夜、高速道路やトンネルを走ると、照明はオレンジがかった色をしている。ところが同じ夜でも、体育館やコンビニエンスストアの照明は白い。どちらも「電気で光らせる」という点は同じはずなのに、色も、おそらく効率も違う。何が違うから、こういう使い分けが起きているのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、光源の色や特性の違いが、発光の原理そのものの違いから来ていることを説明できるようになっている。
光源には、発光の仕組みが根本的に異なる4つのグループがある。
白熱電球・ハロゲン電球は、フィラメントをジュール熱で高温にして光らせる温度放射だ。ハロゲン電球はハロゲンサイクルという仕組みでフィラメントの蒸発を戻し、小型・長寿命・高輝度を実現している。入力の大部分が赤外線(熱)になってしまうため発光効率は低い(目安10〜20lm/W程度)が、演色性は最高クラス(Ra100)で、点灯装置が不要・即時点灯・調光が容易という特徴がある。
蛍光ランプは、低圧の水銀蒸気中の放電で紫外線(主に253.7nm)を発生させ、管内面の蛍光体で可視光に変換する低圧放電ランプだ。紫外線という目に見えない光を、いったん蛍光体に吸収させてから可視光として出し直すため、この変換の過程だけでも一部のエネルギーは熱として失われる。放電そのものにも特有の癖がある。放電管は、電流が増えるほど放電空間の抵抗が下がり電圧が下がるという負性抵抗特性を持つ。電圧一定の商用電源にそのままつなぐと、電流が増える→抵抗が下がる→さらに電流が増える、という悪循環で電流が際限なく増加し、ランプを壊してしまう。だから安定器(チョークコイルなど)を直列に入れて、電流の増加にブレーキをかける必要がある。周囲温度の影響を受けやすく、点灯までに時間差があるのもこの放電という仕組みゆえの特性だ。
HIDランプ(高輝度放電ランプ)は、高圧の金属蒸気中の放電で発光する。水銀蒸気の高圧水銀ランプ、水銀に金属ハロゲン化物を加えて演色性を改善したメタルハライドランプ、ナトリウム蒸気でオレンジ色に光る高圧ナトリウムランプの3族がある。いずれも安定器が必要で、消灯直後は管内圧力が高く再点弧できないため、再始動に数分かかる。停電や瞬時電圧低下でHIDランプが一度消えると、すぐには点け直せず数分間の暗闇が生じるという弱点は、非常灯や防犯上重要な場所の光源選定で見落とされがちな盲点になる。
LEDは、pn接合に順方向電流を流したとき、電子と正孔の再結合でエネルギーが直接光になる電界発光(エレクトロルミネセンス)を利用する。白色は主に青色LEDと黄色蛍光体の組み合わせで作る。放電ランプとは仕組みが違うのに、電源の設計で似た注意点が出てくるのが面白いところだ。LEDの電流と電圧の関係は指数関数的で、電圧がわずかに上がっただけで電流が急激に増える。だから放電ランプの安定器と同じように、LEDにも電流を一定に制御する定電流ドライバが必要になる。仕組みの原理はまったく違うのに、「電圧をそのままかけると電流が暴走する」という弱点と、「だから電流を制御する回路を挟む」という対策の形だけは共通している。加えてLEDは熱に弱く、放熱設計を誤ると接合部の温度が上がって発光効率が落ち、寿命も縮む。水銀を使わず、即時点灯・調光も容易だ。
演色性(その光で照らしたとき物の色がどれだけ忠実に見えるか)と色温度(光の色み)は、効率とは独立の指標だ。高圧ナトリウムランプは高効率・低演色の対極例として、試験でもよく対比される。この関係を無視して光源を選ぶと、実務で失敗する。たとえば、電気代を抑えようと効率だけを基準に生鮮食品売り場の照明を選んでしまうと、演色性の低い光で照らされた野菜や肉が実際より色あせて見えてしまい、売り場としては逆効果になる。効率と演色性のどちらを優先すべきかは、その場所で「何を見せたいか」によって決まる判断であって、光源のスペック表の1項目だけを見て決められるものではない。
街の照明の色を見れば、設計者が何を優先したかが分かる
この整理が頭に入ると、街を歩いていて目に入る光の色が、単なる好みの問題ではなく設計判断の結果に見えてくる。今日試せることとして、夜の外出時に、道路・トンネル・駐車場・店舗・自宅それぞれの照明の色を見比べてみるといい。明るさの確保が最優先の場所ほどオレンジ寄りの光が、色の見分けが重要な場所ほど白い光が使われている傾向に気づけるはずだ。
光源の種類がこれほど分かれているのは、それぞれ得意な用途が違うからだ。演色性が要る店舗に低演色の光源を使えば商品が不自然に見え、逆に広大な道路に高演色だが低効率の光源を使えばコストと保守の負担が増す。ビル・工場の照明設備を扱う第一種電気工事士にとって、この特性の違いを踏まえた光源選定は、単に「明るければよい」では済まない設計判断の入口になる。
冒頭のトンネルと体育館、なぜ色が違うのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。