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安全対策現場実務

感電事故が起きた瞬間、何をすべきか|二次感電を防ぐ通電遮断の手順と心肺蘇生・AEDの使い方

読了目安: 11分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

検電の順序も、短絡接地の意味も、活線近接作業の離隔距離も、電気工事に関わる人間なら一度は教わる。停電確認を怠ればどうなるか、絶縁用保護具を省けばどうなるか——予防のための知識は、現場にかなり厚く積み上がっている。

ところが、その予防線がすべて破られて、目の前で同僚が倒れたときに何をすべきかとなると、急に心もとなくなる。反応を確かめる。119番を呼ぶ。心肺蘇生をする。AEDを使う。言葉としては知っていても、手順として体に入っている人は、思っているより少ない。

労働安全衛生総合研究所の統計によれば、感電による死亡者数は1974年の203人をピークに減り続け、2003年には14人にまで落ちている。安全対策の効果は数字にはっきり出ている。だが、同研究所が2003年から2012年までの10年間をあらためて分析した資料では、この期間だけで173人が感電で命を落としている。しかも死因の内訳を見ると、漏電や絶縁不良といった設備側の欠陥が原因だったのは全体の1割に満たない。安全管理体制の不備や作業者の判断ミスといった、設備とは別の要因が9割近くを占める。

建設業だけで102人、なかでも電気通信工事業が49人と際立って多い。事業場の規模別に見ると、従業員29人以下の現場が全体の71%を占めている。特殊な大工事の話ではない。どこにでもある、普通サイズの電気工事店の、普段どおりの作業の中で起きている数字である。

自分の現場は大丈夫、と思いたくなる。実際、装備や手順を整えている現場ほど事故は少ない。それでも原因の9割近くが人的要因だという事実は、どれだけ気をつけていても、いつか誰かの目の前で起きうるということを意味している。

まず電源を切る——なぜ「駆け寄る」より先なのか

感電している人を見つけたとき、体が先に動いてしまう人は多い。だが、その一歩目が救助者自身の感電につながる。

人体に電流が流れると、約1mAでしびれを感じ始め、約10mAを超えると自分の意志で充電部から手を離せなくなる。労働安全衛生総合研究所がIEC 60479-1をもとに整理した資料では、この「離脱電流」を超える電流が流れ続けている人は、握った電線や工具から自力で離れられない状態にあるとされている。倒れている本人が動けないのは、意識を失っているからとは限らない。まだ電気が流れているから、という場合がある。

その状態の人に素手で触れれば、電流は救助者の体にも流れ込む。連鎖感電と呼ばれる、この二次災害こそが、感電事故の救助を難しくしている最大の理由だ。MSDマニュアルも「電流が遮断されるまでは、感電している人に触れてはいけません」と明記している。最初にすべきことは、駆け寄ることではなく、電源を切ることになる。

同じ労働安全衛生総合研究所の資料は、交流電流と直流電流とで危険な電流域が異なることも示している。交流は体内を流れる電流が約40mAを超えたあたりから心室細動が起こりやすくなるのに対し、直流はそれよりも約20%大きい電流でないと同じ症状に至らない。つまり、現場で扱う機会の多い交流のほうが、より小さな電流で心臓を止めうる。分電盤や制御盤まわりの100V・200Vという「見慣れた電圧」への油断が、被害の大きさとは無関係だと言われる理由がここにある。

電源を切る手段がないとき

ブレーカー、コンセント、機器のスイッチ——手の届く範囲に電源を切る手段があれば、まずそこを止める。問題は、電源の位置がわからない、あるいは切れた高圧線のように遮断する手段そのものがない場合だ。

高圧線が絡む場合、対応は一段厳しくなる。切れて垂れ下がった電線には、たとえ直接触れていなくても近づいてはいけない。東京電力パワーグリッドが注意喚起しているとおり、高圧線の周囲には接触しなくても感電しうる範囲があり、電力会社や消防が到着するまで離れて待つことが原則になる。素人判断で近づいてよい距離ではない。

低圧の設備で、どうしても電源を切る手段が見つからない場合に限り、乾いた木の棒やゴム製の道具など、電気を通さないものを使って感電者を電源から引き離す方法がある。金属や湿った棒は使えない。何より、救助者自身の手や体が、感電している人にも、電流が流れている導体にも触れないことが絶対条件になる。少しでも判断に迷うなら、無理をする場面ではない。

反応と呼吸を確認し、119番を呼ぶタイミング

電源を切った、あるいは安全に引き離せたら、次は反応の確認になる。肩をやさしくたたきながら大声で呼びかけ、反応があるかどうかを見る。

反応がない、あるいは判断に迷う場合は、その場で大声を出して周囲の助けを呼び、119番通報とAEDの手配を同時に頼む。東京消防庁の手順では、「反応がない」「わからない」のどちらであっても通報を後回しにしない、という考え方が徹底されている。その場に一人しかいない場合は、自分で119番をかけてからAEDを探しに動く。

通報のあとは、胸と腹部の動きを見て、普段どおりの呼吸をしているかを10秒以内で確認する。呼吸がない、あるいはあるかどうか判断に迷う場合は、次の処置に進む。ここでの「迷ったら実施する」という判断は、遠慮して様子を見るよりも、早く動いたほうが安全だという考え方に基づいている。

胸骨圧迫とAED——救急隊が来るまでの数分間

胸骨の下半分、胸の真ん中あたりに片方の手の付け根を置き、もう片方の手を重ねて、肘をまっすぐ伸ばしたまま体重をかける。目安は、胸が約5cm沈むほどの強さ。1分間に100~120回のテンポで、30回連続して圧迫する。

心肺蘇生の訓練を受けたことがあり、技術に自信があれば、胸骨圧迫30回のあとに人工呼吸を2回行う。ためらう場合は無理に人工呼吸をせず、胸骨圧迫だけを絶え間なく続けてもよいとされている。手を止める時間を作らないことのほうが優先される。

AEDが届いたら、電源を入れ、音声メッセージに従って電極パッドを胸に貼る。心電図の解析中は体に触れない。電気ショックが必要と判断されれば指示に従い、ショックが終わったらただちに胸骨圧迫を再開する。以後、心電図解析とショック、胸骨圧迫の再開を、救急隊が到着するまでおよそ2分おきに繰り返す。JRC蘇生ガイドライン2020でも、市民救助者による強く速く絶え間ない胸骨圧迫が、心停止からの生還率を左右する最大の要素とされている。

見た目が軽くても、そこで判断を終わらせない

意識が戻り、本人が「大丈夫」と言ったとしても、そこで安心してよいとは限らない。感電による皮膚の熱傷は、体の内部でどれだけの損傷が起きているかをそのまま映すわけではない。電流が心臓の近くを通っていれば、その場では自覚症状がなくても、時間差で不整脈が現れることがある。

MSDマニュアルも、感電による熱傷の見た目だけでは重症度を判断できないとし、少しでも疑いがあれば医療機関を受診するべきだとしている。心電図の検査結果に異常がある、心臓の症状がある、ほかに目立つ外傷があるといった場合は、経過観察のための入院が必要になることもある。電流が体のどこを通ったかによって内部の損傷パターンは変わり、その場では自覚できない範囲まで及んでいることもある。現場での応急手当は、あくまで救急隊に引き継ぐまでの処置であり、その先の医学的な判断は救急隊と医療機関に委ねるべき領域になる。

起きてから考えるのではなく

ここまでの手順は、知っているかどうかで最初の数十秒の動きが変わる。誰が電源を切るか、誰が119番をかけるか、AEDがどこにあるか——現場に複数人いるなら、その役割分担を事前に決めておけるかどうかが、実際の場面での迷いの少なさに直結する。倒れた人のそばに一人が残って呼びかけと胸骨圧迫を担い、もう一人が電源の遮断とAEDの手配に走る、という程度の分担でも、全員が同じ場所に立ち尽くす状況とは結果が変わってくる。

普通救命講習は、消防署や消防分署で定期的に開かれており、多くの自治体で無料か実費程度で受けられる。胸骨圧迫やAEDの操作は、文章で読むのと、一度でも手で覚えるのとでは、いざというときの体の動きがまったく違う。現場に一人でも受講者がいれば、その場の対応の速さは変わってくる。

応急処置の手順を知っておくことは、いざというときの被害を小さくする。ただし、それはあくまで最後の砦であって、検電器や高感度形の漏電遮断器、絶縁用保護具といった感電防止のための電材を現場に揃え、日頃の予防に力を入れることに勝る対策はない。感電防止関連の電材選定でお困りの際は、お気軽にご相談を。見積もり依頼をする →

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