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電気応用 ・ 4 / 10

光源の種類と発光原理 — 効率と演色性はトレードオフになる

読み終えると、こうなる

トンネルの照明がオレンジ色で、体育館やコンビニの照明が白いという違いを、単なる好みではなく『発光の原理』の違いとして説明できるようになる

  • 光源の色を見ただけで、それが温度放射(白熱系)・放電(蛍光灯・HID)・電界発光(LED)のどれで光っているかを見当づけられる
  • 『効率は高いのに演色性が低い』光源が存在する理由を、原理から説明できる
  • 安定器が要る光源と要らない光源を、放電の有無で仕分けられる
考えてみよう

夜、高速道路やトンネルを走ると、照明はオレンジがかった色をしている。ところが同じ夜でも、体育館やコンビニエンスストアの照明は白い。どちらも「電気で光らせる」という点は同じはずなのに、色も、おそらく効率も違う。何が違うから、こういう使い分けが起きているのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、光源の色や特性の違いが、発光の原理そのものの違いから来ていることを説明できるようになっている。

光源には、発光の仕組みが根本的に異なる4つのグループがある。

白熱電球・ハロゲン電球は、フィラメントをジュール熱で高温にして光らせる温度放射だ。ハロゲン電球はハロゲンサイクルという仕組みでフィラメントの蒸発を戻し、小型・長寿命・高輝度を実現している。入力の大部分が赤外線(熱)になってしまうため発光効率は低い(目安10〜20lm/W程度)が、演色性は最高クラス(Ra100)で、点灯装置が不要・即時点灯・調光が容易という特徴がある。

蛍光ランプは、低圧の水銀蒸気中の放電で紫外線(主に253.7nm)を発生させ、管内面の蛍光体で可視光に変換する低圧放電ランプだ。紫外線という目に見えない光を、いったん蛍光体に吸収させてから可視光として出し直すため、この変換の過程だけでも一部のエネルギーは熱として失われる。放電そのものにも特有の癖がある。放電管は、電流が増えるほど放電空間の抵抗が下がり電圧が下がるという負性抵抗特性を持つ。電圧一定の商用電源にそのままつなぐと、電流が増える→抵抗が下がる→さらに電流が増える、という悪循環で電流が際限なく増加し、ランプを壊してしまう。だから安定器(チョークコイルなど)を直列に入れて、電流の増加にブレーキをかける必要がある。周囲温度の影響を受けやすく、点灯までに時間差があるのもこの放電という仕組みゆえの特性だ。

HIDランプ(高輝度放電ランプ)は、高圧の金属蒸気中の放電で発光する。水銀蒸気の高圧水銀ランプ、水銀に金属ハロゲン化物を加えて演色性を改善したメタルハライドランプ、ナトリウム蒸気でオレンジ色に光る高圧ナトリウムランプの3族がある。いずれも安定器が必要で、消灯直後は管内圧力が高く再点弧できないため、再始動に数分かかる。停電や瞬時電圧低下でHIDランプが一度消えると、すぐには点け直せず数分間の暗闇が生じるという弱点は、非常灯や防犯上重要な場所の光源選定で見落とされがちな盲点になる。

LEDは、pn接合に順方向電流を流したとき、電子と正孔の再結合でエネルギーが直接光になる電界発光(エレクトロルミネセンス)を利用する。白色は主に青色LEDと黄色蛍光体の組み合わせで作る。放電ランプとは仕組みが違うのに、電源の設計で似た注意点が出てくるのが面白いところだ。LEDの電流と電圧の関係は指数関数的で、電圧がわずかに上がっただけで電流が急激に増える。だから放電ランプの安定器と同じように、LEDにも電流を一定に制御する定電流ドライバが必要になる。仕組みの原理はまったく違うのに、「電圧をそのままかけると電流が暴走する」という弱点と、「だから電流を制御する回路を挟む」という対策の形だけは共通している。加えてLEDは熱に弱く、放熱設計を誤ると接合部の温度が上がって発光効率が落ち、寿命も縮む。水銀を使わず、即時点灯・調光も容易だ。

光源ごとの効率と演色性の相対的な位置関係(概念図) 演色性 高 演色性 低 効率 低 効率 高 白熱電球 LED 蛍光ランプ メタルハライド 高圧水銀 高圧ナトリウム 各光源のおおよその相対位置を示す概念図であり、正確な数値を示すものではない。右下(高効率・低演色)と左上(低効率・高演色)が対極になる
効率だけを見れば、放電を使う光源の方が白熱電球より有利になりやすい。しかしHIDランプの中でも、効率が高い高圧ナトリウムランプは演色性が低く、演色性を改善したメタルハライドランプは高圧ナトリウムほどの効率が出ない。「効率が良ければすべて優れている」わけではなく、効率と演色性はトレードオフの関係にある——これが光源選びの核心だ。

演色性(その光で照らしたとき物の色がどれだけ忠実に見えるか)と色温度(光の色み)は、効率とは独立の指標だ。高圧ナトリウムランプは高効率・低演色の対極例として、試験でもよく対比される。この関係を無視して光源を選ぶと、実務で失敗する。たとえば、電気代を抑えようと効率だけを基準に生鮮食品売り場の照明を選んでしまうと、演色性の低い光で照らされた野菜や肉が実際より色あせて見えてしまい、売り場としては逆効果になる。効率と演色性のどちらを優先すべきかは、その場所で「何を見せたいか」によって決まる判断であって、光源のスペック表の1項目だけを見て決められるものではない。

街の照明の色を見れば、設計者が何を優先したかが分かる

この整理が頭に入ると、街を歩いていて目に入る光の色が、単なる好みの問題ではなく設計判断の結果に見えてくる。今日試せることとして、夜の外出時に、道路・トンネル・駐車場・店舗・自宅それぞれの照明の色を見比べてみるといい。明るさの確保が最優先の場所ほどオレンジ寄りの光が、色の見分けが重要な場所ほど白い光が使われている傾向に気づけるはずだ。

光源の種類がこれほど分かれているのは、それぞれ得意な用途が違うからだ。演色性が要る店舗に低演色の光源を使えば商品が不自然に見え、逆に広大な道路に高演色だが低効率の光源を使えばコストと保守の負担が増す。ビル・工場の照明設備を扱う第一種電気工事士にとって、この特性の違いを踏まえた光源選定は、単に「明るければよい」では済まない設計判断の入口になる。

冒頭のトンネルと体育館、なぜ色が違うのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 『効率が良い光源=すべての面で優れた光源』だと錯覚させる

    なぜ引っかかる高圧ナトリウムランプは光源の中でも効率が高い部類に入るが、演色性は低く色の見分けが必要な場所には向かない。効率と演色性は別の指標で、両立しないトレードオフの関係にある

    見破り方光源を評価するときは『効率(lm/W)』と『演色性(Ra)』を別々に確認する。片方が良いという情報だけで『総合的に優れている』と判断しない

  2. 放電ランプはどれも点灯すればすぐ全光束に達すると錯覚させる

    なぜ引っかかるHIDランプは高圧の金属蒸気中で放電するため、消灯直後は管内圧力が高く再点弧できず、再始動に数分かかる。白熱電球やLEDの『即時点灯』のイメージをそのまま当てはめると誤る

    見破り方その光源が高圧放電を利用しているかを確認する。HIDランプは点灯・再点灯に時間差があり、瞬時に消灯・再点灯できない用途には向かないと判断する

参考文献・出典

理解度チェック(5問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、5問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 5 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 白熱電球・ハロゲン電球はフィラメントのジュール熱による温度放射。発光効率は低いが演色性は最高クラス(Ra100)
  2. 蛍光ランプは低圧水銀蒸気の放電で紫外線を発生させ、蛍光体で可視光に変換する。放電は負性抵抗特性のため電流制限用の安定器が必須
  3. HIDランプ(高圧水銀・メタルハライド・高圧ナトリウム)は高圧の金属蒸気中の放電で発光し、いずれも安定器と再始動までの時間が必要
  4. 高圧ナトリウムランプは効率が最も高いが演色性は低く、この効率と演色性のトレードオフがHIDランプの選定を左右する
  5. LEDはpn接合の電界発光(エレクトロルミネセンス)で、低電圧直流点灯・指向性が強い・熱に弱いという放電ランプとは異なる特性を持つ
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