか」であって、「この作業は今何%終わっているか」という進行度合い(達成率)の把握は苦手だ。進捗を一目で確認したいなら、横棒の塗りつぶし具合で達成率を示すバーチャート工程表・ガントチャートを選ぶ。工程表を選ぶ場面では「何を知りたいのか」を先に決め、それに向いた表を選ぶという手順で考える。

所要日数と人工山積表 — 感覚ではなく計算とグラフで管理する

工程表の日数や必要人数を「経験上これくらい」で済ませていないかも、能力問題の題材になる。

各作業の所要日数は、**全工事量÷1日当たりの平均施工量**という計算式で見積もる。例えば配管延長240mを1日20mずつ施工できるなら、所要日数は240÷20=12日だ。あわせて、日ごとに必要な作業員数を積み上げて示す**人工山積表**(労務山積表)を作ると、特定の日に人員が集中する「山」が見える。この山を前後の作業の入替えでならす作業を山崩しと呼び、稼働人数を平準化する。所要日数の見積りも、人員配置の平準化も、勘ではなく計算と図表にもとづいて行う、という前提を能力問題では問われる。

この資格を取ったあと、現場で何が変わるか

取引先の担当者から週間工程表や進捗の状況を共有されたとき、これまでは日付と品名を照合して納品スケジュールを組むだけだったのが、合格後は棒の並び順や出来高累計曲線の位置から「この工程、どこかで無理をしていませんか」と気づけるようになる。渡された工程表を疑いなく受け取る立場から、その工程表自体の整合性を確認できる立場への変化だ。

特に、フロートが残っている作業とクリティカルパス上の作業を見分けられるようになると、同じ「1日遅れそうです」という連絡でも、緊急に手配すべき遅れなのか、様子を見てよい遅れなのかを自分で判断できる。取引先から遅延の相談を受けるたびに一律で謝罪して特急対応するのではなく、根拠を持って優先順位を提案できる担当者になる。

出来高累計曲線が上方限界を超えている、つまり計画より進みすぎている現場に気づけるようになることも、地味だが実務的な武器になる。「進みすぎているなら良いことでは」と流さず、労務・資材が特定の時期に集中しているサインとして捉え、材料の追加手配や前倒し発注の相談を先回りして持ちかけられるようになる。工程表を読み解く力は、納品担当者としての対応の速さそのものを変えていく。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. ネットワーク工程表の最早開始時刻を、合流する結合点で最大値ではなく最小値でとってしまう

    なぜ引っかかる『先に終わった方に合わせればいい』という直感から、複数の経路が合流する結合点で早い方(小さい値)を採用してしまいやすい。しかし合流点に到達するには、すべての先行作業が完了している必要がある。

    見破り方合流する結合点では『すべての経路が終わるまで次に進めない』という制約を思い出し、必ず最大値をとる。逆に最遅完了時刻を求めるときに分岐する結合点では最小値をとる、と向きが逆になる点もセットで覚える。

  2. フロートが残っている作業(クリティカルパス外)の遅れを、クリティカルパス上の作業の遅れと同じ重さで扱う

    なぜ引っかかる『遅れが出た』という事実だけを見ると、その作業がクリティカルパス上にあるかどうかにかかわらず、同じ緊急度で対応すべきだと考えてしまいやすい。

    見破り方遅れが報告されたら、まずその作業のフロートを確認する。フロートの範囲内の遅れは全体工期に影響しないため、他の緊急対応を優先してよい。フロート0の作業の遅れだけが、即座に全体工期へ跳ね返る。

  3. 出来高累計曲線が上方許容限界を超えているのを『進みすぎているだけで問題ない』と判断する

    なぜ引っかかる曲線が下方限界を下回る『遅延』は問題だと直感的に分かるが、上方限界を超える『進みすぎ』は一見悪いことに見えないため、対応不要だと判断してしまいやすい。

    見破り方上方限界超過は、労務・資材が計画から外れて特定時期に集中しているサインでもあると捉え直す。『早いから良い』ではなく『計画とズレている』という共通点で下方限界超過と同列に扱う。

  4. バーチャート工程表で、日数の合計が工期に収まっていることだけを確認して、作業順序の矛盾を見落とす

    なぜ引っかかるバーチャートは日数の帳尻さえ合っていれば正しく見えてしまう表現形式のため、棒の長さや工期の合計にばかり注意が向き、棒の始点・終点が施工手順として成立しているかの確認を飛ばしやすい。

    見破り方各作業の棒を見るとき『この作業は、直前の作業が終わっていないと着手できないはずだ』という施工手順の知識と照合する。特に、結線前の試験調整、盤据付前の結線など、電気工事特有の前後関係を先に押さえておく。

  5. 工事費と施工期間の関係を示すグラフで、『工期を短くするほど総費用は下がり続ける』と読んでしまう

    なぜ引っかかる『早く終われば無駄な経費がかからない』という直感から、グラフ全体が右肩下がりだと思い込みやすい

    見破り方直接工事費は工期短縮で増加、間接工事費は工期延長で増加という逆方向の動きをするため、総費用(直接費+間接費)はある工期で最小値をとるU字型の曲線になる。極端に短い工期では、間接費の減少分より直接費の急増分の方が大きくなり、総費用はむしろ増加する場合がある。グラフの特定の区間(短縮しすぎている側)を見落とさない。

  6. 電気工事の総合工程表を、着工日からの積み上げだけで評価し、受電日という後工程を左右する固定点からの逆算を見落とす

    なぜ引っかかる工程表は着工日を起点に前から組み立てるものだという素朴な発想が根強く、後ろの固定点(受電日)から逆算する発想には気づきにくい

    見破り方受変電設備・幹線工事は受電が完了しなければ、機器の動作試験のような後工程に進めない。総合工程表を評価するときは、受電予定日から逆算して各作業の期限が設定されているかを確認する。着工日からの積み上げだけで『日数が足りている』と判断すると、受電予定日に間に合わない工程を見落とす

  7. クリティカルパス短縮の選択肢の中に、『品質・安全性が低下してでも日程短縮を検討する』という記述を紛れ込ませ、それを妥当な短縮策として選ばせる

    なぜ引っかかる工期は動かせない制約だという思い込みから、品質・安全性を多少犠牲にしてでも守るべきだと考えてしまいやすい

    見破り方工期短縮の検討事項は、人員・機械の投入限度、所要日数見積りの精度、作業順序の入替え、直列作業の並列化であって、品質・安全性の低下は検討対象ではなく、むしろ守るべき下限線(ガードレール)だ。『品質や安全性が下がってもよいから短縮する』という選択肢は、条件を確認するまでもなく消去できる

  8. タクト工程表の得意・不得意を、稼働人員の把握とクリティカルパスの把握で逆に覚えさせる

    なぜ引っかかる『タクト工程表はネットワーク工程表の要素を取り入れている』という説明だけを覚えると、クリティカルパスの把握も得意だと錯覚しやすい

    見破り方タクト工程表が取り入れているのは、区画(フロア)ごとの繰り返し作業を並べて示す表現であって、区画間の複雑な依存関係を矢印で追うネットワーク工程表の計算力そのものではない。稼働人員の把握のしやすさと、クリティカルパスの把握しにくさは、別々の特性として区別する

  9. ネットワーク工程表の長所を並べる中に『各作業の進行度合いが把握しやすい』という一文を紛れ込ませる

    なぜ引っかかるネットワーク工程表は工程管理の万能ツールだという印象が先行し、進捗の把握までできて当然だと錯覚しやすい

    見破り方ネットワーク工程表が得意なのは依存関係・フロート・クリティカルパスの把握であって、各作業の進行度合い(達成率)の視覚的な把握はバーチャート工程表・ガントチャートの得意分野だ。『何が得意か』を工程表の種類ごとに1対1で結びつけ直す

  10. 所要日数の見積りや人工山積表を、勘や経験だけで決めるものだと思わせる

    なぜ引っかかる現場の工程調整は経験がものを言う世界だというイメージから、所要日数や必要人数も感覚で決めていると錯覚しやすい

    見破り方所要日数は『全工事量÷1日当たりの平均施工量』という計算式にもとづいて見積もる。人工山積表も、感覚ではなく日ごとに積み上げた必要人数を可視化した図表であり、この山を見て平準化(山崩し)を検討する、という手順に落とし込んで考える

  11. バーチャート工程表を、余裕日数(フロート)の把握にも優れた万能の工程表だと思わせる

    なぜ引っかかるバーチャートは各工種の期間が視覚的に分かりやすいため、それだけで工程管理に必要な情報(余裕日数を含む)がすべて揃っていると錯覚しやすい

    見破り方バーチャートが示すのは各工種の作業期間であって、工種間の前後関係(依存関係)ではない。余裕日数(フロート)は後続作業との関係の中で初めて意味を持つ数値であり、依存関係を表現しないバーチャート単独では算出できない。フロートの把握にはネットワーク工程表が必要だと区別する

  12. ネットワーク工程表の合流点で、『片方の作業さえ終われば、もう片方が終わっていなくても後続作業を開始できる』と読ませる

    なぜ引っかかる後続作業に矢印が2本合流している図を見ても、『どちらか早い方が終わればとりあえず先へ進めるはず』という直感的な発想が働きやすい

    見破り方結合点は、そこに合流するすべての作業が完了して初めて次の作業に進める、というAND条件で成り立っている。合流する2本の矢印のうち一方だけが終わった段階では、後続作業はまだ開始できない。『どちらか一方が終われば十分』という記述が出てきたら、その結合点に本当に矢印が1本しか合流していないかを図で確認し直す

参考文献・出典

理解度チェック(16問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、16問で確認しよう。 内訳は基本2問・応用6問・ひっかけ8問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 16 問正解

覚えておきたいポイント

  1. ネットワーク工程表は、結合点(○)・アクティビティ(矢線→、上に作業名、下に所要日数)・ダミー(点線の矢印、所要日数0で作業順序だけを表す)の3要素で構成される
  2. 最早開始時刻は工程の始点から足し算で求め、複数の経路が合流する結合点では最大値をとる。最遅完了時刻は終点から引き算で求め、複数の経路が分岐する結合点では最小値をとる
  3. 各結合点の最遅完了時刻と最早開始時刻の差(フロート)が0の結合点をつないだ経路がクリティカルパスで、この経路上の作業が1日でも遅れると全体工期がそのまま延びる
  4. フロートが残っている作業(クリティカルパス上にない作業)は、フロートの範囲内で遅れても全体工期には影響しない。同じ『1日の遅れ』でも、クリティカルパス上か外かで意味がまったく違う
  5. 出来高累計曲線(Sカーブ、バナナ曲線)は、着工直後と竣工間際は進捗が緩やかで中盤に急な曲線を描く。上方・下方の許容限界線の間に実績が収まっていれば概ね順調、下方限界を下回れば遅延、上方限界を超えれば過度な進みすぎとして労務・資材の集中を疑う
  6. バーチャート工程表のミスを見つけるときは、数字(日数)だけでなく作業の並び順(施工手順として成立しているか)を疑う。後工程が先行工程の完了前に開始している記載は、日数のつじつまが合っていても施工手順として矛盾している
  7. 工事費と施工期間の関係を示すグラフでは、直接工事費は工期短縮で増加、間接工事費は工期延長で増加という逆方向の動きをし、総費用(直接費+間接費)はある工期で最小値をとるU字型の曲線になる。『工期を短くするほど必ず安くなる』という前提でグラフを読むと、直接費が急増する領域を見落とす
  8. 電気工事の総合工程表は、受変電設備・幹線のように受電が完了しないと動作試験などの後工程に進めない作業を、受電予定日から逆算して計画する。着工日からの積み上げだけで工程表を評価すると、この逆算の起点が抜けていても『問題ない』と見誤る
  9. クリティカルパスの日数を短縮する検討では、①投入できる人員・機械の増加限度、②各作業の所要日数見積りの精度、③作業順序の入替えによる効果、④直列作業を並列作業に変更できるかを確認する。品質・安全性が低下してでも日程短縮を検討する、という選択肢は工程管理上不適切であり、消去法で最初に外す対象になる
  10. タクト工程表は、フロアや区画ごとに同じ作業を繰り返す工事に向いた工程表で、ネットワーク工程表に比べて全体の稼働人員を把握しやすい反面、区画間の複雑な依存関係までは表現しないため、全工程のクリティカルパスの把握には向かない。『稼働人員は把握しやすいが、クリティカルパスは苦手』という組み合わせで覚え、これを逆に問う設問に注意する
  11. ネットワーク工程表は依存関係・フロート・クリティカルパスの把握に優れるが、各作業の進行度合い(達成率)そのものの把握は苦手で、この役割はバーチャート工程表・ガントチャートが担う。工程表を選ぶ場面では『何を把握したいか』で使い分けを判断する
  12. 各作業の所要日数は『全工事量÷1日当たりの平均施工量』で求める。人工山積表(労務山積表)は、日ごとに必要な作業員数を積み上げて示し、稼働人数の偏りを平準化(山崩し)するために用いる図表で、工程表とは示す対象(作業期間か、必要人数か)が異なる
  13. バーチャート工程表は、各工種がいつからいつまで作業するかを横棒で示すことに優れるが、工種同士の前後関係(依存関係)を表現しないため、各作業に何日の余裕日数(フロート)があるかは分からない。余裕日数の把握やクリティカルパスの特定は、作業間の関係を矢印で明示するネットワーク工程表の役割であり、『バーチャートは分かりやすいから、あらゆる工程管理に使える』という判断は工程表ごとの得意分野を取り違えている
  14. ネットワーク工程表を『EST・LFTを計算する対象』としてだけでなく、『図に描かれた矢印そのものを読んで、作業の開始条件を直接判定する』という出題形式もある。ある結合点に複数の作業(矢印)が合流している場合、そこから始まる後続作業は、合流するすべての作業が終わっていなければ開始できない。『片方の作業が終了していなくても、もう片方が終了すれば後続作業を開始できる』という記述は、その結合点が複数の作業の合流点であるかぎり誤りになる
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