HP(HFA)は、火災報知設備や非常放送などの防災設備で頻繁に指定される小勢力回路用耐熱電線です。ところが、現場では「HP」「HFA」「耐熱線」「警報線」が混同され、発注時の心数・対数違いや、AE・FPとの取り違えが起きやすい品種でもあります。
最初に結論をまとめると、選定で外せないのは次の5点です。
- HPは統一記号、HFAは冨士電線の商品名
- 定格60Vであり、600V電源回路用ではない
- 耐熱配線用であり、警報用AEや耐火電線FPとは使用区分が違う
- サイズだけでなく、心(C)か対(P)かを必ず確認する
- 屋外・ノンハロゲン・誘導対策・通信性能が必要なら、EM・LAP・遮へい・RS-485対応から選ぶ
発注を急いでいる方へ
「HPまたはHFA」「0.9/1.2mm」「2C/3C/4Cまたは○P」「必要長さ」「一般/EM/LAP/遮へい」「メーカー指定」を見積フォームに記入してください。仕様が曖昧な場合は、図面や既設ケーブル表示の写真から選定をお手伝いします。
HP(HFA)とは
HPは、日本電線工業会規格JCS 3501「小勢力回路用耐熱電線」に適合する消防用電線の統一記号です。冨士電線の製品名HFAは Heat resistant Fuji Alarm の頭文字で、製品表示にはHPとHFAの両方が記載されます。
冨士電線HFAの公表仕様は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 品種 | 小勢力回路用耐熱電線 |
| 統一記号 | HP |
| 製品名の例 | HFA(冨士電線) |
| 規格 | 消防庁告示第11号、JCS 3501 |
| 定格電圧 | 60V |
| 認定 | 登録認定機関(JCT/JECTEC)の認定品・評定品として製品ごとに表示 |
| 基本構造 | 銅導体+架橋ポリエチレン絶縁(耐熱層)+より合わせ/押え巻+シース |
| 主な用途例 | 非常放送、非常電話、防火システム、火災報知器の信号伝送回路など |
製品を受け入れる際は、外装表示の認定表示、HP記号、メーカー名、製造年、製品名を確認します。「見た目が似ている」「同じ0.9mm」だけでは適合判断になりません。
断面構造を図で理解する
導体の上に架橋ポリエチレンを被覆し、これが絶縁体と耐熱層を兼ねるのが基本です。複数の線心をより合わせ、必要に応じて押え巻や遮へいを加え、外側をビニルまたは耐熱性ポリエチレン系シースで保護します。
2心平形
0.9mm×2C、1.2mm×2Cなどで見かける平形です。外観は小型の平形ケーブルに見えますが、VVFとは定格・規格・用途がまったく異なります。
丸形・同心より
3C、4C、5Cなど複数の線心を丸くまとめる形です。同心よりタイプは仕上外径を細くしやすく、取り回しに優れます。
ツイストペア(対より)
2本を1組としてより合わせ、3P・5P・10PのようにP(Pair)で表します。メーカー資料では、コンピュータ制御回線のように漏話が問題になる回路に対よりタイプを使用するよう案内されています。
C(心数)とP(対数)を間違えない
HFAで最も多い発注ミスの一つが、心数と対数の取り違えです。
| 表示例 | 意味 | 絶縁線心の本数 | 主な形状 |
|---|---|---|---|
| 0.9mm-2C | 0.9mm、2心 | 2本 | 平形が一般的 |
| 0.9mm-3C | 0.9mm、3心 | 3本 | 丸形 |
| 1.2mm-4C | 1.2mm、4心 | 4本 | 丸形 |
| 0.9mm-3P | 0.9mm、3対 | 6本 | ツイストペア |
| 1.2mm-5P | 1.2mm、5対 | 10本 | ツイストペア |
「3C」と「3P」は別物です。図面に対番号がある、通信・制御回路である、既設が色分けされた対よりである場合は、P指定を疑います。
0.9mm・1.2mmと太物の考え方
流通で特によく見るのは0.9mmと1.2mmです。冨士電線の一般HFAには0.9、1.2、1.6、2.0mmおよび2、3.5mm²の設定があり、EM-HFAにも広いサイズ展開があります。ただし、常時在庫されるサイズ・心数はメーカーや品種で異なります。
| 導体サイズ | 最大導体抵抗の例 | 選定上の見方 |
|---|---|---|
| 0.9mm | 単心・平形 28.2Ω/km以下、丸形 29.2Ω/km以下 | 標準的な短〜中距離の信号回路で多い |
| 1.2mm | 単心・平形 15.8Ω/km以下、丸形 16.5Ω/km以下 | 長距離や電圧降下を抑えたい回路で検討 |
| 1.6mm以上・mm²表示 | 製品仕様による | 設計指定・機器条件を優先し、受注製作品を含め納期確認 |
太い方が常に正解ではありません。端子に収まるか、機器の指定範囲か、配線長、電圧降下、施工スペース、認定範囲を合わせて確認します。
HP・AE・FPを30秒で見分ける
| 区分 | 代表記号 | 定格の目安 | 耐熱配線 | 耐火配線 | 主な役割 |
|---|---|---|---|---|---|
| 警報用ケーブル | AE、AEV、AEE/F | 60V以下 | × | × | 一般の警報・信号回路 |
| 小勢力回路用耐熱電線 | HP | 60V | ○ | × | 火災時に一定時間維持する弱電信号回路 |
| 耐火電線 | FP、FP-C等 | 主に600V以下 | ○ | ○ | 非常電源・誘導灯・消火ポンプ等の電源回路 |
この表は選定の入口です。実際の使用可否は消防設備の種類、回路区分、配線方法、設計図書、所轄消防の扱いに従います。
HPとAEの違い
AEは警報用ケーブルであり、HPが要求される耐熱配線の代用品ではありません。両者は外径や導体径が近くても、耐熱性能と認定表示が違います。
HPとFPの違い
HPは定格60Vの小勢力回路用耐熱電線、FPは耐火配線に使う耐火電線です。フジクラ・ダイヤケーブルの解説では、従来のHPは最高380℃で15分間の回路維持、小勢力回路用耐火ケーブルEM-JFPは最高840℃で30分間の回路維持という異なる性能区分が示されています。低圧600V回路や耐火配線指定をHPで代替してはいけません。
HFAシリーズの選び分け
| 品種 | 向いている条件 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| HFA | 標準的な屋内・軒下の耐熱配線 | PVCシース、心/対、認定表示 |
| EM-HFA | 低煙・ノンハロゲン等の環境配慮指定 | ポリオレフィン系シース、評定範囲 |
| HFA-Cu / EM-HFA-Cu | 外来ノイズ・誘導対策が必要 | 銅テープ遮へい、接地処理 |
| HFA-SB / EM-HFA-SB | 柔軟性も必要な遮へい回路 | 軟銅線編組、端末処理 |
| EM-HFA-LAP | 水分・湿気の影響が懸念される場所 | LAPシース、屋外施工条件、端末防水 |
| EM-HFA-20 | RS-485等のデジタル伝送 | 20MHz特性、1P/3P、インピーダンス、遮へい |
| EM-HP-TPCC 5/6 | 耐熱性能が必要なLAN | Cat.5e/6、対応アプリケーション、施工規則 |
一般形かEMか
EM-HFAはシースにポリオレフィン系材料を使い、燃焼時の煙、有害なハロゲン化水素ガス、腐食性ガスの発生を抑えます。公共建築や環境配慮仕様で指定される場合は、単に「HFA」と発注せずEM-HFA指定を明記します。
同心よりか対よりか
単純な接点信号などは心形、漏話の影響を抑えたい制御・通信回路は対よりを検討します。対よりの必要性は接続機器の通信方式とメーカー仕様で決めます。
遮へいが必要か
インバータ、動力線、無線設備などの近傍で誘導ノイズが懸念される場合は、銅テープ(Cu)または銅編組(SB)遮へい付きを検討します。遮へいは選ぶだけでなく、接地方式と端末処理を設計どおりに施工して初めて効果を発揮します。
水気があるか
通常のシースだけで不十分な場所にはLAP仕様を検討します。EM-HFA-LAPは通常シースの上に防水・防湿用LAPシースを追加した構造です。端末から水が入れば性能を損なうため、引込部・接続部の処理まで含めて判断します。
選定フロー
| 設計指定・条件 | 選ぶ系統・仕様 |
|---|---|
| 設計指定がFP・耐火配線 | HPでは代替しない。FP系を選定 |
| 設計指定がAE・警報線 | 耐熱要否を設計確認のうえAE系を選定 |
| 設計指定がHP・耐熱配線で、回路電圧が60V超 | HPでは代替しない。FP系を選定 |
| HP・耐熱配線、60V以下、通信・漏話対策が不要 | 心形(C)を選定 |
| HP・耐熱配線、60V以下、通信・漏話対策が必要 | 対より(P)を選定 |
心形・対よりを選んだ後は、環境条件でさらに絞り込みます。標準屋内はHFA/HP、低煙・ノンハロゲン指定はEM-HFA/EM-HP、水分・湿気のある環境はEM-HFA-LAP、誘導ノイズ対策が必要ならCu/SB遮へい付き、RS-485等の通信規格はEM-HFA-20等を選びます。
発注前チェックリスト
- 図面の回路区分は耐熱・耐火・警報のどれか
- ケーブル記号はHP/HFAで間違いないか
- 導体サイズは0.9mm、1.2mm、その他のどれか
- 数量はC(心)かP(対)か
- 一般形かEMか
- 遮へいの有無とCu/SBの指定
- 水気がある場合のLAP指定
- RS-485等なら通信特性を満たす品種か
- 必要長さ、条長、巻数、カット可否
- メーカー指定、認定表示、納期
注文の伝え方
最低限、次の順序で伝えると誤手配を防げます。
品種 + サイズ + 心数/対数 + 仕様 + 長さ + メーカー
例1: HP(HFA)0.9mm-2C、200m、冨士電線
例2: EM-HFA 1.2mm-5P、100m、遮へいなし
例3: EM-HFA-LAP 1.2mm-3P、必要長さ80m
例4: EM-HFA-20 1.2mm-1P、RS-485用
既設改修で表示が読めない場合は、外径だけで推定せず、外装印字、心線色、心/対、使用設備、図面記号をセットで確認します。
よくある失敗
「HFA 3」とだけ注文する
3Cか3Pか、0.9mmか1.2mmかが不明です。3Pは6線心なので、3Cとは互換になりません。
耐熱と耐火を同じ意味で扱う
HPとFPは定格も性能区分も違います。消防図面の指定を勝手に読み替えず、不明点は設計者・消防設備士・所轄へ確認します。
EMを一般形で代替する
電気的に接続できても、環境仕様や設計条件を満たさない可能性があります。公共建築仕様などは特に品名を省略しないことが重要です。
シールド線の接地を決めずに手配する
遮へい付きケーブルは端末処理を含む設計が必要です。両端接地・片端接地などを現場判断だけで変更すると、ノイズ対策が逆効果になる場合があります。
まとめ
HP(HFA)の選定は「0.9か1.2か」だけでは終わりません。回路区分、60V、心/対、一般/EM、遮へい、LAP、通信仕様の順で確認すれば、AEやFPとの取り違えと発注ミスを大きく減らせます。
電材サーチでは、図面指定や既設表示しか分からない段階でも選定をお手伝いします。メーカー、サイズ、心数、必要長さが未確定の場合は、分かる範囲で構いません。
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