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電気応用 ・ 3 / 10

光束法による平均照度計算 — 照明率と保守率は設計値

読み終えると、こうなる

同じ広さ・同じ本数の照明なのに片方だけ妙に暗い部屋の理由を、天井の高さと器具の汚れ具合という2つの『見えない設計値』から言い当てられるようになる

  • 問題文で与えられたF(ランプ光束)・N(本数)・U(照明率)・M(保守率)・A(面積)の5つの数字から、部屋の平均照度Eを式に沿って求められる
  • 必要な照度が先に決まっている設計問題で、灯数Nを逆算する式(N=EA/FUM)に自力で組み替えられる
  • 室指数K=XY/(H(X+Y))のHが天井の高さそのものではなく、光源から作業面までの高さであることを区別して計算できる
考えてみよう

床面積も天井の高さも同じ、使っている蛍光灯の本数もワット数もまったく同じ2つの会議室があるのに、片方だけ体感ではっきり暗く感じる。照明の数と消費電力が同じなら、明るさも同じになるはずではないのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この「同じはずなのに違う」を、照明率と保守率という2つの数字から説明できるようになっている。

部屋全体の明るさを見積もるとき、1灯ごとの照度を積み上げるのではなく、部屋に投入した光束のうちどれだけが作業面に届くかという考え方で計算する。これが光束法で、平均照度Eは次の式で求める。

E=FNUMAE = \frac{F \cdot N \cdot U \cdot M}{A}

Fはランプ1本の光束〔lm〕、Nは本数、Aは床面積〔m2〕。この3つは図面や仕様から決まる実測に近い値だ。残るUとMが、この式の中で唯一「設計者が見積もる値」になる。

照明率Uは、器具から出た光束のうち作業面に届く割合を表す。器具の配光(光をどの方向にどれだけ飛ばすか)・室内の壁や天井の反射率・部屋の形によって変わり、部屋の形は室指数という数値に置き換えて評価する。

K=XYH(X+Y)K = \frac{X \cdot Y}{H(X + Y)}

Xは間口、Yは奥行、Hは光源から作業面(床上約0.85m)までの高さだ。この室指数Kと反射率の組み合わせを、照明器具メーカーが公開している照明率表に当てはめてUの値を読み取る。つまりUは計算で導く数値ではなく、器具と部屋の組み合わせごとに決まる設計値だ。

室指数のHは「天井高さ」ではなく「光源→作業面」の高さ 光源 作業面(床上約0.85m) 天井高さ(Hとは別物) H Hは光源から作業面までの距離であり、天井から床までの高さ(天井高さ)そのものではない。室指数K=XY/(H(X+Y))のX・奥行Yは、この側面図には現れない平面方向の間口・奥行を指す

室指数の式に部屋の形(X・Y)と高さ(H)が両方入っているのには理由がある。天井が高い(Hが大きい)割に床面積が狭い部屋は、器具から出た光が壁に当たって反射で戻ってくる前に横方向へ逃げてしまい、作業面に届く割合が下がる。逆に、天井が低く床面積が広い部屋は、光が壁で反射して作業面に戻ってくる経路が相対的に短く、照明率が上がりやすい。式の分母にHが単独で乗っているのはこのためで、天井が高い部屋ほど室指数Kが小さくなり、それに応じて照明率表を引くと低いUの値が出てくる。同じ本数・同じワット数の照明でも、天井が高い会議室の方が暗く感じやすいのは、この室指数の効果だ。

保守率Mは、ランプの経年劣化と器具の汚れによる光束の減り方をあらかじめ見込んだ値で、目安として0.5〜0.8程度とされる。新品でホコリのない状態を1.0とすれば、使い続けるほど数値は下がっていく。この値が一意に決まらないのは、劣化の速度が使用環境で大きく変わるからだ。厨房や工場のように油煙・粉じんが多い環境では器具のカバーが早く汚れて保守率が急速に下がるし、清掃の頻度が高い施設ではその低下が緩やかになる。同じ器具・同じ部屋でも、使う場所と手入れの頻度によってMの値は変わる。

E=FNUM/Aという式を見ると、つい「F・N・Aの3つで明るさが決まる」と考えたくなる。しかし実際に部屋の明るさを左右しているのは、むしろ目に見えないU(部屋の形と器具の配光)とM(汚れと劣化の度合い)の方だ。試験ではU・Mは必ず問題文で与えられるが、現実の建物では、この2つの数字こそが「同じ本数・同じワット数なのに片方だけ暗い」という差を生む正体になる。

保守率を軽く見て設計すると、実際に失敗が起きる。竣工した直後は照明も器具も新品なので、保守率を考慮しなくても基準の照度は出てしまう。しかし数年後、ランプが劣化し器具にホコリが積もると、実際の照度は初期値よりM倍まで下がる。設計段階で保守率をあらかじめ掛けて必要な灯数を多めに見積もっておかないと、竣工検査には合格しても、数年後に「照明が暗くなった」というクレームに直面することになる。保守率は「将来の劣化を先取りして今の設計に織り込む」ための数字だ。

必要な照度Eが先に決まっている設計、たとえば「事務所の机上面は750lx必要」という条件から灯数を決める場合は、式をNについて解く。

N=EAFUMN = \frac{E \cdot A}{F \cdot U \cdot M}

計算結果が小数になったときは、必ず整数に切り上げる。照明の本数は「13.3本」では設置できないからだ。

「暗い部屋」の原因を、天井の高さと器具の汚れから絞り込む

この式が頭に入ると、部屋が暗く感じる原因を器具の性能に求める前に、天井の高さ(室指数)と清掃状況(保守率)を疑えるようになる。今日試せることとして、職場や自宅の天井照明を見上げ、器具のカバーにどれくらいホコリが積もっているかを観察してみるといい。保守率が低い状態というのは、まさにこの汚れが光を遮っている状態だ。

照明率・保守率という「一意に決まらない値」をあえて式に残しているのは、照明設計が単なる計算問題ではなく、部屋の形・器具の選定・清掃計画までを含む総合判断だからだ。第一種電気工事士が扱うビルや工場では、天井高が数メートルに及ぶ空間や、粉じんの多い工場のように保守率が早く落ちる環境も出てくる。そうした現場では、この式のUとMをどう見積もるかが、実際の照明設計の腕の見せどころになる。

冒頭の2つの会議室、何が違っていたために片方だけ暗く感じたのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 室指数の式にある高さHを、部屋の天井高さそのものと取り違える

    なぜ引っかかる室指数K=XY/(H(X+Y))のHは、天井から床までの高さではなく『光源から作業面(床上約0.85m)までの高さ』を指す。天井高さをそのまま使うと室指数がずれ、照明率の見積もりも狂う

    見破り方Hを使う前に『これは光源から何までの高さか』を確認する。作業面までの高さであり、天井高さから作業面の高さ(約0.85m)を差し引く必要がある場合がある

  2. 照明率・保守率を、条件が変わっても使い回せる『定数』だと思い込ませる

    なぜ引っかかる計算の主役がF・N・A(光束・本数・面積)の3つに見えるため、UとMは脇役の固定値だと錯覚しやすい。しかし実際はUは部屋の形・反射率・器具ごとに、Mは保守状況ごとに変わる設計値で、条件が変われば数値も変わる

    見破り方問題文にU・Mの数値が与えられていたら、それは『この条件だから成り立つ値』だと意識する。同じ部屋でも天井の高さや壁の色、清掃頻度が変われば別の数値になる

参考文献・出典

理解度チェック(5問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、5問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 5 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 光束法による平均照度:E=F・N・U・M/A(F:ランプ1本の光束、N:本数、U:照明率、M:保守率、A:床面積)
  2. 式の形(投入光束×有効割合÷面積)は定義から説明できるが、照明率U・保守率Mは器具・部屋・保守条件で決まる設計上の値で、計算では必ず問題文で与えられる
  3. 照明率Uは器具の配光・室内面の反射率・室指数K=XY/(H(X+Y))から照明器具メーカーの表を引いて求める値(X・Y:間口と奥行、H:光源から作業面までの高さ)
  4. 保守率Mはランプの経年劣化と器具の汚れを見込む値(目安0.5〜0.8程度)で、使用環境ごとに変わり一意に決まらない
  5. 必要な照度Eが先に決まっている設計では、N=EA/(FUM)の形に式を組み替えて必要灯数を逆算する
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